欠陥だらけの最前線   作:緋寺

247 / 319
流星の如く

司令官が予想していた夜明け前の襲撃。それを待ち構えていたところ、本当に襲撃を受けることとなった。敵艦載機による回避不能なほどの絨毯爆撃をイクサさんの力も借りて2割程度まで削るが、鎮守府3階はほぼ破壊される大惨事。減らしてなければ鎮守府崩壊まであったため、ここで止められたのは良しとするべきだろう。あとはちゃんと避難出来たか次第。

 

私、朝潮は空母鳳姫と対峙中。その後ろには空母棲姫2体と空母水鬼3体というふざけた部隊。あくまでも鎮守府破壊をメインにした航空部隊のため、制空権はもう考えない方がいい。これ以上鎮守府を破壊されても困るが、ここにいる戦力で全滅させるのは骨が折れる。

 

「アサさんは避けてくださいね?」

 

深海日棲姫の艤装を展開した空母鳳姫は、以前と同様に視界を埋め尽くすほどの魚雷を発射してきた。回避はほぼ不可能。何かしらの手段で魚雷そのものを破壊する必要がある。

私は艦載機を発艦させて射撃による対処を始めたが、数が数だけにキリがない。

 

「任せなさいな。今の私は漲ってるのよ!」

 

霞も魚雷を発射。その数がさらに増えていた。その数30、私達に向かってくるものを的確に狙い、魚雷同士をぶつけることでさらに誘爆を促す。

先程の島風さんもそうだが、金の『種子』による過負荷の転化は思った以上に効果的だった。混ぜ物と戦う時のみのスペックアップではあるものの、艤装の出力以上に、本人の集中力が増している。

 

「空母隊、鎮守府への空襲を再開。アサさんがここにいるのは好都合です」

「でも誤算があったみたいね。私がここにいるんだもの」

 

イクサさんの掛け声と共に自立型艤装が大きく口を開き、超大型主砲を出現させた。敵として何度も相手をしてきたこの驚異の火力も、味方となれば心強い。

空母鳳姫には目もくれず、後ろの空母隊に照準を合わせた。先にあちらをやらなくては鎮守府がさらに危険に晒される。それに気付いた空母鳳姫が動き出すも、即座に島風さんが対応。足下に連装砲ちゃんが現れ、その脚を掴む。

 

「邪魔しちゃダメだよ」

「こちらのセリフですよ」

 

振り払うように再び姿が消えたが、またもや島風さんがその腕を掴む。完全にスピードに追いついている。元々のスペックと、深海棲艦化の影響、さらに金の『種子』による過負荷の転化で、速さだけなら提督の力に匹敵した。さらに攻撃、とまでは行かないものの、イクサさんを守ることは充分に出来ている。

 

「いいアシストよシマカゼ。最低1人は沈めてあげるわ!」

 

轟音と共に超大型主砲を放った。海を裂くような凄まじい威力で敵空母隊のど真ん中に着弾し、陣形を破壊した。その一撃で空母棲姫1体を撃沈し消滅、もう片方も大破。しかし、空母水鬼の方は3体とも小破程度。上位種というのもあるが、単純に改造され、耐久力が上昇している。

それでも一撃で姫1体を葬ってくれる火力は助かった。イクサさんも金の『種子』により過負荷が転化されているため、威力が尋常ではない。

 

『私達も負けていられないな』

「ええ。龍驤さん達が来るまでに、あの姫部隊を終わらせたいわね」

『私もやるよー! 頭噛み潰せば終わりだよね!』

 

私には『種子』が埋め込まれているわけではないため、瞳が金に輝くことはないが、ヨルのおかげで過負荷の転化は出来ている。

まずは大破した空母棲姫。まだ表側は私のまま突っ込み、早速ヨルの噛み砕きにより頭部の破壊。同時に魚雷処理をしていた艦載機をこちらに引き戻し、空母水鬼の頭を撃ち抜こうとするが、紙一重で回避される。

私達の攻撃を回避しながらでも、艦載機は鎮守府方面へ飛ばしていた。目の前の敵は完全に無視している。数が減った分、絨毯爆撃ではなくなったものの、数はまだまだ多い。

 

「姫級すら使い捨てですか。相変わらずゲスなやり方ですね」

「数を揃えなくては勝ち目のない艦娘共には使い捨て程度で充分です」

 

島風さんを振り払い、甲板が主砲へと変化。一番手近にいる島風さんに狙いを付けるが、持ち前の素早さで島風さんは既にそこから離れており、霞と共に雷撃を開始している。

 

「ちょこまかと……」

 

魚雷を撃ち抜いた後、主砲が甲板に変化。またもや尋常ではない量の艦載機が発艦した。先程大分処理したと思っていたが、まだまだ艦載機は尽きないようだ。

が、その艦載機は別の艦載機により撃ち落とされていった。拮抗とは行かないものの、いてくれるだけでありがたい。合間に私とイクサさんも防空に入り、艦載機を処理していく。

 

「来ましたか……龍驤」

「おう、来たで。日ぃ出てくれたんでな」

 

まず第一の援軍。龍驤さんとそれを運搬する響さん。制空権確保が現実的になり、火力も増した。魚雷処理班も加わり、戦況はいい方向に向いてくる。

 

「蒼龍と雲龍も連れてきたかったんやけどな、制空権のために向こうの防空頼んどいたわ。バカスカ飛ばしてきおって」

「貴女1人で何が出来るというのです。たかが軽空母1人増えたところで、私は止められませんよ」

「アホか。何もわかっとらんなぁ鳳翔。ウチ1人で戦っとるわけやあらへんぞ」

 

鼻で笑いながら私の託した艦載機を発艦。たった2機でも精鋭。毎日欠かさず使い続けていたおかげで、私以上にコントロール出来るようになっている。

 

「最初から本気ちゃうんか。もう片方も早よ出せ」

「出す必要がありませんね。これで充分ですよ」

「出せへんのやろ。わかっとるわ。お前体力あらへんもんなぁ。ちょっち戦闘するだけで冷や汗かきながらゼエゼエ言うて。元が旧式(オンボロ)なんやから隠居しとれや」

 

龍驤さんの煽りで少し眉をひそめるが、ただそれだけ。聞く耳持たずというわけではないようだが、煽りには乗ってこない様子。見た目通り、精神年齢も大人か。

 

「響、ええか」

「大丈夫だよ、龍驤さんは私が守り切る」

 

響さんは徹底して魚雷処理。龍驤さんの足として、さらには守護者として、大発動艇を無傷で守り続けることが役割。ここまで来たら一蓮托生、どちらがやられてもまずいのは変わりない。

 

「霞、私達は空母水鬼よ」

「了解。島風はあっち!」

「はーい! まっかせてー!」

 

イクサさんにもアイコンタクト。私達3人で空母水鬼をどうにかしつつ、援軍を待つ。次にこちらに来るのはおそらく高雄さんだ。魚雷が効きやすいことがわかっているのだから使わない理由がない。

持久戦をしながら人数を増やしていき、最後は圧倒する。ズルイと言われようが関係ない。あちらのやり方が相当なのだから、こちらも手札を全て切るだけだ。

 

 

 

一方、天龍さんと龍田さんは、たった2人で軽巡岬姫率いる第二水雷戦隊と交戦中。人形に関してはそこまで心配が要らないものの、戦艦の姫2人分の力を持つ軽巡岬姫は厄介だった。

 

「部下を盾に使うような旗艦がいるのかよ。かぁーっ、堕ちたもんだねぇ」

「私が生きていれば二水戦は幾らでも蘇るもの。使えない部下は盾として使われただけでもありがたいと思ってもらいたいわね」

 

近付くと人形が群がり、それを斬り捨てようにも御構い無しに欧州水姫が主砲を放ってくる。味方がどうなろうと関係ない。そういう意味ではもっとも深海棲艦らしい行動かもしれない。

戦艦主砲は当然避けたいが、人形が自分の命を考えずに足止めをするため、どうしても刀を使った防御をせざるを得なくなるが、このままでは前回と同じように戦闘中に折れてしまう可能性がある。あちらはそれをわかっててやっているのかもしれない。

 

「その刀が折れれば貴女は丸腰。ただの木偶の坊よね」

「そうだな。また折ろうってのか」

「何も出来なくなったら逃げ惑うのかしら。それとも泣き叫んで許しを請うのかしら」

 

天龍さんが侮辱されたことで、龍田さんの動きが一段階速くなる。一撃入れる隙を見計らっているが、なかなか見えない。隙を作る戦いではなく待つ戦いをするため、攻撃が出来ないでいた。そして隙を作る役である天龍さんは、無理をしすぎると前回の二の舞になる。

 

「2人がかりでも勝てないんじゃあ意味がないわね。早く諦めてもらえると助かるわ」

 

盾役の人形が次々と消滅していくが、何も気にせず飄々と立ち振る舞う。最後の1人は天龍さんが斬り捨てたが、それについても何も感じていない様子。味方の同族が殺されているのに眉一つ動かさない。

 

「あーあ、全部やられちゃったわね」

「あとはお前だけだな。ここで確実に殺してやるから覚悟しろよ」

「覚悟? するのは貴女達でしょう」

 

主砲を放ちながらの前進。白兵戦相手に近距離を狙ってくるということは、もう片方の艤装を展開するつもりでいる。

南方棲戦姫の艤装は欧州水姫の艤装よりも近接向き。欧州水姫の艤装より確実に息の根を止めることが出来ると踏んでいるのだろう。今までは人形がいたために長距離砲撃タイプにしていたようだが、いなくなった途端積極的に白兵戦を仕掛けてきた。

 

「あの時は不覚をとったわ。でもね、貴女達のことはもうわかってるのよ。刀しか使えない天龍と、薙刀しか使えない龍田が、私に何が出来るというの?」

 

両腕に接続された戦艦主砲を打撃武器に見立てながらの攻撃。だからといって打撃だけでなく主砲としても使い、当たれば大破どころでは済まないダメージを負うことになってしまう。

天龍さんの方が機動力があるおかげで回避が出来ているが、龍田さんが近付くことが難しくなってしまった。近〜中距離兵器のために、龍田さんにも砲撃が飛び、回避一辺倒にされているのは確かだ。

 

「急に暴れ出したな。こっちがお前の本性か?」

「そう思うならそう思えばいいわよ。回避ばかりで勝てると思ってるわけ?」

「そんな甘かねぇだろ」

 

その機動力を使い、懐に潜り込む。いくら白兵戦がしやすい艤装だとしても、超至近距離に入り込まれたら攻撃は出来なかろう。

 

「当然、見越してるわ」

 

艤装が欧州水姫のものにすり替わり、艤装に包まれた左脚で強烈な蹴り。勿論、天龍さんもそれは見越している。

蹴りに合わせて身体を捻り、回避しながらも脚を斬り飛ばそうと刀を振るった。それすらも受け止めようと、蹴りを強引に止めた挙句、脚の艤装でガードしつつ天龍さんを踏みつけた。かなり強烈だったようで、天龍さんが血を吐く。あれは凡そ中破というところ。

 

「げほっ、龍田ァ!」

「ええ、わかってるわ」

 

そこで出来た隙を見逃さない。龍田さんが軸脚に対しての斬撃。

 

「この……っ!」

 

対する軽巡岬姫、天龍さんを踏みつけている脚に軸脚を変え、踏み台にして跳び斬撃を回避。空中で艤装を南方棲戦姫にすり替え、天龍さんに向けて主砲を向ける。

踏みつけられた衝撃で天龍さんは体勢が崩れており、すぐに回避が出来る状態ではない。加えて龍田さんは薙刀を振るったばかりですぐに動けない。このままではやられる。

 

だが、心配はしていなかった。こちらには援軍が向かっているのだから、勿論、天龍さんのところにも援軍はやってくる。

 

流星の如く、最高のタイミング現れてこそ、()()()()()

 

「なーーかーーちゃーーんキーーック!!!」

 

空中で天龍さんに対して主砲を向けた瞬間、超高速で突っ込んでくる那珂ちゃんさんが、砲撃の余裕も与えず軽巡岬姫の顔面を蹴り、そのまま吹き飛ばした。それで勢いが無くなりその場に着地するが、当然脚部艤装はフルスロットル。龍田さんの薙刀に掴まって無理やりブレーキ。

 

「ごほっ、助かったぜ……」

「那珂ちゃん、最高のタイミングよ〜」

「でしょでしょ! アイドルは登場シーンも完璧なの♪」

 

天龍さんも立ち上がり、那珂ちゃんさんをお姫様抱っこする形で龍田さんから引き取る。ノーブレーキをどうにかするためには仕方ないことではあるが、龍田さんが嫉妬していることは手に取るようにわかった。

 

「ったた……誰よ」

「貴女が矢矧ちゃんね? 艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよー♪」

「は? アイドル? 何ふざけたこと言ってるのよ。殺すか殺されるかの戦場に、そんなゴミみたいな感情持ち込まないでもらえるかしら」

 

蹴られた頭を振りながら立ち上がる軽巡岬姫。那珂ちゃんさんの辺りから、ピリピリとした冷たい空気が流れている。いつも通りの振る舞い、アイドルらしい笑顔の奥底に、以前に見た()()がチラつく。

 

「矢矧ちゃん、第二水雷戦隊の旗艦なんだよね? それ、那珂ちゃんのお姉ちゃんもなんだよ。お姉ちゃんから継いだんだよね」

「ああ、神通のことね。それが何か?」

「出来たら神通ちゃんもここに呼びたかったけど、無理そうだから、第四水雷戦隊旗艦の那珂ちゃんが、神通ちゃんの()()()を務めまーす」

 

天龍さんに抱かれながら、主砲を1発。真正面からの不意打ちに、軽巡岬姫もほんの少しだけ動揺したが、腕の艤装で弾く。

 

 

 

「これ以上、二水戦の名を穢すなよ」

 

 

 

天龍さんが那珂ちゃんさんを下ろした瞬間、トップスピードで突っ込む。速い遅いは関係なしに、勢いがあまりに違った。

 

「なっ、こいつ……!」

「お前に二水戦旗艦を名乗る資格はない! ここで死ね!」

 

天龍さんとも龍田さんとも違う、混ぜ物すら怯ませる気迫。さらには天龍さんのトップスピード並にピーキーにチューンナップした脚部艤装でのヒットアンドアウェイ。数発撃ったところで通過し、即座にUターン。攻撃を一切緩めず、軽巡岬姫を防御一辺倒にする。

 

「おいおい、四水戦旗艦様にビビってんのかよ」

「混ぜ物もそういう感情は持ち合わせてるのね〜」

 

さらにここから白兵戦2人の追撃。示し合わせたかのように連携が決まっている。むしろ那珂ちゃんさんが2人に合わせた攻撃をしているようだった。

生粋の旗艦気質。アイドルとして皆の前に立つのも、その気質の延長線上。

 

「この……ふざけるな!」

 

主砲を振り回しながら全方向に放っていく。とにかく間合いが取りたいのだろう。那珂ちゃんさんの介入により、ペースが完全に崩れていた。

乱射でもお構いなく、那珂ちゃんさんは戦場を引っ掻き回すために縦横無尽に動き回る。時には一直線に、時には直角に曲がり、時には撃つことなく通過する。翻弄に翻弄を重ねていく。

 

「もう終わりにしてやる」

「終わり? 私が? そんな簡単に、私が終わるわけ!」

 

急カーブからの突撃。同時に天龍さんと龍田さんも攻撃。3方向同時の一撃。全てを食い止めるために艤装を欧州水姫に替え、那珂ちゃんさんには砲撃、龍田さんには腕と左脚の艤装、天龍さんにはもう片方の腕だけに南方棲戦姫の艤装を残して防御。

 

「終わりなんだよ、もう!」

 

那珂ちゃんさんは砲撃を掻い潜り、被弾もし、血にまみれながらも突撃を止めずに軽巡岬姫の艤装を破壊した。これでもう砲撃は撃てない。

 

「これで終わってもらわないとね。天龍ちゃん」

 

龍田さんは脚の艤装を重点的に狙い、ついにはその攻撃を突き通した。脚を薙ぎ払ったことにより、薙刀がボッキリ折れてしまう。

 

「悪ぃな、結局3対1だ。オレ1人では倒せなかった。オレと龍田でも均衡だ。だから、那珂が最後の一押しだ」

 

そして天龍さんは、たった一刀。全力の振り下ろし。

 

「貴女、だけはぁ……!」

 

しかし、斬りおろしに対抗した砲撃。超至近距離故に、撃たれるだけでも天龍さんには被害が出るだろう。主砲の向きは天龍さんの胸だ。

 

「あいにく……悪運だけは強ぇみたいでな」

 

今までは突き崩せなかったであろう艤装も、最後の渾身の一撃の前には屈するしかない。今まで散々防御に使い、乱雑に砲撃するまで追い詰められていて強度も限界に来ていたのだろう。砲撃の瞬間に爆発。さらには那珂ちゃんさんの艤装破壊と、龍田さんの薙ぎ払いにより、重心がズレていた。

最後の砲撃は本来の照準からズレ、天龍さんの左肩を抉ることとなった。それでも腕がギリギリ繋がっている状態となってしまっていたが、刀は既に振り下ろした後。

 

「……私の、負けね」

「オレ達の……勝ちだ」

 

軽巡岬姫の胴体が大きく血飛沫をあげた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。