欠陥だらけの最前線   作:緋寺

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鎮守府防衛線

天龍さんと神通さんの演習を見届け、龍田さんへの不安もある程度取り除けた。あくまでも天龍さん至上主義だろうが、今までより周りが見えるようになったと思う。神通さんの訓練は地獄らしいので、本当に強くなって帰ってきそうだ。ひょんな事から生まれた打倒天龍同盟は、今後の戦いでもその強さを見せつけてくれるだろう。

 

「御姉様、警備任務の時間ですよ」

「ん、わかった。行くわ」

 

春風が迎えに来たので、今度は北の警備任務へ。敵が来ないならただ待つのみ、来たなら迎撃と、一箇所から動かない哨戒任務のようなものである。

今回は援軍組から飛龍さんが、雰囲気を掴むために部隊に自主参加。出向当日にいきなり任務というのもなかなかおかしなことかもしれないが、今は急を要することでもある。

 

「旗艦朝潮、出撃します」

 

私、朝潮が旗艦。警備任務とはいえ哨戒の延長線上であり、索敵役の私が旗艦をやるのはあまり良くないと思うのだが、今回は蒼龍さんの曳航も兼ねているため、事実上安全な旗艦を任されることとなった。

 

「蒼龍、本当に曳航で出撃するんだ」

「こればっかりは仕方ないんだよね。欠陥(バグ)は覆せないよ」

「大変だぁ。でもなんかその見たことない艤装? 使えばうまいこと行くんだよね?」

「うん、ある程度は」

 

龍驤さんを曳航するのとは、やはり体格差で勝手が違う。どうしても速力が出なくなるし、小回りが利かなくなる。なるべく早く回避を判断して、蒼龍さんへの被弾を抑えなくてはいけない。

明石さん謹製『栄光(曳航)の架け橋』も、蒼龍さん専用のもの。バージョンアップも繰り返され、伸び縮みは勿論、アームの強さも大分上がっている。以前の龍驤さんのときのように、強制的に海中に潜らせることも苦ではなくなった。

 

「朝潮、私の相方、頼んだよ」

「お任せください。少なくとも無傷で帰投できるようにしますので」

「お、言うねぇ。さすがだねぇ」

 

飛龍さんは蒼龍さんに輪をかけて明るい人だ。実力は同じ二航戦として互角だそうだが、お互いに親友、ライバルとして切磋琢磨している。上下関係も存在しない。

 

「それにしても……えらい部隊だね」

 

今回の部隊は本当にオールスター。

欠陥艦娘の私と蒼龍さん、援軍の飛龍さんに加え、半深海棲艦の春風、深海棲艦のレキさん、元深海棲艦のウォースパイトさん、深海艦娘の電さん、元帥閣下直属の艦娘長門さんと、摘めるものを1つずつ摘んだような部隊だ。

警備部隊の人員は、基本的には北への攻撃に参加できない人をメインとしている。火力が高すぎる戦艦と空母、デメリットの関係上北への出撃が困難なオーバースペック組、そして鎖に触れると戻ってくることが出来なそうな深海棲艦関係者。ウォースパイトさんは、実績があるため北への出撃もできるが、単純に戦艦火力が乏しいためにこの部隊に入っている。勿論北にも向かう。

 

「この鎮守府ならではですよ。見た目も華やかじゃないですか」

「華やか……? ま、まぁ、確かに」

 

やたら白と黒が多いように思えるが気にしない。

 

「襲撃は徹底抗戦だから火力偏重の部隊になるわけだな。鎮守府には近付けさせんよ」

「ナガトの言う通りね。防衛線から一歩も内側に入れないわ」

 

戦艦2人はすでにやる気満々。特にウォースパイトさんは前世の影響もありいつでも撃てるぞと言わんばかり。今のところ敵の反応は無いため、何事もなく終わる可能性も視野に入れておいてほしい。

 

「御姉様はわたくしが守りますから」

「レキモイルカラナ!」

「心強いわ。2人とも、蒼龍さん共々お願いね」

 

SPのように私の前を守ってくれる妹分2人。霞は南への哨戒が入っていたため残念ながら参加できず。物凄く悔しがっていた。こんな珍しい部隊、なかなか御目にかかれない。

 

「防衛線到着しました。索敵しつつ待機」

 

とはいえ索敵は私だけで大方済んでしまう。その私もいつも通りのため、ここからは時間までただただ待機するのみ。

 

「飛龍さん、そちらの照月さんはどうですか? 元深海棲艦と聞いていろいろと助言しましたけど」

「絶好調だね。今や対空の要ってとこ。ただ……たまーに物騒なこと言うんだよねぇ」

 

やはり前世が出てきているようだ。ガングートさんみたいに北方水姫のときからほとんど変わっていなければ何もおかしくはないが、照月さんの前世は性格が真逆な防空棲姫。違和感はどうしても出てくる。

 

「この前、出撃でちょっと被弾しちゃったんだよ。小破程度の。そしたらさ、すっごいドスの利いた声で『お前も痛くしてやる』って」

「ああ、やっぱり出ちゃってますね。前世」

 

言葉に出るくらいならまだいいだろう。行動に出るようになったら要注意だと思う。今のところこちらではそんなことないので、おそらく大丈夫だと思うが。

 

「私の仲間がそちらにもいるのね。とても興味があるわ。I want to talk to her」

「スパちゃんも元深海棲艦なんだっけ」

「ええ、私は元戦艦棲姫改よ。朝潮の右腕を捥いだわ」

 

割と平気でそういうことを言うので、春風が良くない行動をしないか心配になる。今でこそ慣れているが、仲間意識をちゃんと持ってくれているかが不安。

 

「深海棲艦の気配を感じました。皆様、迎撃準備を」

 

その春風を筆頭に、ウォースパイトさんとレキさんも気配を感知。まだ私の索敵には入っていないため、まずは二航戦の2人に艦載機を飛ばしてもらう。

 

「偵察機、発艦始め!」

 

2人並んでの行射。蒼龍さんの射線に私が入りやすいので、すぐさま隣に立つように移動。

電さんに植え付けられた小型艤装を外しても、やはり場所は割れている。前回の襲撃から1日開いたものの、今後は立て続けにくると考えてもいいだろう。

 

「索敵範囲入りました。敵は姫1鬼2、戦艦棲姫1体と軽巡棲鬼2体です。イロハ級は沢山。また戦艦棲姫ですか……」

「偵察機からも伝令! 敵の布陣は朝潮の言う通りだね」

「長門さん、いつものをお願いします」

 

一斉射を皮切りに戦闘を開始する。今回の相方はレキさん。ビッグ7と最悪の深海棲艦のコラボレーション。

その間に旗艦である私が司令官に連絡。元より迎撃であることはわかっているが、規模だけは伝えておく必要がある。

 

「司令官、警備部隊旗艦の朝潮です。敵を確認。戦艦棲姫1、軽巡棲鬼2です。イロハもいます」

『援軍は欲しいかな』

「おそらく大丈夫です。このまま戦闘を開始します」

『了解。何かあればすぐに戻りなさい』

 

いつも通りの通信。当然、何かあれば全員で撤退だ。徹底抗戦かもしれないが、安全第一の方針は揺るがない。中破以上が出た場合、即座に撤退を開始する。

 

「よし、行くぞレキ」

「ムネアツアタックダナ! ヨーシ!」

 

先頭に2人で並び、照準を合わせる。まだ目視による確認は出来ていないため、私が撃つ場所を指示。

 

「一斉射! 撃てぇー!」

「テー!」

 

強烈な火力の一斉射。先頭集団を薙ぎ払い、姫級までの道を一直線に作り上げる。本当なら戦艦棲姫まで持っていきたかったが、イロハ級に阻まれたようだ。

 

「す、すごいのです……」

「電さん、春風、残った左右の敵を殲滅。二航戦のお二人は艦攻、艦爆で軽巡棲鬼を狙い撃ちしてください。長門さんとレキさんもそちらを。ウォースパイトさんは」

()()を叩くわ。Fif, Stand up. Sally go!」

 

艤装を人型に変形させ、真っ直ぐ戦艦棲姫に向かう。これを初めて見た飛龍さんは唖然としていた。

 

「スパちゃんの艤装ってあんなだったっけ……」

「この鎮守府でそれを気にしてたら負けだから。攻撃隊、発艦!」

 

同時に移動を始める。あちらにも空母はいるため、私は状況判断をしながらの対空。蒼龍さんの射線を開けながらの移動になるのでなかなか難しい。龍驤さんではこうはならない。

 

イロハ級の掃討はオーバースペックな駆逐艦2人が担当。一撃で沈めていく攻撃力は、やはり艦種の域を超えている。

電さんと春風の火力は近しいものがあった。お互いに深海の駆逐主砲を使っているため、火力自体が重巡並。魚雷の発射管も同じタイプ。少し違うのは、電さんは艦載機が使えるという代わりに春風より魚雷の数が少ないということ。

 

「イイナァ艦載機。ワタクシ使エナイカラ羨マシイ」

「2つだけなのです。コントロール大変ですし、難しいですよ?」

「ソレデモ便利ジャンカヨ」

 

世間話しながらでもイロハ級程度なら掃討できる様子。

あちら側の春風を見た電さんはそれはもう驚いていた。鎖が繋がっていたときの自分を思い出してしまったらしい。その状態を受け入れている春風を心底尊敬したのだとか。

 

「春風ってあんな子だっけ……? 電は駆逐艦なのに艦載機……?」

「ここにはそういう子しかいませんから、戦闘に集中しましょう飛龍さん」

 

蒼龍さんは事前にあまり説明していなかった様子。今のこの戦場、ギャップのある艦娘ばかりが揃っている。そもそも曳航で出撃というのからして普通じゃない。

 

「軽巡棲鬼撃破だ!」

「コッチモオワッタゾ!」

 

さすが戦艦、軽巡なら鬼級でもすぐに片付ける。

 

「イロハ級掃討をお願いします! 飛龍さんは電さんの方へ、蒼龍さんは春風の方へ艦載機を寄せてください」

 

残りはイロハ級と戦艦棲姫のみ。その戦艦棲姫にはウォースパイトさんが当たっている。

敵の戦艦棲姫から見れば大先輩のウォースパイトさん。戦艦棲姫改のときの性能をそのままに艦娘になっているため、戦艦棲姫の砲撃も簡単に弾いてしまった。

 

「後輩は軟弱ね。Push yourself」

「アワレナドウホウメ……!」

「Good-bye」

 

本体を捥ぎ取るように自律型艤装から引き剥がし、主砲で撃ち抜いた。あの戦い方、完全に戦艦棲姫改。前世が戻ってきているが、それを楽しんでいるわけではなさそうなので安心する。戦闘の手段として、前世の記憶を使っているに過ぎない、はず。

 

「That's all! そちらはどうなったかしら」

「こっちは終わったのです! 春風ちゃんは!」

「殲滅完了いたしました。誰も怪我が無くて何よりです」

 

戦闘終了。ここまで来ると、姫級がいても無傷で終わらせることができるようになった。鎮守府を守るために高火力でのゴリ押しが出来ることが利いている。また、今回は怪我を負いやすい白兵戦役がいないため、より継続戦闘力が高い。

 

「司令官、警備部隊旗艦の朝潮です。迎撃完了。こちらは全員無傷です」

『よくやってくれた。引き続き時間まで警備をお願いするよ。あと、そろそろそちらに陸上型の子達が向かう。()()()()()()()()

「え、それはどういう」

 

海上で足元を気をつけるとはどういうことかと思ったが、陸上型という言葉を聞いてピンときた。私達しか知らない、陸上型深海棲艦のできること。陣地ごと移動だ。

気付いたときには遅かった。海が突然揺れだした。眼鏡に追加されたソナーの反応からして、陸上型の陣地に間違いない。

 

「陸上型深海棲艦の陣地がここに来ます。衝撃に備えてください」

 

ゆっくりと海がせり上がってくる。こうやって移動してくるのは知らなかった。事前にいろいろと準備がいるそうだが、この状況を見れば準備くらいいるだろう。恐ろしく規模が大きい。

 

「し、島!?」

「な、なんなのです!?」

「これミナトちゃんの陣地じゃない? こうやって移動してくるんだ。陸上型すごいねぇ」

 

飛龍さんと電さんは動転しているが、陣地が移動することを知っている私達は呑気なものだった。移動自体を見るのは初めてだが、移動することを知っているのならすぐに勘付くことができる。

数分で陣地が完成し、防衛戦の拠点としてここに置かれることになる。ここにあることで浮き砲台となった龍驤さんと蒼龍さんが曳航無しに艦載機の発艦ができ、ミナトさん達陸上型の艦載機も戦線維持しやすくなる。

 

「ウマクイドウデキタミタイダナ」

 

島の岩場の陰からミナトさんとヒメさんが出てきた。本当に島と一緒に移動してくるのか。セキさんはあえて陣地をそのままにしているらしく、鎮守府領海内にも中継地点を作った状態に。

 

「ワレワレモボウエイセンニサンカスル。イツモマカセテバカリダカラナ」

「助かります。でもミナトさん達は危なくないですか?」

「ジンチノウエナラマダタタカエル。シンパイイラナイ」

 

ミナトさんもヒメさんも艤装を出現させ、いつ敵が来てもいいと言わんばかりの臨戦態勢。ヒメさんは主砲を構えてフンスと鼻息荒く意気込む。なんと頼もしいことか。

 

「オマエタチモ、ココデヤスンデクレ」

「お言葉に甘えさせてもらいます」

 

この後、私が受け持つ午前中に敵の襲撃は無かった。あちらも引っ切り無しに攻め込めるほど人材がいないのか、タイミングを見計らっているのかはわからない。だが、休めるときに休んでおいた方がいいだろう。

 




何気に仲がいい春風と電。この鎮守府では黒い春風と白い電なので、さながらプリキュア。
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