俺の先輩が可愛すぎるんだが 作:クールを装う先輩という概念
妹! それは果てる事無き覇道!
妹! それはカワイイヤッタ―
──今日から妹になる子だ。挨拶をしなさい。
出会ったのは寒い冬の日で、まだ白い息が出ていたのを覚えてる。確か、雪も降っていたっけ。
「こんばんは」
目の前の子が妹になる。と言われてもまだピンと来ずに普通の挨拶をする。すると、向こうが寒さで赤くなった顔をこっちに向けて、首をかしげる。
挨拶帰ってこないなぁ、と玄関から部屋に戻ろうとすると、か細い声が後ろから聞こえてきた。
「よろしくおねがいします……お、お兄ちゃん」
それは、まだピンとこなかった僕に、この子が妹になるんだなと思わせてくれる一言で、それを聞いて僕も振り返り何かお兄ちゃんらしいことをしなきゃ、なんて思う。
だから僕は、勢いよくセーターを脱いで、新しい家族に渡す。
「さむいでしょ? これ着なよ」
「……ありがとう」
こうして雪降る中、家族が一人増えた。
4.妹
「ごめんね後輩君、私(今日は)君とは帰れない」
「ごふっ!?」
心の中で吐血する。終わった世界が終わった。オワオワリ。折角先輩の居ない教室で耐えがたきを耐え放課後のビューティフルタイムを楽しもうとした矢先がこれだ。吐血もする。
今日はの部分を聞き取れていなければ、先輩が君と一緒に帰って噂されると恥ずかしいし。なんて妄想までしていたかもしれない。あばばっばばば。
とりあえず平静を装い先輩と別れる。あぁ、どうしようか……こんな灰色の放課後なんぞ迎えたくはなかった。
そんな、世界のオワオワリと校庭のグラウンドな気分で下駄箱に寄っていると、後ろから声が掛かる。
「兄さん」
声を掛けられる。振り向くとそこにはお団子ヘアーな妹がむすっとした顔で突っ立っていた。
「なんだ妹よ」
「また会長先輩の所にいっていたんですか?」
「そうだ」
そうだと答えるとさらにむすっとした顔になる妹。
ふむ、この妹は何を毎回毎回怒っているのだろうか。愛しのマイエンジェルに会いに行くのに理由など必要はないし、ましてやこの義理の妹に止められる言われも無い。
しかし、黙っていれば、なんていうとまた怒り出すから言わないが、この妹もなかなか可愛い顔しているのも事実。十年前ほどから家族ではあるが、可愛いとついつい甘やかしてしまう。
「何を怒っているかはしらんが、帰りにコンビニでアイスを買ってやろう」
「本当ですかっ!? ……って騙されませんよ!」
「む、今日は中々に手強いじゃないか」
ぱっと顔を輝かせたのも一瞬。また慌てたようにむすっとした顔に戻る。こう表情がコロコロ変わるのもまたマイ妹の良きところだ。カワカワイイ。昔のように撫でるなどは出来ないが、歩幅を合わせて歩いていく。
「で、今日はあれですか? 会長先輩に断られて一人帰りですか?」
「げふふぁっ……!?」
「その通りなんですね。……やった、兄さんと帰れる」
二度目の吐血。おのれ、傷も癒えぬうちにボディーブローとは中々にしたたかではないか妹よ。
それとは対照的に俺の様子を見て、何故か機嫌がちょっと良くなる妹。解せぬ。
二度目の致命傷を負いつつも、枯れた桜並木を歩く。ふんふん、と機嫌の良くなった妹。うむ、中々に絵になるような気もする。先輩と帰れなかったが妹に出会えたのはそれはそれで幸運。
これはこれでたまには悪くないと思った帰り道であった。
5.コンビニ
「さて、兄さん」
「はい」
「ここで重要な問題が発生します」
「はい」
「何故期間限定アイスにはこんなにも種類多く、美味しそうなアイスが並ぶのでしょうか?」
「はい」
「真面目に答えるっ!!」
「はいっ!!」
帰り道のコンビニによると、一目散にアイスコーナーに目掛けて突撃し、目をきらきら輝かせる。超銀河アイドルもびっくりなキラッ具合だ。そして問題が発生する。この妹は重度なアイスジャンキー。毎回アイスを買っては自宅の冷凍庫をぎっしり埋める。冷凍食品をたまには食べたいのだが妹に「駄目です、兄さんに冷凍庫は十年早い」と言われて早十年近く。いつしか冷凍庫の権利は得られるのだろうか。
さて、そんなことはどうでも良く、目の前のアイスジャンキーをどうにかしなければならない。下手すると、冷凍庫あたりと結婚する勢いだ。
「兄さん兄さん、新作に超チョコミントなんて置いてありますよ! 通常のミントの三倍だって!」
「何故か赤いチョコミントだな」
「対抗会社が、スカーレットサンダーなんてアイス出してますよ!」
「そいつも赤いんじゃないのか?」
「違います! 紅なんです」
コンビニでワイワイ騒ぐ妹。可愛いことは可愛いのだが、店員さんの目がリア充爆発しろみたいな目つきになっているので、そろそろはやくして欲しい。
「で、どっちが欲しいんだ?」
「……あの」
「なるほど」
困った様に上目遣いをするときは大抵決まってる。どっちも欲しいという合図だ。しかし、妹はただいま海外出張中の親から、アイスは一日一個まで! 出ないとアンタも海外に引っ張っていくからね!! と言いつけられており、それを頑なに守っている。なので、下手に買い過ぎるとまだ食べてない冷凍庫の在庫とフュージョンし、キャパシティーがカーニバルだよ! する。
「わかった二つ買おう」
「でも、兄さん。まだ冬の頃に買ったアイスが108個も!」
「なにそれこわい」
「だから……いっこ。うぅ」
この際どこまで溜め込むのかは見たいと言えば見たいが、それはまた今度にしておこう。しょぼんとする妹に告げるたった一つの冴えた方法。二個レジへとシュゥゥゥゥト!
超エキサイティンな店員に対応してもらい、二個アイスをゲット。やったね。
目玉を丸くする妹にレジ袋を揺らして応える。
「簡単な事だ、分ければいい」
「……ありがと、兄さん」
ということで、二つのアイスを抱え帰路につく。荷物は増えたのに足取りは軽い。そんな帰り道だ。隣には鼻歌でも歌いそうな妹。
悪くない。
6.夜ご飯とアイス
一度直った妹様の機嫌はそのまま継続され台所に立つ。見慣れたエプロン姿を眺めつつ配膳をこなしていく。
「兄さん、あれとって」
「はいはい」
「兄さん、そっちやって」
「あいあい」
テキパキとこなす二人。両親が海外にいっているので、居る人でやるしかない。今回は妹が料理当番だ。機嫌がいいので内容には期待できる。
そうこうしているうちに完成。今日はイタリア風。パエリアがメインだ。
「「頂きます」」
食事中には学校でなにがあったかが話題の中心となる。後輩ちゃんがやっぱり茶化してくるなど、委員長が今日も清楚だったなど。もちろん先輩の事も話すが、度を超えるとマイシスターの機嫌がダウンし始めるので程々に。
会話が弾みつつも食事は終わる。
「「ご馳走さまでした」」
ごろごろとカーペットの上で転がる俺。やはりこの時間は先輩といるほどではないが至福。うむうむ。と、ごろごろとしつつスマホを弄っていると、茶碗洗いを終えた妹から声が掛かる。
「兄さん起きて、アイス」
「ん」
ごろごろを止め、スプーンを用意し始めると、妹が冷凍庫からアイスを取り出しやってくる。
「さて、兄さん」
「なんだ妹」
「……どっち食べます?」
それは差し出された選択権。赤いのか紅いのか。それが問題だ。と言わんばかりにこちらの目を見て来る妹。一日一個制限が掛かっている妹にとって味見出来るとはいえ、気分的にどっちを選ぶかは重要なんだろうと思う。
ううむ、これはさりげなく重要かもしれない。妹の機嫌を左右しかねない重要な事態。
慎重に、妹の目や様子を見つつ事を進めよう。
「やはり、赤い方を……」
「あぅ」
しまった。これは間違えだ。すかさず指を折り曲げ、別の方に。
「赤い方を選ばずに、紅のほうだ。×ジャパンだ」
「それは違うんじゃ……でも、ありがとう」
「どういたしまして」
そんな訳でニコニコしながらアイスを頬張る妹を見つつ、アイスを食べた。幸せそうな妹の姿を見ているとこっちまで癒される。そんな気分だ。
悪くない。いや……良い一日だった。
ちなみに深紅の方はリターンズというのが後々に出て、赤いチョコミントは何故か金色の第二弾が出た。現在。どっちも実質妹専用の冷凍庫に葬られている。不憫な……
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