本日の朝の会議の議題は、今後の援軍迎え入れについて。
援軍を迎え入れるためには、もう少し邪魔な小拠点を対処する必要がある。特に南寄りの拠点は援軍がこちらに来ることを邪魔してきそうなので早急な対処が必要である。
「北の大拠点も掃討任務の継続で拡大を防ぐことができている。残り僅かとなった小拠点を鎮圧し、援軍を迎え入れる準備をしよう」
「援軍はどれくらい来るんだ?」
「私とガングートさんで選定した結果、現状各艦種2〜3人というところです。なので多くて15人ほどですね」
今この鎮守府に配属されている艦娘は、非戦闘艦娘も含めて30人を超えた程度。深海棲艦を加えると40人ほどである。部屋数は足りているとはいえ、急に入るとなると話は変わってくる。
さらに本陣として元帥閣下の護衛艦娘の方々にも援軍をお願いできることが約束済み。
「そんだけいりゃ、朝潮を黒の陣地の近くまで運ぶこともできるな」
「あとですね、この電探の索敵範囲の拡張が出来ました。以前までの位置からでも、陣地の確認は出来るかもしれません」
「なら想定よりも楽になるかもしれねぇってことか」
明石さんが私に伝え忘れていた、索敵範囲の変更も少しずつではあるが実施中。いきなりMAXとは言わないまでも、徐々に範囲を拡げている。
「作戦目的は現状維持。掃討任務を続けつつ、小拠点の鎮圧とする。特に南に寄っている拠点を優先するよ。拠点の情報も揃いつつあるからね」
ゴーヤさんが復帰したことで、隠密行動による情報収集も捗っている。次に鎮圧する目標である南寄りの拠点の情報も一通り揃っていた。
「南東拠点と呼称する。ここは後回しにしてしまっていた分、拠点としての力が上がってしまっている。これに関しては申し訳ない」
「それでも北よりはマシなんやろ。ならうちらだけでも大丈夫や」
「と言いたいところなんだが……ゴーヤ君、いいかい」
潜水艦代表として参加しているゴーヤさんが、調査報告を展開する。
「ゴーヤ達3人で見てきたデータでち。陣地は無し。戦艦棲姫みたいなのがいるのは確認できたでち」
「みたいなのって?」
「前に見た戦艦棲姫改でもなくて、でも戦艦棲姫でも無かったの。真ん中くらいに見えたでち」
深海棲艦代表として参加しているミナトさんが、それはおそらく戦艦水鬼ではないかと話す。戦艦棲姫の上位種であり、戦艦棲姫改には劣るものの、堅牢さと火力は異常と言ってもいいほど。状況によってはこれの改すらも視野に入れなくてはいけなくなる。
「いいじゃない。戦艦棲姫改の前哨戦にちょうどいいわ」
「それだけじゃなくて……随伴に戦艦棲姫がいるんでち」
大問題だった。1体でも処理が面倒な戦艦棲姫が随伴となると、戦闘はかなりややこしくなる。強烈な火力を持つ2体の姫に挟まれた状態で、かつ他の小型の敵もいる可能性だってあるのだ。
強気な山城さんもこれには口を噤んだ。戦艦棲姫だけなら1対1でもどうにか出来てしまいそうな山城さんだが、それの上位種が隣に並んでいるとなると難しい。
「戦艦棲姫はどうしてましたっけ」
「3人いりゃあ何とかなる。掃討任務でもそれなりに出てきてるしな。改よか脆いし、皐月でも多少傷付けることができた」
「相変わらず主砲は効きづらかったね。私より高雄さんの魚雷の方が効果的だった覚えがあるよ」
戦艦棲姫の方は天龍さんと古鷹さんは掃討任務で何度か交戦しており、対策はある程度できていた。
本体のことはさておき、あの自律型艤装は主砲による攻撃が効きづらい。戦艦並の火力でようやく傷が付く程度である。そうなると、やはり魚雷による一撃必殺がメインとなるだろう。天龍さんと皐月さんの白兵戦も多少効果があるそうだ。とにかく主砲は難しいという判断。
「攻略する場合は雷撃を強めるべきということだね。艦載機からの攻撃はどうだい?」
「雲龍から聞いたんやけど、艦攻の雷撃はいい感じらしいわ。艦爆の爆撃は微妙やって」
やはり雷撃が効く。通常よりも火力が出る分、堅牢な装甲も撃ち抜くことができるのだろう。
「やれるなら本体狙いだな。そこは高雄さんなら行けるだろ」
「うん、途中からは本体しか狙ってなかったかな。私達の主砲で撹乱して、高雄さんに撃ち抜いてもらうのが一番早かったよ」
足元への攻撃だからか、主砲による攻撃よりもガードが甘いそうだ。
以前の戦艦棲姫改との戦いで霞に自律型艤装へ雷撃をやってもらったが、少し焦げただけだったのを思い出す。当たりどころも影響してそうだ。
「だが2体か……なかなか厳しい戦場だ」
「ゴーヤ達が見る限りは、でち。他にも随伴艦のイロハ級はいたでち。その中には戦艦もいたよ」
「少し置いておいたらそこまで成長してしまっていたか……最優先にすればよかったね」
司令官も苦虫を噛み潰したような表情。北とまでは言わないが、南東も厳しい場所。
だが、ここで一つ作戦を思いついた。せっかくなのだから、ここで試すのがいいだろう。
「司令官、提案があります」
「なんだい朝潮君」
「援軍、先んじて何人か呼びませんか? 私とガングートさんは選定したのである程度はわかりますが、先に連携をしておくのも必要なのではないかと」
浦城司令官の鎮守府から数人の艦娘を借り受け、連合艦隊で鎮圧に向かうというのが私の発案した作戦。雷撃特化の艦娘は思ったより少なく、空母は当然曳航前提。戦艦が使いづらい状況というのも辛いところ。
だからこそ、ここで人を借りる。南に寄っているということで海上での合流も可能だ。一旦ここに来てもらい、万全を期して出撃するのもいい。
「ええやん、ここで援軍見ときたいわ」
「本当に北の前哨戦にできそうね。連合艦隊、いいじゃない」
「そうだね、では浦城君に連絡してみよう。難しいようならまた作戦を考えることとする」
連合艦隊による出撃は、私はおろか他の人も殆どやったことのない戦闘だ。単純に数が増えただけとは考えない方がいいだろう。数が多い分、連携が大事になる。
これ以上の成長は困るということで、すぐに連絡をしていた。その結果、翌日にはここに4人の艦娘が到着する。さらにその翌日に出撃という段取りになった。急展開ではあるが、今回はそれだけ切羽詰まってしまった。
翌日。早速先行した援軍の4人が到着。今回応えてくれたのは、ガングートさんが選定した空母、大鳳さん。私が選定した駆逐艦、夕立さん。そして、重雷装巡洋艦、北上さんと大井さん。計4人。
「先行援軍艦隊旗艦、大鳳、外3名。短期間ではありますが着任させていただきます」
「了解した。南東拠点鎮圧に向けての共闘、心より感謝する」
大鳳さんは装甲空母という特殊な空母だ。以前会った瑞鶴さんがコンバート改装によりなれる艦種でもあり、敵として戦った装甲空母鬼を艦娘にしたようなもの。とはいえあちらはほぼ航空戦艦だったのに対し、大鳳さんは純粋な空母だ。普通の空母より装甲が厚く、中破状態でも艦載機が発艦できる。
少し小柄な体型だが、その力たるや、私達の鎮守府の蒼龍さんとほぼ同等、むしろ上回るほどだそうだ。正規空母が増えたというのは戦術として幅が広がる。
「おっす、朝潮。早速呼んでくれてありがとね」
「こんなに早くなるとは思ってませんでしたけどね。よろしくお願いします」
「今回は雷撃メインなんですってね。なら私達に任せてくれればいいわ。ね、北上さん」
「おうよー。雷巡に任せてちょーだい」
向こうで見た時よりやる気が漲っているように見える北上さん。神通さんより先にここに来たことでマウントを取っていたと後から大井さんに聞いた。北上さんらしい。
雷撃特化の重雷装巡洋艦は今回の戦いでは最も重要な位置に立つ。戦艦水鬼撃破の中心に据えられる可能性は高い。
「春風ー!」
「夕立! ヨク来タナ!」
あちらでは再会を喜び抱き合う春風と夕立さん。春風も喜びのあまり古姫側に傾いている。
あちら側の友人という唯一の存在である夕立さんは、火力も雷撃も駆逐艦から若干逸脱している。
「連合艦隊による出撃は明日だ。それまでは英気を養ってほしい。自由に歩き回ってくれて構わないよ」
「ありがとうございます。こちらの艦娘に何か用があれば私へお願いします」
話してる最中から北上さんがやたらキョロキョロしていた。何か気になることでもあるのだろうか。
「朝潮、神通ボコった天龍ってのは何処にいんのさ」
「言うと思って呼んでおきましたよ。天龍さん、こっちです」
前々からずっと会いたがっていたので、どうせならとここで会えるように手配しておいた。天龍さんもそれだけ言われてるならと結構乗り気だったので都合がいい。
「ほーん……なるほどねぇ。そりゃ神通も負けるわ」
「お、見ただけでわかるクチか」
「改二じゃなかったらわかんなかったかもね。二の腕見りゃわかるよ。鍛え方が違う」
そういう部分を褒められると天龍さんも悪い気はしないようだ。自分のやってきたことを真正面から認められているのだから嬉しいに決まっている。
「朝潮にも聞いてたが、その観察眼、うちの山城姐さんみたいだな」
「あ、そうそう、ここの山城さんにも会ってみたいんだよね。さすがに嘘でしょ。装甲空母鬼の装甲叩き破ったとか」
「いや、マジだぞ。軽巡棲姫を片手で投げたり、泊地棲鬼をほぼ一人で
「いやいや天龍、いくら戦艦様といえど素手でしょ? 武器持ってるわけでもないのに」
ここまで言ってもまだ冗談だと思っているようだ。まぁそうそう信じられるような出来事では無いだろう。私はこの目で見ているから信じられるわけであって。
「夕立も知りたいっぽーい! 深海棲艦って素手でやれるっぽい?」
「ヤレルカラ。山城サンハ本当ニヤルカラ」
夕立さんもこちらの話に興味を持ったようだ。春風の首に絡みつきながら運ばれてきた。ここまで戯れているのをみるのも初めてだし、ここまでされて古姫側に傾いている春風が受け入れているのも初めて見る。
「映像が無いのが悔やまれます」
「アレはグロ画像だからやめとけ」
そんな中、大井さんが何かを見つけて目を逸らした。
「北上さん……山城さん見つけました」
「えっ、何処よどこどこ?」
「少し奥の方です。入口の近く」
大井さんの言う方を向いた北上さん。見ただけでビックリしていた。私達は見慣れているため、あれが私達の普通である。白兵戦をしない山城さんがどんな人なのか気になるくらいだ。
「あれヤバイって。艦娘の域超えちゃってんじゃん。どうやって鍛えたらああなるのさ」
「朝から晩まで筋トレだな。ストイックに毎日延々と」
「こっわ! この鎮守府こっわ!」
そんな山城さん、おそらく南東拠点攻略の連合艦隊に入ることになる。自分から志願するだろうし、戦艦棲姫が潰せる強度なのかは測っておきたい。
「そっちの部隊は決まってるっぽい?」
「そういえばまだですね。雷撃主体になるのでうちの霞と高雄さんは確定かと。汎用性の高い吹雪さんや深雪さんもありそうです」
「春風も一緒に行こ! ステキなパーティーしましょ!」
「そうですね、わたくしも夕立さんと出撃したいです」
「あ、大人しい方の春風!」
こちらはこちらで好かれているようだ。今の体勢は変わらず、春風も受け入れたまま。仲がいい人が増えることはいいことだ。
部隊の配置は司令官の采配なので私からは何も言えないが、春風も部隊に組み込まれる可能性は高い。イロハ級の対処と戦艦水鬼への攻撃が両立できるからだ。汎用戦力はこういうときに頼もしい。
「ま、短い間だけどよろしく。大井っち、ちょっと見て回ろう」
「はい、北上さん」
軽い性格だがその強さは本物だ。頼りにさせてもらおう。
初めての連合艦隊戦。人数は多いけどやることは変わらず。