欠陥だらけの最前線   作:緋寺

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鎮守府の姿

駆逐艦、軽巡洋艦と見たため、次は重巡洋艦の選定。私達の鎮守府の重巡洋艦には、足りない部分がないといえるくらい精鋭が揃っているため、数を増やしたいという理由での選定になる。青葉さんの命中精度、最上さんと古鷹さんの万能性、高雄さんのスナイプと似たようなことができる人がいるととてもありがたい。

 

「重巡洋艦に知り合いはいないのよね」

「御姉様も初めてなのですね。どのような方がいるのでしょう」

 

相変わらず春風は私の後ろに下がる。重巡洋艦の方々は私も初めてなのだから、少し怖い。

ひとまず電探の反応から重巡洋艦の集まる場所に向かうことにした。が、そこには見知った反応もあった。

 

「照月さんとレキさんもいるんだけど」

「走り回ってそこに行き着いたと……。レキさんらしいです」

 

春風は簡単に言うが、割とこれは重大な問題になりかねない。照月さんが一緒にいるとはいえ、戦艦レ級が1つの場所に留まっているということは、拘束されている可能性だってあるし、一触即発な状態の可能性もある。反応的に艤装を展開しているようではないが、1つの反応に接触しているようにも見える。

 

「誰かに接触している……? ちょ、ちょっと行ってみましょ」

「気になりますね。行きましょう」

 

レキさんが何をしているか気になるので、少し急いで向かうことにした。万が一のことを考えておかないと。

 

 

 

重巡の方々は今日は訓練がないらしく、いつでも出撃できるように待機室に詰め寄っていた。とはいえ出撃が無ければただの談話室。お茶を飲みながら談笑するのみである。事実上の非番。

レキさんはその待機室にいた。そこで待機していた高雄型重巡洋艦2番艦、愛宕さんに抱きついて気持ちよさそうに眠っていた。照月さんはすごく申し訳なさそうな顔。

 

「れ、レキさん……」

「いいのよ〜。可愛らしい子ねぇ」

 

レキさんの頭を撫でながら話す愛宕さん。鎮守府内を探検した結果、ここにたどり着いて疲れて眠ってしまったのだろう。それにしてもあの眠り方はあまりよろしくない。

 

「この子と照月ちゃんから話は聞いてるわ。援軍の選定をしているのよね〜?」

「そこら中で言い回っているようですね。はい、その通りです」

 

こちらでも話が通っているようなので、早速本題に入る。私の重巡洋艦の知識が偏っているというのもあるので色々教えてもらいながらの選定になる。

 

「そちらに航空巡洋艦っているかしら?」

「最上さんの艦種ですね。でも最上さんは欠陥(バグ)の都合上、航空の要素は使えていません」

 

航空巡洋艦は重巡洋艦の別の形。通常の重巡洋艦とほぼ同様の能力に加え、水上爆撃機を装備することで航空戦にも参加できるようになる万能艦種である。

最上さんもその艦種ではあるが、水上爆撃機の発艦は夜にできないため、改装もせず重巡洋艦のままとなっている。

 

「なら、そちらを援軍に使うのはどうかしら〜」

「なるほど確かに。私達の鎮守府は空母も少ないので、航空戦力が増やせるのは大きいですね」

「というわけで、鈴谷ちゃ〜ん、熊野ちゃ〜ん」

 

愛宕さんに呼ばれたのは、その航空巡洋艦の2人。最上型重巡洋艦、もとい航空巡洋艦3番艦の鈴谷さんと4番艦の熊野さん。最上さんの妹ではあるものの、制服はまったく違い、外見も大きく違う。言われても妹というイメージが無い。

 

「あたごんどったの? って、いつの間に子持ちになったの」

「この子はレ級のレキちゃんよ〜」

 

鈴谷さんは見た目通りといっては失礼だがノリが軽い。誰とでも仲が良くなるような人だ。噂自体は回っているようで、レキさんを見ても驚く事もなかった。むしろそれをネタにするほどである。

 

「ヌメヌメしない深海棲艦なら可愛いもんだねぇ。鈴谷この子なら好き」

「ヌメヌメって……」

「イ級とかヌメヌメすんじゃん。ヌ級とかも」

 

それを素手で殴り倒している山城さんはそんなこと言ってなかった気がする。素手でというところが既におかしいのだが。

 

「鈴谷、あまりグイグイ行くと失礼ですわよ。貴女方も鈴谷がごめんなさいね」

「い、いえ、大丈夫です。そういった感想は初めて聞きますので」

 

熊野さんも見た目通りのお嬢様然とした人。物腰穏やかで、あちら側ではない春風とは相性がよさそう。

2人は正反対のように見えるが、北上さんと大井さんのコンビと同様にコンビプレーが得意だそうだ。主砲も魚雷も使える上に、航空攻撃まででき、さらにコンビでそれを2人以上の威力に上げることができるとなると、使わない理由はないだろう。

 

早速援軍の件を話す。まだ2人で確定というわけではないが、知っておいてもらって損はないはずだ。選ぶかどうかはさておき、そういうことをしているということを知ってもらった。

 

「戦力強化の援軍でしたら、わたくし達が適任でしょう。ねぇ鈴谷?」

「だよね熊野。鈴谷達はもう一段階進化を残しているからね!」

「わたくし達は軽空母にもコンバート改装できますのよ。足りない戦力を補ってくださいまし」

 

私や霞と同じようなコンバート改装ができる2人だが、艦種自体がまるっと変わるのはこの2人しかいない。瑞鶴さんが装甲空母になれるそうだが空母は空母。巡洋艦から空母となると話が違う。

 

「そっちは何が足りないの? 足りない方を鈴谷達が補えばいいんでしょ。言ってみ言ってみ」

「どちらかといえば空母が足りませんが、航空戦力が足りないということなので、航空巡洋艦が助かりますね。最上さんが航空戦力にカウントできませんので」

 

最上さんの名前を出すと目がキラキラと輝き始めた鈴谷さん。ここの鎮守府には最上さん、そしてもう一人の最上型である2番艦の三隈さんがいないらしく、姉の存在に憧れていたそうだ。

 

「うちの姉ちゃん、そんなヤバイ欠陥(バグ)なの?」

「眼を壊しているんです。日光と探照灯の光が見えなくて、夜にしか出撃できないんです」

「うっわ、それかなり重症じゃん。普段大丈夫なの?」

「日中の活動が制限されています。今は電探のアイマスクのおかげで手助けなしで歩けるようになりましたが、以前までは夜まで寝ているか部屋にこもるかしかなくて……」

 

最上さんの実情を話すうちに鈴谷さんも熊野さんも悲しそうな顔に。やはり姉がそんなことになっているのは辛いのだろう。もし援軍に呼んだとしても、一緒に戦える状況は本当に限られている。日中に一緒にいることもままならない。

 

「朝潮さん、我々に貴女達のことを詳しく教えてくださいませんこと? 存在は知っているものの、どれほど重篤なものかは理解していませんの」

「そだね……うちら全然知らないもんね。鈴谷も知りたいかな。君達がどういうところでどういうことしてんのか」

 

叢雲さんからも少し聞いているが、私達の鎮守府がどういうものかを細かく知っている艦娘は実は少ない。本来解体対象となる欠陥(バグ)持ち艦娘を運用している最前線の鎮守府という程度だそうだ。ここの鎮守府はそれに加え、共存可能な深海棲艦も仲間にしているということも伝わっている。

どんな欠陥(バグ)が存在するか、どんな運用の仕方をするかなどはまったく伝わっていない。私達の戦闘方法なんて以ての外。

 

「わかりました。私達の復習も兼ねてお話しします」

「よろしくお願いしますわ」

 

鎮守府のことを説明するだなんて初めてのことだが、わかりやすく伝えることができるだろうか。

 

 

 

端的に私達の鎮守府のことを話した。ひとまず望まれた鈴谷さんと熊野さん、そして未だレキさんが抱きついて寝たままの愛宕さんに聞いてもらうことに。

足りない部分を補いながら戦うという方針自体が、本来鎮守府には存在しないもの。私や春風が話す内容は、ここの鎮守府に所属する艦娘にとって真新しいことばかりだ。

 

「以上です。私達の鎮守府、わかっていただけましたか?」

「すごいわね〜。私達では考えられないような環境ね」

「予想以上でしたわ」

 

鈴谷さんに至ってはまだ頭をひねっていた。

特に混乱していたのが、自分もコンバートで行うであろう軽空母のこと。私の鎮守府の軽空母は龍驤さんしかおらず、その龍驤さんは浮き砲台である。曳航しない限り戦場に出ることすらできず、必ず1人が出撃を手伝うことになる。

 

「海の上で動けないなんてありえないよ……それで空母トップの実力って凄すぎない!?」

「誰かしらが曳航できれば制圧力が段違いになりますから。基本的には私が曳航ですね」

 

龍驤さんと蒼龍さんを曳航するのは、唯一攻撃不能である私が基本だ。少しずつではあるが曳航の訓練も始めている。特に龍驤さんは、小柄なおかげで曳航もしやすく、艦載機の発艦が弓を射るより手早い。曳航しながら対空砲火をしていても、龍驤さんへの影響はかなり少なく、戦場では十全とは言わずともいい成果が出せている。

 

「ていうか、鈴谷達そんな戦い方できる自信ないよ!」

「何処にでも配置できる艦娘が援軍として欲しいんです。汎用性のある艦娘、数えられるほどしかいませんから」

 

特殊な欠陥(バグ)のせいで、艤装に難は無いが出撃が規制されている艦娘は、ブレーキの効かない那珂ちゃんさん、紙の装甲である長良さん、日中出撃できない最上さん、あとは浮き砲台組、低速化組、オーバースペック組。こう数えると、思った以上にいる。

 

「岩礁帯だと魚雷が使いづらいので高雄さんが出られません。混戦していると索敵ができない古鷹さんが出づらくなります。そもそも昼だと最上さんが出られません」

「これはお手伝いしがいのある現場ではなくて?」

「えらい場であることはよーくわかった」

 

話しているうちにレキさんが目を覚ました。寝ぼけ眼で愛宕さんの顔を見るなり、もう一度胸に顔を埋める。気に入ったらしい。

 

「テンネエチャンミタイダ」

「ああ……天龍さんに近いかもですね」

 

ひとしきり感触を楽しんだ後、愛宕さんから離れた。そのまま今度は私に抱きついてくる。

 

「ナンノハナシシテタ?」

「私達の鎮守府がどんなところかを話してたんですよ」

「イイトコロダゾ! トモダチイッパイ! タノシイ!」

 

レキさんも鎮守府の良さを説明していく。欠陥(バグ)が何たるかを話すわけでなく、ただただ鎮守府が楽しい、住み心地がいいということだけを、子供の言葉で伝えた。私が話すより説得力があった。

 

「ドウダ! レキノセツメイ!」

「よく頑張りました。わかってもらえましたよ」

 

鈴谷さんも熊野さんもいろいろと理解したようだ。少なくとも欠陥(バグ)は悲観するものではないと。最上さんの件も、かなり重症ではあるが、楽しくくらしているのは間違いない。あの仮面もなんだかんだ気に入っているみたいですし。

 

「オッケー。そっちの鎮守府がいいところなのはよくわかったよ」

「わたくし達を是非使ってくださいまし。少なくとも、そちらにお邪魔したいと思いましたわ」

 

割と簡単な話ではあったが、こちらの在り方はわかってもらえたようだ。それで興味を持ってもらえたのなら御の字。

 

「仮面つけた姉ちゃんにも会いたいし」

「それがメインですか。結構驚きますよ。軽巡棲姫の仮面ですよ?」

「なんでそうなんの!?」

 

この反応もわかる。

 




これにて選定は終了。大分多いですが、その全員を使うかは浦城提督と秘書艦叢雲の采配。
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