今日から俺が美少女戦士!?   作:トロ

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第一章【綺麗な華には、アレもある】
第一話【君よ、美麗の剣を掴め】


 大和皇国本土直通の車両は、今日も今日とて満席状態である。

 十年前は大和に侵攻してきた月光獣の最前線であった大和最北の地も、現在では当時の絢爛美姫の一人によって創造された海上線路、通称『希望の橋』を通じて、ようやく定期的に交流がなされる程度には復興していた。

 本土へと繋がる線路の上、発進した機関車は漆黒の煙を吐き出しながら目的の土地を目指して車輪を回している。

 所々塗装の禿げた車両はその至るところに年季を感じるものの、整備士達の丁寧な仕事のためか、見た目程の不安定さを乗っている者には感じさせない。ただ、線路との摩擦だけはどうにもままならないのか、時折甲高い鉄の擦れる音色と共に振動が響いていた。

 そんな機関車に乗っているのは、いずれも荒廃した北の大地に見切りを付けて、ある者は成り上がるため、ある者は北に残した家族を養うため、ある者は平穏な生活を思い、各々が抱いた夢を叶えようとしている男達ばかりだ。少なからず女、子ども、老人も居るが、大抵は家族であったり誰かの恋人であったりする。

 だが未来を夢見て窮屈な車両内に座っている者の一部は、胸に抱いた夢すらも忘れて、呆けたように車内を颯爽と歩くスーツ姿の美女へと向けられていた。

 絵に描いたような美女とはよく聞くが、実際にその美女は絵画から飛び出したような美しい容姿であった。口紅を薄らと塗り、眉を整える程度はしているが、それ以外の化粧は一切施していない。だがそこに居た男性は彼女が化粧をしていないのではなく、化粧をする必要がないのだと即座に理解した。

 それほどにその美女は美しく、そして視線を集めている美女、佐々野ササミも自分がそういった存在であることを自負していたし、羨望と爛れた欲望の眼差しで見られることに慣れていた。

 

「……見世物じゃないってのに」

 

 同時に、タイトスカートより覗く足に向けられる露骨な視線を向けるしか出来ない男達の浅ましさにはほとほと呆れているのだが、そうした感情は一切顔には出さずに、だが口の中で小さく悪態をつきながら、車内の様子を、正しくは研修中の生徒達の様子を見て回っていた。

 人々を月光獣の脅威より守護する最強の剣にして盾である絢爛美姫。その養成学校の一つでは、入学したばかりの一年生をクラスごとにこうして蝦夷より大和本土へと出る月に一度のみの定期便を護衛するという名目での研修が行われている。とはいえ、名目としては機関車の護衛ではあるものの、実際は十年前に行われた一大反抗作戦、蝦夷決戦と呼ばれる大規模戦闘の跡地を見学させ、彼女達に自分達がどういった存在となったのかを意識させるのが主な目的である。

 

「どう?」

 

「はい、問題ありません」

 

 一般客が居るフロアとは別に、学生用に簡易的にだが作られた客室に居た生徒達に問題は無いか聞いて回るが、無論問題など出てくるわけがない。確かに十年前まで、およそ半世紀近くも本土から隔離されていた無法地帯の者とはいえ、彼らも絢爛美姫が圧倒的な力を秘めているのは知っている。例え相手が入りたての新人とはいえ、絢爛美姫が傍に居るというのに問題を起こそうとする者は殆ど居なかった。

 

「そう、本土まで後一時間と言ったところだけど、一応注意だけはしておきなさいよ?」

 

「でもササミせんせー。これまでこの機関車が月光獣に襲われたことってないんですから大丈夫ですよー」

 

 お気楽な生徒の言葉に苦笑。だがすぐに表情を引き締めて、少女の額を軽く小突いた。

 

「そう言った油断が良くないのよ。確かにこれまで月光獣に襲われたことはないけど、何事にも万が一っていうのがあるの」

 

「だけどせんせー」

 

「だけども、しかしも、止めなさい。別に貴女達に常在戦場の精神を持てとはまだ言わないけど、そうした気持ちも少なからず持っておくこと、良いわね?」

 

「はーい」

 

「わかりましたー」

 

 間延びした返事に少々不安が残るが、本来なら高校に入ったばかりの少女達だ。あまり目くじらを立てても仕方ないと納得して、ササミは「じゃ、何かあったら連絡をすること」と言い残して生徒達の客室を後にした。

 直後に扉越しに少女達の笑い声が響いて頭を抑える。

 あれを三年でそれなりの戦士に仕上げなくてはならないとは、これからを考えると頭が痛くなるばかりだ。

 その時、上着のポケットに入れていた携帯が震えた。一先ず今後の悩みは置いておいて、ササミは生徒からの電話に出ることにした。

 

「もしもし。何かあったのかしら」

 

『あ、先生ですか。えっと、三号車のツユですけど、何か人混みが出来ていて……』

 

「人混み? そんなの混雑して席に座れなかった客が溢れてるだけじゃなくて?」

 

『それが、空席は多いんです。何と言うか、一つの席に人が集まっているというか……』

 

「席に? 状況は確認した?」

 

『あの……』

 

「何よ、歯切れが悪いわね」

 

『男の人ばかりで……臭そうで……』

 

 ――愚か者が! 貴様、その程度で躊躇するとは軟弱にも程があるぞ!

 

 思わずかつての口調で叱咤しそうになって、グッと歯を食いしばって言葉を飲み込む。落ち着け、相手はまだ入学から二か月も経っていないひよっこだ。まだまだ自覚がないだけ。そういうこと。

 

「……めんどくさ」

 

『先生?』

 

「あー、はいはい聞いてるわ。すぐに行くから貴女達は客室に戻ってて。とりあえずその程度で電話してきた根性に免じて私が様子見てあげるから」

 

『ホントですか! ありがとうございます!』

 

「ただし、後で覚えてなさいよ」

 

『え、ちょ、せんせ――』

 

 返事を聞かずに、少しだけ強めに通話終了のボタンを押す。生徒に対して砕けた口調なので勘違いされがちだが、幾らなんでも将来人々を護る絢爛美姫の候補生が、臭いがきついというだけで教師に助けを求めるのを仕方ないで済ませられる程器は大きくない。

 帰ったら訓練内容を厳しくしよう。そう心に強く決めたササミは、問題である三号車に向けて八つ当たりするように床を強く踏み鳴らしながら向かうのであった。

 それから一分もたたずに目的地である三号車に辿り着いたササミは、確かに奇妙な光景に一瞬だが当惑してしまった。

 大和本土へと向かう機関車内は常にいっぱいというわけではないが、少なくとも時折座れない乗客が出る程には毎度混雑している。だが、三号車の車内では、空席が目立つというのに通路の一角にだけ人混みが出来ているという奇妙な状況が生まれていた。

 だが何かしら喧騒が起きているというわけではない。むしろ、他の車内に比べて異様な程静かなくらいである。

 そして人混みを作る男達にこの車両には珍しい女性も混ざっているのもそうだが、何よりもいずれもがまるで時が止まったように視線を固定して惚けていたのが奇怪であった。

 何があるというのか。ササミはくだらないトラブルだと思っていた生徒の『おねだり』が思いの外面白そうになってきたなと、内心で少なくないワクワクを抱きながら人ごみに向けて手を鳴らした。

 

「はーい、ちょっと退いた退いた。余計なトラブルを起こしたくないから席に戻ってちょうだい」

 

 このまま死ぬまで永遠に動かないと思っていた人々も、鈴が鳴るように心を震わせるササミの声には反応した。まるで夢から覚めたように正気を取り戻した人々がササミの方へと視線を向ける。

 そしてきっといつもの下衆な視線が自分を嘗め回すのだろう。何となく覚悟したササミだったが、不思議なことにそこに居た男達は軽く自分を一瞥した後に、露骨に残念そうな表情を浮かべて、それぞれの席へと戻っていくのであった。

 

「……何よ、あれ」

 

 確かに下衆でいやらしい視線は気に入らないが、だからと言って絢爛美姫として美しさを見出された女性として、あの残念そうな表情は逆に不愉快なものであった。

 ササミは首元で切りそろえた栗色の髪を弄りながら、一部不満げな顔をしている者を大きな瞳で一瞥する。

 ただそれだけで男達は何も言うことなく視線を逸らして散り散りに車内の何処か別の場所に消えて行く。そんな彼らの姿を見て、ササミはわざとらしく肩を竦めてみせた。

 

「ったく、人を外れ商品みたいな眼で見て失礼しちゃうわ……って――」

 

 そこでようやく、ササミは人混みを作り出していたのが何だったのか気付いた。

 車窓にもたれかかるようにして、流れる風景を眺める少女。

 向かい合う形の座席に座る彼女の周りにだけは誰も座っていない。そのせいで今も座れない者達が居たのだが、ササミは何故彼女と同じ席に座るものが居なかったのか頭で考えるより早く魂で理解した。

 服装は車内の人々とそう大差はない。ボロボロの黒いシャツに生地が薄くなって穴の空いたジーパンに汚れきったスニーカー。だが、それを着こなす少女は、車内の誰よりも異彩を放っていた。

 シャワーすら満足に出来ないために薄汚れた男達とは違って、健康的に焼かれた小麦色の肌、そして細くはあるが必要な筋肉を備えた体は黒豹のように魅力的だ。清水の如く電車の揺れに合わせて流れる、腰まで伸びた黒髪からも、少女自身の放つ健康的でお日様のような香りを放っている。

 そんないずれも美しさに引き寄せられる肉体の中で、一際注目を集める強い意志を感じさせる切れ長の眼と眉は、今は憂いを帯びたように窓の外へと向けられていた。

 

「ふぅ……」

 

 不意にその小さくも瑞々しい唇より零れた吐息に、ササミはおろか席に座っていた者達も呼吸すら止めて聞き入った。吐息一つでその場の人々を魅了する自然体の色香。年齢は十五程にしか見えず、未だ発育しきっていない幼さの残る身ながらも、その少女は既に傾国の妖艶さを手にしている。一方で少女の周りに誰も近寄らないところから、触れ得ざる神聖な雰囲気も同時に持ち合わせていた。

 人を惹きつけながら近寄ることすら躊躇わせる美少女。夢とはいえど凡人が抱くような泡沫の夢など、この少女を見ては一瞬で消え去るのは自明の理であるのは明白だった。

 

「……あっ」

 

 ――綺麗。

 思わず、見惚れる。

 

「ッ……何を」

 

 先程まで居並んでいた男達と同じく、その美しさに引きずり込まれそうになって、ササミは慌てて顔を振って正気を保つ。

 突然現れた美少女。しかも美女には見慣れているはずの自分すら一瞬とはいえ呆けてしまう美しさに、正気は保ってみせたもののどうすればいいかしどろもどろしていると、不意に景色を見ていた少女の視線がササミの方を向いた。

 

「何だ、おい。人のツラぁジロジロ見やがって……」

 

 見た目に反して、あるいは見た目通りと言うべきか。口が悪いと自覚しているササミよりもぶっきらぼうで乱雑な口調だというのに、一流のオーケストラの演奏の如き耳に心地よい声色にササミは僅かに喉を鳴らした。

 

「えっと……前、座ってもいい?」

 

「キョカいるもんじゃねぇだろ」

 

「じゃ、じゃあ失礼するわ」

 

「おう」

 

 そう言って、少女は前に座ったササミに見向きもせず、再度景色のほうに視線を向けて黙ってしまった。

 ――こっちのことはまるで興味なしってこと……!

 自分は少女に見惚れたというのに、相手は自分のことなど眼中にすらない。絢爛美姫としての美しさを自覚しているササミのプライドを傷つけるには充分ではあったが、だからとてここで何か言うのも負けた気分になる。ササミはこみ上げる理不尽な憤りをグッと堪え、改めて目の前の少女を見た。

 まるで絵画から出てきた美女が自分だとすれば、目の前の少女は高名な絵師であっても再現することは不可能な美貌。ここまで美しいと普通は見た目に反して心が汚くなりそうなものだが、この少女は見た目の美しさに見劣らぬ強い心を持っているのが、景色を眺める瞳の輝きからでも充分に察せた。

 傲慢ではなく、高潔。孤独ではなく、孤高。全体の印象から感じたのは神話に出てくるような狼。全てを隷属させる力を持ちながら、周囲など眼中になく、己の在り方だけを貫く美しき獣か。

 

「……んだよさっきから。テメェもそこでモジャってたカス共と同じ口か?」

 

 そんなササミの視線など既に気付いていた少女は、眉を顰めて射抜くようにササミを睨んだ。

 

「それは心外ってものよ。私は単純な美的好奇心から貴女を見ていただけですからね!」

 

 心ごと射抜くような視線に動揺しかけるササミだったが、それ以上にあの男達と同列に見られていることへの怒りが勝り、食い入るように身を乗り出しながら反論する。

 少女はこれまでとは違った彼女の反応を見て驚いたのか、僅かに目を見開いた少女はその直後に微かに尖った犬歯を剥いた獰猛な笑みを浮かべた。

 

「ビテキコーキシン、ね。ケケッ、ムズカしい言葉はわかんねーが、気に入った」

 

「へ?」

 

 どういうことだと首を傾げるササミに、少女は間髪入れずその右手を差しだす。

 

「俺ぁ早森。早森ハルだ。アンタは?」

 

「えっと、佐々野ササミ、だけど……」

 

「ササミね。俺のことぁハルでいい。ダチは皆そう呼んでる、だからアンタもそう呼べ」

 

「え、えぇ。光栄だわ」

 

「そうそう。コーエーだコーエー。へへへっ」

 

 ササミが握った掌は見た目とは裏腹に硬く、ごつごつとした印象を受けた。思わず目を剥くと、そんなササミの反応が気に入ったのか、少女、早森ハルはしてやったりといった感じに喉を鳴らした。

 

「ケケッ、アンタ、北の人間じゃないね。だけど、北に来るカスと同じじゃねぇ」

 

「……どうしてそう思ったのかしら?」

 

「そのツラだよ。アンタ、キレーなカッコしてんからな。あそこじゃそういうのを着てんのは、フッコーっていうゴタイソーなことゲロするくせぇ口で、人のナワバリん中でケツからクソをあされってメイレーしてくるオエライさんだけだ」

 

 辛辣な物言いだが、今の言葉でハルが本土の人間をどう思っているのかある程度察することが出来た。北部の一部では復興目的という都合のいい言葉で現地に暮らしている難民達の土地を強引に奪っているということも知っている。

 

「あぁ、アンタにとやかくとかじゃねぇんだ。悪ぃな、アニキからもテメェの口はケツの穴と変わんねぇって言われるくれぇ口が汚ぇんだが、こればっかはどうしようもねぇ。カンベンしてくれ」

 

「あ、あら、そう」

 

 最初の印象と違って随分と舌の回る少女らしい。だが本人の言う通り生まれのせいなのか、生まれてから絢爛美姫として育てられたササミにとっては、思わず口を閉ざせと突っ込むのをグッと堪えるのが精いっぱいなくらいには下品な言葉の羅列であった。

 

「へへへ、まぁそんなのはともかく、アンタの拳はいつもコギレーにふんぞり返ってた本土のノグソみてぇにゼーニクまみれでコギレーなのとは違ぇ。カタくて強ぇ、テメでヤれるヤツの手だ。気に入ったぜ」

 

 だが本人はまるで気にした様子も無く、握った手を解くと嬉しそうに目尻を緩めて笑いかけてくれる。

 ――その笑顔はずるい。

 内心でササミがぼやくのも無理はない。ササミを見るハルの眼差しは、初めの印象とは逆転して無邪気で愛くるしい暖かさに満ちている。思わず胸元に抱きしめなかったことを褒めてもらいたいと自画自賛したくらいには、その笑顔の破壊力は壮絶であった。

 それに言葉が悪いだけで悪い子ではないらしい。むしろ男女問わずに良く褒められる見た目ではなく、鍛錬で硬くなって傷の多いこの手を褒めるところが良かった。

 あるいは、ハル自身が傾国の美少女であるからこそ、他人を見た目で判断しないのかもしれない。

 今も現役で活躍しているエースと呼ばれるような絢爛美姫と同じ気質。美しいからこそ、他人の本当に美しい部分を即座に見出すことが出来るハルに対して、ササミは俄然興味が沸く。

 だからこそ、疑問があった。

 

「……貴女、本土には一人で?」

 

「ん? あぁ……ケッコー前に本土行ったお姉ちゃ……姉貴がこっち来いって言ってきてな。あっちがどうなってるのかキョーミもあったしね」

 

 先に本土で稼いだ者が、北方に残した家族たちを呼び寄せることはよくあることだ。現にこの本土行きの車両に乗っている母子の幾つかはハルと同じ理由で乗っているのだろう。

 

「もう一つ、いいかしら?」

 

「おう、何だい」

 

「貴女、絢爛美姫になろうとは思わなかったの?」

 

 長年、絢爛美姫として数々の美女、美少女を見てきたササミですら見惚れる程の美貌の持ち主。さらには長年月光獣の脅威に晒されてきた土地に住んでいた少女が、美麗装飾という唯一無二の刃を手に取ろうとしなかったのか。

 身を守るために、あるいは外敵を排除するために、もしくは多大な金銭を得るために。

 理由は無数にあれど、絢爛美姫を目指さない理由は殆ど存在しない。

それに、周囲の者がハル程の美少女を絢爛美姫にしようと思わなかったのだろうか。

 

「絢爛美姫?」

 

 ササミの問いにハルは小首を傾げる。そして数瞬の後、何故か盛大な溜息を吐いて、疲れた風に何かを言おうとした瞬間だった。

 

「あれ! あれって!」

 

「嘘だろ! 何で! これまでは!」

 

「いや、いやぁぁぁぁぁ!」

 

 反対側の席に座っていた乗客達のほうから悲鳴があがる。その声に驚いたハル達が視線を向けた先、誰もが窓から外を覗いて絶望の表情を浮かべていた。

 

「これは……!」

 

 突然のことに窓側が見えない乗客は当惑するが、ササミだけは人々の恐慌と、何よりも長年の経験から肌を泡立たせる嫌な気配から、それが何なのかを即座に理解したのも束の間だった。

月光獣(ルー・ロウ)だぁぁぁぁぁ!」

 

 窓越しに見えたのは、海を泳ぐ巨大な異形だった。海面より覗くその身体は海の水とは違う粘性の何かで濡れ、異形の証たる無数の眼球と触手が得物を探すように蠢いている。

 誰もが一目で分かる程の怪異は、当然のように線路を走る車両に狙いを定めているのは、無数の眼球が車両に注がれていることから明白であった。

 

「ッ……窓から離れろぉ!」

 

 咄嗟にササミが叫ぶも全ては遅かった。

 海面から巨大な影が飛び出す。露わになった異形は、例えるならば体毛を触手と化した巨大な獅子の如き姿だった。

 その真紅の眼に宿る感情は、人間に対する激情。悪意でも、好意でもなく、灰になるまで燃え続けるが如き炎の感情こそ、かつて世界を落としかけた災厄の先兵。

 

「■■■■ッッ!」

 

 月光獣。モデル・リオン。

 本来は前線のみでしか見られない小型の月光獣を統率するレベル4の化け物は、咆哮を轟かせながら車両の横っ腹に体当たりを仕掛けてきた。

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

「いやぁぁぁぁぁ!」

 

 車両が大きく揺らぐ。ササミの居た車両の隣に激突した巨大な何かによって、機関車そのものがレーンを外れて横転した。

 中に居た人々の悲鳴すら掻き消して、横転した車両が希望の橋に火花を散らす。捕えた昆虫をいたぶるように車両内部をもみくちゃになる。

 時間にして僅か数秒も無い回転地獄の後、あと少しで海から落とされるといったところで、車両は停止した。

 

「ぐっ……状況、報告……!」

 

 先程までの騒音が嘘のように、か細い呻き声と小さな子どもの泣き声が響く中で、何とか人の波に飲まれることが無かったササミは、切れそうな意識を何とか保ちながら情報を知ろうとして、自分の他に実戦を経験した絢爛美姫などここには存在しないことに気付いた。

 

『痛い、痛いよ……』

 

『助けて、よ、せんせー……』

 

『返事をしてよアサヒちゃん! 先生! アサヒちゃんが!』

 

 生徒達の美麗装飾より伝わる言葉の数々の殆どは自分に助けを求める声だ。それ以外は怪我の痛みに悶える者しかなく、誰も戦いに臨もうという気概を見せようとする者はいなかった。

 

「……月光獣の襲撃だ! 動けるなら怪我人よりも先に外に出て着装しろ!」

 

 本来なら怪我人の治療を優先したいが、月光獣を前にそんな悠長な真似をしている暇はない。

 だが生徒達からの返事はそのどれもが自分達に精一杯なばかり。誰一人として戦う意志を見せないことにササミは歯噛みする。

 その時、ササミの対面の席が押し込まれた憤怒のマグマに押されるようにして吹き飛んだ。

 

「……ぁぁぁあああああああ! いってぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 悲鳴と慟哭が支配していた車内で、生気に満ち満ちた怒号が響き渡る。その声の主であるハルは、美声を殺意で犯しながら鼻息荒く起き上がると、突然の叫び声に唖然とするササミを他所に憤怒の形相を浮かべていた。

 

「上等だクソボケがぁ! ゴキゲンなヨロシクでクソハッピー決まったぞ⁉」

 

「ハ、ハル⁉」

 

「誰だか知らねぇがそのくっせぇケツをぶち抜いてヒりだしたクソをクソくせぇ口ん中に――ん? よぉササミ! テメェ元気だったかよ!」

 

「そっちは……聞くまでもなさそうね」

 

「あぁ、パーペキにキちまってるぜ。いきなり人のケツにでけぇのかましてくれたクソヤロウのケツにこっちも一発キメてやりたくてウズウズしてたまらねぇ」

 

 驚きのあまり声を裏返らせるササミに気付いたハルは、まるで手負いの獣の如く犬歯を剥いた笑みを浮かべた。

 美人の怒る様は何よりも恐ろしいとは言うが、ササミをして心胆が凍るような笑みである。その一方で、怒号によって周囲の注目を集めたハルの笑みは、一瞬にして恐慌状態にあった人々のざわめきを沈めていた。

 

「で? これぁどういったことだ?」

 

 当然ながら周囲の注目など眼中にすらとどめずに、ハルは横転した車内の様子を見てササミに問いかけた。

 その問いに我に帰ったササミは、戦場にあって状況を忘れるといった自分を心中で自嘲しつつ、ハルに現状を説明しようと口を開く。

 

「■■■■ッッッ!」

 

 だがササミの言葉よりも雄弁な月光獣の咆哮によって、ハルとササミの両者は己のやるべきことを全て察していた。

 

「悪いが説明している暇はない……!」

 

「あぁ……! 親のアイサツより聞いたイカくせぇ声だぜ、こいつぁよぉ……!」

 

「ともかく一度外に出ないことには何もわからないが……」

 

 不意に言葉を濁したササミの視線がハルに移る。

 ――戦おうという意志はあるか?

 喉元まで出かけた言葉をササミは自身への侮蔑の言葉と共に飲み込んだ。

 

「……貴女は待っていなさい」

 

 偶々乗り合わせた少女を戦線に駆り立てる。例えその美しさが即戦力として通じようとも、一般市民を戦場に出させる絢爛美姫にその美麗を名乗る資格は無い。

 月光獣の襲撃に気付かなかったことも含めて、どうやら自分はハルという極上を前にして腑抜けてしまったらしい。

 

「ここからは、私達絢爛美姫の役割だ」

 

 そんな己への自嘲を腹の底に押し込んで立ち上がろうとしたササミは、突如右足に走った激痛に崩れ落ちてしまった。

 

「つぅ……」

 

 咄嗟に座席に掴まって持ちこたえるが、ササミは感情だけでは耐えきれない激痛を発する右足に目を向けて、顔をさらに歪めた。

 月光獣の衝突で砕けたガラス片が脹脛に突き立っている。しかも家庭用の包丁の如き大きさというオマケ付きだ。

 

「迂闊……!」

 

 傷を自覚した瞬間に冷や汗が全身に滴り激痛が思考を乱す。本来なら泣きわめく程の怪我にも関わらず、表情を歪めるだけで堪えているのは戦士として積んだ場数のおかげだろう。

 

「■■■■ッッッ!」

 

 しかし、ササミの怪我など考慮しないリオンの雄叫びが再度鳴り響く。次いで幾つもの悲鳴が車両の外から轟いた。

 時間は殆ど残されていない。思考が長くなることによって、力無き人々が容赦なくその命を散らされることは明白だ。

 

「ハル!」

 

 だがそんなことを抜きにして、ササミに迷いは無かった。

 間髪入れずに指輪を抜き取ったササミは、絶望に言葉を失っている乗客達の中、唯一違った覚悟を秘めたハルの手を掴んだ。

 

「ササミ⁉」

 

 突然のことに動揺を露わにするハルの眼を真っ直ぐに見つめる。その眼には、ハルと同じ覚悟の炎が灯っていた。

 

「無責任は知っている! 罵詈雑言も受け止めよう! しかし、今この場で唯一『諦め』に潰れず立つ君にだから、私は頼む!」

 

 ササミは強く握ったハルの掌に自分の掌を重ねた。

 沸騰した血液で滾ったように熱い少女の掌は、見た目は柔らかに見えながら、その実鍛錬によって硬く粗い。

 だからこそ信頼できる掌だった。

 きっとそれは、彼女が自分に言ったように、その掌もまた、己で道を切り開ける力を宿しているからこそ。

 

「今この時だけでいい。どうか、世界を護る美麗の刃を振るってくれないか⁉」

 

 ササミが掌を退けると、ハルの手の中には小さな指輪が置かれていた。

 美しさを力とする人類最強の刃、美麗装飾。

 この世の理を超えた力を持つ異界の獣に対して、唯一力を振るうことが許された異端の証が今、ハルの手には乗っている。

 

「ササミ、こいつぁ……」

 

「説明する暇はない! 想像しろ! 自分が信ずる強さの象徴を!」

 

 もう時間は一分も残されていない。こうしている間にも咆哮は近づいており、呆けていれば次に断末魔をあげることになるのは自分達なのだ。

 だからササミは初めてハルが見せた動揺を振り払えるように叫んだ。

 

「吐き出せハル! それが君の力だ!」

 

「俺の……」

 

 直後、鋼鉄がひしゃげる音と共に、腹の中を掻き毟るような不快な鳴き声が空気を震わせた。

 無数の触手がハル達の車両の天井を剥ぎ取り露わになる。そしてその不気味な鬣の奥で蠢く真紅の双眸が、恐怖に怯える人々を見下す。

 誰もが恐怖に言葉を失った。

 悲鳴すら無く、聞こえるのは風切り音と触手より垂れる鮮血が床に跳ねる音ばかり。

 

「■■■■ッッッ……」

 

 触手の奥の口が開かれる。蔓延する腐臭に混じった血潮の香りは、啜った絶望の放つ残滓。

 誰にも抗う術はない。

 誰もが抗うことを忘れた。

 

「あぁ畜生……」

 

 しかし、ハルには残っている。

 ササミが託した小さな刃こそ、この絶望に抗う唯一無二と知るならば。

 

「ササミぃ……!」

 

「■■■■ッッッ!」

 

 物理的な衝撃を発生するリオンの咆哮に髪をなびかせて、ハルは握った拳を空に掲げる。

 まるで確信した勝利を証明するように。

 きっと、己の勝利に続く未来を信じて。

 

「どうなっても……知らねぇぞぉぉぉぉぉぉ!」

 

 少年(・・)は、美麗を刃に絶望へ叫んだ。

 

 その瞬間、天井から顔を突っ込んだリオンの体が何かに弾かれた。

 全長五メートルには届く体躯が木端の如く空へと吹き飛ぶ様は異常の一言。きっと知能があったのならば驚愕に思考も纏めて飛ばされていただろう衝撃の中心部から、閃光が吹き荒れる。

 

「すごい……」

 『乙女力(ヒロイン・ブラッド)』と呼ばれる輝きは、その放出量が多ければ多い程能力の高さを現す。上位の者となれば物理的な衝撃すら引き起こすことも可能だが、まるで台風のように周囲の物を巻き込んで逆巻く乙女力の奔流は、数多の絢爛美姫を見てきたササミをして、見たことのない力だった。

 最早、疑う余地など何処にもない。その輝きの中心に立つ者が振り切った拳の軌跡が全て。

 

 新たなる美麗の担い手。

 最新にして、おそらく最強になる道を辿るだろう戦士の覚醒は劇的に。

 絶望を掻き消す光を秘めて、早森ハルはその切れ長の眼で空を見上げ、次いで、自身の姿を見て絶句していた。

 

「あー………………ってなんじゃこりゃあ⁉」

 

 くたびれたシャツとボロボロのジーパンにスニーカーといった服装だったはずが、今やその姿は本人からすれば絶望的に、周囲から見れば天使の如く豹変していた。

 あの着古した衣類は消滅し、ハルが今着ているのは膝丈のヒラヒラした黒のスカートにそこから覗く黒のスパッツ。シャツも黒をベースに青色の線が入ったセーラー服になっており、胸元と長い黒髪を纏めた二つの真っ赤なリボンが映えている。

 それ以前の服装でも充分な美少女だったが、こうして女装をすると、絶望すら忘れて乗客達が見惚れる程の完全無欠の美少女とハルは化していた。

 

「ササミぃ! こいつぁどうなって――」

 

 だがハルが己の服装への疑問を投げかける前に、重力に引かれて空より落ちてきたリオンが、車両の横に落下した。

 再度現れる絶望に上がる悲鳴。だがハルは砕けた窓ガラスの向こう側で痙攣するリオンを苛立ち混じりに睨みつける。

 

「……まぁ、今はいい」

 

 服装は何であれ、ハルの全身には力が漲っている。

 冗談でも無く、今なら何が襲い掛かろうと叩き潰せる自信があった。

 まるで初めて踏み抜いたアクセルのように、最高速へと上がった体内の加速は、尚も届かない頂へと向かうように速度を上げ続けている。

 その高揚に応じるように、虚空で収束した乙女力が真紅の帯となった。さながらハルの魂をそのまま質量にしたかのような紅蓮。奮い立つ心のままに乙女力の炎を噴き出すその帯は、飛び立つ力を欲するハルの両手足に巻き付いた。

 

「こいつで俺ぁ……テメェをぶん殴れるわけだ!」

 

 四肢に巻かれた美の結晶が燃焼する。この前進を止められる存在は誰も居ないと、ハルは迷いなく踏み込んだ足で空へと飛び出した。

 

「お、ぉ……⁉」

 

 軽く飛んだはずが、開いた天井を超えてさらに天井までの高さの数倍もの高さまで飛翔して目を剥く。

 だがそれこそ自分に秘められた限界知らずの力だと認識したハルの顔には即座に会心の笑みが浮かんだ。

 そう、何であろうと関係ない。

 やるべきことは、決まっていた。

 

「よぉ、ゴキゲンだぜテメェ?」

 

「■■■■ッッッ……!」

 

「ガキみてぇにギャーギャーとうるせぇなぁオイ? これから気持ち良くウレションさせてやるからよぉ」

 

 リオンの前に、歓喜と怒りを昂らせる戦士が降り立った。

 ゴキゴキと拳を鳴らしながら一歩一歩近づくハルに、リオンが怯えたような鳴き声をあげる。

 その触手に覆われた顔の一部は、ハルの一撃を受けて触手ごと抉れ、粘着質な青色の液体を流していた。

 脳を揺らされたせいか、立つことすらままならずにか細い威嚇の唸り声を張ることしか出来ない。既に満身創痍の体を見せているリオンを、ハルは嘲笑にて応じた。

 

「面白れぇなぁワンコロ。そうやって『オスワリ』すればメシにありつけるって嬉しいオチをゴショモーってかぁ? ――そいつぁザンネンだったなぁ」

 

 ハルは、リオン以上に獰猛な眼光を放ちながら、握った右拳を天に掲げた。

「テメェのメシは……俺の拳だぁぁぁぁ!」

 

 体内に蓄えられた乙女力が、ハルの溢れる感情を体現したように拳へと収束する。

 さながら理不尽に蹂躙された弱者達の怒りも乗せるように、初速から最大速の弾丸と化したハルは勢いそのままリオンの頭上へと飛んだ。

 

「■■■■ッッッ……!」

 

 だがリオンもそのままハルの一撃を甘んじるつもりはない。動けない身体の代わりに、体毛代わりの無数の触手がハルへと殺到した。

 

「ハッ!」

 

 一本一本が弾丸の速度に匹敵し、バズーカの如き火力を有するリオンの触手群に真っ向から立ち向かうのは、戦闘慣れした絢爛美姫ですら難しい。しかしハルは嘲るように鼻を鳴らして、視界を埋め尽くす汚らしい触手へと拳と蹴りを叩き込んだ。

 触手の雨を弾ききる肉体の嵐。渦巻く螺旋の軌跡を両手両足に纏った赤熱の帯で描く。

 

「遅ぇってんだ!」

 

 そしてハルは全ての触手を叩き落すと、最後の一本を足蹴にしてそのままリオンとの距離を一気に詰めた。

 空を貫く一筋の赤い雷。リオンごと希望の橋すら砕かん勢いで突貫するハルは、触手の防御を失ったリオンの顔面を拳で貫いた。

 

「■■■■ッッッ⁉」

 

「いいツラで泣くねぇ! ゾクゾクするぜキモワンコよぉ!」

 

 抉った傷口に突き刺した拳をぐりぐりと捩じる度に上がるリオンの絶叫と青い血液で全身を濡らしながら、ハルはリオンの邪悪な顔立ちよりも凄惨な笑みを浮かべてその絶叫に酔いしれた。

 リオンはこれ以上の痛みから逃れるために暴れ狂ってハルを振り払おうとする。その動きにハルは抗うことなく従うと、勢いのまま弾かれた体を器用に一回転させて静かに着地をした。

 

「よーやく慣れてきたぜ」

 

 暴れ狂う力の方向性を確かめるように、ハルは数度拳の握り具合を確かめた。

 本来、ハルのように初めての着装を行った者は、酷い者だとこれまでとは雲泥の差がある身体能力の差に、歩くことすら難しい場合もある。それも当然であり、適性ぎりぎりの絢爛美姫ですら、初期着装の時点で鍛え上げられた男性軍人の数倍以上の身体能力と化す。そのため、適性が高ければ高い程、逆に習熟速度が遅くなるという難点がある。

 だがハルは既に己の中の力の動きを把握し始めていた。それは彼が物心ついてからこれまでに鍛え上げた武術の賜物。肉体を操るという一点を築いたハルの体は、突然沸き上がった力にすら対応を見せていた。

 

「それじゃ、ジュンビタイソーは終わりでいいな?」

 

「■■■■ッッ!」

 

「へっ! イキが良いなぁオイ!」

 

 敵との間に左手を軽く開いた状態で掲げ、右手は拳を象り腰の位置へ。半身を向けるようにして両足は肩幅で開き、軽く腰を落とす。空手の基本に似た構えを取ったハルは、ダメージを引きずったままのリオンが立ち上がるのを待つことなく、初めの一歩で一気に間合いを詰めた。

 

「初めはグーでぇ!」

 

 迎撃の触手を最小限の動きと拳で弾くことで掻い潜り、懐に入ると同時に掌底でリオンの顎を打ち抜く。小さな掌が奏でたとは思えない重低音を響かせつつ、半身が浮かび上がったリオンへさらに一歩踏み込んだ。

 

「次は足ぃ!」

 

 勢いに乗って体を回転させつつ、リオンの腹に追撃の足刀が突き刺さる。

 その一撃で身体全体が浮かび上がったところで、ハルは根を張るように両足で地面を噛みしめた。

 

「お次でラストぉ!」

 

 気迫と共に限度を知らない乙女力の輝きがさらに膨れ上がった。

 最早、太陽をその身に宿したかの如く閃光を放つハルは、迫りくるリオンの巨体目掛けて、大きく拳を振りかざし、

 

「全ッ力全開のぉぉ!」

 

 拳を叩き込むと同時、溜めこんだ力を爆発させるようにハルの四肢がリオンへと殺到した。

 

「乱れ撃ちぃぃぃ!」

 

 拳が舞う。

 蹴りが駆ける。

 ハルの四肢が霞む程の全力攻撃は終わらない。

 正拳、肘打ち、鉄槌、手刀、掌底。

 回し蹴り、膝打ち、後ろ回し蹴り、足刀。

 地面に屈することも許されずに浮遊し続けるリオンに反撃の手は残されていない。腹部で発生する美麗の絨毯爆撃は、醜悪の結晶が砕けても止まらない勢いを保ち続ける。

 そしてその最期、きっかり十秒も続いた浮遊地獄を終わらせたハルは、猫のように後方に飛び、リオンの巨体の影を脱すると空高く舞い上がった。

 

「こいつぁオマケのぉ!」

 

 リオンの落下に合わせて、虚空に舞ったハルの体が回る。その回転に合わせて、伸びあがった蹴り足は、必殺の閃光の尾を引きながら、自由落下に身を任せたリオンの脳天へ、

 

「俺様ジマンのイチモツだぁぁぁ!」

 

 その一撃こそ、新たなる美麗があげた誕生の産声。。

 

 砕くでも割るでもなく、ハル渾身の胴回し回転蹴りはリオンの頭を地面に擦り潰すのであった。

 

 

 

 

 

 

 


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