欠陥だらけの最前線   作:緋寺

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自らの在り方

近況報告をするために志摩鎮守府を訪れている私、朝潮。陽炎さんの心の強さに感心しつつ、リクエストされた演習の方を開始していた。

私が報告をしている間にも演習は繰り広げられており、先程、白露時雨ペアと村雨峯雲ペアの演習が終了。白露さん大破判定による時間切れにより、惜しくも敗れてしまった。本当に研鑽を積んでいることがよくわかる。

 

そして次、リクエストの通り私が出る。相手は陽炎さんだが、1対1だろうか。以前、私達の鎮守府で行われた合同演習のときは、1対5なんてことをやったが、今回はどうするつもりだろうか。

 

「こっちは3人で行くわ。私と、不知火と、黒潮ね」

「わかりました。こちらは……私1人ですね」

 

大潮は汚れを取っている最中。白露さんと時雨さんは今終わったばかりだ。連戦でもいいかもしれないが、出来るなら休息を取った方がいい。私は1人ピンピンしているわけだし、リベンジを受けたのは私。まずは私が相手をするのがいいだろう。

 

「まぁ3人みたいなものです」

「2人分じゃなくて?」

「はい、同居人が増えましたので。とはいえ、あまり使わないかと思います。先日、演習に向いてないと文句を言われた程でして」

 

アサとヨルを展開。どちらも質量兵器。直撃すれば、演習でも命が危ない。神通さんとの演習の時のように、ぶつけるのではなく波を立てるために使うくらいなら良さそうではある。

 

「それ、直接ぶつけてくるの?」

「そうなるので、演習ではこれで攻撃しませんよ。あ、でも艦載機はこれからしか発艦出来ないので、牽制には使わせてもらいますね」

「さすがにこれはキツイか……」

 

演習だとアサもヨルも不完全燃焼になってしまうだろう。ヨルはまだ加減がわからない可能性もあるし。実質、ヨルの実戦経験は戦艦天姫への牽制だけだ。夢の中での戦いも殺し合い。()()()()()()()がわかるかどうか。

とはいえ、この演習で表に出すのはアリかなと思っている。戦闘センスが高いのは私も理解している。遊ぶように戦うこともきっと出来るはずだ。

 

「私達3人で相手しましょ」

『私も出ていいの?』

『ちゃんと加減が出来るなら、やらせてもらえ』

『やるー! 殺さないようにすればいいんだよね?』

『半殺しもダメだぞ。ちょっと痛い程度だ』

 

わかっているのかわかっていないのか。本人にやる気があるのなら、ちゃんと出番をあげよう。幸い向こうには3人いることだし、1人ずつにしてもいい。

 

 

 

あちらも準備が整ったようで、向かって並び立つ。なんだか不知火さんが眠そうに見えるのは気のせいだろうか。

 

「でかいのと尻尾て、どないすりゃええんよ」

「あと本体で白兵戦らしいわ」

「ならば、近付けさせない方がいいでしょう」

 

早速作戦会議の様子。前に演習したときとも、その前に演習したときとも違う姿。そもそも攻撃方法すらまだわかってないと思う。黒潮さんは観察力がいいため、長期戦はなるべく控えたい。

今までの経験上、順番的には黒潮さん、不知火さん、陽炎さんの順で行きたい。ブレイン2人と、本能で動く陽炎さんは、早急に切り離したいところだ。

 

「お好きなタイミングでどうぞ。こちらも準備させてもらいますので」

 

アサから艦載機を全機発艦。24機全てを自分の周囲に配置。やはり今回もヨルの水上機は開始からは出さない。

 

「増えてますね」

「倍やん。どないしよか。まずアレ処理した方がええんちゃう?」

「よし、じゃあまず艦載機から行こう。近付かれたら各々どうにか対策!」

「そんな簡単に出来ることではないです」

 

陽炎さんの砲撃が開戦の合図。艦載機1機を墜とそうと放ったようだが、簡単には破壊されない。これで私は戦艦主砲だってガードしようとしているのだから、駆逐主砲に墜とされても困る。

そういえば神通さんは普通に主砲で墜としてきた。何なんだあの人。

 

「うわ、硬っ」

「威力が足りませんね。3人で1機ずつやりましょう」

「ほんなら陽炎が好きに決めてええよ。合わせたるから」

 

そんな簡単に狙いを合わせることが出来るのだろうか。以前見た連携から、本当にやってきそうで怖いが。

 

「もういいですよね?」

「あーごめんごめん、よっしゃこーい!」

 

3人同時の砲撃。本当に1機の艦載機に狙いが集中し、見事に破壊された。予想だにしていないことだったため、私も驚いてしまう。同じ位置に3撃入れば、戦艦主砲よりも火力が出るということか。それにしても、寸分違わない精度の攻撃とは恐れ入る。精密射撃とは何か違う気がするが。

 

『マジかあいつら。簡単な打ち合わせだけだぞ』

「多分あれ、精密射撃じゃないわ。陽炎さんがああしそうだからってところに撃っただけよ」

『なんだその連携。いや、前にもあったか』

 

周りにサポートさせるように引っ張る陽炎さんならではの連携。連携という言葉を使っていいかもわからないが、とにかく今は各個撃破に努めることにする。

私が艦載機を低空で飛ばしていたから主砲で破壊されたので、本来の使い方をすればいい。主砲では届かない位置まで半分は上昇させ、爆撃開始。もう半分は防御のために周りを漂わせる。

 

「ようさん降ってきたで!」

「ならば本体を狙いますか」

「白兵戦仕掛けられるだけだって。とりあえず回避しながら雷撃!」

 

魚雷に関しては、艦載機による射撃で処理するか、アサを防御に使うかしかない。頑丈に作られているとはいえ、何度も当たれば破壊される。それは避けたい。幸い魚雷の進行方向は予測出来る。なるべく大きく回避し、かつアサを使えば、無傷で突破は出来るだろう。

しかし、私があちらに勝つためには、どうしても接近しなくてはいけない。あちらは既に私の接近を警戒しつつ攻撃してきている。3人同時、かつ別方向から息のあった攻撃は、思った以上に厄介。

 

『どうする』

「近付くしかないでしょ」

『近付き過ぎると爆撃当たっちゃうよ』

「その辺りは気をつけて」

 

回避をしながらゆっくりと前進。神通さんとやるのとは違い、人数がいるということは広範囲に攻撃されるということ。そういう意味では神通さん相手の方がやりやすい。

 

「ヨル、お願い」

『りょーかい!』

 

尻尾が前方に伸び、私に向かう砲撃を弾く。これもあまりやり過ぎると破壊されてしまうので、必要最小限に。

こちらの爆撃を回避しながらの砲撃だというのに、やけに精度が高い。霞と組んで演習した時よりも、こちらの行動を制限する動きが強まっている。なるべく近付かせないように、近付くにしても遠回りするように。わざと当てないようにしつつ、回避方向を固定化してくる。

 

『3人が似たような戦術だな』

「陽炎さんが突出しやすいくらいね。サポートが上手いわ」

 

陽炎さんは好き勝手撃っており、それを不知火さんと黒潮さんが全力でサポートする形。それがしっかりと連携になっているのだから恐ろしい。

 

「陽炎、雷撃を」

「オッケー! 黒潮も一緒にお願い!」

「了解や。ほな行くでー!」

 

私が近付いたところに雷撃。回避しづらいタイミングをキッチリ狙ってくるあたり容赦がない。やるなら跳び越えるのが手っ取り早いか。だがそうすると、1人主砲を構えた不知火さんに撃ち墜とされる。

 

『よし、交代だ』

「よろしく。艦載機はまだあるわ」

『おう。私はシラヌイを貰うぞ』

 

ここで交代。アサを表に出し、私が大型艤装担当に。使うことはないのでただの待機である。

 

「陽炎、代わったで」

「よくわかるわね。よし、迎撃準備!」

 

交代まで予測していたか。黒潮さんの観察力を少し過小評価していたかもしれない。すぐに主砲を私に向けてきた。魚雷を跳んで避けるのも狙い通りだったのかもしれない。

ならば、本来ならあり得ない行動でそれを上回ろう。それは私よりアサの方が上手く出来る。

 

『艦載機は残り8』

「じゃあ全部使うぞ」

 

大型艤装が身体から独立したことをいいことに、久々に艦載機を足場にした移動。魚雷を避けるために跳んだ後、空中での迎撃を避けるために艦載機を足場に方向転換。今の体型でも、タイミングを合わせれば4つ使うことで足場と出来た。艦載機の出力も上がってくれてるおかげである。

 

「空中で方向転換!?」

「陽炎、あっちや! 足場作っとる!」

 

即座に切り返してきた。既に作ってあったもう1つの足場に向けて砲撃してきている。足場を狙ったわけではなく、移動している私がそこに着地した瞬間を狙っての砲撃だ。勢いは止められない。ならば

 

「ヨル!」

『はーい! ガード!』

 

砲弾はヨルにガードしてもらい、それを振った時の遠心力を使い跳ぶ方向を変更。足場も移動させ、そのまま真っ直ぐ不知火さんへ。

想定していた順番は狂ってしまったが、ここからは速攻だ。空爆も止め、全艦載機を手元に戻し、迎撃が間に合わない速度で不知火さんに突っ込む。

 

「悪いがまたお前からだ」

「お断りします。不知火を狙うことも承知の上です」

 

直行するところに割り込んできたのは陽炎さん。自爆覚悟にしか見えない行動に驚きを隠せない。

なるほど、陽炎さんはアサに近い。本能のままに動いている。それを不知火さんも黒潮さんも理解しているから、手綱を握るかのように連携しているわけだ。まるでドッグブリーダー。当然陽炎さんが犬。

 

「もう方向転換出来ないでしょ! 貰ったわ!」

「っは! やるなお前!」

 

真正面からの砲撃。当たれば轟沈判定は免れない。手元に戻した艦載機を全て全面に配置し、無理矢理壁とした。陽炎さんの砲撃を艦載機で阻むことに成功。

 

「これもダメ!?」

「危なかったぞ。だから、一番はお前だ」

「にゃーっ!?」

 

ヨルが陽炎さんの胴体に絡みつく。本来ならこれで絞め落として終わり。だが演習でそんなこと出来ない。よって、顔を舐めた後に放り投げる。

舐めるという戦闘には似つかわしくない行動ではあるものの攻撃は攻撃。顔にモロに入っているため、ヘッドショット判定となり、陽炎さんは轟沈判定。

 

「よし、次はヨルだ。やれ!」

 

ここであえてヨルに交代。アサが大型艤装のコントロールに入り、私は尻尾のコントロールに移動。

 

「わ、こんなところで交代なの? じゃあ、この人やっちゃうね」

「は、誰やこいつ!?」

「さっき言っていた3人目でしょう!」

 

ヨルが狙いを定めたのは不知火さん。陽炎さんを退かしたので一番近い。もう一度艦載機を足場にし、不知火さんに抱きつく形で突っ込む。完全に密着した状態になったため、魚雷も撃てず、主砲も撃ちづらい状態。

 

「えーっと、こう!」

「ぬいっ!?」

 

軽めにデコピン。それでも結構酷い音がした。頭への攻撃のため、当然轟沈判定。ヨルが抱きしめただけでも身体にダメージがあったようで、ぐったりしてしまった。

 

「ご主人、最後どーぞ」

 

ヨルに主導権を渡された。残ったのは黒潮さん。陽炎さんは顔を舐められ、不知火さんはデコピン。なら、最後に残っているのは。

 

「私じゃ無くても出来るけど、これでおしまい」

「わぷっ!?」

 

顔面に艦載機から水鉄砲。これで全員ヘッドショットによる轟沈判定で終了。

 

最後は連携を崩すために突撃してから、場をしっちゃかめっちゃかにした勝利。陽炎さんが真正面に来た時はさすがに驚いたが、アサが咄嗟に対応してくれたので助かった。ヨルによる防御もあったことで突撃力もある。

自分の戦い方が完全に定着したように思えた。任せるところは任せる。やれるところはやる。私のやれるところはたかが知れているかもしれない。単独戦闘の場合はアサに代わるのが吉。私は皆で行動する時の指示役として専念する方がいい。

 

「舐められた……」

「デコピンですか……」

「水鉄砲て……」

 

三者三様の項垂れ方。水鉄砲は良いとして、他の2つは演習でもなかなかお目にかかれない倒され方である。特に顔を舐められてヘッドショット判定なんてまず無い。

 

「レアな経験をしましたね」

「嬉しくないわよ!」

「あれ、本番では胴体絞め壊してますし、頭も噛み砕きますから」

 

さすがの陽炎さんもゾッとしたようである。だが、これくらいではへこたれないのが陽炎さんだ。すぐに起き上がって、こっちを指差しながら高らかに宣言。

 

「次はこうはいかないわ! 絶対勝ってやるんだから!」

 

自然と笑みが溢れる。思考の海の中で、楽しんだアサとヨルも笑顔だった。陽炎さんと、ここの皆と演習するのは、正直に言えばとても楽しい。私まで好戦的になってしまいそうだが、呑み込まれないように踏ん張る。

またここで演習が出来るように、今の戦いを皆で終わらせたいと改めて思った。

 

 

 

お昼前には帰投することになった。リクエストに応えて何度か演習をさせてもらい、充分すぎるほどに楽しませてもらった。私はさておき、皆勝ったり負けたりの互角。白露時雨ペアは村雨峯雲ペアにリベンジを果たし、大潮も陽炎さんと戦ったりしたりと、満足の行く出向となったようだ。

 

「例の件、こちらでも探っておく。怪談話なんかで終わらせたくないからね」

「はい、是非。予想通りであるなら、確実に対処が必要です。お伝えしたことで十全と行くかはわかりませんが、お気をつけて」

「ああ、有識者に教えてもらえたのは良かった。誰も被害を出さずに終わらせるさ」

 

自信満々の笑みを浮かべる志摩司令官。フラグが立ってそうではあるものの、志摩司令官はこんなことで終わるような人ではない。対処の仕方は教えている。想定外のことも、しっかり乗り越えられる力を持つ人だ。

 

「次に会うときは、何もかも終わっていることを祈っているよ」

「はい、何かありましたら、またよろしくお願いします」

 

敬礼をし、帰投。私以外にも皆が息抜きになったようだ。いつもと違うことをやるのは、それだけで気分転換になる。次にまた来れる時まで、私達は奮闘し続けるのだ。

 

平和な時間はもう少ないと、何処かで察していたのかも知れない。他の鎮守府との交流を優先し、繋がりを深めた。私は死ねない約束を次々と増やした。

今の自分の在り方を再認識する。陽炎さんのリベンジを受けるためにも、私は死ぬことが許されない。皆が私が生きることを望んでくれている。それだけでも活力になるというものである。

 




志摩鎮守府で怪談話に怖がっていたのは、不知火です。
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