欠陥だらけの最前線   作:緋寺

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集う援軍

午後、援軍の後発組が到着。先発で軽巡、重巡、空母と来たので、後発では戦艦と駆逐艦が来てくれた。

 

「後発援軍部隊、旗艦金剛デース! 随伴5名共々!よろしくお願いしマース!」

「ありがとう。よろしく頼むよ」

 

ガングートさんが選定した戦艦は榛名さんの姉である金剛型戦艦1番艦、金剛さんと、Bismarck(ビスマルク)級戦艦1番艦、Bismarck(ビスマルク)さん。駆逐艦は以前にも援軍に来てくれた夕立さんを筆頭に、長波さん、時雨さん、そして敷波さん。

 

「あたし場違いじゃない? 改二じゃないし、スペックもそんなに高くないよ? 私情とか挟んでない?」

「大丈夫です。私は敷波さんの実力で選定しています」

 

確かに敷波さんは総勢13人の援軍の中では、尖った部分が無い平凡なスペックかもしれない。しかし、戦闘技術を見たときにこの人だと思えるものを持っている。神通さんや北上さんに近い対応力を秘めていると。

 

「自信持てって敷波。この前の演習で時雨に勝ったんだからよ」

「長波も負けてたじゃないか。僕ばかりを言わないでほしいね」

 

やはり私の見立ては間違いでは無かったようだ。

 

「ガングートがどうしてもと言うから来てあげたわよ」

「そうかそうか。さすがはビスマルクだな」

 

ものすごく棒読みなガングートさん。ビスマルクさんがどういう人なのかはこの時点で理解できたような気がする。自信家だがそれに見合った実力も兼ね備えている強力な戦艦だ。

ガングートさんのことを妙に敵視しているようにも見えるが、それはビスマルクさんも魚雷を使うことができる稀有な存在だからなのだとか。自分の売りを奪われたと突っかかってきたそうだ。

 

「後からまた演習の相手をなさい。次は目にもの見せてあげるわ」

「わかったわかった。その前に今回の任務についてちゃんと聞いてくれ。貴様達を呼んだのは演習のためじゃないんだ」

「わ、わかってるわよ」

 

多分わかってない人なんだろう。

 

「先発隊7名、集まりました」

「ありがとう。では今回援軍を頼んだ件を説明させてもらうよ」

 

そのまま会議室へ移動。私も説明をする1人として一緒に向かう。これだけの人員が集まれば、攻守共になんとかなるだろう。まだほんの少しの問題は抱えているが、覆せるだけの戦力はあるはずだ。

 

 

 

先んじて電さんを見てもらっている先発隊7人、特に一緒に出撃した飛龍さんはもう動じないが、後発隊6人はその姿を見て言葉を失っていた。前回の鎮守府訪問の時に春風を見てもらっているため、姿の変化に関してはそこまで抵抗が無いはずだったが、角まで生えているとなると話は変わる。

 

「もうこの反応も慣れたのです」

「何度も見世物にするようですまない。電君はこの姿、この力を受け入れ、我々に力を貸してくれている仲間だ」

 

深海艦娘について説明していく。今までにない敵ということで、いつも騒がしい夕立さんですら静かに聞いている。

 

「各個の力は姫級と考えていい。それを、なるべく無傷で捕らえる。これが1つ目の任務だ」

「姫級を無傷で……ですか。なかなか骨が折れそうですね」

 

通常の任務より難易度は高い。神通さんはすでに手段を考え始めているようだ。天龍さんの妙な戦い方も合点が行ったらしい。

捕らえる、と言っているものの、実際にやることは支配からの解放。手段は鎖の破壊1点に絞られている。深雪さんの精度でのピンポイント射撃ならギリギリで躱し、本当に危険になった場合は艦娘から外れるまでする面倒な鎖を、触れずに破壊する必要がある。

 

「事前に電と演習してほしいのです。深海艦娘の戦い方はまだやれますので、本番で上手くいくようにお手伝いするのです」

 

電さんに勝てるくらいでないと深海艦娘複数人と同時に戦うことになったらまず押し負ける。それをわかってて電さんも演習を買って出た。

 

「さっき電と一緒に警備任務行ったけど、正直駆逐艦と思わない方がいいよ。それこそ姫だね。見た目に惑わされちゃダメ」

「飛龍さんは何を見たんですか」

「主砲火力が重巡並で艦載機飛ばす駆逐艦」

 

それで燃え上がったのはやっぱり神通さん。この人好戦的すぎやしないだろうか。これも個体差だろうか。

 

「話を戻すよ。その深海艦娘なのだが、君達に縁がある娘もいる。攻撃に躊躇いも出るだろう。特に、あちら側には時雨君がいるからね」

「自分がいるのは確かに躊躇しちゃうかも」

「さらには……少し言いづらいが、精神攻撃もしてくる」

 

電さんが深雪さんに対して言った罵詈雑言は未だ覚えている。わざわざ一番心を抉る言葉を選択して言ってくるので余計にタチが悪い。最終的には言わされているということがわかっていたので冷静でいられたが、初見であれは辛いものがある。

 

「それだけ覚えておいてくれれば冷静に対処できるはずだ」

「顔が似ている別人と思って戦えばいいんじゃね?」

「長波、そんな簡単な話じゃないと思うよ」

 

あちら側の時雨さんも、こちらの心を抉ってくるだろう。むしろ面識がない人が相手できればベスト。姉妹や、艦の時代に因縁がある相手だと抉り方が途端にえげつなくなる。

そういう意味では、長波さんはベストかもしれない。深海艦娘とほぼ面識無しだそうだ。姉妹もいない。

 

「救出と同時に、今回の敵、北端上陸姫の撃破とその陣地の破壊が2つ目の任務だ。この姫級自体の力はそこまで大きくないそうだね?」

「はい、艦載機は私だけでも全て墜とせました。主砲もそこまでというイメージです」

 

北端上陸姫、並びに離島棲姫の攻撃自体は戦艦棲姫よりは弱め。艦載機は私が未だ見ぬ空母棲姫よりは劣るらしい。

代わりにガードが異常に固い。本人の耐久力ではなく、周りに常に何者かをつけている。私達の時は深海艦娘が3人出てきた。今後はそれ以上もあり得る。

ウォースパイトさんも話していたが、北端上陸姫は深海棲艦を強化できる貴重な存在であり、どの敵も本能で守るべきものと感じるようだ。

 

「あの時は殆ど水雷戦隊だったのと、深海艦娘を初めて見たので混乱していました。対策さえ取れれば、まだ行けるかと思います」

 

ただし、深海艦娘は常に誰か近くにいると考えておいた方がいいだろう。私達の攻撃を遮るには一番都合のいい存在だ。北端上陸姫の撃破は、深海艦娘を全員救出した後に行う方がいい。

 

「そして3つ目の任務。拠点防衛戦になる」

「電が救出されたことで、この場所が敵にバレてしまったのです……」

「深海艦娘の場所がわかるようになっていたと?」

「この首輪に、センサーとして機能する小型艤装がついていた。今は取り外しているが、一度知られてしまったからには攻撃は続くだろう。現に本日午前に1度、攻撃を受けている」

 

飛龍さんはすでに参加した防衛線での警護任務。今は陸上型深海棲艦の援護もあるため、幾分かマシになっているだろうが、毎度姫級が旗艦として攻め込んでくる可能性がある。

 

「戦艦、空母は防衛戦がメインになる。深海艦娘の救出には、火力が高すぎるんだ。随伴を処理するためには必要かもしれないが」

「なるほどね。あなた達はこのビスマルクの力で身を守ってほしいということね」

「ビス子、調子に乗っちゃダメヨー。変なとこで失敗するからネー」

 

不敵な笑みのビスマルクさん。余程自信があるのだろう。だが金剛さんの一言でビスマルクさんどういう人なのかは大体わかった。

この人は面白い系の人だ。

 

「以上、任務は3つ。こちらでローテーションを組んで、明日より出撃をお願いするよ。警護任務は戦闘無しで終わる退屈な任務になるかもしれないが、必要不可欠な任務だ。よろしく頼む」

「お任せ下さい。援軍として、お力添えさせていただきます」

 

力強い援軍が仲間に加わった。これで深海艦娘の救出に連合艦隊を使え、防衛線警護もローテーションが組める。何より、戦艦の戦力が増えたことで部隊の火力がさらに上がった。そして、榛名さんのお休みが増える。

 

 

 

会議が終わり、自由な時間に。神通さんは一礼だけして足早に龍田さんの訓練に戻ってしまった。余程筋がいいのか、今までの中でも屈指のいい笑顔だそうだ(北上さん談)。他の人達は会議室で適当な雑談に花を咲かせていた。

 

「少し話には聞いてたけど、重い任務だね。敵側に僕がいるだなんて」

「五月雨もいるっぽい。白露型2人も相手にしなくちゃ」

「夕立、ちょっと楽しみにしてるでしょ。殺し合いじゃないんだからね?」

 

白露さんは萎えていたが、自分の姉妹が敵になっていると聞いて、やる気を出しているのが夕立さんである。狂犬と言われているのがよくわかる。

逆に自分が敵になっていると知り複雑な表情なのが時雨さん。吹雪さんもそうだが、こういう形で自分と戦うというのはどうなのだろう。私も別の私と出会い、会話し、共闘したが、敵となると全く違う感覚だろう。

 

「任務はなるべく無傷での救出、いくら相手が僕だからって」

「時雨だから撃ちたいっぽーい」

「勘弁してくれないかな……。僕としては五月雨に砲を向けるのも辛いのに」

 

時雨さんは姉妹の中でも五月雨さんと縁が深いらしい。そう聞くと、一番抉られそうな気がする。

 

「あちら側にいた電からもお願いします。躊躇なく容赦なく解放してあげてください。その後にはそれよりも辛い地獄が待ってますので」

 

電さんが時雨さんに再度お願い。

やはり私達との戦闘の記憶が残っているというのは辛いことだ。性格上、それをずっと引きずってしまう可能性だってある。

 

「あの時の記憶がはっきり残っているのです。何をやったか、何を言ったか。電もさんざん深雪ちゃんを罵りましたから……」

「そう……ならあちら側の僕はともかく、五月雨はすぐに解放しないとね」

「なら夕立が時雨をボコるっぽい!」

「言い方!」

 

時雨さんが唯一のツッコミ役なのだろう。夕立さんが自由奔放すぎるのもあるが。

 

「そうだ! 電、深海艦娘との演習! 夕立、やらせてほしいっぽい!」

「そうですね、早めに準備をした方がいいです。司令官、今からでも大丈夫です?」

「ああ、大丈夫だよ。わかっていると思うけど、怪我のないようにね」

 

演習に関してはすぐに許可が出た。

司令官はここから戦艦2人との話があるそうなので立会いはできないとのこと。代わりは私に任された。今回の演習は、深海艦娘を相手にしたときの夕立さん含む志願者の立ち回り方を頭に入れておくために使わせてもらおう。

 

 

 

近海。電さんの発案で、深海艦娘への対策をその身で覚えるための演習が執り行われる。参加者は北に出撃する可能性がある全員。任意で呼んだのにほぼ全員来た。

最初はその案のキッカケとなった夕立さんとの演習。周りで参加者が見守る中、激しい攻防が繰り広げられる。

 

「すごいね……あれが深海艦娘……」

「まがりなりにも姫級相当ですから」

 

素直に感心している時雨さん。普通の駆逐艦と思っていたら大間違いということが理解できた様子。

電さんと夕立さんの演習は、今回避ける必要がある本体への攻撃も許可された、ただの演習のスタイルで行われた。想定すべき鎖が存在しないからというのが大きいが、そもそも命を取ろうとしても勝てないのでは意味がない。

結果、夕立さんが辛うじて勝利。電さんは主砲、魚雷、艦載機までフルに使った容赦ない猛攻で大破判定までは持っていったが、ギリギリのところで轟沈判定。

 

「艦載機はズルいっぽーい! 春風でもそんなことなかったのに!」

「今度の敵は全員やってくるのですよ?」

「えー!? じゃあ対策考えるね。また後からやるから!」

 

夕立さんが交代。試合に勝って勝負に負けたようなものと考えているのだろう。実際、大破判定をしてようやく沈めることができるとなると、自分も相手も無傷で鎖だけ破壊するなんて無理に近い。

とはいえ、1対1で戦うことはまず無いだろう。そういうことがないように援軍を呼んだわけなのだから。

 

「ちょっと休憩させてほしいのですー。汚れも取りたいので」

 

電さんはここから何連戦もすることになるので、1戦終わる毎に休憩。轟沈判定になるまで弾を当てられているのでその汚れも取らなくてはいけない。

 

「電を救ったときはどうしたんだい?」

「深雪さんと響さんに私が指示を出しました。それでも鎖を破壊するのに深雪さんが犠牲に」

「犠牲って……まさか……」

「死んでねぇよ」

 

電さんの汚れを取っている深雪さんがこちらにツッコミ。会議に姿を現さなかったのは、深海艦娘用の深海艤装のテストに参加していたため。電さんが演習をやると聞いて手伝いにきた。この2人、本当に仲がいい。

深雪さんの姿の変化は鎖に触れたからというのを説明する。いろいろと思うことはあるみたいだが、触れてはいけないというところで納得する。

 

「あたしは北に出撃できないからな。ここで朝潮と電のサポートでもしてるぜ」

「ありがとなのです。よし、じゃあ次の演習行くのですー!」

 

深雪さんが来たことで俄然やる気が出た電さん。ここからの快進撃で演習相手を次々とのしていった。対策を考えてきた夕立さん相手ですら、考えてきたにも関わらず電さんが勝ってしまう。

深雪さんが来たことで動きが格段に向上。気持ちの問題だと思うのに、ここまでの強化になるとは。

 

「すげぇな電。キレッキレだ」

「さっきとはまるで違いますね。夕立さんに轟沈判定受けてるんですよ」

「あたしが来たからやる気出したか? なんつって」

 

ケラケラ笑うが、おそらく本当にそれが理由な気がしていた。

今の電さんは洗脳されているときよりも強い。あの時と違うのは、勝手に動かされている状態と違い、見栄を張りたい人が出来たこと。北上さんと大井さんのように、深雪さんと電さんは組めば最強と言えるのかもしれない。

 

「はにゃー!?」

「い、電ぁー!」

 

調子に乗ったせいか途中で轟沈判定受けているのはちょっと可愛らしかった。

 




今のところ、艦載機を使ってくる駆逐艦は深海側にもいません。が、劇場版のラスボス、深海吹雪は、最終段階で2つの艦載機を使います(浮遊要塞にも見えますが)。電はそれを踏襲。
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