欠陥だらけの最前線   作:緋寺

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激戦の中の救出

続く海上での戦闘。その中で、防空埋護姫は深海忌雷に寄生された艦娘であることが判明した。皐月さんの一撃により深海忌雷が破壊された時、私達に一瞬だけ助けを求めてきたからだ。

 

『忌雷に寄生されても意思があるのかアイツは』

「誰かは知らないけど、島風さんと同じような特異個体なのかも」

『あり得るな。『種子』で洗脳はされてるみたいだが』

 

本来の深海忌雷がどういうものかはわからない。ただ少なくとも、島風さんに寄生していたものは、思考を狂わせることはしたが北端上陸姫に従順になるような効果は無かった。狂った後に深海棲艦の本能から自分に従わせるつもりだったかは知らないが、少なくともアレだけで洗脳は施さないということだ。

だから追加で『種子』を埋め込む。これは初霜に寄生しようとした深海忌雷でわかっている。深海忌雷は追加で『種子』を埋め込むシステムも内蔵されているのだろう。

 

私に寄生している深海忌雷が本当に特別なものであることを実感した。北端上陸姫の細胞が埋め込まれ、()()()()へと変化させようとする一品物。その時には『種子』が無かったのかもしれない。

 

『で、私達はどうすればいいの?』

「ヨルは私を守ってね。私も前に出るから」

『なら、あれの艤装を噛み潰せばいいよね!』

 

攻撃は最大の防御と言わんばかり。フンスフンスと鼻息を荒くする。

 

「殺さないように倒すって難しいわね」

「そんな戦い方を強いてごめんなさい」

「いいわよ。ここのやり方がよくわかったわ」

 

戦闘中ではあるものの、イクサさんがクスリと笑う。

イクサさんの火力では、掠めただけでも大惨事になりかねない。先程は腕部主砲で攻撃していたものの、艤装で弾かれるくらいには敵が硬かった。だからといって頭部大型主砲では、当たりどころ次第で一撃必殺。今まではそれを望んでいたが、状況が変わってしまい、それが望まれなくなってしまった。

 

『今のお前なら出来るだろ』

「何を……って、え、アレを? 私が?」

『戦艦の身体で、ヨルで出力も上がってるんだぞ。皆に援護してもらってやってみろ。サツキのおかげでフードも取れてるしな』

 

それをやるためには、私が超至近距離まで接近しなくてはいけない。そして、近付けたからといって成功するとも限らない。とはいえ、やらないよりはマシ。

 

「天龍さん、私が接近します。援護お願いしていいですか」

「接近? そういやお前ももう白兵戦組だな。何やる気だ」

「防空埋護姫の意識を刈り取ります。出来れば無傷で鹵獲出来るかと」

 

『種子』の影響があったとしても、意識が無ければどうとでもなる。一時的に無力化し、その間に艤装の破壊と中和をすればいい。

私は防空埋護姫に助けを求められたのだ。ほんの一瞬かもしれないが、私にはあれが嘘偽りない本心からの言葉に思えた。助けずに殺すくらいなら、助けて裏切られた方がマシだ。

 

「では、やりましょうか」

 

うまく分断していたつもりだが、先程の砲撃と魚雷の乱射により無理矢理間合いを取られ、あちらに合流する余裕を与えてしまった。6対1が2つの状態から、再び12対2の状態へ。数的優位はこちらにあっても、不安要素ばかり。あちらのタイムリミットは近いはずだが、根本解決には全くなっていない。

 

「あれを掻い潜って接近して、防空埋護姫だけをどうにかして退避。そのあと空母鳳姫を撃破……なかなか……厳しいですね」

「でもやるんでしょ」

 

合流したことで吹雪さんが隣に。後ろには大発動艇が移動してきた。

 

「うちら最古参を使いや。何したいんかは知らんが、うちらがサポートしたる」

「吹雪、朝潮の道を開くの手伝ってくれ。オレと龍驤さんとお前でやるんだよ。久しぶりだな、3人で同じことやんのも」

「了解です。昔とは違いますから!」

 

最古参の3人が、私の道を切り開いてくれる。目的はたった1つ、防空埋護姫の救出。

 

「御託は並べ終えましたか? では宣言通り、1人ずつ息の根を止めてあげますよ」

 

小型の鯨型艤装に備え付けられた三連装砲が火を噴き始めた。照準は的として大きい大発動艇。掠めても危険な威力なのは前回確認している。

ここからは響さんの本領発揮。主砲による砲撃は、さすがに行動予測が通用する。掠めるまでもないほどに大きな移動で砲撃を回避していく。あんな主砲を放っておきながら空母であることはそのままらしく、またもや尋常ではない数の艦載機が発艦した。

 

「頭を回せ……全部読み切るんだ……!」

 

疲労が溜まった頭で、今まで以上に思考をフル回転。負荷が段違いに大きく、激しい頭痛で顔を顰めた響さん。大発動艇の移動は充分だが、自分の守りが疎かになりつつある。

大和型の主砲以上の火力をこれでもかと乱射してくる空母鳳姫。さらには防空埋護姫も対空を後回しにした砲撃。そこに絨毯爆撃まで加わり、近付くことはおろか、回避もいっぱいいっぱい。

 

「響! 危ない!」

「っぐっ……」

 

吹雪さんの声は間に合わず、防空埋護姫の砲撃が艤装を掠めてしまい、それだけで中破。その反動でよろめいてしまい、空母鳳姫の主砲に照準を合わせられた。

 

「そこを撃ち抜けば、空母の内2人は木偶の坊でしたね」

「やらせるわけないでしょうがぁ!」

 

砲撃に合わせ吹雪さんが響さんの盾に。砲撃の前に主砲目掛けて吹雪さんの方が砲撃。しかし今度は防空が疎かに。尋常ではない数の艦載機からの絨毯爆撃が始まる。

圧倒的な火力で強引に押し潰そうとしてきていることが明確だった。あちらも消耗しているはずなのに、こちらの方が消耗が激しい。

 

「2人纏めて」

「させないわよクズが!」

 

そのタイミングで霞の魚雷が艤装に直撃。ダメージはほとんど与えられなかったが砲撃直前だったため、照準がズレてくれた。それでも衝撃波で吹雪さんは小破。響さんは吹雪さんに庇われたために、それによるダメージは無し。

絨毯爆撃はまだどうにも出来ていない。既に爆撃は開始しているため、回避以外の選択肢が無くなっている。そして、その回避先すら防空埋護姫が封じてくる始末。

 

「ちょっと我慢なさい!」

 

吹雪さんと響さんを自立型艤装で担ぎ上げ、イクサさんがその場から退避。響さんがその中でも大発動艇を安全な場所に退避させてくれていたため、空爆も何とか回避しきった。

 

「思ったより厄介な戦艦水鬼ですね。寝返って仇なすとは」

「そもそも貴女達の仲間になったのは私の意思のない強制よね。今の私は自分の意思でここにいるの」

「どんな理由があろうとも、姫様を裏切ったことには変わりないでしょう。当然、ここで死んでもらいますからね」

 

イクサさんに意識を向けている今がチャンスだった。私の狙いは防空埋護姫ただ1人。まずは高雄さんへ合図。

 

「余所見をする余裕があるのかしら?」

「貴女方は木っ端ですから。とはいえその魚雷は鬱陶しいですね。全員一線級というのは面倒ですよ」

「お褒めの言葉、どうも」

 

魚雷が直撃してもまだ焦げた程度。振り向いたタイミングを見計らい、連装砲ちゃんが飛びついた。視界を隠すようにちょこまかと動き、隙を作る。

 

「皐月ぃ!」

「あいよぉ!」

 

作られた隙で皐月さんが特攻。同時に私もアサを嗾けた。攻撃のためではなく、防空埋護姫と引き剥がすため。アサもしっかり間に突っ込む。防空埋護姫はそれを止めようと高射砲を乱射してくるが、アサがそんな簡単に止められるわけがない。我が鎮守府屈指の質量兵器だ。

 

「姫様に与えられたものを使うだなんて。今からでも遅くはありません。アサさんだけはこちらに屈しませんか」

「ご冗談を。寝言は寝て言ってもらえますか?」

「随分と態度が悪い」

「誰のせいでこうなったと」

 

大発動艇を狙っていた主砲がアサの方に向き、砲撃。いくら頑丈であるとしても、あの砲撃はまともに受けるのは危険だ。それでも、アサは躊躇いなく突っ込み、眉間の部分に直撃。装甲が何枚も剥がれたが破壊されることはなく、空母鳳姫と防空埋護姫の間を割り込むようにアサが突っ込み、思惑通り二分出来た。

それと同時に皐月さんが空母鳳姫に斬りかかっていた。自分の素早さを活かした速攻。あちらはそれ以上の速さを持ち合わせているが、アサとの連携により懐に潜り込むことに成功した。

 

「でぁーっ!」

「甘い。子供に私が倒せると?」

 

皐月さんの渾身の一撃が、匕首で簡単に受け止められる。そこに龍驤さんと雲龍さんの艦載機がさらに割り込んだ。

 

「艦載機同士で私に勝てると?」

「やってみんとわからへんやろうが!」

 

爆撃を繰り返す空母鳳姫の艦載機の一部が2人の艦載機を叩き潰す。さらに砲撃。狙いは当然大発動艇。爆撃回避のために延々と計算し続けているために相当疲労している響さんだが、ギリギリ回避させることには成功。衝撃波で大きく揺れるが無傷。

 

「そろそろ本当に邪魔ですね」

 

艤装の上から姿が消える。本体でやれる行動など、匕首による白兵戦のみだ。白兵戦組は特に司令官の訓練で目を慣らしてきている。狙いは皐月さんだったようだが、ギリギリのところで刀で受けた。

 

「重っ……!?」

「おねんねしていてください」

 

刀ごと皐月さんが斬られてしまった。胸から血を噴き出すが、致命傷には届いていない模様。そこだけは安心。だが時間が経つと命に危険が及ぶ可能性がある。

攻撃手段を失ってしまった皐月さんは、その場で膝をついてしまう。空母鳳姫の眼前のため、島風さんが連装砲ちゃんを使って早急に退避させた。

 

空母鳳姫を止めてもらっている間に、こちらは防空埋護姫の救出に入る。アサが分断してくれたおかげで、防空埋護姫は単独に。こちらには私の他に天龍さんがおり、蒼龍さんにも手伝ってもらえる状況。

 

『結構壊されたな……!』

「大丈夫。ここで終わらせる! 蒼龍さん、お願いします!」

「オッケー。もう残り少ないけど、なけなしの矢を使ってあげるから!」

 

蒼龍さんに艦載機を飛ばしてもらい、対空に気を向けさせる。防空の姫である本能か、艦載機が視界に入ると対空行動を優先するように感じたが、それが正解だったようだ。

視線が上に向かったことを確認し、私と天龍さんで突撃。魚雷は放たれなかったため、接近することに成功した。

 

「どうするつもりだよ朝潮!」

 

天龍さんが艤装の片方の高射砲を破壊してくれた。こちらもヨルが首を伸ばし、もう片方の高射砲を噛み砕く。これで魚雷は怖いがほぼ無防備だ。

 

「気絶させます。私は、()()()()()ですから」

 

初めてやるから少し怖いが、今の私なら出来るはずだ。艤装もある。今まで何度も扶桑姉様のそれを見てきた。やり方はわかっている。ぶっつけ本番、一発勝負。

 

撃ち抜くように、防空埋護姫の額に思い切りデコピン。我が鎮守府が誇る、扶桑型の伝家の宝刀。

 

渾身の力を込め、脳を揺らすように。だが破壊はしない。私の力では粉砕するようなことは出来ないだろう。それでも、機関部艤装のパワーアシストがあれば、普通のダメージではないはずだ。

タァンと小気味良い音と共に、防空埋護姫の動きが止まった。ゆっくりと白目を剥き、その場に倒れ臥す。成功だ。

 

「ま、マジかお前」

「扶桑型3番艦なので」

 

天龍さんに引かれたような気がしたが、この激戦の中で最善の行動が出来たのだから何も問題はない。

 

これで防空埋護姫は対処出来た。これで12対1……と言いたいところだが、響さんは大発動艇の回避に専念しなくてはいけないくらい消耗し、皐月さんが一撃貰ってしまいほぼ大破。命に別状はまだ無いが、時間をかけるわけにはいかない。戦力は残り10人。

 

「……マイさんがやられましたか」

「殺してはいませんよ。助けて欲しいと訴えられましたからね」

「そうですか。その子もこちらを裏切ろうとしたわけですね」

 

倒れ臥す防空埋護姫に向けて主砲を向けた。あれだけ防空に使っていたのに、戦闘出来なくなったらすぐに捨てる。北端上陸姫と同じような行動。さすが側近、そういうクズなところまでよく似ている。

 

「裏切り者には死ですよ」

「やらせてたまるか!」

 

凶悪な火力の砲撃を、刀で打ち払う天龍さん。相当重そうだが、無傷で状況を回避。

 

「おうっ! その子も逃すよ!」

 

島風さんが防空埋護姫を掴んで退避。ブーストした素早さを遺憾なく発揮し、攻防一体の技として大活躍。怪我人は大発動艇に載せたいところではあるが、あまりやりすぎると空母隊の足の踏み場が無くなってしまう。申し訳ないが、戦場から大きく離れた場所に寝かしておくことに。

 

「後は貴女1人ですよ。覚悟してください」

「覚悟? 未だに傷1つ付けられていないというのに、何を大それたことを」

「汗、かき始めてますね。リミットが近いようですが」

 

ついに空母鳳姫の底が見え始めた。耐えて、耐えて、耐えて、ようやくここまで来た。ここからが正念場だ。

 

「今回は絶対に逃がさへん。ここでお前の命は終わりや」

 

龍驤さんも式神は残り少ない。雲龍さんはほぼ底をつき、蒼龍さんもギリギリ。対する空母鳳姫は無限に出てくるのでは無いかといえるほどの艦載機。その全てを吹雪さんとイクサさんが処理している。少しでも集中力が切れたらおしまいの過酷な状況だ。

 

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