IS~傷だらけの鋼~   作:F-N

51 / 61
大変お待たせしました。

ぜ、つ、だ、い、スランプ。

10/12
文章修正


第五十話

 臨海学校二日目。七月七日。

 四方を切り立った崖に囲われているその場所はIS学園のアリーナを連想させるドーム状の砂浜。中央にはISスーツを着用した大勢の生徒と複数の教員がずらりと並んでいた。場所が場所なだけに一般人から見れば完全な水着にしか見えない。

 

「諸君、昨日はさぞ楽しめた事だろう。しかし、今日は忙しい一日となる。身を引き締めろ」

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

 臨海学校の最大目的。非限定空間におけるISの各種装備試験、そしてデータの採取。揚陸艇から送られた大量の装備によって本日は朝から夜までそれ等に追われ、皆が多忙と化す。

 特に、専用機持ち──代表候補生達には大量の装備が待ち受けている。迅速に、確実に、正確に行わなければならない。

 そこが一般生徒とは明確に違う所。臨海学校は代表候補生にとって仕事も同然なのだ。十五歳でこの様な事を国から任されるのはとても立派だ。

 

「が、その前にだ。……おい、遅刻者」

 

「…………」

 

「せめて返事ぐらいしろ、柳……」

 

 いざ、新装備のテストが始まる直前に千冬から名指しされる青年──隆道。若干細くなっているその目は不機嫌が故なのか、寝惚けているのか。

 あろうことか、彼は遅刻したのだ。その理由も単なる寝坊。この様な一大行事でさえ平常運転。

 起床時間は爆睡、朝食時間ですら爆睡。一夏が全力を尽くして起こし、目覚めた頃には集合時間ギリギリの時間帯。全力疾走した一夏はなんとか間に合ったのだが、寝起きが悪い彼はそれの逆。終始のろのろ状態が続き、着いたのがつい先程。

 当然、彼は遅刻に関しては反省の色など無し。普段通りの雰囲気、普段通りの硬い表情である。最早、これはお約束と言っても良い。逆に、彼が上機嫌ルンルンであったならそれはそれでかなり深刻な事態なのだが。

 

「そうだな……ISのコア・ネットワークについて説明してみろ。遅刻の件はそれで勘弁してやる」

 

「知らねえ」

 

「帰ったら反省文だ。今度こそ絶対に書け」

 

「はんっ、誰が書くか」

 

 このやり取りもお約束である。

 彼はこの三ヶ月間のサボりとよろしくない授業態度によって何度も処罰を与えられていた。彼が患う症状や度々に起きた事件を考慮するとあまり強くは言えないが、規則を守って貰わねば困る。このままでは教員として生徒に示しが付かない。が、それでも彼はお構い無しに反抗し抵抗する。それはもうクソガキに有りがちな反抗期の様に。

 清掃や居残りは当然スルー。反省文は目の前で破り捨てるか、即座にシュレッダーにかけるか、紙飛行機にして屋外へ飛ばすかとやりたい放題。普通なら良くて謹慎、悪くて停学か退学である。

 絵に描いた様な不良少年だ。注意を聞かない、罰も効かない、抑制出来ない、何も通用しない、何をやっても意味が無い、逆に悪化してしまう。他の問題児とは勝手が違い過ぎて手に負えない。

 それにだ。権力や立場を利用したお調子者とは違い、自らの命すらぶん投げる自暴自棄な姿勢は厄介の一言で片付けられない。現時点の安全策は親しい者の説得以外に無いのだ。

 無敵過ぎる。よく高校生活を全う出来たなと、全員が不思議に思ったそうな。

 

「はぁ……。それでは各班、振り分けられたISの装備試験を行うように。各専用機持ちは送られた換装装備のテストだ。全員、迅速に行え」

 

「「「「「はーい」」」」」

 

 説教や罰が通用しない彼に何を言っても無駄。これに諦めた千冬は生徒達に指示、散開させる。時間は有限、彼だけに構う暇など無い。

 生徒達がそれぞれにバラけ、場に残されるのは男子二人。彼等は完全に暇──とはならない。

 

「さて、柳の装備はあのコンテナだ。あとで私も合流するから量子変換して待て」

 

「へいへい……」

 

 千冬に顎で指される方を向くと、離れた場所に巨大コンテナが一台。隆道は溜息を吐きながらもそれに向かい、一夏もそれに付いていく。

 彼には他の者達と同じく装備が送られている。だが、一夏にはそれが無い。後付武装はおろか、換装装備すらも。『白式』には拡張領域が少しも空きが無いのだから当然の事。送った所で無駄。つまり、一夏の役割は彼のサポーターだ。暴走を懸念し、あとで千冬も付き添う事になる。

 変異を続ける彼の専用機──『灰鋼』。勿論、専用の換装装備など有りはしない。どうやっても開発が追い付かないからだ。人材、物資、時間、何もかもが足りない。唯でさえ『白式』の研究もあるのに、これ以上の割り振りは不可能なのだ。しかし、この機会を逃したくはないのも事実。

 度々に変異し続けるIS、量産可能な回復装置、新たに生まれた対人武器。更なるテクノロジーを求める為、IS委員会は会議を重ねに重ねていく。そうして、一つの案が出された。

 専用が無理なら汎用を。故に、政府は以前から開発していた──()()()()()()を送り付けた。

 

「まーたでっけぇコンテナだな。中身は何だ?」

 

「これは……増設スラスターだけ、ですね?」

 

「……はぁ、今度は飛べってのか。何考えてんだくそったれ政府共がよお。……『灰鋼』」

 

 彼はぶつぶつと文句を言いながらも『灰鋼』を展開。コンテナを開き、中身を流し見してソレを直ぐに量子変換する。今までに散々送られてきた後付武装の経験もあってかその辺りはスムーズに進んだ。あとは完了を待つだけ。端からは暇人のソレにしか見えないが、こればかりは仕方無い。

 そんな訳でぶらりと待つ事、約十数分。漸くと量子変換が終わり、残す作業はマニュアル通りに調整してテスト飛行。彼はそういったノウハウが皆無な為、ここからは一夏と共同作業を行う。

 が、しかし。彼はこのタイミングで展開解除、何処かへ行こうとしてしまう。

 

「あれ? 何処へ行くんです? 調整は?」

 

「んな事よりトイレだ。デカイ方のな」

 

「あぁ……。いやでも、一人は──」

 

「心配ねえよ。……そろそろヤバいから行くわ」

 

 聞く耳も持たず、彼は旅館に向かって早歩き。動きからして限界に近いのが丸わかりであった。あれだけ食えば出るものも出るのは間違いない。人間、生理現象だけはどうしようもないのだ。

 取り敢えず連絡だ。そう判断した一夏は辺りを見渡し、教員を探していく。ある程度探した所、見つけたのは群衆から離れている千冬の姿。

 早速連絡だと駆け足で向かう──のだが。

 

「……うん?」

 

「────!! ────────!!」

 

「千冬姉?」

 

 何やら様子がおかしい。いや、おかし過ぎた。

 千冬は一人で怒鳴り散らしている。その片手に持つのは──携帯電話。見るからして通話相手に怒鳴っていた。いったい何事であろうか。周囲の人間も千冬の様子に困惑していた。

 恐る恐る近づくと、千冬はソレをしまい此方に向けて急旋回、ズカズカと接近して来る。怒りと焦りが入り混じった、凄まじく恐ろしい表情で。

 それは正に鬼そのもの。流石の一夏もこれには完全硬直せざるを得なかった。

 

「織斑っ!! おい織斑ぁっっっ!!」

 

「は、はいぃぃぃっっっ!! すみませ──」

 

「柳はっ!? 柳は何処へ行ったっ!?」

 

「え? さ、さっきトイレに行くと旅館に……。多分長くなる、かと……」

 

「……旅館か。先ずは一安心といった所、だな。くそっ、あの馬鹿が……!!」

 

 一安心と言っても、千冬は険しい表情のまま。片手のタブレットを睨み、もう片手の携帯電話は強く握り締めている。どう見てもちぐはぐだ。

 嫌な予感がする。もう何度目なのかわからない感覚が全身に走る。この感覚は──彼に関する事で間違いない、そう一夏は確信した。

 そんな不安が募る一夏を余所に、千冬は必死に辺りを見渡して一人の少女に声を掛ける。

 

「篠ノ之! こっちに来い!! 早くっ!!!」

 

「? は、はい」

 

 装備部品を運んでいた少女──箒は千冬からの怒声にたじろぎつつも此方へ来る。唐突に大声で呼ばれれば尻込みするというもの。

 またしても疑問が増えてしまった。何故、箒を呼んだ。何故、そこまで切羽詰まっている。

 

「な、なんでしょうか……」

 

「ちふ──織斑先生。何か問題が?」

 

「問題も問題、大問題だ!! 奴が来る──」

 

 

 

 その時だ。

 

 

 

 

 

「ちーちゃ~~~~~~~~ん!!!」

 

 

 

 

 

 ()()が現れたのは。

 

 

 

「「「────」」」

 

 三人の呼吸が、同時に止まった。

 声の方へと振り向くと、砂煙を巻き上げながら三人の元に爆発的速度で走って来る人影が一つ。機械染みたウサミミに紫色の長髪。不思議の国のアリスを彷彿とさせる謎のファッション。

 そう、現在行方不明の世界的超重要人物──。

 

「やあやあ! 会いたかったよ、ちーちゃん!」

 

 

 

 ──篠ノ之 束。

 

 

 

 三年前に置き手紙と四百六十七個目のISコアを置いて唐突に失踪を遂げた、誰もが認める天災。その天災が、この臨海学校に乱入してきた。

 臨海学校は当然、部外者以外立入禁止である。しかし、この天災にはその様な事は通用しない。規則であろうが法律であろうが堂々と無視する。

 

「……束」

 

「さあ、ハグハグしよう! 愛を確かめ──」

 

「この馬鹿がぁっっっ!!」

 

「──ぶへっ」

 

 飛び掛かってきた束の顔面を即座に掴む千冬はそのまま流れる様に砂浜に向かって叩き付けた。一切の容赦も無く、全力で。間違いなく他の者が受ければ一撃で沈む。それ程の破壊力。

 しかし、束には全くと効いていないのだろう。飛び上がる様に速攻で砂浜から抜け出し、満面の笑みを三人に見せていく。目の下に隈をくっきり付けた、酷く寝不足な顔で。不気味が過ぎる。

 

「私は言った筈だ!! ここには来るなと!! なのに、なのにお前という奴は……!!」

 

「まあまあまあ、そう怒らないでよちーちゃん。今日は大事な大事な日になるんだしさ」

 

「何……!?」

 

「そ、れ、よ、り、もっ!」

 

 千冬の怒声をひらりと流す束はその瞳を一人の人間へと向ける。その人間は──。

 

「やあ!」

 

「────」

 

「えへへぇ、こうして会うのは何年振りかなぁ。おっきくなったね、箒ちゃん」

 

 ──目を見開き、愕然とする箒。

 微動だにせず、息も最小限。行動も、思考も、何もかもが停止していた。

 

「あれ~? どうしたの? お姉ちゃんだよ?」

 

「──しに、来たんですか……」

 

「うん?」

 

「何しに、来たんですか、貴女は……!!」

 

 だが、それもつかの間。箒の表情は憎しみへと変貌、少女がしてはいけない形相と化していく。殴りたい衝動に駆られ、拳は固くなっていった。

 

 

 

 世界を丸ごと変えてしまった実姉。

 

 

 

 一夏との暮らしを引き裂いた実姉。

 

 

 

 隆道の様な人間を生み出した実姉。

 

 

 

 元から嫌いな人間ではあったが、彼との出会いによってその嫌悪感が一段と膨れ上がっていた。好き勝手に引っ掻き回して、好き勝手に消えて。やりたいだけやって他の事に目もくれやしない。

 ()()が実姉など、箒は認めたくなかった。

 

「…………」

 

「なんとか言ったらどうなんです……!!」

 

 笑顔を崩さない束と、剣幕な顔を止めない箒。そんな二人のやりとりを生徒全員は言葉を失う。身動きが取れなく、ただ眺めるだけでいた。

 しかし、ここで動いたのが一人。教員の真耶。

 

「え、えっと、ここでは関係者以外──」

 

「黙れ牛眼鏡。今は箒ちゃんと話してるんだよ。こっちは忙しいんだからしゃしゃり出て来るな」

 

「──う……」

 

 束の突然たる冷たい言葉が真耶を襲う。

 言葉だけではない。視線が、雰囲気が、全てがかなり冷たいものへと化していった。先程までの人間とは全然違う。まるで別人。

 とても凄まじく、そして──とても冷たい圧。真耶は目を合わせられなくなってしまい、身体が勝手に後退りしてしまう。完全に轟沈した。

 

「ああ、くそっ……。束、せめて自己紹介しろ。うちの生徒達が困っている」

 

「えー。……私が天才の束さんだよん、はろー。はい終わり」

 

 真耶とは違い、千冬とは普通の態度になる束。先程までの冷たい態度は何処へやら、面倒そうな表情で自己紹介した。しかし、これはあまりにも簡潔が過ぎるのではないか。

 呆気に取られていた生徒達であったが、それもほんの数秒程。突然と現れた人物が何者なのかを理解し、ほぼ全体が騒がしくなっていった。

 当たり前だ。ISの開発者にして天才科学者が、世界に追われている人間が平然といるのだから。

 

「もう少しマトモに出来な──いや、もういい。諸君、この馬鹿の事は我々が対処する。無視してテストを続けろ」

 

「酷いなぁ。らぶりぃ束さんと呼んでも──」

 

「黙れっ!! ……おい束、篠ノ之に用があると言っていたな。何をするつもりだ」

 

「……私、に?」

 

 どうやら束は箒に用事があるらしい。用事とは何なのかと、箒は怒りから疑問に変わっていく。

 本来ならばさっさとこの場から消えて欲しい。このままでは彼と束が鉢合う事になってしまう。それは、それだけはどうしても回避したい。

 しかし、三人は束という人間を良い意味でも、悪い意味でも理解している。何を言っても無駄、何をやっても無駄、今は好きにさせるしかない。出来るのは彼の足止め一択だ。

 

「山田先生、柳の所へ行って足止めを頼みたい。この馬鹿と会わせる訳にはいかん」

 

「は、はいっ!」

 

 全力ダッシュで旅館へと向かう真耶。唯でさえ多忙となる一日となるのに、また更に大忙しだ。本当に報われる日が来るのであろうか。

 

「うっふっふっ。……さあ、大空をご覧あれ! 束さんからの贈り物だよ!」

 

 そんな事など一切と関係無しと言わんばかりの束は勢いよく頭上へと指差す。それに従い箒が、一夏が、千冬が、他の生徒達が上空を見上げる。すると──『何か』が急速で落下してきた。

 

「のわっ!?」

 

 唐突に起きた激しい衝撃、そして盛大な砂塵。落下してきたのは──銀色をした、菱形の金属。ソレが今、砂浜に突き立っている。

 これだけでも驚愕ものだが、当然ながらこれで終わりはしない。砂塵が消えて全体が見えた次の瞬間、金属は光の粒子となって中身が露になる。

 

 

 

 そこには、()()()()()()()I()S()が鎮座していた。

 

 

 

 深い紅の装甲に覆われた機体。背後にあるのはスラスターではなく、一対の大型バインダーが。新品のISが故なのか、装甲は太陽の光を神々しく反射させている。それは途轍も無く眩しかった。

 

「じゃじゃーん! これぞ、箒ちゃん専用機こと『紅椿(あかつばき)』! 最新鋭機の束さんお手製ISだよ!」

 

 ──第■世代全状況対応万能型IS『紅椿(あかつばき)』──。

 

 最新鋭機。その言葉に誰しもが言葉が出ない。それは箒も、一夏も、千冬も含まれていた。

 そこら辺の研究員が完成させた機体ならば何も思う所は無い。しかし、束お手製ならば話は別。間違いなく、最高性能を誇る機体の筈である。

 それだけではない。そのISコアはどこから? 皆にその疑問が浮かび、直ぐに答えが出てくる。

 

 

 

 篠ノ之束が、ISコアを増やした。

 

 

 

 束お手製の最新鋭機、そして新たなるISコア。そう、今ここに『登録国籍無しのIS』が現れた。

 どの国もISは喉から手が出る程に欲しいもの。それが一機であろうとも、存在するだけで国家の軍事力を大きく変えてしまう。

 『天災』は──天災たる事を仕出かした。

 

「たば……お前!! 用事とはコレなのか!? 自分が何をしているのか理解しているのか!? 各国の争いの火種になるんだぞ!!」

 

「そんなの知らないよん。……さあ箒ちゃん! しゃしゃっと最適化を始めよう! この束さんが補佐するから! さあ、さあさあさあっ!!」

 

 束は千冬の言葉など一切と取り合わず、笑顔を絶やさず箒に行動を促す。全くと話を聞かない。

 そこは昔と変わらない──のだが。

 

(……束、さん?)

 

 全力全開な笑顔を見せる束だが、それにしては何処か必死であり、何処か焦っている。一夏にはそう見える──いや、そうとしか見えなかった。付き合いが長い千冬も、箒も静かに感じていた。

 様子がおかしいのは明らかだ。一刻も早く箒に機体を渡したいらしい。気づいたのは三人だけ。他の人間は決して気づく事は無い。

 が、しかし。それはそれ、これはこれである。

 

「い、嫌、です……」

 

「……どうしてかな?」

 

「嫌なものは嫌です!! 帰って下さい!!」

 

 箒はこれを拒否した。

 確かに専用機さえあれば一夏との時間も今より増やせるであろう、距離を縮められるであろう。アドバンテージが増える事は間違いない。

 だがしかし、同時にある事を恐れている。

 

 

 

 専用機を得る。即ち"力"を得る事を意味する。

 

 

 

 そうなれば、全てが無駄になる。

 嘗て、自身が振るい、そして恐れた『暴力』。ソレを抑える枷、抑止力。二度と壊しはしない、そう誓ったのだ。同じ過ちは繰り返しはしない。確固たる決意をした。

 そして何よりも束が大嫌いだ、ISが大嫌いだ。その様な人間からIS──しかも専用機を貰うなど屈辱以外のなにものでもなかった。

 だからこそ、箒は全力で拒否する。抵抗する。

 

 

 

 それでも──。

 

 

 

「ふーん。……ねえ、箒ちゃん」

 

「……なんですか」

 

 

 

 ──『天災』には関係無い。

 

 

 

()()()()()()()()()()?」

 

「!?」

 

 束は目にも止まらぬ速さで箒に詰め寄った。

 数メートルもあったその距離が、ほんの一瞬で目と鼻の先。至近距離で目と目が合う。その瞳はとても真っ直ぐで、とても不気味で。

 その眼力を前に、箒は息を詰まらせてしまう。恐怖に支配される。それは、過去に一度たりとも受けた事の無い──凄まじく強烈な、圧。

 

「わかってないなあ、箒ちゃんは。このISはね、箒ちゃんだけのモノなんだよ。乗ってくれなきゃお姉ちゃんはすっごく困るなぁ」

 

「あ……」

 

 全くと瞬きしない束の圧に身動きが取れない。抵抗が出来ない。宛らそれは蛇に睨まれた蛙だ。

 一夏も、千冬も同じであった。今まで見た事が無い束の雰囲気に圧倒されてしまう。止めたいが声を掛ける事すらも出来ない。

 

「男性操縦者襲撃事件に巻き込まれたでしょ? いいや、違う。あれは巻き込まれたんじゃない。箒ちゃんだからこそ一緒に襲われた。わかる?」

 

「う、ぐ……」

 

 千冬以上の、鋭い眼光。口調と釣り合わない、異様で冷たい雰囲気。ソレ等が箒に襲い掛かる。確固たる決意に皹が入り、次第にと砕け始める。

 

「箒ちゃん? お姉ちゃんは凄く忙しいんだよ。だからもう一度言うね。早く乗って?」

 

「────」

 

「乗れ」

 

「……はい」

 

 ソレは砕け、崩れ、そして──折れた。

 これは運命なのだ。どう足掻こうが『天災』の妹である以上、ISに関わってしまう。どこまでも付いて来る。逃げる事は世界が、神が許さない。

 もう、逃れられはしなかった。

 

「……それでは、頼みます」

 

「……それでいいんだよ~。じゃあ始めよう! そら乗った乗った!」

 

 渋々に『紅椿』へと乗る箒を眺める束は即座にコンソールを展開し、次に現れるのは空中投影のディスプレイとキーボードがそれぞれ六枚ほど。膨大たるデータが一気に羅列していった。ソレは熟練の技術者ですら目が追い付きやしない。

 

「箒ちゃんのデータはある程度先行して入れてるから、あとは最新のデータに更新するだけだね。近接戦闘を基礎にして万能型に調整してあるから直ぐに馴染むと思うよん。それと自動支援装備も付けておいたからね! このお姉ちゃんが!」

 

「…………」

 

「えへへ、無視されちった。まあ、いっか」

 

 しかし、束にとってはこれしきの事は朝飯前。喋りつつもその手を休ませずに動き続けていた。

 まるでピアノのソレだ。数秒単位で切り替わる画面全てに目を通しつつ、滑らかで素早い動き。超の付く天才だと、改めて実感させられる。

 

「はい、最適化終了。超速いね。さすが束さん」

 

「ぐ、ぐぐ……」

 

 どうやら終わった模様。それもほんの数分だ。本来なら三十分以上掛かる最適化を、この天才は意図も簡単にやってのけたのである。

 これで『紅椿』は完全に箒の専用機となった。いや、なってしまった。望まない"力"を手にした箒は、ただ歯軋りするしかなかった。

 

「あの専用機って篠ノ之さんが貰えるの……? 身内ってだけで」

 

「だよねぇ。なんかズルいよねぇ」

 

「…………」

 

 ふと、群衆の中から聞こえた二つの声。それは他人を羨ましく思い、その分だけ憎たらしく思う負の感情──妬み。箒は彼女達から目を逸らす。

 箒は代表候補生でも、ましてや彼と一夏の様な特異ケースでも無い。IS開発者の妹、それだけ。その人間があっさりとISを貰えれば、少なからず嫉妬に駆られる人間が出るというものだ。

 と、その時。これに反応したのは意外にも束。

 

「おやおや、歴史の勉強をした事が無いかな? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「「っ……」」

 

 束からの指摘を受けた生徒は気まずさを全開、そそくさと作業に戻っていった。最早、彼女達がどうこう言う事は無いであろう。言った所で再び指摘されるのがオチ、何も言えやしない。

 

 

 

 そう、世界は平等ではない。決して。

 

 

 

 『機会平等』、『結果平等』、『条件平等』、そして──『男女平等』。その全てが不平等だ。どの時代も、それだけは少しも変わりはしない。『勝ち組』か『負け組』か。ただそれだけの事。

 

「あ、いっくん、『白式』見せて。束さんは興味津々なのだよ。ほら、早く早く」

 

「え、あ、はい」

 

 催促される一夏は即座に『白式』を展開する。常日頃の練習成果なのか、その展開時間は中々に大したもの。どこぞの劣等生とは訳が違った。

 

「データ見せてね~。うりゃ」

 

 そう言うなり、束は『白式』の装甲にコードを刺してディスプレイをまじまじと眺めた。ソレに映るのは『白式』の様々なデータ。

 

「んん~……? 不思議なフラグメントマップを構築してるね。見た事無いパターンかな」

 

 ──フラグメントマップ──。

 

 各ISが最適化により独自に発展していく道筋。人間で言う、遺伝子。操縦者の情報を読み取り、そして適応出来る様にする自己進化機能。

 つまり、フラグメントマップは専用機の数ほど存在する。人間と同じ、機体それぞれなのだ。

 

「あの、束さん。何で俺がISを使えるんです?」

 

「ん? ん~……どうしてだろうね。さっぱり。ちーちゃんの弟だからなのかもね。ナノ単位まで分解して調べればわかると思うけど嫌でしょ?」

 

 納得出来ない。確かに可能性有りであろうが、それだと彼がISを動かせる説明が付きやしない。解剖など以ての他だ。まだ死にたくはない。

 故に、一夏は何気無く質問を投げる。

 

「そんなの嫌に決まってるじゃないですか……。なら、もう一人──」

 

「知らない」

 

 またしても、束の雰囲気が変わった。

 食い気味に言い放った束からはふざけた態度がすっぱりと消えていた。とても、暗かった。

 表情もそうであった。笑顔でも冷酷でもない、影を落とした、凄まじく暗い顔。まるで、何かに後ろめたさがあるかの様な。

 一夏、箒、千冬以外の人間には冷酷な筈の束。だからこそ、更なる疑問が三人に生まれていく。

 

「……それより! 箒ちゃん、試運転試運転! 飛んでみて! イメージ通りに動く筈だよ!」

 

「……ええ」

 

 ──瞬間。

 

「おわっ!?」

 

 『紅椿』は凄まじい速度で飛翔。その急加速の余波で発生する衝撃波により砂塵が舞っていく。ハイパーセンサーで姿を追うと既に二百メートル上空で滑空している。あっという間だ。

 あまりにも速過ぎる。これが『天災』お手製の最新鋭機なのかと、ほぼ全員が愕然となる。

 

「ん~良い感じ。じゃあ次は武装を展開しよう。『雨月(あまづき)』と『空裂(からわれ)』を出して~」

 

「…………」

 

 束に言われるがまま武装を呼び出していく箒。その手に現れるのは二本の刀。そう、二刀流だ。

 

 ──射撃性近接ブレード『雨月(あまづき)』──。

 

 ──射撃性近接ブレード『空裂(からわれ)』──。

 

「ささっと解説しちゃうよん。右手の『雨月』は打突に合わせて刃部分からエネルギー弾を射出、連続で相手を蜂の巣! 左手の『空裂』は斬撃に合わせて帯状の攻性エネルギーを展開、便利! ほいそれじゃコレ撃ち落としてみてね」

 

「!?」

 

 そう言うなり、束は唐突に武装を呼び出した。それは巨大ミサイルポット。しかも──十六連。そこからのミサイルが一斉に放たれて箒を襲う。実妹でも容赦無しなのか、この女は。

 

「箒っ!!」

 

「くっ!!」

 

 こうなればやるしかない。そう踏んだ箒は一旦距離を離し、先ずは『雨月』を突き出す。

 そこから放出するのは幾つものエネルギー弾。半分のミサイルを吹き飛ばし、その先に漂う雲を穴だらけにしていった。しかし、まだ半分だ。

 次に繰り出したのは『空裂』の斬撃。右脇下に構えたソレを一回転する様に振るうと、言われた通りに帯状の攻性エネルギーが展開、残り半分のミサイルは木っ端微塵と化した。

 

「す、すげえ……」

 

 瞬く間にと終わってしまった全弾撃墜。爆煙が収まっていく中で堂々たる姿を現す、真紅のIS。

 その圧倒的過ぎるスペックに驚愕してしまう。魅了してしまう。言葉を失ってしまう。

 

「…………」

 

 ゆっくりと砂浜に降りて来る箒は浮かない顔をしていた。一般の操縦者ならば喜ぶ筈のソレを、全くと喜べやしなかった。今や無気力だ。

 "力"を、手にしてしまった。それが何の意味を持つのかは理解している。嫌でもしてしまう。

 もう、『篠ノ之束の妹』だけで済みやしない。

 

「はいっ、これで箒ちゃんも晴れて専用機持ちの仲間入りだね~! おめでと──ぐおっ」

 

「た、ば、ねぇ……!!」

 

 気力を落とした箒に近寄ろうとした束。だが、千冬はこれを阻止。鬼の形相で束の顔面を掴み、握り潰さんとばかりに力を込めていた。

 

「やって、くれたな。やってくれたな……!! いつも、いつも余計な事をして……!!」

 

「い、痛いよちーちゃん。何するの──」

 

「黙れっ!! この……大馬鹿がぁっっっ!!」

 

「きゃん」

 

 そこから繰り出されるのは豪快な投げ飛ばし。束は勢いよく砂浜へとダイブ。顔面が埋まった。人間を軽く投げ飛ばせるものなのかは疑問だが、それを気にしてはいけない。千冬だからこそだ。

 

「あ」

 

 

 

 それよりも、千冬はやらかしてしまった。

 

 

 

「いった~い。もう、酷いよちー──」

 

 

 

 直ぐ様に頭を出した束は──硬直した。

 

 

 

「────」

 

 束だけではない。他の者達も同じく固まった。その理由は皆の視線の先。そこにはいない筈の、いてはならない人間が佇んでいる。

 

「お、織斑先生! 柳君が消えまし──」

 

 旅館からすっ飛んできた真耶も同様に固まる。そう、今まさに注目を浴びているのは『天災』の束でも、最新鋭機を受け取った箒でもない。

 

 

 

「────」

 

 

 

 ──隆道だ。

 

 

 

 何故、彼が今になってここに来たのか。何故、真耶の足止めが効かなかったのか。それは極めて単純で、そして実に下らない事であった。

 彼はトイレを終えたその後、例の岩場で煙草を吹かしていたのである。つまり、サボっていた。どこまでド畜生なのだ、この男は。

 真耶が旅館へと着いた頃には既に外にいた彼。従業員から聞かされた時にはパニック、携帯での連絡は頭からすっぽ抜け、全力疾走で戻って来たという訳であった。少しは冷静を保って欲しい。

 当然、サボっていた彼が事情を知る訳が無い。その結果が──今の状況。最悪、かなり最悪だ。出会ってはならない二人が出会ってしまった。

 

「「「「「────」」」」」

 

 辺りは、静寂に包まれた。

 瞬きもせずに目を見開き、微動だにしない彼。対する束も同じく、全くと微動だにしていない。恐れを知らないであろう『天災』が何故。

 両者の距離、凡そ十メートル。束ならば瞬時に懐に入り込める距離。争いが起きれば間違いなく束が勝つ。彼が勝つ事は決して有り得ない。

 だがしかし、予想は遥か斜めへとなる。

 

「あ、あ、あの……」

 

「────」

 

 ゆっくりと立ち上がる束は、何故か悲痛な顔。

 俯き、目を逸らし、両手は服を強く握り締め、大きく震えていた。距離を離す事も、縮める事も無く、ただその場で縮こまるだけ。何一つとして動こうとしてない。それは怯えの様に見えた。

 束の変わり様に一夏達は愕然とするしかない。身内に甘く、他人には非常に冷酷な『天災』が、たった一人の青年にすぼんでいる事実に。

 

「あ、う……。え、えと……」

 

「────」

 

「……たっくん──」

 

「!!」

 

 ──瞬間。

 

「!?」

 

 束の頬を、物体が高速で掠めていった。掠めたソレは真っ直ぐに飛んでいき、高い金属音と共に岩に突き刺さる。その正体は一本の金属矢。

 確認したその瞬間、全員が感じ取る事になる。それは彼から滲み出る──。

 

ぐ……! くそったれが……!!

 

 彼は、いつの間にか武器を構えていた。

 右手には大型たるコンパウンドクロスボウが。ソレを支える左手には逆手持ちのマチェットが。教員だけが知るその武器に、生徒達はざわつく。いったいどこからソレを出した、ソレは何だと。

 しかも、それだけに留まりはしない。

 

ぐ、ぎぎ……

 

 彼の首輪は点滅している。それも最大限に。

 溢れる『どす黒い何か』、首輪とタブレットの両方から鳴り響く無機質たる電子音。その二つが合わさり、皆の背筋を凍らせていく。

 電子音の意味は全員が理解している。このまま彼が機体を展開してしまえば大惨事確定だ。

 が、それより。一夏達が気になったのは──。

 

その名で、呼ぶんじゃ、ねえ……!!

 

「……た──」

 

呼ぶなって言ってんだろうがっっっ!!!

 

「…………」

 

 咆哮に近い怒声をする彼に、更に縮こまる束。

 二人のやり取りは正に知り合いのソレである。だとしたらいつ、どこで知り合ったのか。

 束は他人に興味を持たない筈だ。冷酷な筈だ。にも関わらず何故、彼と知り合いなのだ。何故、そこまで怖じ気づくのだ。

 

「……あの、ね。そのISは──っ!?」

 

 何かを言い掛けたその瞬間、束は急激に後退。その場に巨大な物体が轟音と共に突き刺さった。物体の出所は正面から──ではない。

 砂塵が消え、露になった物体はIS用の片手斧。そう、この武装を持つのはたった一人だけ。

 

…………

 

 近寄って来るのは一人の少女──日葵その人。しかし、その顔はいつものおちゃらけた顔でも、私闘にて垣間見た悍しい破顔でもなかった。

 

「ひま、ちゃん……」

 

何がひまちゃんだクソ兎……!!

 

 

 

 それは『憎悪』、『殺意』だ。しかも、彼とは比べ物にならない──真っ黒が過ぎる負の感情。

 

 

 

やる事だけやって帰ればいいものを……!! そんなに殺されたいのか……!!

 

「…………」

 

 いつもの不気味な笑顔も、いつものしまりない口調も、今の日葵には存在しなかった。あるのはたった一つの──『悍しいどす黒い何か』だけ。ソレが周囲に絶大なる恐怖を与えていく。

 正しく悪魔だ。全生徒が、全教員が息を飲み、後退りしてしまう。唯一と動じないのは束だけ。だが、真耶に向けた冷酷な雰囲気は微塵たりとも無い。恐らく、日葵とも知り合いだ。

 

終わったならとっとと()()()()に帰れっ!! でないと全部壊すぞっ!! ねぇ、み──」

 

「やめてっっっ!!」

 

…………

 

「それは、やめてよ……」

 

……はっ。臆病者が

 

 最早、訳がわからなかった。

 元々謎だらけな人間ではあったが、またしても謎が増えてしまった。様々な表情を見せる日葵はどれが本当の姿なのか。束にそれ程までの殺意を向ける真意はいったい何なのか。

 束も謎だ。身内にする甘さは無く、かと言って他人にする冷たさも無い。見えるのは正に恐れ。間違いなく、束は何かを恐れている。

 と、その時。事態はまたしても急変。

 

「たっ、大変です! お、おお、織斑先生っ!」

 

「──っ!? ……どうした?」

 

「こ、こっ、これをっ!」

 

 唐突たる、真耶の切羽詰まった声。我に返った千冬は何事かと向き直ると小型端末を渡される。これ以上の問題は勘弁願いたい。千冬はそう心で訴えるのだが──画面を見て表情が曇っていく。それは、今の状況より深刻なものであった。

 千冬と真耶は小声でやり取りをするが、生徒の視線に気がついてか手話でやり取りをし始める。一夏はソレに既視感が。

 

(普通の手話、じゃない……? アレは千冬姉が現役時代にしていた……)

 

「で、では他の先生達にも連絡してきますっ」

 

「了解した。──全員注目!」

 

 全員に行き渡る、凛と響いた千冬の声。全員がその方を向き、何事かと一斉に首を傾げていく。

 どうせ自分達にはあまり関係の無い事だ、そう思っていた一同であったが──。

 

「現時刻よりIS学園教員は特殊任務へと移る! 本日のテストは全て中止。各班、直ちに片付けて旅館に戻れ! 連絡があるまで自室待機だ!」

 

「え……中止?」

 

「なんで? 特殊任務?」

 

「意味、わかんないんだけど……」

 

 不測の事態に、当然と生徒達は騒がしくなる。しかし、今は彼女達に構っている暇は無いのだ。故に、千冬は持ち前の一喝で黙らせる。

 

「とっとと戻れっ!! 許可無く室外に出た者は身柄を拘束する!! いいな!!」

 

「「「「「はっ、はいっ!」」」」」

 

 完全に脅迫のソレだが、今は一刻も争う事態。千冬の怒号に怯えた生徒達は指示通りに片付け、旅館へと戻っていった。

 

「専用機持ちは……柳以外、全員集合! 織斑、オルコット、デュノア、凰、ボーデヴィッヒ! それと……篠ノ之と篠原も来い」

 

「……はい」

 

「……はーい」

 

「俺は柳さんを送ってから行きます」

 

「頼んだ」

 

 未だ項垂れている彼を引き摺っていく一夏と、千冬の後へ迅速に付いていく専用機持ち一同。

 当然、砂浜に残されたのは束一人──。

 

「…………」

 

 専用機持ち達が歩く中、足を止めたのは日葵。ソレに誰しもが気づかず、旅館へと消えていく。

 俯いたままの束と、振り向く事もしない日葵。少しの時間が流れ、先に口を開いたのは日葵。

 

「……さっき、せんせー達がした手話。アレさ、私知ってるんだよね。覚えるの大変だったなぁ」

 

「……そう、なんだ」

 

 日葵の口調はいつも通りに戻っていた。だが、後ろ姿の為に表情は見えやしない。

 

「レベルAの特殊任務。ハワイ沖で試験稼働していた第三世代型軍用ISの暴走。ふぅん……」

 

「…………」

 

 束の言葉を待たずに、日葵は言葉を続ける。

 

「……()()()()に機体を渡したこのタイミング。あぁ、そういう事ぉ? いやぁ絶好な晴れ舞台になる──いや、違う」

 

「……あの、ひまちゃ──」

 

「良いよぉ? 今回、私は手出ししないからぁ。好きにすればぁ? ……でもねぇ」

 

 そう言って、日葵は束と向かい合う。その顔は──凄まじい『得体の知れないどす黒い何か』。

 

それ以外は絶対に許さない。お前の魂胆なんか見え見えなんだよ。私が気づかないと思ったか

 

「っ……」

 

いいか、よく聞けクソ兎。余計な事してみろ。その時は……

 

 日葵は一旦言葉を区切り、旅館へと向き直す。そして──。

 

 

 

 

 

今度こそぶっ殺してやる

 

 

 

 

 

 ──捨て台詞を吐いて、消えていった。




オリ主あまり出てないし、話が進まないってマ?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。