真・仮面ライダー -新章-   作:ぱすえ

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第2話

 

 

 

 

薄暗い施設の中を1人の男が歩いていた。

 

その男の風貌は、異様だった。

ボサボサに伸ばした髪に、薄汚れたメガネを付け、手にしている書類はボロボロになっている。スーツの上に羽織っている白衣は、襟が黄ばんでおり、所々に黒いオイルのようなものが染み付いている。

 

コツコツ…

 

その男の履く革靴の乾いた音が廊下に響く。

 

その音は、やがて会議室と書かれた部屋の前に近づき、止まった。

 

 

 

 

ガチャッ

 

ドアが開き、暗い会議室に光が差し室内には、8〜9人ほどの人の影が映る。

室内が暗いため個々の表情は見えないが、かなり険しい雰囲気が漂っている。

 

「 皆さん申し訳ない。定時より遅れてしまいましたよ。何分、職員のものがうるさくて ハハハ 」

 

 

男は、悪びれる様子もなく、口頭で謝罪を述べながら空いている席に座り、会議室にしばしの沈黙が起きる。

 

 

 

 

「 … 」

 

誰も喋ろうとしない。

 

男が椅子に座ってから数十秒後。長い沈黙を破ったのは、中央からやや離れた席に座る男だった。

 

「重役出勤お疲れ様だな、技術本部長。

で、これ程遅れてくるということは何か成果の1つや2つあるんであろうなぁ!?」

 

怒気が籠っている声で、先程遅れてきた男に問いかける。

 

その声を聞いた先程の男もとい技術本部長と呼ばれた男は、その声を待ってましたと言わんばかりに声を上げる。

 

「 ええ! 皆さんのご期待に添えるほどの物を用意した次第ですよ。」

 

 

「ほう…で、その期待に添えるものとは何かね?」

 

 

「皆様の投資のおかげでついに、改造兵士レベル4が完成致しました!!!! 」

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「 !? 」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

会議室にいる男たちが、皆驚愕し息を飲んだ。場の雰囲気が固まる。

 

 

 

 

「 そ、それは本当かね? 」

 

男たちの1人が上ずった声を上げる。

 

「 ええ、もちろんでございます。 」

 

「レ、レベル4だぞ!? 間違い無いのか?」

 

「 ええ、次なる段階の改造兵士。レベル4の完成ですよ皆様方。大変喜ばしい事実。

そして、『財団』更なる力となりえる完全兵器の誕生です。」

 

技術本部長は、そう言い、執事のように片手を腹に当て深々と頭を下げる。

それを境に、固まっていた空気は次第に溶けていき、代わりに彼らの興奮が場を支配した。

 

 

それもそのはず、

本来であるならば、改造兵士レベル4は完成に最低でも5年以上かかると言われていた。

 

が、それをたった1年で仕上げたという事実に皆驚きを隠せなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

その時、未だ興奮と驚きが冷めぬ会議室に、ある声が響いた。

 

 

 

 

 

「 随分と早い完成じゃないか…技術本部長。で、その性能とやらは? 我々は確実なデータが欲しいのだよ…そこのところを詳しく説明してほしいものだな。 」

 

 

声は、先程、技術本部長を怒鳴った男や上ずった声を上げた男の方向とはとは、真逆の所から聞こえてきた。

それは、中央から一番離れた席に座る男がからだった。

 

その声の調子は柔らかいが、決して慢心しないような慎重さをうかがわせる声だ。

 

そして、その男の発言が驚愕と興奮の空気を少しずつ冷ましていった。

 

 

「 あらあら?随分と冷静でいらっしゃいますねぇ『大佐』殿。貴方もさぞお喜びになられると思いましたのに」

 

「 フッ 実際のスペックがわからんものを素直には喜べんな。まして、それに使うのは我々軍事部だ。それに、『死神』の言うことなぞ信用できるか。」

 

「…ふむ。残念ですがそれも一理ありますな、皆様方申し訳ありません。『大佐』殿のからご指摘頂いた通り、まずは、データもとい具体的な性能をお見せせねばなりませんでしたね。フフフ 」

 

パチッ

 

そう技術本部長が言うと同時に、会議室のスクリーンにある映像が映し出される。

 

 

「さぁ、とくとご覧ください。これが、改造兵士レベル4の全てです!!!」

 

 

 

その声と共に、映像がカラカラカラという音ともに再生された。

 

 

 

画面中央に施設のようなものが映し出される。しかし、その施設は画面に映ったと同時に一瞬で崩壊し、やがて爆発した。

 

その中から、何かを引きずりこちらに向かってくる人影が現れる。

 

 

よく見るとその手は、人の首のようなものを掴んでいた。

 

「 うげぇ!? 」

 

男達の中の1人が口元を抑える。

 

 

しかし、映像は止まることなく流され続け

急に画面が切り替わる。

 

今度は、だだっ広い荒野が映し出された。

だが、その荒野には色々なものが転がっていた。

 

歪にひしゃげた無数の戦車の残骸や、炎上し黒焦げになっている軍用ヘリ、そして画面奥には不自然に何かが積み上げられており山のようになっている。

 

そして、その山の頂には、ボロボロになった旗のようなものが掲げられていた。

 

「 ん?これは… なんと… ハハハ これは凄い!!」

 

誰かがその旗のようなものが何を示しているのか理解したようだった。

 

 

 

「 星条旗か…『死神』、表での実験も程々にしろ。 」

 

『大佐』と呼ばれた男が額を抑え、呆れたように呟いた。

 

 

そう、その山に立っている旗こそアメリカ合衆国の国旗、詰まる所の星条旗である。

そして、スクリーンに映る映像が終わり部屋がまた暗くなる。

 

 

 

 

 

 

「 皆様方、今お見せしたのはレベル4の最終実験の模様です。最初にお見せしましたものは、KGBの作戦支部をレベル4に襲わせた際のもの。

次の映像は…おわかりだと思いますが、目障りだった中東の米軍機甲師団、1師団と援軍に駆けつけたアパッチを4機ほど撃墜させた後の映像となります。」

 

そう技術本部長が言うと同時に男達が沸く。

 

 

「 流石だ… これだからこそ我々も投資のしがいがあるというものだ。 」

 

「やはり、技術本部長は期待をいい意味で裏切ってくれる。」

 

「 技術本部長いや、『死神』博士。是非ともうちの会社への配備を急いでくれんかね? 金ならいくらでもだそう!!」

 

「 な!?貴様!ずるいぞ。私の所にも至急頼むよ君!!」

 

「 私の所にも!」

 

 

 

 

数々の驚嘆の声と賛美の声が上がり、技術本部長は、ニコニコと笑みを浮かべ男達を見つめる。

 

「 皆様。お褒め頂きありがとうございます。今、生産配備の為、準備を進めておりますが何分まだ試作段階でありますので量産にはもう少し時間がかかると思います。ですので、お願いと言っては厚かましいのですが研修費の方を…」

 

「出そう!! いくらかね?我々にできる最大限の支援をしよう!!」

 

「 私もだ!! 」

 

「 私も!! 」

 

「 私も!! 」

 

「 私も!! 」

 

「 私も!! 」

 

「 私も!! 」

 

「 私も!! 」

 

「皆様… ありがとうございます。この不肖『死神』力の限りを尽くしレベル4の量産に取り掛かります!! ……ニヤリ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『財団』の報告会と呼ばれるこの会議。

「投資家」達が自ら欲望のまま声を上げる。

 

そして、それら「投資家」達に仕える『死神』は、彼らのその姿を尻目に、怪しい笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後

 

会議が終わり、技術本部長…いや、『死神』博士と呼ばれる男が、廊下を歩く。

 

「 おい!死神。」

 

後ろから声が聞こえ、死神博士が振り向くと

そこには『大佐』と呼ばれた男が立っていた。

 

 

 

「あら?大佐殿。何か私にご用ですか?」

 

「話がある。ついてこい。」

 

「ここではダメですか?私は研究の方が忙しいので手短にお願いします。」

 

彼ら(投資家達)に聞かれるとまずいことだ。少し歩くが、外に出られんか?」

 

「まぁ10分ほどで終わらせていただけるのなら…いいですよ。」

 

「相変わらず、いけ好かない野郎だな貴様は。」

 

「お互い様ですよ」

 

 

 

死神博士と大佐は、会議が開かれていた施設を出て、近くにある広場に出た。

 

 

 

「さて、手短にお願いします。大佐殿。」

 

「ああ、ならば単刀直入に言おう。貴様あれはレベル4ではないだろ?」

 

「あら、気づいておられたのですか…

ええ、そうです。あれは発表用に私が独自に開発したレベル2の改良型です。」

 

「あっさりと認めやがって…では、彼ら(投資家達)には嘘の報告をしたのか?」

 

「別に問題はありません。性能面はあの通りですし、名称なんてどうでも良いではないですか。それに、レベル4完成を進めるにも、今は()()()が必要なんですよ。大佐殿もご存知の通りでしょう?」

 

「…ISSが潰れたのはそこまで痛いものなのか?」

 

「はぁ…あそこは、日本支部という名目上の改造兵士の製造場だったんですよ。それに、日本ほど裏で動きやすい国はなかったんです。平和ボケしていて治安のいい国ほど我々は動きやすい、お分かりでしょう?」

 

「技術部にとってはかなりの損失だったというわけか… 」

 

「ええ、膨大な量の資料と優秀な人材を全て失いましたからね 。こちらもカツカツなんですよ。」

 

 

 

 

「なるほど」そう言い大佐は近くにあったベンチに腰をかける。

 

「大佐殿? 言いたいことはそれだけですか?ならば、私は技術本部に戻らなくてはいけなので失礼しますよ。」

 

死神博士は踵を返し大佐に背を向ける。

 

 

 

 

 

「ああ、疑問に思ったことは聞けたからな。だが、後1つだけ…MASKED RYDERの件について貴様の意見を聞きたい。俺は一刻早く潰すべきだと思うが、そこのところを死神、お前はどう見る?」

 

「ああ、確か…鬼塚君の出来損ない…いや違うか。風祭君達が中心に開発したレベル3の事だね。

私は別に無視してもいいと思いますよ。」

 

「奴は本当に脅威にはなり得ないのか?」

 

「なり得ませんね、あれは失敗作です。逆を言えば鬼塚君の方が完成形に近いですよ。まぁ、この説明はまたの機会に…そろそろ時間ですので。それでは…」

 

「なッ もう10分たったか? まだそんなには経っていないと思うが…

おい!せめて、脅威になり得ない理由だけでも答えてくれないか?」

 

 

大佐は死神博士をその場に止めようとするが、それを無視して、死神博士は歩き始めてしまった。

しかし、何かふと思い出したのか、大佐のいるベンチの方へ向き直る。

 

 

 

「…ん?いいことを思いつきました。大佐殿今日の夜はお暇ですか?」

 

「…悪いが、このところ軍事本部は暇ではなくてな。それに貴様の考えるいい事ほど信用ならないものはない。」

 

「それは残念。もし、お暇があれば今の話の続きと一緒に面白いショーを見ようと思っていたのですが…」

 

大佐はその言葉を聞き怪訝そうな顔をする。

 

「……面白いショーだと? 」

 

「ええ、今宵だけの最高のショーですよ…ククク…」

 

「ふんっ! 俺が欲しいのは簡潔な答えだけだ。そのような余興なぞいらん!!今聞けぬのならこちらから願い下げだ。 」

 

「あらぁ、折角の機会でしたのに…まぁいいでしょう。それでは大佐殿。今度こそ御機嫌よう…」

 

怒ってベンチにふんぞり返る大佐の姿を尻目に、死神博士は広場から出て行く。

 

広場を出ると、近くに黒い大きなリムジンが止まっていた。死神博士がそれを確認すると、その車に近づき運転席をノックする。

すると、すぐに窓が開き黒服の男が問いかけてきた。

 

「本部長!! 予定の時間よりも遅いではないですか!!あれ程、時間には正確にと、職員一同でご注意を促した筈ですが…」

 

「ハハハ、すまないすまない。古い友人と少し話をしていてね…少しばかり遅くなってしまったよ。」

 

そう言いながら死神博士は車の後部座席に乗り込む。

 

運転手はそれを確認すると、ゆっくりと車を発進させた。

 

ふと、死神博士が外を見る。薄く黒みがかった窓ガラス越しに、ごちゃごちゃと立ち並んだビル群が映る。すると、コンっと言う軽い音と共に、何かが車の窓ガラスに当たった。

 

「おやぁ?」

 

死神博士は、窓ガラスに当たったものを確認する。

 

 

 

当たったものは、飛蝗であった。

その飛蝗は高いところから落ち、窓ガラスに勢いよく当たったらしい。地面に転がりピクピクと体を震わせている。やがて、痙攣が収まったのか飛蝗が起き上がり、飛び上がろうとする。

 

刹那

 

リムジンの後続を走るトラックがその飛蝗を轢いた。轢かれて粉々になった飛蝗の残骸がアスファルトに飛び散る。

 

 

 

わずか、十数秒の出来事だがそれは死神博士の目にしっかりと焼きついた。

 

 

 

 

 

 

 

「どうかなされましたか。本部長?」

 

心配した運転手が声をかける。

 

「いや、なんでもないよ。ただ、これから見るショーのことを考えていてね…今宵は、本当に面白いことになりそうな予感がしてねぇ…ニィタァ」

 

死神博士は自然と微笑む。だか、その笑みはひどく歪んでいる不気味な笑みだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ー 風祭邸 ー

 

「う…うぅ」

先程まで、寝ていた真が急に唸り、目を開ける。何故目が覚めてしまったのか?それは今、何かとても嫌な予感がしたのだ。

 

少し不安になり、隣で眠る息子を見るが、新はぐっすりと寝ている。

 

 

「気のせいか…それとも考え過ぎか…」

 

真がそう呟くと、ビュォォォッと風が吹き窓ガラスを鳴らす。まるでその不安を煽るかのように

 

「嫌な、風だな…」

 

そして、真は直感的に感じた。

 

近いうちに何かが起こる。そして少なくとも自分は、その事態に巻き込まれるだろう。

 

 

 

 

 

やがて、その予感は的中することになるのだが…その事を真はまだ知る由もなかった。

 

 

 

 

 





財団の登場。
出てきた『死神博士』と『大佐』という名称は、初代仮面ライダーのオマージュととっていただければよろしいです。
そのため、ショッカーの死神博士とゾル大佐とは別人です。
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