わたしがウロボロスだ   作:杜甫kuresu

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気づけばこんな所まで来たのか。おぬしらにはたかだか4万弱の文字の羅列なのだろうが、わたしとしては少し感慨深いものも有るよ。

――――こういう話はいかんな。終わりが見えてきたからかもしれん、すまんすまん。
しっかしわたしのスペックも随分と盛られたものよなぁ? どうだこれは、ギルガメッシュか何かと設定間違えておらぬか?


ああ、四百人突破だ。速いな、それだけ長く時が過ぎたのか、それともそれだけ我らが速いのか。時に惑わされると時折そんなどうでも良いことを考えるよ。


革命前夜

「おお、来たか。座れよ、何――――地雷など置いていないさ」

 

 ウロボロスの手招きに一同は顔を顰める。確かに其処には白い丸テーブル、それを囲うように席を取られたものを含めた4つの椅子が置いてある。

 

 周りに敵影が無いのは確認済みだ。AR小隊が現在彼女の前に立っているが、別働隊としてKar98kが遠距離からの狙撃を常に構えている。KarとAR小隊は狙撃者と観測者、指揮者と実働部隊の関係にある。

 これは時間稼ぎだ。大蛇に楔を打ち込み、僅かでも他方の戦闘に響かせないための防衛戦。

 

 森林のギャップ地点なのも有って視界は開けているが、AR15の確認ではトラップらしきものは周りにも、ウロボロス自身にも見当たらない。

 

「…………本当に菓子まで用意して。どういうつもりかしら、ウロボロスさん?」

「どういうもそういうもこういうことだ。何だ、片腕でも折っておけば付き合ってくれるかな?」

 

 すぐに自分の右手首をぐにゃぐにゃに曲げて折ってしまうウロボロスに、陰りない狂気が映る。

 

「嘘でしょ…………あんた、正気?」

「正気だとも。というかこう言っては後出しで悪いが、わたしは素手でもおぬし達を全員ぶち殺してミンチには出来る」

 

 すぐさま銃を構える一同に待った待った、と言わんばかりにウロボロスが軽い動作で手を上げる。

 ぶらりと垂れる右手を目を凝らして確認するなり、彼女は一人でに笑いだした。

 

「待て待て、あのバカライフルがわたしを常に狙っておるのは「視えておる」。安心しろ、おぬし達は確かにわたしと対等なのだよ」

「…………もう対等じゃないと思うけど、良いわ」

 

 M4が睨みながら向かい合う席に座る。AR15とSOPⅡはその行動に少しだけ目を剥いていたが、M4がしつこく目配せするのに観念してウロボロスの斜めを二つとも埋める。

 

「で、目的は?」

「まあ侵入者が暴れておるから時間稼ぎと考えたと思うが、実はおぬしらの手助けだ」

「嘘よ」

「正しい猜疑心よ。ならばこうやって証明するか――――――」

 

 ウロボロスが立ち上がったと思うと、瞬きの終わらない内にM4が机下で構えていたM4A1を自分の額に押し付けてみせる。

 

 AR小隊が構えるどころか、Karですらその動きは目で追えなかった。ウロボロスの目が黒炎に揺らめく。

 

「そら、もう一度同じ問いでもしてみせろ。流石にわたしも脳天を撃たれれば死ぬ――――――」

 

 ケラケラと言ってのけたが、それは嘘だとは到底思えない。実際この世界での銃の有効射程はヘッドショットが可能な距離、と定義が変化する程度には鉄血にだって頭部狙撃は効く。

 だがそれをすれば一体どれだけの軍が此方に送られてくるか。ウロボロスは恐らく鉄血でもかなり高い戦闘力を持つ人形である、グリフィン内ではそれで結論づいている。想像に付さないのは言うまでも無く。

 

 呆気にとられたM4の表情を拒否を見たのか、ウロボロスは眉をひそめる。

 

「ううむ、まだ駄目か? 欲しがりさんめ、では左手首もこうポッキリとだな――――」

「分かった! 信用するわ、すれば良いんでしょ!? 気持ち悪いから辞めろ!」

「よし」

 

 思わず銃を振り回して手を振りほどくと、彼女はカタカタと機嫌が良さそうに笑う。

 その容貌は恐ろしい。切れ長の瞳が美しかろうと、その造形が整っていようと、中身が明らかにバケモノだから、妖しくて恐ろしい。

 

 その「撃たれることへの懸念」の欠落は、M4を侮っているとも思える。だが一度面と向かって言葉をかわしたM4には、否応なく経験則の事実が叩きつけられた。

――此処で死んでも良い。そうだとでも?

 

「実力はあると聞くけど、あんた程狂ってたら鉄血も扱いかねるでしょうね」

「AR15もつれないことを言うなあ、わたしは正常じゃないか。雑兵だから遊んでやってるだけだと言うのに」

 

――敵で遊ぶ時点で狂ってるのよ。本当に頭がイカれてるのね。

 AR15はその言葉を発する意味を見いだせないまま飲み込んでしまう。

 

 迂闊に言葉を出せなかった。ウロボロスに敵意はなかったが、無意識に殺意は見え透く。アレは本当に殺そうと思えば一瞬で自分達を殺せる側に居る、そんな理不尽がAR15を抑えつけたのだ。

 SOPⅡが不敵にも食って掛かる。

 

「大体お前、私達に時間稼ぎされてるの分かってるのか?」

「はあ? どうでも良いわ、わたしが行かずともあやつらは生きて帰る。それが事実ならおぬし達は唯の阿呆よ、わたしが認めた連中を舐めるんじゃない。殺すぞ」

 

 部下の侮辱と受け取ったのか、ウロボロスはSOPⅡを睨めつける。さしもの彼女もウロボロスの凄みには言葉を詰まらせてしまう。

――お前ら程度に殺されてくれる部下なら、もう俺の元から居なくなっている筈だ。

 

 子犬のように弱々しく睨みつけるだけになったSOPⅡを歯牙にも掛けず、ウロボロスはポケットからトランプを取り出す。

 銃を構えられている事など何のその、機嫌の良さげにカードを何束かに分けてテーブルに捨てたかと思うと、落ちていく途中でドンドンと入れ替えてしまう。

 

 気づけばそれがシャッフルの代わりだったのか、整ったトランプの山札が机の中央に静かに置かれる。

 

「左手だけでシャッフルするのは意外と難しいな」

「…………余裕綽々って感じだけど」

 

 AR15の言う通りである。

 ウロボロスはニヤリとするとカードを横に並べるなりすぐさま4つに分ける。恐らく枚数は綺麗に揃っている、M4には直感的に分かってしまった。

 

「そうさな。おぬしらの疑心暗鬼に則ってダウトでもするか、わたしはトランプが好きでな、遊ぶ片手間で話でもしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほれ、ダウト。AR15、バレバレだぞおぬし」

「あんた、無理やりやらせといて本当に何なのよ…………当たりよ当たり。私が取れば良いんでしょ」

 

 ウロボロスがマトモに喋りだしたのは、二回目のAR15の番。ダウトを宣言した後だった。

 観念したようにAR15が置かれたカードの山を取る。意外というか、「不自然なほど」彼女達はウロボロスに馴染んでしまったようだった。

 

 それはある意味魔性なのだ。確かにウロボロスという存在は強大であり、目を離せないものであるが同時に――――警戒する必要がないほど明けっ広げな態度をとるのも事実だから。

 ウロボロスは常にカードを伏せて置いていて、見ることもなく重ねてしまう。それは傍から見れば自暴自棄だと言うのに、彼女の表情は何時も怪しく誰もダウトなどとは言わない。いや、言ってみせたAR15が見事カードをプレゼントされたからかもしれない。

 

 彼女はM4がカードを置こうとする直前に問うた。

 

「そうそう。M4よ、あの日の答えは考えてきたかな? つまらなければこの場で縊り殺す予定だが」

「そんな事してみなさい。M4の首に手が伸びる前に、あんたの眉間に穴が空くわよ」

 

 怖い怖い、と突きつけられた銃を見て不敵に笑う。AR15は何故かこれでは殺せない確信を得てしまった。

 ピタリと手を止めたM4。顔は髪で隠れてはっきりとは見えなかったが、ウロボロスにはその琥珀の瞳が燃えているように見えた。

 

 気づけば交差していた視線を正面から受け止める。M4はそれを確認するような素振りを見せた後、強い口調で言い切る。

 

「変わってないわよ。例えそれが助かる道筋であろうと私はしないわ、何なら眼の前で情報を叩き割ってやっても良い――――――――何か文句でも有る?」

「………………そうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その答えと同時に葉を切る音。森林の四方八方からStingerの端末がM4に一直線に突きつけられる。

 AR15とSOPⅡはほぼ同時に射撃し、彼女の胴体に幾つか穴を開ける。無視して地を蹴って椅子を跳ねさせたウロボロスの目と鼻の先を弾丸が通り過ぎると地に墜ちていった。

 

 彼女は身体から紅い血液に似た液体を流すがその笑みは消えない。ピタリと、M4の柔肌には端末達の銃口達のリップサービス。

――へぇ、表情は変えないのか。

 

「――――――悪かった、そう気を揉むでないよ雑兵共。『Stinger』、行動終了」

 

 彼女の号令に端末達が軽快な金属音と共に地を跳ねる。

 同時に大笑いしたかと思うと、傲岸不遜に腕を組むなり瞳から赤黒い火花を散らす。

 

「合格だ、良いぞ! おぬしは青く、理想論者、かつ愚か者と救いようがないが――――――それを呑ませるだけの覚悟をわたしに見せた」

「武器など構えておらぬと嘯いた非礼を詫びよう、覚悟有る者に取る態度ではなかった。ちっとばかしは傷を負わぬと上官殿にやいのやいのと叱られるものでな、詫び代わりにもう数発ほど風穴を開けても構わんよ」

 

 ウロボロスは悪びれている様子もなく頭だけ下げる。銃こそ構えたままではあったのだが、誰も鉛玉を吐き散らすことはなかった。

 この場はまるで彼女こそが人質であるかのような様相で時を刻んでいたが、実の所決定権は人質その人にこそ有った。Kar以外の誰もが、彼女の異様な空気に飲まれてトリガーを引けなくなってしまっている。

 

 手負いなのに。数の差のある相手なのに。武器はつい先程電源を落としたというのに。理屈を超えるものが其処には漂っていた。

 AR15が恐怖を吐き出し、睨みながら悪態づく。

 

「あんた、本気で死ぬのが怖くないらしいわね――――――ッ!」

「ああそうさ、わたしは死ぬのはまるで怖くないとも。むしろそれが望みだからな!」

「このイカレ人形!」

「最高の褒め言葉だ」

 

 AR15の殺意など飄々と受け流してしまうと、ウロボロスはM4に手招きをしてみせる。

 通信機からKarの凍りつくような声。

 

『ウロボロスさん、あまり調子に乗らないでいただけますか? 愛している人はもっとドラマチックに殺したいんです』

「本当に愛しているなら弾の方から『劇的に』急カーブでもしてくれるだろうさ」

 

 Karは黙ってしまう。

 じっ、と真意を読み解こうと瞳を真剣に見つめるM4に対して彼女は場違いな朗らかな笑顔を見せる。

 

「取って食う訳がなかろう――――――――その気ならもう鏖殺しておろうに」

「…………虫酸が走る。でも、確かにそれは事実ね」

 

 赤く尾を引く瞳はM4の中に「流星」という陳腐な形容を落としていった。

――分かってる。コイツは敵、信用出来るわけがない。理屈は一つたりともコイツの安全なんて、証明できてない。

 

 しかしM4は周りで突きつけられた銃を下ろさせる。

 

「ちょっとM4! バカなのあんた!?」

「元からバカだから――――それにコイツ。ウロボロスはクズだけど、畜生じゃない」

 

――それは大変高い評価じゃないか、ははっ。

 彼女の美徳として一つ、「認めた相手には正面から向き合う」というものが有る。以前のM4然り、Kar98k然り共通した事項だろう。

 それだけならば唯の行動でしかないが、彼女には「それが正しく誠実である」と思わせる何かが有った。人によって千差万別の形で言い表されるものだ――――魅力、魔性、人柄、風格。そういう類の物。

 

 引き攣った顔のAR15を無視して、M4が耳を貸すとウロボロスも身体を乗り出す。蚊帳の外の二人の身体がこわばった。

 ウロボロスは笑顔のまま、まずM4の頭を撫でる。

 

「――――――ッ!?」

「よく頑張ったな。変化があるのは良い、おぬしの場合は殊更にな――――――――その心意気、戦場で捨ててしまうなよ?」

「お前に褒められても嬉しくなんてないわ!」

 

 手を払われるとウロボロスは少しだけ寂しそうな顔をした。何故かM4は自分を咎めてしまって少し混乱する。

 

「そうか…………まあ、次に会うならば「唯の人形」として死合おう。おぬしはまだ上がれる者だ…………」

 

――まあ、次が有ればの話だ。

 僅かにウロボロスは名残惜しい顔をしたが、それに気づいたものは誰も居ない。

 

「では今のは冗談としておくか。本当に有益なものをくれてやる、そうだな――――――このまま言ってしまうか」

「じゃあ今のは何だったのよ! サイアクの気分だわ!」

「え? いや、褒めただけだぞ? 天邪鬼か、おぬし」

 

 何とも言えない気色悪さに背筋を凍らせるM4に、ウロボロスはキョトンとした顔で答えた。

――アレか、女子は撫でられるのが好きってやつは迷信ってアレかな?

 其処では全く無いのだが、彼女はとっくにタガが外れたせいか理由がわからないままだった。

 

 では、と空気を入れ替えて改めて喋りだす。

 

「今回の我々の動き全体ならこれは時間稼ぎだ。近々何か起きると思っておけ、精々足掻くのだぞ? 死なれてはつまらん」

「――――――それは事実と捉えていいのね」

「この眼が嘘をついた眼だと思うなら好きにせよ。わたしはこれで正直者だ」

 

 全く嘘など言っていない。彼女は以前の記憶、現在の進行を鑑みて漫然たる事実を述べただけだ。

 急いで指揮官だろうか、連絡を取ろうとするM4の肩をちょちょいとウロボロスが突く。

 

「何よ、あんたの情報のせいでコッチは翻弄されようってところよ! いい気味!?」

「違う違う、一つ忠告だ――――――――仲間は大事にしろ。ウロボロスとの約束だ」

 

 不敵に笑うウロボロスにM4はもう構わなかった。

 つまらなそうに表情を曇らせたかと思うと、すぐに立ち上がって彼女は踵を返す。突きつけられた銃など目もくれない、眼中にないとはこの事だ。

 

『貴方は――――――何がしたいのかしら、シナリオ通りがお好み?』

「スケアクロウを助けたじゃないか。シナリオ通りなどつまらん、生まれる前からレールは壊して唾棄するのがわたしの性分だよ」

 

 ならば何故。という言葉は出ずとも答えた。

 

「M4は気に入った。それだけだよ、わたしは鉄血もグリフィンもさして興味が無いのだ」

「好き嫌いで人を殺し、人形を壊し、手助けをしておるのさ。わたしはおぬしよりよっぽど屑だろうさ――――――おかしいだろう?」

『…………いいえ? そういう貴方だから欲しい。生きてください、死んだら許しませんよ…………貴方を殺して良いのは僕だけです』

 

――知るかよ。気色悪い。

 ウロボロスは通信を切ってしまうと、背中に突きつけられた銃口を引っ張るとAR15を目と鼻の先まで抱き寄せる。

 

「わたしは帰る。荷物は勝手にこちらに飛んでくるが壊してくれるなよ? アレは高いのだ、壊せば鉛玉と一緒に請求書を送りつけてやる」

「………………私がこの程度で怖気づくとでも?」

 

 青空のように碧い瞳。しばらくじっと観察していたが、揺らがないのを見るなり満足気にニタリと口を吊り上げる。

 

「良い威勢だ。挫けるなよ、おぬしはおぬしで嫌いではないのだからな」

「余計なお世話よ、さっさと死ね。鉄血のクズ」

 

 つれないなあ、と軽口を叩くとウロボロスは森の奥へと消えていった。

 忠告通りに遅れてついてきたStingerを誰も破壊しなかったのは、恐らくミスではなく、ウロボロスの異様の残り香が成したもう一つの業なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成る程、ではS6地区でジャミング装置の防衛。それだけですか」

「そうです。単純かつ重要な命令です」

 

 来たか、まあ逃しちゃくれねえよな。俺が踏み台転生者なのかは置いておくとしても、あの作戦は必要なものだ。

――S6地区の臨時指揮室を占領、そこで指示を随時受けながらジャミング装置を防衛。人員としてハンターと処刑人の再起動、改造措置の許可。

 

 CUBE作戦だ。俺が死ぬ予定、俺が死ねる予定の作戦だ。ああもう、愉しみで堪らないじゃないか。

 俺の高揚など露知らず、代理人は目をじっと見つめてくる。

 

「前回はしっかりと役目に従事してくださったようですけど、今回は貴方にとっては少々億劫な作戦かもしれないわ。暴れないでちょうだいね?」

「このウロボロス、鉄血と神の言うことは蹴るにしても貴方の言葉には従います。心に留めておきましょう」

 

 例え世界を敵に回そうとも、貴方への恩だけ忘れないつもりだ。この言葉だけは(わたし)としての正しい本音。

 調子のいいことを、怪訝な視線で返す代理人だがこれは嘘ではないのだ。

 

 最初は偶々かと思ったし、有用だからかとも疑ったし、裏が有るのかとも勘ぐった。

 しかしどれも違った。

 

「貴方は尋常じゃないくらい不器用ですし、実際「自分が吐き出す言葉通りの人形だ」なんて思っているのでしょうが――――――わたしは貴方を温かい人形だと信じています」

 

 この人はこれで俺に懸命になってくれた。それは他の人形にでも出来ただろう、俺を思う人形など他にも居ただろう。だが、彼女より重く、強く、長く、そして何より意味のなかったあの時から、俺の価値を探してくれた人形は居ない。

 

 鉄血は本来そんなものを求める場所ではない。あくまで人形としての自尊心の為に戦う者ばかりであり、言うならば戦うこそが自らに価値をつける行為になる場所だ。

 だからこそ、その恩情に俺は返すべきものが有る。例えこれが人間としてのエゴに過ぎずとも、(わたし)の自己満足だとしてもだ。やるべきことというのは、時に世俗の道理など通り越した価値を持つのだから。

 

「まさか。役に立たなければ捨てますよ、当たり前です」

「だとしてもです。どうぞ――――――わたしという刃が刃毀れするまで、存分に振るってください」

 

 結局俺は失敗ばかりだったからな。後は言うこともあまり聞かなかった、誤魔化しているとは言えその結果は好ましいものではなかったはずだ。

 それでも此処に立たせてくれているのだから、俺は今回ばかりは――――――彼女の為にも戦わなければならない。

 

――――「お前は悪」だ?

 知るかよ、正しいだけの生き物が何処にいる。

 

――――「お前は死ぬべきもの」だ?

 関係ないね、俺の生き死を決めて良いのは俺だけだ。

 

――――「お前は所詮偽物」だ?

 言ってくれるじゃないか、(わたし)にそんな口を利くものは鏖殺する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さあ、誰も知らない戦争を始めよう。

 敵は世界だ、何せ運命に勝たなければ俺は死ぬらしいからな。味方は居ない、全てが俺の敵となり得るだろう。

 だからこそ滾る。今までにない、最悪の敵だ。

 

「わたしは貴方に勝利だけを献上する、唯の蛇ですので」




「一番相手に適任な筈の殺し愛枠Karを煙たがる死にたがりウロボロスってもう実質捏造CPだと思うんだけどどう思います」
碌な事を喋らぬな、おぬし。大体転生者同士とか地雷も地雷過ぎて笑うわ。

さて、そろそろわたしも退場が近づいてきたか。いやあ、何せ「真面目なときぐらいこの長い能書きは省くものだ」なんて御大層なことを仰る創造主なものでな。暫し別れという寸法なのだ。

どうだったかな? わたしは思う儘に暴れて、壊して、見ていただけだが。響くものでも有ったか? 別に無かったか? 「所詮テンプレチートの亜種」なんて意見もあるやもな、そう言いながら此処まで読みに来ておるなら物好きなやつだが。わたしはそう言う素直ではない者も嫌いではない。
あまり褒められたことはしてこなんだからな、見るものが見れば不快であり不必要悪なのだろう。預かり知ることでもなければ興味もないが。


では幕引きのお時間だ。
啼いても嗤ってもこれが最大の戦場で、最期の見せ場。
覚えていることなど当てにならぬ、わたしはとうに「ウロボロス」として間違えすぎたからな。運命は言葉通り、神のみぞ知るという訳だ。

この物語は「起承転結」ではなく「奇翔纏決」で成り立っておる。意味は各自で考えるように、それこそが物を読む悦楽の本質だ。
考えよ。安易に己を殺すな、わたしはそう在る一つの完成形として生きているつもりだ。鎖だらけだろうとこの通り、自由は手に掴めるのだよ。

良い死に様でも期待しておれ。次回より終章だ。
相手は運命。日に日にインフレしすぎてまるでDBだな、呵々。
――――まあおぬしも覚えておけ。世界は何時であろうと、行ってきたことを必ず我らに返すものだ。わたしには相応の罰が下るだろう…………楽しみで仕方ない。おぬしもそうだろう?
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