わたしがウロボロスだ   作:杜甫kuresu

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鉄血のミス
・ウロボロス「わたしもあの銃で戦ったこと有るぞ。あーそーゆーことね、完全に理解した(分かってない)」
・上司が妙に冷たくて拗らせた。
・重要なスキル「精神性」について測っていない。

優秀な鉄血ならではの失敗。ウロボロスは可愛がってくれる上司の下でなら輝く筈。
キューブ作戦のログが見れないので口調とかはこっそり修正するかもしれない。


キャラ付けをミスった

「おはようございます、今日も綺麗ですね。結婚してください」

「冗談も程々にするように。もう一度電脳空間に放り込まれたくはありませんよね?」

 

 代理人はいつも冷たい。せっかく百合展開を申し出ているのにすっごいアッサリとあしらって来る。

 何でも俺は秘密兵器的なサムシングらしく、例のCUBE作戦まで出番はなさそうなのだ。そりゃあ本部は暇だからナンパだってしたくなる。

 

 朝に挨拶する毎にスカートの下のサイドアームとついでにパンツ見せてくださいと土下座しているのだが、さっぱり見せてくれる気配がない。曰く「結果を見せれば」だとか、アメとムチが上手いお方で。ところで要するにパンツは見せてくれるんですか?

 何時も通り下っ端の指示に司令塔へ向かう代理人。暇なのでいつも付いていっている、個人的にはああいう雑魚キャラの丁寧な戦い方こそ汲むべき教訓が有る。弱いようで彼女達は基本に忠実な真っ当な兵士だからな。

 

 後ろをついていくと溜息をつかれる。

 

「またですか。飽きないものです」

「だって暇ですよ此処、チェス皆下手ですし。それに、部下の扱い方を弁えるのは上位者として当然ではないですか?」

「…………好きにしなさい」

 

 口ではああ言うが、ついていったら色々教えてはくれるので所謂クーデレの類らしい。本物のウロボロスとは非常に相性が悪そうだとは思う。

 本部はいつも静かなのが特徴で、俺達が歩いていると足音がよく響いてそれはまあ敵の本拠地という顔を見せてくれる。ちょっと薄暗いのは苦手だけど。

 

 代理人は自分からさっぱり喋らないので、俺が話題を振る必要がある。

 

「あ、そう言えば最近髪染めようと思ってるんですよ。ハンターに「その方がイケてる」って言われたから」

 

 髪の色は白か黒なのが上級AI的な嗜みのようだが、俺は特段髪色に興味がない。

 代理人がちらりと俺の髪を見る。ちゃんとお団子ツインテですぞ、よく考えたらお団子って代理人とお揃いだよね。密かに憧れてたのではないか?

 

「染料ならありますよ」

「染料? 色気がないどころか人体理解に乏しい発言ですよそれ」

「人形ですからね、大体私はあまり髪に興味がありません」

 

 そうだな、彼女達は風呂もあんまり入らない。臭わないのだから仕方ない、機械は便利なものだ。

 とはいえ俺が「お風呂シーンのない美女なんて価値がない」という完全な偏見で訴え続けたら用意はしてもらえた。スケアクロウとはバス友である。

 アイツめっちゃ身だしなみに詳しいぞ、やはり有能か…………。

 

 代理人の髪型を勝手にポニテにしてみた。

 

「印象違いますよ、こっちも綺麗だ」

「…………さて。あなたが面倒を見ているS12地区の部隊、本日中に小規模戦をする予定ですが」

 

 あんまり怒らないんだ、意外。

 司令塔についた。答えようか。

 

「面倒を見ましょう。わたしが居なくなるまでは、彼女達の命の責任を負うべきかと」

「…………甘いのか残虐なのか、私にはあなたを測りかねます」

 

 あんまりろくな奴ではないでしょう。

 本部の司令塔は超広範囲まで通信が届くスグレモノだ。同時にチャンネルを多く受け持つ程の汎用性こそ無いが、こうやって俺でも近場の侵略勢に指示を出せる。

 

 代理人がヘッドセットを渡してくる、妙なところだけステレオタイプなのが鉄血らしい。

 

「とはいえ、あのキャラ疲れるんですよね。まあ威厳たっぷりだから構いませんけど」

「意図して切り替えていたんですね」

 

 そりゃそうよ。

――暫く待っているとプツリ、と繋がりきった合図の音。背筋を伸ばし、表情から切り替える。しっかりこの作業をしないとキャラが保たない。

 

「――――――久しぶりだな、捨て駒の諸君。相変わらずの箱入り娘、ウロボロスだ。今回もこんなAIに指示を戴く気分はどうだ? 正直に言ってみよ」

 

 何やらあっちは騒がしい、喧騒の内容としては「ウロボロスさんだ」とか「これで勝つる」とか「我らがアホの子」とか。誰がアホの子だ、お前の端子引きちぎるぞ。

 

 あんまり五月蝿いのでわざとらしい咳払い。いい加減彼女達も俺の機嫌取りには慣れてきたのか、すぐに静かになった。

 

「よろしい。ではおぬし達への僅かな期待の証として聞いてやろう、いつもの三箇条を復唱せよ」

 

 ざわざわ―っとする。お前ら頼むから仕事中は真面目にしろ。

 鉄血達の喧騒が段々と小さくなり、呼吸を合わせる誰かの合図。

 

『死ぬな!』

「よし。次」

『死にそうになったら逃げろ!』

「声が足りぬぞ」

『そんで隠れろ!』

「最後、スイッチを切り替えろ!」

『運が良ければ不意をついてぶっ壊せ!』

 

 最後は全員で息を合わせて!

 

「『以上、ウロボロスのなんちゃって四箇条!』」

「よし、作戦準備! 獅子は兎を狩るにも全力である! おぬしらが優秀であるというならば、その実力をあの間抜け面共に叩き込んでやるが良い!」

 

 

 

 

 

『リーダー、人形を捕縛しました!』

「銃は弱者を嬲る為でなく、強者の権威を知らしめる為に弾丸を吐くもの。利用できぬなら苦しまぬように壊せ」

 

 

『挟撃、逃げ道がありません!』

「愚か者。無いのではなく「まだ見つかっていない」だけだ。手を尽くせ、修羅となれ、全てを利用しろ。可能性のない戦場など無い、状況を詳らかにせよ」

 

 

『味方の半数が重傷です! 作戦進行状況は芳しくありません』

「知ったことか。おぬしらが死んでは兵が減るだろう、劣勢ならば素直に引かぬか」

 

 

『万策尽きました』

「投げやりに報告するでないわ馬鹿者。おぬしらの手はもげたのか? 足は木っ端微塵か? 銃は折れ曲がったか? グレネードはどうした、事細かに報告せよ。手は尽くしてやる、犬死してパーツを無駄にするでないぞ。おぬしらはわたし程でなくともそれなりに高値なのだからな」

 

 

 

 

 

「…………作戦成功。やはり危なっかしいか、あやつらももう少し慎重になれば良いのだがな」

「ウロボロス、口調が抜けてないようですが」

「――――――ああ、熱が入りすぎたようですね」

 

 もう慣れたとは言え、不自然な喋り方だからな。ずっとやっていると抜けなくなってしまう。

 思わずデスクチェアにへたり込む。今回は途中で正規軍が少しだけ顔を見せたから焦った、俺だけでも強がらないと部下まで落ち込むからなあ。

 

 代理人が知らぬ間に珈琲を淹れてくれていた。本場のメイドの珈琲とは豪華な。

 

「ありがとうございます」

「どうせ指示も出来ませんから。それにしても、相変わらずあなたの指揮は面白い――――兵の士気が違うようですが」

 

 何でだろうね。本当に此処で引きこもって一方的に指示してるだけなんだが。

 珈琲を思わず一気飲みする、喉が渇いていたのだ。確かに酸味と苦味の整った芳醇な味わいが舌、喉と温かみを分けてくれる。

 

「美味しい。やっぱりメイドしません?」

「家事で人間が殺せるなら喜んで」

「まあ良いや」

 

 すぐに飲み干してしまった。勿体無いことをしたのかもしれない。

 代理人は仕事以外にさっぱり興味を示さない。どれだけ喋っても趣味嗜好どころか個人の人格の特徴性も意外とはっきりしない。あんまり無機質に過ぎるので時々心配だ。

 

 死ぬ前に遺恨は絶ちたいものだ、ついでに聞いてしまおうか。

 

「それで、あんな蠱毒にかけて生まれたわたしの性能。ご感想は?」

「想定以上です。決して計画性の有った試みとも言えませんが、あなたの存在は確かに有用性を証明したことでしょう」

「じゃあわたしが無能だったらどうでした?」

 

 つまり、本当の彼女だったら。

 俺は有能らしい。認めるのは日本人の感性として非常に図々しいものだが、少なくともウロボロス当人より俺は成功している。

 

 もしも、もっと喋りにくくて。扱いにくくて。それなら代理人はどうしたのだろう、何故最後に見捨てたのだろう。それだけは気がかりだった。

 

「それでも数千を生き延びたそのカタチに意味はあるでしょう、そうそう切り捨てるわけでもありません――――――程度が過ぎれば別ですが」

「そう、ですか…………」

 

 多分すれ違いだったんだろうな。

 向いてなかったんだ、アイツ。ちょっと歯車が噛み合わなかっただけ。

 

――何となく感傷的な気分になったので、誤魔化すために席を立つ。

 

「何処に行くのですか」

「ちょっとブラック・ジャックでもします。疲れましたから」

 

 代理人は背を向けて出ていく俺を特段追いかけようとはしなかった。

 ただ、扉を出る時にボソリと

 

「あまり遊び過ぎないように」

 

 と、姉なのか母親なのかも分からない釘を刺してきただけだ。

 

 

 

 

 

 

 

「かーっ! お前顔に出ないから分からねえんだよ!」

「そうかそうか、ではレイズかフォールドか速く答えよ」

 

 処刑人が目を紅く光らせては俺の顔を見て唸る。もうこの下りを繰り返して3回目だ、飽きてきたぞ。

 

 娯楽を知らない鉄血にカードゲームを持ち込んだのも俺だ。最初は暇そうに空き缶を撃っていたハンターを誘うところから始め、処刑人を巻き込み、スケアクロウを巻き込み――――としている内に一大行事となっている。

 

 俺はほぼ負けたことがない。以前は違ったはずだが、この体だとポーカーフェイスが非常に板についていてさっぱり読み違いを起こさない。俗に言う赤子の手を捻るようにって状態。

 

「もう降りておけ、処刑人。また食い物にされて酒瓶ごと持っていかれるのがオチだ」

「うるせえよ! そういうお前だって、秘蔵の拳銃コレクションを3つぐらい持ってかれただろうが!」

「はようせい、全く」

 

 大体は酒の量で賭ける。俺達はmlで分かるからな、手軽なチップになる。

 あんまり負けても抜けられない哀れな負け組には無事私物を持ち出してもらう。大体変換レートをボッタクリにしておくのだが、余程俺を負かしたいのか挑戦者は後を絶たない。

 

 いい加減あの乱雑なコレクション返そうか、邪魔なんだよな…………。

 なんてゴミ片付けの算段をつけている内に、処刑人が酒を叩きつける。

 

「レイズだ! お前が何回もそうやってレイズだけで逃げ切ったのは確認済みだ! 3度目の正直ってな!」

 

 

 

「ほう、良い啖呵だ――――――――21、ブラック・ジャックだな。ほれ、酒を寄越せ」

「マジかよ!?」

「だから言っただろう…………」

 

 処刑人が俺のカードを見てクレーマーじみた様相で乗りかかってくる。ハンターは止めてくれなかったが処刑人をバカを見る目というか、哀れみ混じり、なんとも複雑な表情で呆れている。

 

「イカサマしてんじゃねえだろうな」

「バカを言うな、わたしがイカサマをしようと思えば毎回21だ――――――二度あることは三度ある、それだけのこと。良いからその酒を寄越さんか」

「クソ、持ってけ」

 

 捨て鉢気味に寄越された酒を受け取る。

 処刑人は「覚えてろよ」なんて如何にもな捨て台詞を吐きながら席を立つ、もう少し残るらしいハンターに尋ねる。

 

「あやつは仕事か?」

「そうだな、最近はちょいと忙しい…………ウロボロス。お前の出番も近い内に来るだろうさ」

「そうか、それは楽しみだ――――――――404小隊」

 

 俺を殺す彼女達。俺が殺されたい彼女達。話を進める彼女達。

――どうだろう、なし崩し的に俺は死ぬことを目的に走っているが、それは俺個人としてどういう了見なんだ。

 

 確かに俺はやられる役配置だ。多少事情が変われど其処が変わってくれるほど世界は都合よく回っていないだろう。

 満足できるのだろうか。彼女達はちゃんと勝ってくれるだろうか。目の前の彼女は、ちゃんと無事なんだろうか。

 俺はどうするのが正解なんだ? 人間を殺すべきなのか、鉄血を殺すべきなのか。

 

「何だ、まじまじとコッチを見て。AIでもイカれたか?」

「………………いや、つまらぬ事だよ。どう転ぼうと、わたしはウロボロスだ」

 

 どちらにせよ俺は悪役だ。俺が何をしようかなんて考えるより、まあ彼女達に任せたほうがなるようになるに違いない。

 ああ、きっとそうだろう。

 

「変なやつめ」

「ああ、わたしは変なやつだろうさ。これから待ち受けるものが無性に楽しみで仕方ない、ははっ」

 

 どれだけ俺の予想を超えてくれるだろうか。最初で最後の舞台は綺麗に演目を終えてくれるだろうか。彼女達は俺にどんな鮮烈な最期を与えられるのだろう。

 

――そうだな。俺の目的は別に悪役として死にたいんじゃなかった。

 単純に輝いて死にたいだけだ。どうせ散るなら華々しくというのは人類共通の命題だ、それは恐らく以前の俺の人生では望めなかった贅沢だから。

 

「――――――ハンター、嵐が来るぞ。仲間の手を離さぬようにな」

「急に気持ち悪い、言われなくてもそうするさ」

 

 それは良いことだ。くつくつと自然に笑いが溢れた。

 上手く殺して見せてくれよ、404小隊。




Los! Los! Los!がテーマソング。悪のカリスマを目指すウロボロスをよろしく。
代理人ナンパしたり意外と大物。面倒見がよくギャンブル好き、頭は回る。姉御じゃん。

代理人は口で褒めないだけで期待してたと思うし、ウロボロスは代理人が目標だったと思う。噛み合わないから最後ウロボロス切れたけど。
当小説はウロボロスx代理人を推しております。

ウロボロスは喋りと甘え方が上手ければいい後輩キャラなのだが…………。


もう原作ルートからガタガタに逸れてる事実を彼女は全く気づいていないのであった。
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