わたしがウロボロスだ   作:杜甫kuresu

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すみません…………前回、かなり大きなミスを犯しました。
代理人xウロボロス派でした…………。
代理人の弱い顔は捨てがたいんですが吠えまくるパピー枠が夜もキャンキャン鳴くのが…………辞める。ゴメン。

百合がめちゃくちゃ好き、この小説では出てこないから安心して。
今回は「アンハッピーリフレイン」聞いてた。


他殺願望

 よく夢を見る。人形は夢を見ないと聞いたことが有るが、俺みたいな例外がどうなのかなんて分かるわけもないから相談もしないが、内容はいつも似たり寄ったりだ。

 中では俺はやっぱりウロボロスの姿で、何に触れることも喋ることも出来ない。唯無数の見慣れた顔が並ぶ空間に俺はいつも取り残されている。そこは街だったり、白い背景だったり、森だったり、ソイツらは動いていたり、動いてなかったりする。

 

 俺は何も出来ないままウロウロと触ろうとしたり、喋りかけて失敗する。その顔は大学生だった頃の親とか、知り合いだったりもするし、鉄血の知り合いだったりもする。

 次にまた俺が出てくる。ウロボロスの姿をしたソイツはいつも目元がはっきり見えなくて、酷く快楽に歪んだ釣り上がる口元が特徴的。見るたびに何故か手を伸ばしたくなるのが不思議だ。

 

 ソイツは一人ずつ拳銃で脳天を撃ち抜いていく。死ぬやつは全員何処か幸せそうで、俺はいつも血飛沫に恍惚として血の牡丹に衝動を覚える。

 死んで、死んで、死んで、死んで、死んで。俺一人になるとソイツは笑う。

 

【さあ。おぬしの番だ】

 

 撃たれる瞬間、いつも俺は目を覚ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやらS12地区の部隊が帰ってきたようですよ」

 

 代理人が何の躊躇もなく部屋に入ってきた。目が覚める。

 流石にこれはどうなのかと焦りながらジェスチャーで何とか伝えてみようとするが、代理人は僅かに眉を顰めて変なものを見るような目付きになる。

 

「何ですか、髪型は元に戻しましたが」

「いや、そうではなくですよ。あのですね、年頃のAIなんですからノックぐらいお願いしますよ!」

 

 俺は気にしないけどデストロイヤーとか発狂すると思うんだけど。

 今までにない切羽詰った顔になっている自覚に驚きながら代理人の様子を見るが、意味がわからないと言わんばかりに首を傾げる。

 

「取り敢えず迎えに行ってください、あなた方にお話がありますので」

「は、はあ…………了解しました」

 

 

 

 

 

 

 

「…………おぬしら、声だけでは分からなんだが派手にやられたのだな」

 

 帰ってきた部隊は中々の有様だった。

 腕がもげて端子が崩れ落ちているのなんか普通だし、足がぶっ飛んだのを無理やりよく分からない布で止めている奴も居る。銃は折れ曲がるなんてもんじゃなく、完璧に一部が吹き飛んでいるものすら有る。

 

 目が潰れてる奴も居た、口が裂けてる奴が居た。

――現実はこんなものだろう? お前は何を期待していたんだ?

 知らない誰かが頭の中でせせら笑う。

 

「まあ、マシなもんですよ」

「誰も頭飛んでないしマシだよね~」

「この前指が全部バキバキになった瞬間は流石に痛かったけど、腕ごととかなら!」

 

 いつもお喋りなバイザーの欠けたVespidがニコリとすると、他の奴らも騒ぎ出す。彼女の右腕はちぎれて端子が丸見えだ。

 

 俺は言葉が出なかった。痛ましかったとか、可哀想に感じたとか、哀れみなんて下らないと自分を責めたからなんてものじゃない。

――――逆なんだ。違うんだ、()()()()()()()()()()。それが自分でも虚しくて、何か壊れてしまったような気がして苦しかった。

 笑ったまま潤む瞳を手で塞ぐ。息苦しい、俺はもう何かがぶっ飛んだらしい。

 

「…………ウロボロスさん、どうかしましたか?」

 

 一人が俺に問うた。

 

「何も有るものか。何も無いのだよ、馬鹿げたことだがな」

 

 言った所で俺の言葉の意味なんか分からなかっただろう。もうそれは此処であまり普通の事だった、中途半端に人間を気取った俺の落ち度。

 涙を手で連れ去って何時も通り表情を引き締める。びっくりさせてしまっては悪いからな。

 

 だが情は有った、それに少しだけ安心して、歪な何処かが悲鳴を上げている。

 

「おぬしら、その状態では銃の整備は出来まい。このウロボロスが手を貸してやろう、泣いて喜ぶ事だな」

「やったー! 何なら靴舐めますよあたし!」

「汚いから要らん」

 

 彼女達が笑ってくれなかったら、俺は今の一瞬で壊れたかもしれない。

 ちょっとだけ感謝した。

 

 

 

 

 

「それで、話とは何ですか」

 

 仲間の銃をちゃんと組み直してやる健気な新人気鋭のムーブを決めている頃、何故か手伝ってくれた代理人にふと尋ねる。

 

「この部隊を現時刻を以てあなたの物とします。明日の作戦に参加してみなさい」

「は? ワンモアリピート?」

 

 何を言ってるんだ代理人。貴方がそんな冗談がお上手な人だとは思わなかった、お硬い人とか思っててゴメンナサイ。

 いやマジだわこの人。顔が真顔だもん、この流れで「はい冗談でした~☆」とか絶対言ってくれるわけがないな、馬鹿じゃないのこの人。

 

 思わず固まる俺に何体か下っ端が笑う、睨んだらいそいそと銃の手入れに戻った。

 

「あなたの耳は節穴なのですか。ですから、この部隊はあなたの私物です。好きに扱い、好きに消耗させ、好きに鍛えていいと言ったのです」

「成る程分かりません…………どういう風の吹き回しですか? とうとうわたしは使い潰されるということですか」

 

 代理人の顔からは何も読み取れない。いつもながら全く無表情で、瞳に籠もる小さな感情を追うので俺にはやっとなんだ。

 

「…………あなたは早く経験を積んだ方が良い、私がそう具申しただけです」

「ああ、それだけですか。それなら良いんですよ、それなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて――――――後は袋の鼠、だな」

 

 彼女の吐息が白く宙を舞う。周りを歩く四足歩行の戦車系統「Manticore」の駆動音だけが大きく響き、彼女の側を共に歩く鉄血兵の足音は掻き消されていく。

 ウロボロスの白く細い足が雪に沈む毎に、後ろの軍勢もまた一歩と遅れて歩く。その姿は部隊というより最早一個の軍。百鬼夜行に似た畏れを帯びるほどの寒気を覚えさせる。

 

 雪景色の中、彼女達は廃墟に近い自陣地の中を歩くのは作戦のためだ。代理人の提示したものはこうである。

 

『この基地のコンソールにはAR小隊が欲しがるデータが保存されています。餌にして袋叩きにしてしまいましょう』

 

 彼女はすぐに思い当たった。これは前世の記憶を辿ればゲーム上「第零戦役」と呼称された、言うならば本編の前日譚。

 ウロボロスなど影も形もなかった筈という記憶には勿論焦りを覚えたが、今更決まったことをどうしようもない。ダメ押しとばかりに上から押し付けられたManticore等という試作兵器まで携えた文字通りの怪物じみた戦力の貸付。断ろうにも断れないのは仕方ないだろう。

 

 正直な所、彼女は内心考えあぐねていた。恐らく――――――この戦力なら、AR小隊は潰せるという確信があったからだろう。

 基地の中央部をManticore、及び狙撃兵Jaegerの射程に捉えた辺りで彼女が静かに手を挙げる。「待て」の合図だ、鉄血兵達の足音が同時に止まると静寂がしんと辺りを突き刺す。

 

「指示を仰ぐ、先走って撃つなよ」

「まさか。私達はウロボロスさんの命に従うだけですので」

 

 護衛兵の一人がニヤリと返す。

 

「馬鹿者、わたしの上官の言うことも聞かぬか」

「少なくとも私が付いていくならあなたが一番マシです」

 

――マシ、か。よく言った。

 彼女はその裏表のない褒め言葉に感心しつつ、通信をオンにする。

 

「ポイントBに到着。指示を」

『…………構いません、撃ちなさい。同時に少数精鋭を内部に派遣してください、逃げた鼠はきちんと駆除しなければ』

「あなたは?」

『別働隊に足止めを食っています、ですが――――貴方なら問題ないでしょう』

「ふふっ、了解――――――――おぬし達に朗報だ。が、待てよ」

 

 静かに取り出した端末を弄ると、それに向かって酷く不敵な笑みを作ってみせる。

 

「御機嫌よう、AR小隊の諸君。わたしはウロボロス、鉄血の上級AIだ」

 

 AR小隊の居る司令室のモニターに繋いでいるのだ。後ろで部下の何体かが笑いを堪える、「運が無いな」と。

 

「ああ~、話など聞いてやらぬ。簡潔に言ってやるからよおく聞くのだぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「今からおぬしらを壊し、そのデータを頂戴する。精々足掻くのだぞ? 下等人形諸君」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウロボロスが首だけで振り返ると、自信に満ちた瞳と共に口角を吊り上げる。

 待機していた彼女達はその表情だけで意図を理解する。とうとう、時間が来たのだと。

 

「さあ、『撃て』。中に残った鉄血など知ったことではない、これは代理人からの命令であり、わたしからの絶対命令である――――――抵抗したら殺せ。抵抗しなくても殺せ。狼藉者ごと全部纏めて撃ち殺せ。生かすな」

【了解しました】

 

 号令と共に砲撃のファンファーレが響き渡る、それはさながら黙示録のラッパ吹き。

 一斉に始まった斉射は建物の隙間という隙間を埋め尽くし、表層から見える通路、部屋、機関を全て破壊する。

 

 不協和音のラッパに応えるようにある一室が爆発する。それに勢いづくのかどんどんと各地で爆発が起き、それは斉射から解体工事の様相すら見せ始める。

 ウロボロスは回る火の手を眺める。そこから匂う死の残滓に、確かに彼女は僅かな高揚を見せた。

 しかしすぐに萎れて消えてしまう。足りない、それでは彼女は満足しない。弧を描く口元を直しもせずに後ろへ声を張る。

 

「今よりわたしが残りの掃除に掛かるが、だからと手を止めるな。引き続き破壊行動に勤しみ、中から出てきた鼠は全て袋叩きにせよ!」

「いや、ですがそれではウロボロスさんも――――」

 

 何か言おうとした護衛の一人の口元に、ウロボロスが静かにするよう人差し指を当てる。

 

「相変わらず愚か者だな、おぬしらは。この程度の豆鉄砲で死ねるようなら、わたしは此処に立っておらぬよ――――――存分に撃て」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 焼けた通路を歩く。燃料でも有ったのか火の手はかなり広がっていたが、彼女はその様子を気にも留めず荘厳に闊歩する。

 不思議なことに彼女が選ぶ道に火は回りきらない。まるで火が彼女を恐れているようだ。

 

「しかし、オレが代理人の代役とはな…………あの人は名折れしてるぞ」

 

 くだらないこと、と自分からのその話題を斬って捨てた。

――確かに彼女は高揚していた。電子神経の中枢から末端までもが、過剰なくらいに今か今かと体内を暴れているのが分かる。

 

 彼女にとって主人公というのは、それだけで殺戮の代名詞だ。大義名分で悪を誅する姿を前世の自分でも評価をしていたのが彼女には不思議だが、「殺戮者」という正体も側面として存在する。

 殺戮の代名詞。死の代名詞。悪は倒れる証明定理。即ち、(わたし)をも殺せるもの。

 

 階段を一つずつカツ、カツと登っていく。朱く染まりきった中で、黒い衣装に白を讃える素肌の彼女はよく映える。どれだけその姿が生命らしくないかをよく魅せる。

 

「思えば清々しいほどこのやり方に慣れたからな…………オレは倒すべき敵になれているぞ、なあ?」

 

 誰も居ない階段を、彼女の歪な笑い混じりの声が走り回る。

 彼女は実のところ、ウロボロスを名乗ってから殺人に躊躇がなかった。命令に「殺せ」と含んだ回数は十や二十ではないし、今だって気に入らなければAR小隊を全滅させようという淀んだ感情が蠢いている。

 

 当人が認めるほど彼女は悪だった。だからこそ、正義とやらに問いたかった。そのチャンスが欲しかった。

 

 いや、彼女が死を求めるのは自分が「ウロボロス」であるからでも「悪」だからでも無いのかもしれない。

 この衝動が息づいたのはある電脳空間での時。殺し合うさまを他人事のように眺めて、少し経った頃なのが真実。

 

【死に様って思ったよりも綺麗だな】

 

 そんな可笑しな感情にあの日から取り憑かれているのだ。何十何百と死を眺めている内に気付いた、気づくべきでなかった最期の願望にもう蕩けてしまっている。

 

――ああ、もう到着か。

 彼女の廻り続ける思考の果てに、奴らは姿を現した。




「趣味で書いてる小説の息抜きに小説を書いている」らしい。メチャクチャだよ。
突然ですが、この小説は適当です。ウロボロスの処遇すら決まっていません。最期の台詞は決まってる、超ぴったりのやつ。

ウロボロスと代理人が好き。代理人が「お前を爆推しといた」って言ったのに「何だそれだけですか」って。こういう感じ。

本編は10話以内で終わらせますが、端話とかIFは書くかもしれない。
今回は書こうとした内容が面白くなさそうなので飛ばして第零戦役にしました。ウロボロスは仲間の前だと気を抜いていますが、こういう性格。すき。
全部中途半端しか書けないのが悩みですが、シリアスで文ごと切り替えれるのは独自の強みかもしれない。

次面崩壊のBGMが似合うボスになった。ウロボロスちゃんは負けムーブヒロインだから仕方ないよなー!(スティンガバースト)
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