欠陥だらけの最前線   作:緋寺

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嵐の後の大改装

演習後、元帥閣下とその護衛艦娘の方々は帰っていった。また来ますと言い残していたので、また会うことも出来るだろう。元帥閣下が最後まで未練を残していたようだが、4人に引き摺られて船に押し込まれたのは見ていて少しいたたまれなかった。

 

「あ、しまったなぁ。朝潮君が頼めば鎮守府の予算増やしてもらえたかもしれん」

「司令官、そういうことに私を使うのは……」

「冗談、冗談だよ。皆ご苦労だった。あの爺さんに君達の価値を見せることが出来た。特に清霜君、よくやってくれた」

 

清霜さんはまだ幸せそうに惚けていた。憧れの人に褒められ、認められたことがいろいろと許容量を超えたらしい。演習では大和さんの主砲をモロに受けていたが、それすらも嬉しかったのだとか。

演習に参加していなかった人達もテンションが凄かった。結果だけ見れば大敗北の演習でも、私達にとっては大勝利だ。元帥閣下にはこの鎮守府の必要性が認められたのだ。

 

「さぁ、今から通常業務だ! 演習参加組は特別休暇とする。他のものは各自、与えられた業務をよろしく頼むよ」

 

突然の来客からの大きな出来事は、司令官のこの言葉で幕を閉じた。鎮守府全体の士気が上がり、今まで以上に皆が燃えていたのは言うまでもない。

 

 

 

突然の休みを貰った私と吹雪さんは、何をするでもなく談話室でまったりしていた。まだ演習の興奮は冷めていない。清霜さんはまだ惚けていたので食堂に置いてきた。すぐにお腹が空くだろうし、そこが一番都合がいいだろう。

私と吹雪さんには反省会も兼ねている。対空でギリギリの状態から、戦況が少し変わった瞬間に全て瓦解したのは事実だ。艦載機の数が減っているにも関わらず、均衡が崩れた。

 

「龍驤さん達に頼んで回避訓練も取り入れてもらおっか」

「そうですね。敵もあれだけの量を一気に投入してくる可能性がありますし」

「だよねぇ。姫級の空母とかは確かあんな感じだって」

 

私が見たことのある深海棲艦は、名前の無いいわゆる『イロハ級』と、北方水姫、つまりはガングートさんだけだ。空母型の深海棲艦がいるのだから、それの姫級がいてもおかしくないし、複合種、戦艦なのに艦載機を飛ばしてくるようなものもいそうだ。

艦載機を飛ばす戦艦となると、今回の演習でやられたのと同じことが起こり得る。対空に専念している横からズドン。横を警戒しすぎて上からドカン。

 

「大和さんの火力と赤城さんの航空戦力を両方持った深海棲艦もいそう」

「想像するだけで悪夢なんですけど」

「でもいないとは言えないよね。そういうのが出てきたときのためにも、訓練あるのみ」

「ですね」

 

戦艦の人に横から撃ってもらいつつ、空母の人に爆撃してもらう、なんて訓練を想像した。危険な訓練な気がするが、今までやってきたことを考えると大丈夫な気もする。

今まで最前線で戦ってきたこの鎮守府でも、訓練は単体行動を目的としたものが多い。対空なら対空、対潜なら対潜。その中に回避も含まれていたから十分な訓練になっていた。役割分担がしっかりできているからこそ、瓦解しなければ問題ない。

それの難易度を上げたものだ。回避するものが増える。それだけ。艦載機からの攻撃だけを回避していた対空訓練に、横からの攻撃が増える。それだけ。

 

「あ、そろそろ霞の水上訓練を見に行かなくては」

「今は誰が見てくれてるの?」

「私と同じで天龍さんですね」

 

霞も私達の演習で気合が入ったようだ。今日中に支え無しで立て、かつ移動もできるようになると躍起になっていた。あまり急ぐといい事はないと助言しようとしたものの、私も気合の入り方でコツを掴むスピードが違ったのだ何も言えなかった。訓練してくれているのが天龍さんなので安心している。

 

「朝潮ちゃんもお姉ちゃんしてるねぇ」

「それ、白露さんにも言われましたよ。やっぱり妹は可愛いですから」

「わかる! わかるよ!」

 

長女筆頭の吹雪さん。妹は可愛くて仕方ないというのは、私もわかるようにはなった。だが、過保護すぎるのも良くない。

 

「じゃあ、ちょっと工廠に行ってきます」

「私も行こうかな。朝潮お姉ちゃんがどんな感じか見たいし」

 

面白い事はないですよと付け加え、工廠へと向かった。

 

霞の水上訓練はいい調子だった。天龍さんは本当に見ているだけ。ゆっくりとだが移動もできている。

 

「飲み込みが早いぞ。これならあと少しってとこだな」

「姉さんに早く近づかなきゃいけないもの。気合が入るわ」

 

前の私もあんな感じだったとしみじみ思う。安定して立つことができるようになるまででも時間がかかり、動くまででも時間がかかった。霞はかなり早い方な気がする。あと数日もすれば移動はマスターしそうだ。

 

「おう、朝潮と吹雪か。霞は順調だぞ」

「みたいですね。危なげないように見えます」

 

スイスイと動けているわけではないが、私の声に反応してこちらを振り向くくらいはできるようだ。方向転換もそろそろマスターと言ったところか。

 

「早く戦闘訓練に入りたいもの」

「霞の場合は魚雷、雷撃特化よね。私はそこからはもうわからないわ」

 

この中で魚雷が使えるのは吹雪さんのみ。その吹雪さんも基本は対空要員として駆り出されている。

 

「私は基本対空だし、深雪は基本主砲だから、雷撃特化の娘を紹介しないとね」

「駆逐艦だと初霜だけだ。あまり朝潮とは縁が無かったな」

 

初春型駆逐艦4番艦、初霜さん。この鎮守府内では比較的新人らしく、駆逐艦だけで言えば私の1つ前に配属された人だそうだ。この鎮守府は私も含めて雷撃可能な駆逐艦が少なく、初霜さんにほとんど任せてしまっているとのこと。

欠陥(バグ)は私の真逆。対空と対潜の接続不備。そのせいか、訓練で一緒になることもなく、最初の食事会や駆逐艦定例会で少し言葉を交わしたのみで終わってしまっている。

 

「雷撃は軽巡と重巡がやってるからな。オレはできないが」

「私や深雪もできるし、潮もできるんだけど、初霜ちゃんほどではないかな」

「ふぅん……戦闘訓練始まる時に挨拶でもしておこうかしら」

 

雷撃の訓練は一度も見たことが無かった。散歩してる最中に主砲訓練に付き合った時はあったが、魚雷はどのように使うのかもわからない。先日の救援任務や演習でも結局使っていない。霞がどういう道を進むのかはとても興味がある。

 

「そうだ、霞、はちさんのところで自分のデータ見たのよね。どうだった?」

「私も姉さんのようにコンバート出来るらしいんだけど、片方が雷撃強化らしいからそちらを目指すわ」

 

霞にも私と同様、改二が2種類ある。私は改二丁という対空対潜に長けた改造。霞は改二乙という対空と装甲、索敵に特化した改造だ。代わりにやらなくてはいけない雷撃性能が落ちてしまうため、今の霞には向いていない。霞は改二乙ではなく改二で止めることを望み、そこを目指すことにしたようだ。

 

「そうだ、オレも改二あるんだった。最近ゴタゴタで先延ばしになってたな……そろそろ打診するか」

 

天龍さんの改二は対空性能の大幅な向上。出来ることが伸びるのは大きいと本人も喜んでいる。とはいえ天龍さんは白兵戦をすることの方が多い。改造したことで刀がどうなるかの方が気になる様子だった。

勿論天龍さんの練度も高い。今すぐにでも改二実装が出来るほどだという。

 

「おや、霞君の水上訓練は一段落したのかい?」

 

都合よく荷物を運ぶ司令官がやってきた。どうやら妖精さん達のオヤツを配りに来たようだ。

 

「提督、オレの改二そろそろ頼めねぇか?」

「ああ、そうか、少し忙しかったから忘れてしまっていたよ。すまない」

「オレも忘れてたんだけどな。今コイツらの改二の話しててよ」

 

私もまだまだ改二には遠いだろう。だが、改二実装でどうなるかは知っておきたい。吹雪さんは私が来た時から改二なので、どのように変化したかがわからない。

 

「わかった。今は大分余裕ができたからね、改二実装できる娘を調べて、何人かはやってしまおうか。娘の成長は私も嬉しいからね」

「よっしゃ! じゃあリストアップしようぜ!」

 

そのまま天龍さんは司令官を連れて工廠を離れてしまった。持ってきたオヤツは放置され、妖精さんがわらわらと近付いてくる。

 

「霞は訓練終わろうか。私達は司令官が持ってきた妖精さんのオヤツを配りましょう」

「すぐに片付けるわ」

 

 

 

「というわけで、改二実装可能な娘は、今から全員改装する。こちらでリストアップしてあるから呼び出すよ」

 

昼食で全員が集まった食堂で司令官が発表する。戦力増強には当然資源も必要だが、大淀さんが何も言わないので、その辺りは大丈夫なのだろう。

現在我が鎮守府の艦娘ですでに改二なのは吹雪さん、龍驤さん、山城さん、古鷹さん、那珂ちゃんさんの5人。練度は足りていても改二になっていない人はそれなりにいた。

 

「天龍君、蒼龍君、皐月君、潮君、響君の5人を改二実装とする。響君は少し違うが、改二のようなものだろう」

 

一度に5人の改装。戦術的にも駆逐艦を多めに改装し、下地を強くしようという試みだ。他にも改二実装可能な練度の人はいるが、そこはまた随時改装していくとのこと。そこはしっかりと説明していた。

 

「では今呼んだ5人は昼食後工廠へ。妖精さんには説明しておくから、順に改装だ」

 

 

 

お昼は改二の話題で持ちきりだった。暇になったものから工廠に足を運び、改装が終わるのを待っている。かくいう私もそのうちの1人で、皆さんが改装でどう変わるかが気になっていた。

吹雪さんは艤装が変わったこと以外は、制服のデザインが変わったと言っていた。山城さんや那珂ちゃんさんも同じことを言う。龍驤さんに至っては制服のデザインすらどこが変わったかわからないレベルだそうだ。身体が変わるということはなかなか無いらしい。

それに対し古鷹さんは、改装で身長が伸びたとも言った。言われてみればと吹雪さんも納得する。そういう改装の実例があるというのもよくわかった。

 

「あまり変わった感じがしないです……」

「ね。鉢巻き付けられたくらいかな」

 

最初に出てきたのは潮さんと蒼龍さん。制服はほとんど変わらず、蒼龍さんに至っては艤装もそこまで変化したように思えない。だが内部は大きく変わっているらしく、戦力としては格段に進化したとのこと。

 

「ボクは制服も変わったよ!」

 

続いてやってくるのは皐月さん。今までは黒一色のセーラー服だったものが白になり、パーカーを羽織るように。だが1番気になったのは、腰にぶら下げた日本刀。攻撃できない皐月さんに武器が来たことで、山城さんが動き出そうとしていたので必死に止めた。

 

あと2人はなかなか出てこない。改装に時間がかかっているということは、変化も相当あるという事だろうか。

 

「おっし、刀もデカくなったな。これで山城姐さんとも対等に戦えっだろ!」

 

まずは様変わりした天龍さん。本人の言う通り刀はさらに大型に、制服も黒から白にと見た目が大分変わっている。だが、それ以上に全員の注目を集めたのが

 

「刀以前に乳デカくなっとるやないかーい!」

「知らねーよ! 勝手にやられたんだからオレに言うなよ!」

 

そう、天龍さんの胸。元々大きいなとは思っていたが、改装したことでさらに一回り大きくなったように見える。隣で時津風さんがボソッとまた枕にしようと呟いたが、あれはそろそろ枕にするのも難しい気がする。

あとは響さんだけだが、天龍さんの後もなかなか出てこない。さすがに心配になってきたところでようやく出てきたが、

 

「хорошо. 素晴らしい改装だ」

「響お前国籍変わっとるやないかーい!」

 

龍驤さんのツッコミが冴え渡る。

響さんは改装するとВерный(ヴェールヌイ)という名前に変化し、ロシアの艦となる。ロシアといえば、ガングートさんの国だ。詳しい艦のことはわからないが、戦後に国を変えたということだそうだ。

とはいえ様変わりしすぎていた。雰囲気は残っているのだが、全体的に外国人になったイメージ。

 

「ほう、いいじゃないかちっこいの。私と同じ冬の白だ」

「Спасибо. 同志ガングート。こいつはいい、力を感じる」

 

やはりガングートさんと同調しているようだ。元々仲が良かったらしいが、これで一層親密になりそうだ。

 

私の改二はどう変わるのだろう。資料室のデータは戦力としてのデータばかりで外見のデータはほとんど書かれていない。潮さん達のようにほんの少しの変化か、響さんのような大幅な変化か。あわよくば天龍さんのようにスタイルが……と下心が出始めたので、考えるのをやめた。

 




改二で様変わりする娘はそれなりにいたけど、天龍の豊満なアレはその中でもビックリした方。国籍変わるよりは控えめだけど。
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