物語の片隅で   作:カササギパルフェ

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最悪最低の邂逅

 『始まりと終わりの町』・ローグタウン。

 海賊王、ゴールド・ロジャーが生まれ、そして処刑された町である。

 広場には海賊王を処刑した死刑台が今もなお存在している。

 

「わりぃ。おれ死んだ」

 

 『道化』のバギーの手によりその死刑台に拘束された麦わら帽子をかぶった少年―――モンキー・D・ルフィは、首を切り落とされる瞬間にそう言って笑った。

 

 

 突如、雷鳴が轟く。

 

 

 バギーが振り上げた剣に雷が落ちたのだ。死刑台は崩れ落ち、処刑人も黒焦げになる中で、少年だけはどこにも怪我はなかった。

 

「なははは。やっぱ生きてた。もうけっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *     *     *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一連の流れを見て、ハロルドは目を見開いて固まっていた。

 重なってしまったのだ。22年前にあの死刑台で命を散らしたあの男と。ただあの男とは違い少年は生きている。―――――まるで天が少年を生かすように、絶妙なタイミングで落ちた雷によって。

 

「すごいだろう。興味が湧いたか?」

 

 雨に打たれながら喧騒に満ちる広場を眺めていれば、全身を黒いマントで覆い隠した男が隣に立った。横目で一瞥して、想像通りの人物だったことに溜息が零れる。

 

「〝明鏡止水〟」

 

 呟きと共に指を鳴らす。〝明鏡止水〟を発動した今、ハロルドと男の存在は誰にも認識されなくなった。すなわち、マントに身を包んだ不審な男2人組は通報されることがないということである。とはいえ、今の海兵にそんな暇はないだろうが。

 

「何の用だ。革命軍には入らねーぞ」

「そうか、残念だ」

 

 勧誘の言葉を告げられる前に断れば、肩をすくめられた。もしハロルドが男が率いる軍に入れば士気や戦力が高まるというのに、残念でしょうがない。

 

「あの少年、〝彼〟のようだったな」

「…そうだな」

 

 思い起こされるのはあの男。〝大海賊時代〟の幕開けの言葉を残し、笑顔で散った〝海賊王〟ゴールド・ロジャー。

 重ねずにはいられなかった。あの麦わら帽子が面影をより強くする。

 まさかと思うが、あの少年は―――――。

 

「ロジャーのガキとかじゃねェよな…」

「それはない」

 

 独り言に近い呟きを男は即座に否定した。怪訝そうに片眉を上げるハロルドの態度に気づいたのか、男は理由を口にする。

 

「あいつはおれの息子だ」

「…え?」

 

 男の横顔は真面目そのもので、冗談のつもりで言ったことではないことがよくわかる。だがしかし、どうしても簡単に受け入れることはできなかった。

 

「…息子?お前の?」

「そうだ」

「うっそーん…」

 

 聞き間違いではなかった。思わず顔を覆って天を仰ぐ。全く予想していない返答だった。この男もやっていることはやっているのだと思うと、何故だか無性に虚しくなる。本当に何故だろうか。

 

「マジでか…。まぁ、とりあえずおめでとう?」

「あぁ」

 

 祝福の言葉をあっさり受け取る男に、「あ、やっぱマジなんだ」と内心で溜息を吐く。キセルでも吹かしたい気分だが、この悪天候では火など付くわけがない。その代わりとして棒付きの飴を口に含んだ。

 

「…手助けした方がいんじゃね?この町には〝白猟のスモーカー〟っつーロギアの海兵がいる。覇気の使えないあいつらじゃ捕まっちまうぞ」

「そうだな…。男の船出を邪魔させるわけにはいかん」

 

 離れていくドラゴンの背中にひらりと手を振る。

 再び一人となったハロルドは雨が降る天を見上げると、ぽつりと呟く。

 

 

「面白くなってきたよなァ…」

 

 

 噛み砕いた飴の棒を捨てると、ハロルドは広場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *     *     *

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 麦わらの一味はドラゴンの介入と、大きな突風のおかげで無事に海軍から逃げることに成功した。

 

 その裏で2人の大犯罪者の邂逅があったのだが―――――。

 

 それを知る者は、誰もいない。

 

 

    

 

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