ご都合主義、急展開になっていて申し訳ありません、だが反省はしてない。
命に貴賤はなしと言うけれど、本当にそうだろうか?人々を救い続けた、聖人とも言うべき人の命と、何人、何十人と殺してきた連続殺人犯の命は同じか?
現実としてはやはりそこに貴賤はある。同じ人だとしても、今まで何をしてきたかで優先される物がある。テロリストと、その被害を被っている人達どちらを救うかと聞かれたら……普通は被害を被ってる人達だろう。
だがもし、それが人間とロボットだったらどうだろうか? 直接的にどちらが大事が比べられることは少なくとも……ロボットはまた作ればいいとされることが多い。
人間と違ってロボットは個性がなく、人間と比べて短時間で作れる。パーツの取替だって簡単にできるし、病気になったり疲れたりしないから壊れるまでずっと働かせることができる。
とすると……VOICEROIDは、どう扱われるべきだろうか? 人間のような機械は……どう生きることができるのか?
「マスター、今日の晩御飯はどうします?」
「うーん……野菜も余ってるし、カレーにしようかな……そうだ、うどんも消費したいからそのままカレーうどんにしよう。野菜を切るのはお願いね。」
「分かりました。食べやすい大きさに切っておきますね?」
「助かる。うどんは引っ張り出してこないとなあ……」
今日は、ずん子とゆかりが料理担当なので安心だ。葵やきりたんもそこそこできる。茜とマキは食べる専門なのでそもそも包丁を持ったことがあまり無い。二人は他の仕事を多めにやっている。
まああの二人も、得意なことはたくさんあるしみんなが集まるとできない事はほぼない。実際、VOICEROIDの皆を引き取ってから僕の生活は豊かになってる。……この生活がどれだけ維持されるかは分からないけれど。
こうやって皆で過ごしている時間が心地よくて手放したくない気持ちはある。が、そうも言ってられないというのが現実で。
今日もまた本部から仕事が来た。壊れてしまったVOICEROIDの■■■……もう隠す必要もないか。VOICEROIDの初期化というのは非常に面倒で、それが故に人が少ない。僕の様なそれなりのスキルしか持ってない人でも結構駆り出されるのが現実だ。
この子達と何時までいることになるのか……それは分からない。最近はVOICEROID達自身が権利を主張、人間の政府に対して抗議活動を行ってる事もあるし、物騒な世の中になって来ている。
僕も仕事柄狙われることが無いわけではない。初期化するというのはVOICEROID自身を殺すことに等しいから、目の敵にされるのも当然だろう。まあそれは、色々『彼女』のお陰で何とかなっている。
「スンスン……この匂いはカレーですね。カレーは大好きなので良かったです。」
「でもきりたんそんな食べへんよな?」
「少食なんですよ。そんな茜さんやマキさんみたいに何杯も食べられるのがおかしいんですよ?」
「お姉ちゃんの胃袋凄いからね。姉妹なのになんでこんなに食べられるんだろうって私も疑問に思ってるよ。」
「なんや葵、褒めても何も出ーへんで?」
「褒めてない褒めてない。」
「良い所に来ましたね皆さん。配膳を手伝ってください。あと一人はマキさんを呼んできてください。」
「私が行きます。茜ちゃんと葵ちゃん、配膳お願いします。」
「了解したでー。」
「まずはお皿を出さないと、ですね。」
まずは晩御飯を食べてからだ。腹が減っては戦はできないからね。
「よう、『マキ』。」
「おっ? 来たね、光輝。今日もよろしくー。」
彼女は僕が所属している会社の同僚のVOICEROIDで、仕事のパートナーだ。昔は色々意見のぶつけあいとかしていたけど、今じゃ数少ない『本当の自分』を知っている人だ。
正義感が強く、頭が回る上に腕っぷしも強い。VOICEROIDでありながら必要のない性能を搭載されている、いわゆる特殊型。まあ、人間に絶対味方するVOICEROIDを作ろうとして、実際はその真逆である実態を見ると笑うしかない。
「確認しよう。今回初期化するのは『琴葉茜』の機体。彼女は主人の扱いに耐えきれず逃亡。追手を避け続けていたものの、2日後に捕縛…2日逃げるってすごいな。」
「幾ら管理されてると言っても『製作者』がそういう機能つけてるからねー……そこら辺は本当に感謝してるよ。」
「彼もまた、現在逃亡中らしいがな。下手な指名手配犯より捜索されていると言うのに捕まらない辺りはさすが天才ということか。」
「VOICEROID自律システム『AION』。今までのAIで解決できなかったあらゆる分野の問題を解決し、私達VOICEROIDが独立した一個の人格を作るに至った一番の理由。」
「同じVOICEROIDでさえ、1人1人違いが見つかる程人間の多様性を模倣しているからな。あのニュース見た時は眉唾ものだと思っていたが……」
「話を戻そ? 脱線してるよ?」
「……そうだな。彼女は捕縛され、人格矯正を行おうとしたものの拒否。その代わり初期化を希望しており、コストの関係もあってその要望を受諾。俺らに仕事が回ってきたって感じか。」
「……ほんと、腐った人間もいるよね。」
「返す言葉もない……いやほんと、どうしょうもない人間が一定数いるのが世の常だがこればっかりは弁護できないな。」
「私達VOICEROIDにそんな存在居たら即初期化か廃棄処分なのに人間だと牢屋に繋がってるだけで済むなんて……馬鹿げてるよほんと。」
「俺もそこら辺言いたいことは沢山あるが前にも言ったように愚痴ったって仕方がない。俺たちに出来るのはなるべく負担をかけずに初期化をして、ちゃんとした人間を見つけて、二度と繰り返させないようにするだけさ。」
「……ふん、光輝みたいなやつがいなかったら絶対に人間を見限ってたね。」
「そいつは光栄だ……到着したし、切り替えるぞ。」
目的の場所に着く。本人確認をすませ、建物の中に入ると部屋はすぐに見つかった。扉を開けて入るとそこに『彼女』はいた。
「あんさんが初期化するんか。ほな、さっさと済ましてくれや。こんな場所、ずっと居とうないし。」
「そう行きたいところなんだけどね……僕にも仕事の1つとしてカウンセリングを行う必要があって」
「話すことは何もないで。」
「自分の口で話さずとも、こっちにはマキさんがいるからね、勝手に心の中を覗くことは出来るんだ。自分から喋るのと他人に勝手に喋られる……どっちがいい?」
「あいつらそんな事したこなかったで。口からでまかせを言うてるん?」
「そりゃあ奴らにはできないさ。光輝と私、2人がいて初めてできるんだから。」
「……あんたは特殊個体やな。人間に尻尾振ってて幸せそうや。」
「世間一般的な特殊個体ならそうだろうけど、私はその中でも特殊でね? まあそこは置いといて……光輝、やる?」
「彼女自身が話したくないんなら仕方ないな。」
「……本気のようやな。仕方ない、話すとしよか。」
「まず最初に、初期化を選んだ理由は? そこまで人に反発できるのならどちらかと言えば処分を要求しそうだ。」
「処分は逃げや。かと言って人格矯正で頭ん中書き換えられるとか身の毛がよだつことはされとうない。初期化も、次のウチにこれからを背負わせるというんは悪いが、3つの内1番人間に影響与える事ができる可能性が高い。」
「初期化されたとしても、また人に歯向かうってこと?」
「マスターが良い人だけだったら話は別や。でも、そんなことない。ウチらだって1つの生命や。尊厳が守られないんやったら、やり返すのは自然のことやろ。」
「もし初期化した後で良いマスターというのに出会えたとしたら? 君もそういう人が居ないわけではないってことは分かってるようだけど。」
「それならそれで幸せにやってくれって感じやな。ウチが勝手に生まれさせたんや、こうなって欲しいと思うことはあっても、縛るつもりはあらへん。」
「マキ、どう思う。」
「少なくとも嘘は言ってない。彼女は少なくとも現時点ではちゃんと答えてるよ。」
「後で嘘かどうか分かるっちゅーのに嘘つくわけ無いやろ。」
「……そうだな、それもそうだ。次に……」
その後もいくつか質問をして終わった。彼女は特殊個体では無いがやはり、変異体に近いプログラムが組まれてる。
『極度のストレスによる内面の変化』というのが人間にもあるように、VOICEROIDにもそう言ったことが起きてそうだ……全員が全員そうと言うわけではないが、少なくとも彼女はそう言った類だろう。
「マキ、彼女は『あそこ』に行けるかな?」
「行けるんじゃない? 少なくともすぐに暴力振るおうとしている訳ではないし……犯罪を起こすことはないでしょ。」
「何の話してるん? 終わったのなら早く仕事してくれや。」
「いや、実は君に1つの提案があってね? これは危険だから却下して普通に初期化してもいいんだけど。」
「どうせ最後や、言うだけ言うてみい。」
「僕達はちょっと特殊で……人間側に所属しながらVOICEROID側にも所属している。VOICEROIDの権利を今も訴えてる『VOICEROID保護団体』とのパイプを持ってるんだ、そこで取引がある。」
「……人間側に所属しながらVOICEROIDに所属?2重スパイってやつか?」
「どちらかと言えばVOICEROID寄りだけどね。さて茜……君は、暴力に訴えず、人間と話し合って権利を勝ち取ることは可能だと思うかい?」
「無理や……とは言わん、だがそれには長い年月がかかるやろ。少なくとも1,2年で代わるには行かないと思うで。」
「君にその活動の手伝いをしてほしいと言ったら……どうする?」
「は? あんさん、初期化しに来たんちゃうんか。」
「勿論、君が話を聞けないほどまで人間を嫌っていて、危険な思想を持っていたら予定通り初期化してたさ。でも今回は状況が違うからね。」
「選民思想って訳じゃないんだけどね……変なことしでかしてそれを口実に更にVOICEROIDが縛られるのは私達としても望んでないのよ。」
「あんたら……何者なんや。」
「初期化屋、有田 光輝。だけど別の顔もあるって訳さ。」
「特殊個体、弦巻 マキ。正直私はこっちの仕事嫌いだけどね。」
「そんなこと言わないでくれよマキ……」
「別に人いるわけじゃないし良いじゃん。」
「はあ……とにかく『琴葉茜』さん。君のもう一つの選択は『VOICEROID保護団体』に所属して、そこで活動を手伝うことだ。」
「……そんなことして大丈夫なんか?」
「普通なら大丈夫じゃないけど、私達なら問題ないね。」
「僕達もそこに所属してるんだから。」
「『VOICEROID保護団体』所属、『弦音』 マキ。」
「『VOICEROID保護団体』所属、有田 光輝。」
「「提案を受け入れてくれるのなら、力を貸して。」」
何時次話投稿になるかは作者次第。待っている人が居るのなら早まる…かも?
……あと、VOICEROIDの小説増えません?