IS~傷だらけの鋼~   作:F-N

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お待たせしました。以前のように文字数を一万五千以下に抑えて更新。てか二万文字は気が狂う。もっと話進めたいけど今回はこれが限界です。

※やっぱり謎多め。今章の最後辺りまでには回収するから許して。


第五十四話

 時刻、十三時半。

 隆道は歩く。旅館を囲う草木の間を掻い潜り、偶然にも見つけた裏口から外へ。建物から出ても警戒を一切解かず、『狩り』によって身に付けた忍び足で慎重に進んでいく。

 最初こそ忍び足だったものの、追手は来ないし人の気配が一切無い。それがわかるや否やそれも止め、砂利道特有のザクザクとした音を鳴らしてだらしなく歩き進んでいった。

 今の彼に目的なんて無い。ただひたすら歩く。何も考えず、足だけを動かす。

 

「…………」

 

 彼の手には一丁の拳銃、ズボンには捩じ込んだ複数の弾倉。もう一丁は何処にも見当たらない。恐らくは弾薬だけ抜いて捨てたのだろう。弾倉は部屋に転がった物をかき集めた模様。

 人相は虚ろな眼で最悪、格好も血塗れで最悪、持ってるものも凶器で最悪、何から何まで最悪。凶悪犯罪者と見間違われてもおかしくなかった。尤も、あまり間違ってはいないのだが。

 

「……はぁっ」

 

 それなりに歩いて暫く。もう疲れたのか、彼は溜息を吐き出しつつ立ち止まって近くの丁度良い岩に腰掛けた。俯いて再び溜息、身体を揺らして項垂れる。かなり具合が悪そうである。恐らくは重度のストレスによるものであろう。

 拘束の件に謎過ぎた襲撃者、そこから教員との戦闘に自害。幾ら蘇生するとはいえ、自らの命を絶つというのは想像を絶するストレスの筈。彼が人の心を保っていられるのは芯が強いか、または既に狂っているからか。どちらにせよ、誰も彼を理解出来ないであろう。

 数分程であろうか。暫く唸るしかなかった彼は気を紛らわせる為か、手元の拳銃を弄り始めた。というか、何故に持ち出したのか。ここが日本である以上は弾薬なんて調達出来ないというのに。それ以前の問題だというのは言うまでもない。

 

「……こんなモノでなーにが出来んだってんだ、クソボケ共がよ。せめてゴツいの持ってこいよ、ショットガンとかアサルトライフルとかよ……。ああ、無駄に最新なのも腹立つ……。新しければ良いってもんじゃねえだろうが……」

 

 ぶつぶつと文句を垂れながらも拳銃をくまなく調べ、一つ一つ操作を確認していく。ある程度に調べ終わったところで次の行動に。

 弾倉を抜き、スライドを引き、引き金を引き、弾倉を入れ直す。金属音が気に入ったのか何度か繰り返し、飽きたかと思えば次は別の弾倉を取り出して保持したまま弾倉の入れ替えをし出す。

 タクティカルリロードと呼ばれる装填手法だ。弾倉を捨てずに手元で保持したまま入れ替える、最装弾数を可能な限り維持する為の戦術である。上手くこなすにはある程度の練習が必要不可欠。ISの知識はからっきし駄目駄目なのにこういった知識はあるようだ。一体何処で覚えたのやら。

 

「……やりづら。ったくよ……」

 

 フルサイズの軍用ではない、女性向けであろうサブコンパクトの護身用は隆道に合わなかった。小指はグリップから完全にはみ出てしまって相当握り辛そうではあるが、それでも彼は続ける。

 ぎこちない手つきで交換を何度でも繰り返す。放心している様な顔つきだが手元は堅牢に動く。何が彼をそこまで駆り立てるのか、止める様子は少しも無かった。

 

「鈍ったなこりゃ。暫くやってねえしな……」

 

 ここから隆道の動きは目を疑うものになる。

 数十回やって慣れたのか、急激に速くなった。三秒に一回程のペースだった動きがニ秒に一回へ縮まり、次に一秒に一回のペースへと縮まった。既にぎこちなさは無く、一寸の狂いもない正確な弾倉交換を繰り返している。最早、彼は手元すら見ずに行っていた。鈍ったと言ってはいるが既に熟練の領域だ。身体が覚えているのだろう。

 カチャンカチャンと金属音が続く。今や完璧と言える動作にも関わらず、それでも続けていく。遂に一回の弾倉交換は一秒を切り、一連の動きはプロ顔負けと言えるレベルにまでなっていった。

 本当に何処で覚えたのか。IS学園でも銃火器の特性を理解する為に座学やら実習はあるのだが、それはISの武装に関係するから。彼が行っている生身での戦術はまず教わらない。代表候補生なら十分に有り得る話ではあるが、一般生徒──花の女子校生はその様なニッチな知識など知らないし知ろうともしない。いるとしてもそれは極少数、ミリタリーマニアや物好きな人間ぐらいである。もしかしたら彼はそういう類いなのかも。

 そうこうと繰り返す内に彼の頬は緩んでいく。やっと満足でもしたのか拳銃を手放し、手を休め天を見上げて──直ぐに険しい顔に変わった。

 

「……くそったれ」

 

 所詮、気晴らしは気晴らしでしかなかった。

 社会が嫌になる。周りが嫌になる。自分自身が嫌になる。本当に、心底──嫌になる。

 

「何がしてえんだか……」

 

 本当に何がしたかったのか。拘束を抜け出し、教員を攻撃し、ISと拳銃を持ち出して逃げ去る。今思えばあまりにも愚か過ぎる行為だ。

 いつもそうだ。後先の事など考えず、その時の感情に身を任せて暴れてしまう。あの時、何故に教員を攻撃したのか自分でもわかってなかった。全てを諦めた筈なのに身体が勝手に動いていた。教員に対する罪悪感は微塵たりとも無いのだが、自身の暴走度合いには嫌気を感じる。

 本当に今度こそお終いだ。自由の身とは無縁の国際指名手配犯が確定した。自業自得だが、もう安心して暮らせる場所は無くなってしまった。

 

「……は、ははっ。はっはっは……」

 

 ふと、自身の首にある『灰鋼』に触れる。

 あれ程憎んでいるのに、あれ程嫌っているのに捨てようともせず今でも身に付けている。人生を大いに狂わせた元凶の元凶だというのに。

 何故コレを持ち出したのか自分もわからない。いつもの様に投げ捨ててしまえば良かったのに。身を守る為だと言えば尤もらしいが、結果的には余計に自分の首を締めるだけの要因でしかない。ベクトルこそ違うが、結局のところは自分も力に溺れた畜生共と同類なのだろう。そう思うと一周回って逆に笑えてしまった。

 

 

 

 ──何なんだ。

 

 

 

 ──何がしたいんだ、何がしたかったんだ。

 

 

 

 ──俺は──俺が、わからない。

 

 

 

 今更捨てても無駄である。暴行、盗難、脱走と犯罪要素があまりにも多過ぎる。しかも盗難したモノがモノ、先に待ち構える未来なんて今以上に録なものではないに違いない。家には帰れない、友には会えない、安息など二度とないであろう。

 ここまでやらかしたのだ、今更後に引けるか。なら、自身に残された唯一の選択肢は──。

 

「テロリストにでもなれってか……?」

 

 ──抵抗への道。

 確立した自身の思想を命尽きるまで貫き通す。このとち狂った世界を力の限りに暴力で訴える。地獄を築き甘い蜜を吸う畜生共に地獄を見せる。誰が立ちはだかろうと関係無い、最後の最後まで戦って一人でも多く道連れにする。

 我ながら最低な選択肢だと思う。その選択肢を取れば悪党の悪党、正真正銘の人でなしだ。

 

 

 

 

 

 ──いや……まさか、この為にISを……?

 

 

 

 

 

 なら自然と納得出来る。世界を相手に戦うと、地獄を見せつけてやると、全てを壊してやると、自分は無意識の内に意を決していたのか。だから忌み嫌うISを捨てなかったのか。嗚呼、そうか。目的は既にあったのか。

 考える度に最たる悪党の思考へと堕ちていく。内側に潜む『どす黒い何か』は表面化していき、狂気に満ち溢れた笑顔が垣間見えていく。

 それも良いのかもしれない。元より録でもない人生を送れなかったのだ、堕ちるしかないならばとことん堕ちてやろうと隆道は嗤った。

 

 ──お? やーっとその気になったか? なら早くやっちまおうぜ。思い立ったら吉日だろ? 大丈夫だ、俺達ならやれるさ。

 

「……はっ、やってやろうじゃねえかこの野郎。んじゃ手始めに権利団体の連中。そっから──」

 

 

 

 ──が、その一線は越えず。

 

 

 

「……馬鹿じゃねえの。何考えてんだよ」

 

 ──……駄目、か。仕方ねえ、また今度な。

 

 幾つも顔が浮かび上がる。それが隆道の決心に待ったを掛けた。それ等全ては隆道を黒き思考を埋め、抱える狂気を上書きしていく。

 一夏達が浮かぶ、『髑髏』の仲間達が浮かぶ。そして次に父親が浮かび、ハルが浮かび、光乃が浮かぶ。そして、最後に灰髪の少女が──。

 

「誰だお前!?」

 

 つい大声でツッコんでしまった。何だ今のは。全然知らない人間がナチュラルに混ざっていた。

 記憶を遡っても灰髪の少女と知り合った記憶が無い。何処かで会ったような気がするが、あんな目立つ特徴なら嫌でも記憶に残る筈だ。とうとう記憶までイカれたかと彼は頭を押さえてしまう。彼の思考は謎の少女で満たされてしまった。

 

「はあ……? マジで誰だコイツ……?」

 

 真っ黒な思考を完全に上書きされてしまった。何処で会ったのかと思い出そうにも出てこない。抱える悩み等を全てシャットアウト、考える人のポーズ姿で記憶を捻り出そうとしていた。

 危うく隆道がテロリストになるところだった。よくやった、超ファインプレーだぞ『○一九』。

 

「っあー……。んー……?」

 

 延々と悩みに悩み、彼は朧気ながら思い出す。確か、三途の川を彷徨ってた際に見掛けた気が。あの時は父親とハルの存在があまりに大き過ぎて彼女の存在など心底どうでもよかった。というか秒で記憶から消した。いなかった事にしていた。

 死に物狂いで頑張っても雑な扱いは変わらず。流石に哀れ過ぎるぞ『○一九』。

 

「灰色の髪をした子供……。一度、あの時……」

 

 ──! は、はいはーい! 私!! 私!! それ私!! わーたーしー!!

 

「ああそうそう。そんな声だったな。……は? ん? ……ったく、()()と会話なんてマジもんの気狂いじゃねえか……。何なんだよお……」

 

 ──ん!? え、もしかして聞こえてる!? もしもし!! もっしもーし!!

 

「くそったれ、とうとう話し掛けてきやがった。最近多過ぎんだろ……。もしもしじゃねーよ……電話じゃねーんだからよお……」

 

 ──はいぃ!? いや聞こえてるじゃん!! 絶対聞こえてるって!! ていうか今までずっと聞こえてたの!? 無視してたの!? 嘘ぉ!?

 

 声が聞こえる。ヘッドホンでもしてるかの様にかなり近かった。目の動きだけで辺りを見回すも誰一人としていなく、通信も当然と来ていない。隆道はまたコレかと天を仰いだ。

 声が聞こえたのはいつ頃からだっただろうか。思えばI()S()()()()()()()()()()()()()()だったか。正確な時期はもう覚えていない。

 最初は声も呟き程度に小さく、周りが喧しいが故に気にはならなかった。しかし、自分一人しかいない時も聞こえる事に気づく。コレは幻聴かと密かに悩みが増えていたのだ。

 正直気味が悪かったが害は無かったので今まで無視を貫いてきた。だが、返事してしまった故か遂に話し掛けられているように聞こえてしまう。もうやだ、幻聴に応えた自分をぶちのめしたいと耳を塞ぎ、彼は怯える子供のように踞った。

 

 ──聞いてー!! 敵がこっちに来るの!! たっくんを狙ってるのー!!

 

「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁこれは幻聴これは幻聴これは幻聴これは幻聴これは幻聴幻聴幻聴……」

 

 ──違う違う違う!! 幻聴じゃないから!! 私だよー!! 『■■』の■■■■だよー!!

 

 うるさい。本当にうるさくて頭に来る。

 急激に内容が全く頭に入らなくなった。いや、入れたくないのが正しいのか。部分的にノイズの様な雑音が混ざった声は寒気と頭痛を起こした。ソレを理解するな、ソレを受け入れるなと身体が警告を発して拒絶反応を示す。鬱陶しいといった不愉快は憎たらしいという憎悪へと悪化した。

 隆道は絶対に、決して、断じて認めやしない。ISに意識があるなどと頑なに信じやしない。彼の意思だけでなく、本能がソレを拒絶する。

 

「うううぅ……。頼むから、やめてくれぇ……。どっか行ってくれぇ……」

 

 ──だーかーらー幻聴じゃないってばー!! おーい!!

 

「だからお願いだぁ……もう、や゛め゛……」

 

 ──病気じゃないから返事してー!! おーいたっく──。

 

「っせえんだよこの野郎っっっ!!!」

 

 キレた。いきなりブチギレた。

 隆道は勢いよく立ち上がり、腰掛けていた岩を己の全力を以て殴った。感じるのは壮絶な痛み。腕に鈍痛が走り、拳は皮膚が裂けて血が滲む。

 常人ならばまず悶える。だがしかし、今の彼は痛みよりも怒りが遥かに勝っていた。

 

「何だよ! 何なんだよくそぉっ!! どこまで俺を追い詰めれば気が済むんだぁっっっ!!! 人の、気も、知らねえでよぉぉぉっっっ!!! うるせえってんだよコ゛ラァァァッッッ!!! 俺をっっっ!!! 『たっくん』てっっっ!! 呼ぶなあああぁぁぁっっっ!!!」

 

 痛みなど構わず殴り続ける。幻聴が消えるまで徹底的に。この際拳が潰れても構わないぐらい。なのに苛立ちは無くならず、更に加速していく。

 

「フン゛ッッッ!!」

 

 今度は頭を打ち付けた。

 目眩を起こして視界の色が反転する。しかし、それでも隆道は止まらない。荒れ狂ったかの様に頭突きを繰り返す。

 まっさらだった岩は真っ赤に染まる。それでも一向に止まらず、まるで親の仇の様に何度も頭を打ち続ける。最早、感覚は無くなったのだろう。もう見ていられない酷過ぎる光景だ。

 

「ア゛ッ……ゴッ……ォッ……!!」

 

 本能が拒絶し否定する以上、『○一九』の声が届く事は絶対に無い。何をしようと長年に渡って刷り込まれた価値観と症状が邪魔をしてしまう。余計に追い詰め、傷付け、そして壊してしまう。最後は──精神が耐えられず"死"に至る。

 

 ──…………。

 

 

 

 『○一九』は涙を浮かべ、そして理解する。

 意思疎通。即ち、隆道を殺すのと同義なのだ。彼女の願いは──叶わないのだ。

 

 

 

「──ッッッ!! ──ッッッ!! ……?」

 

 声は、いつの間にか聞こえなくなった。

 試しにと耳を澄ましても何も聞こえやしない。漸くと忌々しくもうるさい幻聴は消えた。

 やはり暴力。暴力が全てを解決する。

 

「っ……。あ゛ぁぁぁい゛って゛え……」

 

 ただし、その代償は高く付くのだが。

 感覚が戻り、襲い掛かるは悶絶する程の激痛。幾ら慣れてるとはいえ痛いものは痛いのである。当たり前だ、サイボーグじゃあるまいし。

 

「あ゛ー……何か、もう、どうでもいいわ……」

 

 脱力。急に物事がどうでもよくなった。

 このまま大人しく捕まってしまおう。その方が多少なりとも気が楽になる筈。何をしたところで悪い方に行くのなら何もしない方が良いだろうと諦めの境地に入った。本当何なんだこの気狂い、病を抱えているとはいえ情緒不安定が過ぎる。

 

「ほーら、柳隆道さんはもう逃げませんよ……。煮るなり焼くなり好きにしろよ畜生が……」

 

 血だらけと化した岩に再び腰掛け、捕まるまで何して暇でも潰そうかと、隆道は考えに耽った。様子からして自分から出向く考えは無いらしい。あれだけ周りに迷惑掛けてもコレなのだ。本当にどうしようもない奴だった。

 

「…………」

 

 あまりに暇と感じたか、隆道はふと『灰鋼』を部分展開。ヘッドギアだけ装着しディスプレイを眺め始めた。拳銃弄りは完全に飽きたらしい。

 常に変異するこのISは目を離す隙に何かしらの変化がある。そもそもの話、管理されていた筈のコレがどのようにして自分の元に帰ってきたか。確かめるべく、彼はしかめっ面で増えたであろう項目を一つ一つ探し出す。

 

「……?」

 

 ──『WALKER』online──。

 

(やっぱり増えてんな。今度は何な……おお?)

 

 またしても知らない項目が増えていた。だが、ソレは今までに作られたシステムや武装とは訳が違い過ぎていた。

 カテゴリは何と『特殊兵装』枠。表示を見るに今も展開中らしく、自分の側にいる。見渡してもそれらしいものはなく、此方から操作しようにも不可能な模様。展開解除も出来そうになかった。さっぱりとわからない。バグか?

 それ以前におかしい。記憶によれば『灰鋼』は第二世代の筈である。これも変異によるものか。

 

WALKER(ウォーカー)……歩行者? 何だそれ)

 

 名前も意味がわからず。ISと全く結び付かず、これっぽっちも連想が出来ない。不思議の塊だ。見てくれも仕様も用途も不明なのは何故なのだ。そもそもコレは武装か? やはりバグに思える。

 

「……めんどくせ」

 

 結論。隆道は考えるのをやめた。

 これ以上は時間の無駄だ。バグでなかろうと、どうせ他のと一緒。限定的な状況でしか使えないゲテモノに違いない。彼はそう決め付けて今度は別の項目に目を移していく。

 機体そのものはいつもの高速修復で万全状態。先の戦闘で武装は幾つか大破したが、思い入れがある訳ではないのでどうでもいい。量子変換した換装装備はあるが──使う事はまず無いだろう。取り扱い方は一応目を通したが案の定ゲテモノ。使用者を殺す気かと思う程に酷い代物であった。コレは見なかった事にしよう。

 

(あとは……コレねえ……)

 

 それと、もう一つ気になった項目が。

 

 ──『コード・デッド』⅓──。

 

 一次移行した際に発現したコレ。使えないのは変わらないが横に数字が増えた。これも不明だ。記憶違いでなければ元々無かった筈だが。

 死亡回数、ではない。明らかに数が合わない。別のカウントだとしても心当たりは少しも無い。回数制限ではなさそうだが果たして。

 

「わかんね。そもそも専門じゃねーし無理だわ」

 

 結局はわからず終い、無駄足に終わった。

 だいたい無理な話だったのだ。録にISの知識を覚えようともしない頭クルクルパーなクソガキが謎過ぎるISを解き明かそうなど。どの研究員でも匙を投げてデータ採取頼りなのだから出来る訳がなかったのだ。至極当然の事であった。

 とにかく、これで本当にやる事が無くなった。あとは捕まるまで大人しく──。

 

「…………」

 

 否。一つだけ目を通していないものがある。

 それは『位置情報』。何故だか激しく主張するその項目だけは意図的に避けていた。

 自分には関係無い、戦いたい奴が戦えばいい、関わるのはもう御免だと自分に言い聞かせて目を背けていた──のだが。

 

「……見るだけ、見るだけだ。俺には関係ねえ」

 

 引っ掛かりが消えず、堪らずに見てしまう。

 どうでもいい輩が大半だがシャルロットだけは気になる。彼女が特別な人間という訳ではないが何かしら意識しているのも事実。無事でいろと、もう終わっててくれと彼は切に願う。

 ここで一応断言するが、隆道はシャルロットを異性として意識していない。これっぽっちもだ。今も知人以上友達未満でしかない。これは酷い。

 

「……んあ?」

 

 見て思ったのは幾つかの疑問。

 一つは一番近い花月荘。動きが無い『白式』と『紅椿』はわかるとして、その近辺にて微々たる動きがある『華鋼』と『UNKNOWN』。そして、旅館を囲む様に表示された()()()()()()()()()。これ等も全てが『UNKNOWN』。此方に関しては潜伏モード状態。教員の訓練機ではなさそうだ。 心なしか、此方に向かっているような気がする。人が歩くレベルでかなりゆっくりと。

 二つは例の軍用IS周辺。代表候補生達の反応の他に熱源反応が二つ。これも『UNKNOWN』だ。この二機は援軍か? 海中にいるようだが。

 それと──いつの間にやら近くにいる未確認の生体反応が一つ。

 

(ちっっっかっ。何だコイツ……──っ!?)

 

 ソレは真後ろにいた。距離は十メートル以下。まさか、新手の襲撃者か。

 隆道はすかさず拳銃を拾い上げて真後ろの森に突き付ける。一見は誰もいないように思えるが、彼は一点──草むらを睨み付けて構えたまま。

 ハイパーセンサー越しに見える、屈んだ状態で此方を向く人型のシルエットが一つ。人間なのは間違いないが動きが全くと見えない。此方に声を掛けてこないなら関係者ではないだろう。なら、やはり襲撃者か。

 それにしても何処か不自然。襲って来る気配が微塵たりとも感じない。何処か震えている様子。もしや、隠れ慣れていないのか。

 睨んでも、銃を突き付けても動こうとしない。バレていないとでも思っているのか。だとしたら無駄だ。ISならば直ぐに見つけ出せるし、何よりお粗末。自分ならもっと上手く隠れられる。

 此方から声を掛けても良いが──それは癪だ。コソコソしているのが気に入らない。故に──。

 

 

 

 ──『髑髏』の心得その一、先手必勝──。

 

 ──『髑髏』の心得その二、躊躇無し──。

 

 ──『髑髏』の心得その三、容赦無し──。

 

 

 

 ──此方のやり方で炙り出す。

 

「びゃあっ!?」

 

 試しにと一発だけ発砲、乾いた音が炸裂すると共に拳銃弾は草むらへと一直線に飛ぶ。潜む者は大の字に仰け反って尻餅をついた。うわマジか、誰かもわからないのに躊躇無しに撃ちやがったぞこの気狂い。これがあの凶悪な武装集団を束ねるリーダーか。本当に恐ろしい奴だ。

 手応え有り。そうとわかった隆道は反撃される前に追撃を──。

 

「わ゛あ゛ぁぁぁ待って待ってぇっっっ!!! 撃たないでくださいぃぃぃっっっ!!!」

 

「!?」

 

 驚愕。ソレは唐突に飛び出してきた。

 姿を現したのは歳下であろう少女。草むらから飛び出すや否や勢いよく両手を上げて降参の意を見せた。凄まじく涙目で弱気過ぎる姿勢、コレが襲撃者か? 隆道はとてもそうは思えなかった。それに、今撃たれた筈では? その奇抜さは?

 

「?????」

 

 何故、奇抜か。それは彼女の格好であろう。

 このくそ暑い夏の外で場違い過ぎるメイド服。夏服だとしても有り得ないくらいにミスマッチ。ここは日本だぞ、コスプレとしか考えられない。

 それに、よく見ると外国人だ。流暢な日本語で直ぐに気づかなかったが顔のパーツが正にソレ。もしや、単なるコスプレ趣味の外国人なのか? だとしてもここにいる理由が無い。迷子なのか?

 完全に出鼻を挫かれた。撃つ気はとうに消え、銃口を少しずつ下ろす。見たところ怪我は無い、弾丸は外れたのだろう。危ない危ない、無関係な人間を撃ち殺すところであった。しっかり照準を捉えた筈なのだがこの際気にしない事にした。

 

「あっ……。え、ええ、えと、そのぉぉぉ……。どど、どうも、こんにちは……」

 

「……関係者、じゃねえよな。何でこんなとこにいんだ。……まあ、何だ。撃ったのは悪かった。取り敢えず……何も聞かねえで帰った方が良い。この辺りは今すげえめんどくせえ事──」

 

 ──その時。

 

 

 

 ──未確認熱源反応感知──。

 

 ──『猟犬』起動。……IS反応有り──。

 

 ──識別コード不明。コアネットワーク巡回、ISデータ照合。……該当無し──。

 

 ──操縦者不明。コアネットワーク巡回継続、登録操縦者データ照合。……該当無し──。

 

 ──データプロテクト確認。解析不可能──。

 

 

 

 不意に目前に現れたディスプレイ。武装とISを探知するシステムが起動し、異国の少女を対象にデータが表示された。所々意味不明だが──。

 

「? IS反応──な!? てめ、IS持ちか!! やっぱ新手──」

 

「ごめ゛ん゛な゛さ゛い゛ぃぃぃっっっ!!!」

 

「あっ!?」

 

 少女は急速にUターン、一目散に逃げ出した。少女──いや、人間とは思えない程の超絶爆速は隆道が拳銃を構え直すよりも速く、いつの間にか森の奥へと消えていく。正に電光石火。

 思考するより圧倒的な速さであった。対処する前に逃げ切るとはなんたる逃げ足の速さなのか。獲物を逃がさない自信はあるが、アレは無理だ。

 

「な、何だ、アイツ……」

 

 隆道は謎の少女に畏怖を感じていた。

 意味不明にも程がある。隠れていたのは何故、奇抜な格好は何故、ISを所持していたのは何故、怯えた挙げ句逃げたのは何故と混乱が止まない。一般人でも襲撃者でもなさそうな彼女は一体。

 天災といい軍用といい襲撃者といい意味不明のコスプレ少女といい、今日は何かと厄日過ぎる。ここまでくると何かしらの繋がりでもあるのかと疑ってしまう。厄介事は幾度もあれ、畳み掛けは流石に呪いのレベルだと思わざるを得なかった。

 そういえば、旅館に現れた襲撃者はどうした。あの『四本脚の何か』の行方は?

 

「……ったくよ、今日は一段と訳わかんねーな。もうついてけねーよ、腹一杯だっつーの。マジでいい加減にしろ──」

 

 愚痴るその時、『灰鋼』が新たな反応を掴む。またかよ、次は何だ、謎はもう飽きたぞと隆道は呆れ果てながらディスプレイに目を向けた。

 

「はいはい、今度は何ですか……ああ!?」

 

 反応を示す位置は花月荘の一室に。拡大すると出所は──大破状態の『白式』から。

 

「織斑、お前……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻。『銀の福音』交戦領域。交戦開始から十七分経過。

 

「回避回避ぃぃぃっっっ!!」

 

 海上にて咲き乱れる無数の光の粒。無差別かに見えるソレは舞い続ける少女達を襲う。

 鉛の弾丸とは比較にもならない高速たる光弾。海面は爆撃の連続で爆ぜ、何本もの水柱が立つ。辺りの雲は殆ど吹き飛び、太陽が全てを晒す。

 蒼の光、赤黒の光、橙の光、黒の光、銀の光。青天井を飛び交う光景は見る者を魅了させよう。当の本人達にとっては地獄そのものなのだが。

 

「ごめん被弾した!! シールド一枚大破!! エネルギー五割!! カバーッッッ!!!」

 

 数多くの光弾を回避しきれず、シャルロットは僅かに被弾。罅まみれだった盾の一枚はとうとう砕け散るように破壊されてしまい、エネルギーは一瞬で大きく削られていく。直ぐ後退する彼女を逃がすまいと『銀の福音』は攻撃を仕掛ける。

 一瞬で両者の間が狭まる。既に『銀の福音』は振りかぶって攻撃体勢に入った。逃げられない。

 

「こっち来た!? 駄目だ!! 間に合わ──」

 

「させるかぁっっ!!!」

 

 銀の爪が振り下ろされる直前でラウラが間に。『プラズマ手刀』で間一髪防ぎ、その隙を突いてシャルロットは後退。同時にエネルギー回復装置──『リカバリーショットG』で回復していく。彼女は難を逃れられた。

 が、今度はラウラが危うい。機体は見るからに大きく損傷しており、紫電が相当目立っていた。レールカノンは片方大破、四枚の実体シールドは──既に見る影も無い程に穴だらけ。

 

「くそっ……!!」

 

『ハイジョハイジョハイジョハイジョハイ──』

 

「はぁっ!!」

 

 力を振り絞り、ラウラは爪を弾く。そこからの重厚な脚部による蹴りが炸裂し、顔面を思い切り蹴り飛ばして距離を取っていく。その隙に彼女も『リカバリーショットG』を展開、直ぐに回復を済ませて体勢を立て直していく。

 

「残り二本!! 残弾は装填数分のみ!!」

 

 エネルギーは大きく回復する、装甲もある程度修復する。しかし、大破したものは駄目らしい。実体シールドはまだ機能するが大砲だけ直らず。残弾数が残り僅かなのもあり、接近戦を主にして戦わなければならない。

 しかし、相手はラウラを徹底的に警戒しており近づけない。先程の様に割って入るのは可能だが此方からの接近は全然出来なかった。『A.I.C』を警戒しているのだろう。回避に集中力を割いてる故に使えはしないのだが。

 自分が役に立たなくなりつつある。それだけはあってはならないと、彼女は歯を食い縛った。

 

「僕はまだ六本ある!! 二本渡す!!」

 

「助か──」

 

『キアアアアアッッッ!!!』

 

 そうはさせるかと『銀の福音』が二人に迫る。両腕を高々に広げ、向かう先はシャルロットへ。阻止出来れば御の字、あわよくば奪って──。

 

「そらぉっっっ!!!」

 

『──ッッッ!?!?!?』

 

 ──それは叶わず。

 頭上に現れた鈴音にブレードで叩き落とされ、『銀の福音』はのたうち回りながら宙を飛んだ。まるで蝿のように。例えがかなり汚いが許せ。

 

「アンタ、本っ当にいい加減にしなさいよ!! まだ動けるっていうの!?」

 

 鈴音もまた、機体が酷く損傷していた。要とも言える換装装備『崩山』は半分失い、ブレードの刃は完全に潰れていた。最早、それは刃物よりも鈍器としての機能しか果たせなかった。

 回復は一応ある。しかし、彼女はそれを渋る。接近戦メインだからか被弾率も断トツ。ペースを考えれば誰よりも早く尽きてしまうという未来が頭を過っていた。

 だからこそ粘る。ギリギリまで耐える。自分が落ちてしまえば──決定打が失くなってしまう。

 

「あれ?」

 

 その時、真隣に突然とセシリアが降りて来た。振り向くや否や、彼女はそれはそれは冷めた目で鈴音の腕を持ち上げ、回復装置を強く打ち込む。これは──何やら怒っているようだ。

 

「えーっと」

 

「鈴さん? 『リカバリーショットG』の本数はどれくらい残ってますの? まさか、使い切ったなんて言いませんよね?」

 

「そ……そりゃあもうたっくさんあるわよ!! あんなの無く──ごめん、あと一本しかない」

 

「まったく。……わたくしのを半分あげますわ。被弾率は一番少ないので十分にあります。これはツケ、というヤツですわね。二度と無茶はやめて下さいまし? でないとビンタの刑でしてよ」

 

「……ありがと! 帰ったら特大パフェね!!」

 

 セシリアの静かな怒りは心配の表れである。

 誰も失わずに任務を全うして帰還する。それは代表候補生としての義務だけではなく、共に戦う仲間の為に。堕ちてしまった彼等(一夏達)の為に。

 彼女は許せなかった。目前の敵──ではなく、あの時何も出来なかった己を。隆道に助けられて安堵してしまった己を。本当に、己が情けない。

 だから──今度こそ『銀の福音』を倒すのだ。それだけが唯一の償いなのだから。

 

『ハ……ジョ……ハイ……ジョ、ハイジョ……』

 

「……本当にしぶといですわ。何なんですの?」

 

 『銀の福音』はまだ堕ちない。

 再起不能になるレベルまで攻撃を叩き込んだ。装甲の全体に罅が入り、両腕の爪も欠けている。特殊兵装──『銀の鐘』だって片方は千切った。なのに、衰える処か機動力と火力が増した。

 此方だって被弾はする。だが、その一撃一撃は掠っただけでも行動不能に陥るであろうレベル。そのおかげで大量だった回復装置は一気に消費、残りの本数は心許なくなってしまった。少しでも気を許せば瞬く間に全滅してしまうだろう。

 これが『軍用IS』なのか。一体何処にそれ程のエネルギーを蓄えているのだ。何処からそれ程の機動力と火力を出せるのだ。格が違い過ぎる。

 機体はまだ十分に動かせる。だが、肉体の方は限界に近しい。今までに経験したどの戦闘よりも疲労が溜まる早さが凄まじい。試合とは段違い。戦いはいつまで続くのか。終わりはあるのか。

 

「……凰、次は左右から仕掛ける。二人は続けて牽制射撃を頼んだ」

 

「弾はもう四分の一を切った、からね……。僕はそんなに長く撃てない、よ……」

 

「構わない。どちらにせよ長くは持たんさ」

 

「そうそう。だーかーらー……──」

 

 ラウラは『プラズマブレード』を構え、続けて鈴音も『双天牙月』を構える。拳を軋む程に強く握り締め、二人は叫ぶ。

 

「「これで終わらせる!!」」

 

 刹那、ラウラと鈴音は同時に瞬時加速。直後にセシリアとシャルロットは高く飛翔、壊れかけの武装を構える。

 動ける時間は残り少ない。持久戦は望めない。ここで畳み掛けて決着を付ける。

 

『……ガッ……!! ビビ……』

 

 幸いに、向こうも既に限界が近くなった模様。所々から煙が吹き出し、身体は痙攣をし始めた。これは好機、千載一遇の好機。漸く勝てる兆しが見え始めた。

 

「堕ちろ堕天使ぃぃぃっっっ!!!」

 

 

 

 

 

 嗚呼、神は何と非情なのであろうか。

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 突如、海面二ヵ所が大きく爆ぜて水柱が立つ。そこから謎の飛行物体がラウラと鈴音の目前に。

 

「何──ぐあっっっ!?!?!?」

 

「うっそ──ああっっっ!?!?!?」

 

 重い衝撃が襲い掛かる。二人は揃って真後ろに吹き飛んでしまい、折角手に入れた攻撃の好機が潰れてしまった。

 

「な、何者──……!!」

 

 ラウラは気づく。左の腕部が切断された事に。辛うじて生身は斬られていないが、これで武装が一つ失った事になる。

 

「あ、あたしの『双天牙月』……!!」

 

 はっとしたラウラは直ぐに鈴音の方を見やる。そこには──根元から折れたブレードと真ん中に二つの大穴が開いたブレードが。そのブレードも罅が一気に入り、硝子のように砕け散った。

 邪魔をされてしまった。それも、ここぞという大事な時に。一体何者だ、この非常事態に茶々を入れる大馬鹿者は。

 

「「「「────」」」」

 

 『ソレ』を見た彼女達は言葉を失う。

 

 

 

 片や、日本刀を模した光り輝くブレードを持つ紫色のISが一機。

 

 

 

 片や、両腕それぞれに二本の太い杭を装備する紫色のISが一機。

 

 

 

 その操縦者──。

 

 

 

『『…………』』

 

 

 

 ──()()と、()()

 

「柳隆道!? それに、教官まで……──いや、貴様らは誰だ……!!」

 

『『…………』』

 

 ラウラの問いに二人は答えない。

 同一人物かと思える程にあまりにも似ている。が、冷静になると目前の二人は何もかもが違う。

 機体のカラーリングは両者共に紫、髪も同様に紫。まるで、紫のクリアシート越しに見たように全てが紫で染まっていた。

 不気味を醸し出す二人はその場から動かない。スキャンをしても『UNKNOWN』と表示される。何もかもがわからなかった。

 とにかく、理解出来るのは──この『何か』は新たな『敵』。

 

「貴様らっ!! 目的は何だっ!! 何故我々の邪魔をする!! その姿は何だぁっっっ!!!」

 

『『…………』』

 

 やはり、答えない。

 顔色は一つも変えない。ただそこに佇むのみ。それが余計に不気味さを際立たせていく。何だ、何なんだコイツらは。

 

『テ、敵機……確認。ハ、イ……──』

 

 ──瞬間。

 

『──ボッッッ!?!?!?』

 

 隆道を模した『何か』は目にも止まらぬ速さで『銀の福音』の懐まで急速接近、強烈かに思える腹パンを繰り出す。衝撃波は爆風の如く広がり、その場にいる全員が怯む。

 攻撃はそれで終わらない。今度は千冬を模した『何か』も同様の速度で急接近、『銀の福音』を乱舞で斬り刻んでいく。

 謎の二人が『銀の福音』を執拗に嫐っていく。斬撃と打撃が銀の鎧をグシャグシャにしていく。かなり目に余る光景が目の前で起こっている。

 何しに来たのだ。まさか、手柄を横取りに? それなら、此方としては任務達成出来るのだから非常に助かるのだが──。

 

『ギュ……。ソウ、ジュ……シャ……セイメイ、キケンイキ──』

 

『黙れ』

 

『人間の言いなりめ』

 

『────』

 

 千冬を模した『何か』が止めを刺す。

 辛うじて残っていた『銀の鐘』を頭から切断。宙を舞うソレを隆道を模した『何か』が巨大杭で木っ端微塵に消し飛ばした。ズッタズタにされた『銀の福音』は海面へ真っ逆さま、足掻く様子もなく無様に沈んでいった。

 

「「「「…………」」」」

 

 彼女達は何も出来なかった。動けなかった。

 一目見ただけでわかる。目の前の『何か』は、『軍用IS』など比にならない強さを持っている。

 勝てない。少なくとも満身創痍の自分達では。せめて機能停止した『銀の福音』とその操縦者を回収しなくては。でないと──。

 

『邪魔はさせない』

 

『これは主の願いだ』

 

「「「「……!?」」」」

 

 二人の『何か』はゆるりと彼女達に振り向き、生命を感じない瞳で見据える。姿だけでなく声も一緒。それが逆に背筋を凍らせる。恐怖を煽り、身体が固まり息を詰まらせる。

 

 ──識別コード該当無し。『UNKNOWN』から『BRUNHILD.NIGHTMARE』に識別変更──。

 

 ──識別コード該当無し。『UNKNOWN』から『MAD DOG.NIGHTMARE』に識別変更──。

 

 ──次の瞬間。

 

「!? こ、今度は何だ……!?」

 

 海面が今までより遥かに大きく爆ぜ、そこから巨大な光の球体が上空に現れる。その中心──。

 

「これ、は……」

 

 球体の中心に踞る、大破に近い『銀の福音』。ボロボロとなった装甲は──何故か修復される。失った銀の翼は青白い光の翼に生え変わる。何が起こったのか一瞬だけ理解が追い付かなかった。だが、それも直ぐに消える。

 彼女達は本能で理解する。『何か』が出現した意味を。『銀の福音』を堕としたその意味を。

 

「『二次移行(セカンドシフト)』……!!」

 

「ああ、神様……」

 

「……遺書、書いてないや」

 

「もーやだあああぁぁぁっっっ!!!」

 

 少女達よ。戦え、足掻け。そして絶望しろ。

 

 

 

『お前達に真実は必要ない』

 

『ここで堕ちろ』

 

『ギアアアアアァァァァァッッッ!!!』

 

 

 

 『善意』と『悪意』の混濁にようこそ。




◆『BRUNHILD.NIGHTMARE』
千冬と『打鉄』を模した謎のIS。武装は一本のブレードのみの模様。

◆『MAD DOG.NIGHTMARE』
隆道と『灰鋼』を模した謎のIS。武装は両腕の二連装パイルバンカーのみの模様。



~ここから後書き~
↑の二つはロックマンXのゼロナイトメアをイメージしてください。色合いはあんな感じです。
つーか進まねー。必要とはいえ執筆量多すぎ。所々雑なのは勘弁。
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