欠陥だらけの最前線   作:緋寺

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姉妹揃って

索敵専門としての戦闘をした翌日、私、朝潮に朗報が届いた。ついに練度が改二丁に届いたそうだ。目指していた最後の段階に辿り着く。ここからさらに索敵能力を上げ、皆に貢献していかなくては。

 

「姉さん、姉さん!」

「霞、どうしたのそんなに慌てて」

「私、改二の練度に届いたわ!」

 

昨日の戦闘で獅子奮迅の活躍を見せた霞。8体の敵駆逐艦の内、6体を倒した快挙は練度にも繋がったようだ。

 

「ふふ、よかったわね」

「それもこれも姉さんのおかげよ。昨日の戦闘が最後の一押しになったみたいなの」

 

私の指示通りに動いたおかげで迅速かつ確実に敵が倒せたと霞は喜んでいる。そう思ってもらえているなら、私のやり方はいい方向に進んでいるということだ。

皆が私の指示を信じてくれているなら、私もその信頼に応えなければならない。

 

「私も改二丁に届いたわ。一緒に改装ね」

「姉さんもなのね。なら後から早速改装しましょ。そして皐月に目にもの見せてやる」

 

身長が伸びるかはその艦娘次第なところはあるだろう。私は伸びた。それだけ。朝潮型全てに言えることなら霞の望む改二になるだろう。

 

「あ、姉さん体調は大丈夫なの? 朝は良さそうだったけど、ぶり返したりしてない?」

「大丈夫。電探を起動してる時だけだし、昨日は初めてだったからすごく疲れただけ」

 

そのおかげでお風呂で酷い目にあったが。

今までにない過剰な回復を受けることになり、過去最高のダラけを見せてしまった。皐月さんも同じようにダルンダルン。初めてというのは、思った以上に負担がかかる。

 

「くれぐれも無理はしないでよ」

「わかってるわ」

 

だが戦闘での頭痛は耐え難いものだった。早くこの情報量に耐えられるくらいにならなくてはいけない。

 

 

 

改二が実装されている鎮守府の艦娘は残り霞だけだった。その霞の改二が決まったことで、鎮守府の戦力は、こと改装という事に限れば最大にまで引き上げられたこととなる。ここからは個人的な成長だ。

私は当面、この電探と付き合っていくこととなる。せめてもう少し長い時間機能させられれば、戦場で消耗し切ることもないだろう。おそらくこれは、改二丁になったところで変わらない。私個人の力である。

 

「おめでとう霞君。君で最後になってしまったが、改二改装だ」

「ええ、これで姉さんと並んで戦いやすくなるわ」

 

最後の改二ということで、今回は司令官も同席している。同時に私も改二丁に改装だ。コンバートできるとは言われているが、改二より改二丁の方が私のできる事にあっているのだから、コンバートはせず、丁のままで今後戦う事になる。

 

「では行ってきたまえ。明石君が準備を整えているからね」

 

私は2度目となる改装。ドックを2回使うというのはとても稀だそうだ。

私の改装は、改から改二になるほどの大幅な改装ではないので大した時間はかからないとのこと。それに比べて霞は大幅な改装になるので少し時間がかかる。私の方が早く終わるのは目に見えていた。

電探を外し、ドックの横に置く。妖精さんも手を振ってくれた。

 

「じゃあ姉さん、後から」

「ええ」

 

以前と同じようにドックの中へ。すぐに眠くなるのはわかっているので、目を瞑ってその時を待った。

 

やはりあっという間。気付いたら眠っており、改装は終了していた。変わった感覚も無い。

 

「コンバート改装だから朝潮は早かったね。もう起きて大丈夫だよ」

 

明石さんの声が聞こえ、ドックの蓋が開く。前のように身長が伸びたような感じもせず、内部だけの改装かと考えていた。

 

「制服が変わりましたね」

「霞とお揃いじゃ無くなっちゃうかもね」

 

今までとは少し違い、上にボレロを羽織るようになっていた。胸元のリボンも変わっている。あとは改装前から穿いていた膝上のソックスが黒のストッキングに。それ以外に変わったところは見受けられない。

 

「霞が終わるまでに、艤装も見ておこうか」

 

機関部艤装のベルトの色が臙脂色になり、腰に爆雷のホルダーが付いたこと以外は、艤装もそこまで変化無し。今まで慣れ親しんでいたものからの変化が無くて、少し安心した。

艤装のチェックが終わり、電探を改めて装備している辺りで霞のドックの蓋が開く。

 

「もう終わったのね……寝てたからどれだけ時間が経ったかはわからないけど」

 

ドックから起き上がる。制服は私の改二の時と同じジャンパースカートに変化。私の時との違いはない。私が改二のままならお揃いだったかも。

 

「あ……目線が違うわ。姉さんと同じくらいになってる」

「改装前より身長が伸びたみたいね。朝潮型はみんなそうなのかも」

 

立ち上がるとわかる、霞の成長。今までは私が改二だったのもあり少し見下ろすようにはなっていたが、霞が改二になったことでまた同じくらいの身長に。私の方がやや高いくらいなので、姉としての尊厳は守れている。

少なくとも皐月さんよりは大きくなっているので、霞は大喜びだ。余程強いコンプレックスだったのだろう。だが残念ながら私と同じく胸は成長していない。

 

「霞ー、喜んでるとこ悪いけど艤装お願いね」

「ああ、ごめんなさい、少し興奮してしまったわ」

 

滅多に見せない満面の笑みの中、艤装を装備していく。

だが、ここで霞の表情が少し曇った。

 

「魚雷が脚に装着に変わってるわね……」

「今までずっと手持ちでやってきたものね。急に変わるのは勝手が悪そう」

 

霞の改二は、魚雷を腿に装備する。今までの戦術が取れないということだ。これは困る。

 

「そう言うと思って、手持ち用の魚雷にカスタム済みだから。そこから撃つこともできるけど、ちゃんと外して手持ちにできるよ」

 

さすが明石さんだ。見越して改良を加えている。手で持てない状況なら、腿に懸架するというイメージ。手ぶらになれるというのは、これはこれで使えそうなシステムだ。緊急時のヒメさんの運搬とかに役に立つ。

 

「助かるわ。さすがに今から戦い方を変えるのは辛いもの」

「じゃあ、お披露目行ってらっしゃい」

「ならまずは私から」

 

一度やっていることなだけあり、緊張も何もない。霞を置いてすぐに出て行った。

 

「私は制服が変わったくらいでした」

「いいとこの中学校に入学したんか」

「ランドセルのままですけどね」

 

相変わらずの龍驤さん。

実際、以前よりもより小綺麗なイメージになったと思う。龍驤さんのいう、いいとこの中学校というのも何となくわかる。露出がさらに控えめになったり、お洒落なボレロが付いていたりするのがなんとも。

 

「これが朝潮君の最終形だね。よく頑張ってくれた」

「はい、対空と対潜が強化されましたし、今の私のための改装です」

 

性能としても、私の欠陥(バグ)に合わせて作られたのではないかと思えるほど完璧な相性。できない主砲と雷撃が控えめになり、できる対空と対潜が伸びる。さらにはお荷物になった時でも耐えられるように耐久まで上がっていた。

 

「朝潮、霞は。霞はどうなったのさ!?」

「もうすぐ来ますよ」

 

皐月さんが今か今かと待っている。どうしても身長が気になるようだ。私の口から言うのは無粋だろう。

 

「姉さんのお披露目は終わったのよね。じゃあ皐月に見せつけなくちゃあね!」

「おお、霞も小学校卒業したんやな。おめでとうさん」

「成長してるーっ!?」

 

崩れ落ちる皐月さん。勝ち誇った顔の霞。

こちらも性能としても今の霞のための改二だ。雷装、つまり魚雷での攻撃力が格段に上がっている。今なら戦艦すら沈められるかもしれない。

 

「霞君は改二乙を目指さないんだったね。ならばこれが最終形だ。おめでとう」

「ありがとう司令官。姉さんは私が守るわ」

 

霞には頼りにしている。小柄な霞に肩を借りるのは少しばかり抵抗があったが、今なら躊躇なくいける。ただでさえ私は戦場で消耗しやすい索敵能力を買って出ているのだ。また肩を借りることもあるだろう。

 

「さぁ、じゃあ朝潮君と霞君は性能チェックだ。朝潮君はそこまで変わっていないとは思うが、念のためだよ」

「了解しました」

 

他の人達はここで解散。項垂れる皐月さんを龍驤さんが慰めていた。龍驤さんも改二で身長が伸びずに残念がっていた1人だ。だが龍驤さんはそういった部分にコンプレックスは持っていない。やたら天龍さんや白露さんの胸については弄るが、自分が小さいことに対しては何も思ってないそうだ。

 

 

 

改二の性能チェックを一通り終え、その足で哨戒任務へ。今回も霞と一緒に。私が対空と対潜どちらもできるようになったため、あと1人主砲役を連れていくことで哨戒可能となった。そのため今回は深雪さんが同行。

今回は北でも南でもなく西。少数の哨戒は北には絶対に向かわない。

 

「改二いいよなー。超羨ましいぜ」

 

深雪さんにはまだ改二が無い。そのため、どうしても駆逐艦としては一歩劣ってしまう。だからこその訓練である。

深雪さんは欠陥(バグ)が低速化のみのため、私達より多種多様な戦術が取れる。代わりに尖ったものがないという、いわゆる器用貧乏。白露さんが改二になっても主砲で追いついていけるだけ相当強いのだが。

 

「こればっかりは大本営頼りですから」

「待つしかないわよ」

「だよなぁ。それまでは地道にやるしかねぇよなぁ」

 

割と大雑把な性格だが、努力は欠かさない。だからこそ頼りにしている。安定した戦力が欲しい時は大概深雪さんだ。

 

「あ、索敵します」

 

所定位置に着いたので、電探を起動。同時にソナーも起動。海中の方が範囲は狭いが、頭痛の種にはならないので楽な方だ。

改二丁になって少し変わったところが、ソナーで索敵できる範囲が拡がったところだ。対潜能力の向上は、そんなところにまで影響が出るらしい。

 

「上も下も何もありませんね。次に行きましょう」

「はー、便利なもんだなぁ。哨戒ってもしかして、朝潮いればほとんど終わるんじゃね?」

 

基本的にはそうなる。だが、さすがに攻撃方法のない私が1人で哨戒は不可能だ。今だと霞と深雪さんが私の護衛という状態。

 

「姉さんばっかりに頼るんじゃないわよ。ほら、目視確認」

「うっす。何もありませーん」

 

本当に手早く終わっていく。電探も短期間の起動で終わるので、頭痛は一切無い。頭の上の妖精さんも少し退屈そうだ。戦闘もないただの哨戒でフル稼働させて倒れてしまっても困るので、今の間だけはお休みしててもらおう。

 

「こっちの方はあまり敵がいないわね」

「北に本拠地があんだろ? そっちじゃなけりゃ少ないんじゃね?」

 

確かに、北は行けば敵が出るというくらいいる。海が赤いのだから敵地だろう。だが、それ以外の方角はそういった現象も起こっておらず、穏やかな海だ。稀に出現するが、その程度である。

 

「何もないなら何もない方がいいでしょう。なるべく多めに索敵もしてますよ」

「まぁなー。3人で戦闘はさすがにしんどいし」

 

数が少なければこの数でも倒せるとは思う。元々安定のある深雪さんに、改二となった霞がいれば、おそらく1部隊くらいなら行ける。鬼級とかはさすがに無理だが。

 

「索敵しました。海上、海中、共に敵影ありません」

「うお、早い。こんなスムーズな哨戒初めてじゃね?」

 

今回の哨戒は何事もなく終わりそうだ。改二の性能を戦闘でチェックすることはできなそう。私はいいが霞は少し残念そうにしている。戦闘は無ければ無い方がいい。

 

「また姉さんの指揮で戦いたいわ」

「そんなに良かったのか? あとから潮から聞いたんだけど、戦いやすかったとは言ってた」

「戦いやすいなんてものじゃないわよ。見ずに後ろに魚雷撃ったら敵2体沈むのよ?」

 

あれはたまたま。

でも戦いやすいと思ってもらえたなら本望だ。全員に指揮をすることは出来なかったが、大分上手くいったとは思っている。

 

「じゃあ今度はあたしも一緒の戦場で頼むわ。そんなに言うならどんなもんか見てみたい」

「機会があれば。演習とかでもいいんですけどね」

 

演習でこの索敵は一度試してみたかった。単純な動きが多いイロハ級を相手にするより、頭を使うことが多くなる。そういう訓練ももう少しやりたいところだ。

 

結局、何事もなく哨戒任務は終了。たまにはこんな静かな任務もいい。電探も過剰に使っていないので頭痛も無く、消耗していないと言ってもいいほどだ。

自分が少しずつでも成長しているのを実感できる。改装としてはゴールしたが、高みはまだまだ上にある。それは霞も同じこと。姉妹揃って、もっと上を目指そう。

 




ついに朝潮改二丁に。また、霞も改二になったため、この鎮守府はいぞくの艦娘は最低練度75となります。少ないとはいえ、安定して強い。
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