ONE FINE DAY   作:パンク侍

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LOG10……招かれざる者たちの行先

 

 

 ロー達は丘から続くなだらかな坂道を下って行った。

 

 前にも後にも歩く人の姿など全く見えない田舎道。

 

 道端の木の上からは小鳥がさえずる声。

 

 広々とした草地には、海とはまた違った解放感がある。

 

 イモを抱えたベポがすうっと深呼吸をした。

 

 「自然がいっぱいで、いい島だな~」

 

 木々や草花の香りがベポの鼻をくすぐる。

 

 自然に癒されて、のほほんとしているベポ。

 

 「おう、ベポよ……」

 

 「さっき死にかけたの忘れんじゃねーぞ……」

 

 イモを抱えたシャチとペンギンがピリピリしている。

 

 ハッとしたベポが慌てて話題を変えた。

 

 「さ、さっきのビーム凄かったもんな!キャプテン!」

 

 ベポがローの背後にサッと移動する。

 

 「……ああ、海軍ですらまだ実用化に至ってねェような技術だ……破壊力は強力な大砲ぐれェだとしても、火薬武器とは違って弾道が伸びる様子すら見えねェ……光の速さだ、基本的に発射された瞬間着弾する。まぁ、大気の状態や距離によっては減衰もするだろうけどな」

 

 ローは他のメンバーがロボットに慌てふためいている間にも、レーザー光線の威力を冷静に分析していた。

 

 「げっ、発射された瞬間で着弾!?おれたちゃキャプテンやベポと違って身体能力が高いわけじゃねーからなァ……そんな兵器が世の中に登場したらいよいよ悪魔の実のひとつでも食わなきゃやってらんねーかもしれねェぞ?」

 

 シャチがため息をつきながらペンギンの方に顔を向ける。

 

 「食えば良かったじゃねーかよ“イボイボの実”」

 

 ペンギンは北の海にいた頃、ハートの海賊団が財宝と共に手にいれた悪魔の実のことを持ち出した。

 

 ロー以外に能力者のいないハートの海賊団の中で誰がそれを食べるか散々話し合ったりジャンケンしたりしたが、みんな土下座でごめんなさいという結果に終わった悪魔の実である。

 

 イボはベポが食えという声もあがったが、ベポはそれから3日くらい部屋から出てこなくなった。

 

 みんなから敬遠されまくって、結局は売ることになったが二束三文。

 

 高級メロンより値がつかなかった可哀想な悪魔の実だ。

 

「あんなもん何の役に立つんだよッ!イボイボの実のイボ人間とか想像しただけで鳥肌立つわッ!」

 

 イクラのような粒がびっしり外皮についたイボイボの実を思い出したシャチはゾワゾワして腕が鳥肌でイボイボする。

 

 「ん?」

 

 ペンギンが何かの気配を感じて立ち止まった。

 

 ローも歩みを止めると、大太刀“鬼哭”をカチャリと握り直しながら数メートル先にある道端の木を見つめる。

 

 木の陰に誰かいるようだ。

 

 隠れていても、地面に影がちらついている。

 

 こちらの様子を探っているのか…………

 

 一行が道端の木に注目していると、2人の幼い女の子が木の陰からぴょこんと顔を出した。

 

 ふわふわした栗毛の女の子たちは双子なのかソックリな顔をしている。

 

 「たびげいにんきた~っ!」

 

 女の子たちは興奮したように叫んだ。

 

 瞳をキラキラ輝かせ、頬を上気させながらロー達を指差す。

 

 「みんなぼうし、クマちゃんいる、まちがいない」

 

 「えほんでみたのとおなじ、まちがいない」

 

 「このよに、せいをうけて、よねん……まちにまったひがきた」

 

 「はなのしたをながくして、まってたかいがあった」

 

 2人の女の子たちは期待に満ちた瞳でジーッと見つめている。

 

 純粋な子供の視線は時として大人達を翻弄させてしまうものだ。

 

 女の子たちのキラキラした瞳に耐えきれなくなったペンギンがスッと目線を外した。

 

 「…………おい、夢壊さねェように何かやったほうがいいんじゃねェか?こいつら4年も待ってたんだとよ」

 

 シャチに向かってヒソヒソささやくペンギン。

 

 「何ができるっつんだよ!もともと旅芸人なんかじゃねーぞッ!」

 

 そういうシャチも女の子たちを直視するのに耐えれなくなったのか、背を向けながらペンギンにささやく。

 

 コソコソやってるシャチとペンギンを尻目に、女の子たちはローの足元に向かって元気よく走っていった。

 

 「おにいちゃん、げいおねがいします!」

 

 「いっぱつ、おねげいします!」

 

 女の子たちはキャッキャしながらローの服の裾をひっぱっている。

 

 「ああっ!コラッ!やめなさいッ!」

 

 シャチとペンギンが青ざめながら女の子たちに向かって注意をする。

 

 無邪気さとは恐ろしいもので、ローに芸をして見せろなど未だかつてハートの海賊団の誰が口にしたことがあろうか。

 

 酒の席でもそんな無礼講はありえない。というか、切り刻んでシャンブルズという、そこらへんの奇術師以上の芸当が簡単に出来てしまうようなローにそんなこと言えるわけがない。

 

 白クマの姿をしたベポに興味が向くならまだしも、このメンツの中で一番話しかけにくそうな男に興味が向いてしまうとは……子供とはよくわかならいものだ……シャチとペンギンは絶句した。

 

 「げ~い!げ~い!げ~い!」

 

 注意されたのにもかかわらず女の子たちは酒場で絡んでくる酔っ払いおやじのようにローへ芸を強要している。

 

 ローは旅芸人(仮)として何かしようとするのだろうか……?

 

 生首ショーや人体切断ショーのアシスタントになる己の姿を想像してしまったシャチとペンギンはゴクリと唾を飲み込んだ。

 

 パーカーの裾を伸ばされまくっているロー。

 

 「……おい……ベポ……何かやってやれ……」

 

 ローはベポに目配せをした。

 

 シャチとペンギンはホッと胸を撫で下ろす。

 

(ガキ相手ならベポにパスするのが無難だよなァ…さすがキャプテン…)

 

 どんな状況下でも最善策を見い出してくるローに尊敬の眼差しを向けた。

 

 

 「アイアイ!」

 

 ベポは両手に抱えていたイモをバッと空高くほうり投げる。

 

 イモと共にジャンプするベポ。

 

 その大きな身体からは想像できないほどの機敏な動きで器用にイモをキャッチしていく。

 

 「アイ!アイアイアイアイッ!」

 

 放り投げたイモをすべて落とすことなく空中でキャッチした。

 

 「アイ~イ!!」

 

 最後にくるくると回転しながら女の子たちの目の前に着地し、パッとポーズを決める。

 

 ワアッと歓声をあげながら、女の子たちはベポに向かってパチパチ拍手を送った。

 

 「すっごいクマちゃん~!てんさいですっ!」

 

  女の子たちは芸の真似をしているのか、その場で踊るようにくるくる回りながらベポを誉め讃えている。

 

 ベポはまんざらでもなさそうにテレッとした。

 

 「おれ、こんなに誉められるんなら、旅芸人でもいいな~」

 

 嬉しそうにホワ~ンと顔をほころばせるベポ。

 

 女の子たちの動きが急にピタリと止まった。

 

 「…………クマちゃんおしゃべりしてる…………」

 

 「…………そういうのって……なんか……へんだし…………」

 

 これ以上無いくらいの真顔になってぼそりと呟く。

 

 「………だれだ……きさま…………」

 

  物凄い不信感を持ったのか、こんなにも可愛くない顔つきになるんだなと驚いてしまうくらいの仏頂面&ジトッとした目つきでベポを見ている。

 

 陽気だった女の子たちから険呑な雰囲気が漂いはじめた…………

 

 ここで女の子たちに騒がれたり泣いたりされると面倒だ。

 

 シャチは小声でベポを一喝した。

 

 「オマエしゃべるな……!」

 

 「…………スミマセン………ムガ!!」

 

 ベポの口がシャチの手で塞がれる。

 

 すかさず、ペンギンが女の子たちの間に割って入ってきた。

 

 「おっと!それよりなぁ!聞きたいことがあんだよ!お前たちホイール・メカニック・カンパニーって知ってるか?」

 

 ペンギンは少女たちの気をベポから必死に反らそうとする。

 

 話題の転換と共に女の子たちの表情がコロッと変わった。

 

 「もろちん!」

 

 女の子たちが可愛らしい顔でコクコク頷く。

 

 「おい、卑猥な言葉が聞こえてきた気がするけど気のせいか?」

 

 ペンギンは自分のツナギのチャックが閉まっているかを確認した。

 

 「ラチェットがね~、いつも、もろちんですっていう」

 

 女の子たちは股間を気にするペンギンをじーっと見つめながら言う。

 

 「ハァ?とんでもねェ変態がいるもんだぜ……ったくよォ!」

 

 シャチもツナギからナニがモロに出ていないかを確認する。

 

 女の子たちはシャチの様子もじーっと見つめる。

 

 そして、ローの方へ向かってタッタッタと小走りしていった。

 

 「ねぇねぇ、もろちんてなに?ちんちん?おっきい?」

 

 女の子たちはローの股関を指差しながら足元に絡みについている。

 

 「だぁぁらぁぁぁ!そんなこと聞いちゃいけませんッッッッ!」

 

 シャチは大慌てで、とんでもないレベルのもらい事故が発生しているローの足元から女の子たちを引き剥がした。

 

 「いいかお前ら?男の人にちんちんの大きさは絶対聞いちゃいけねェんだぞ?」

 

 ペンギンが真剣に女の子たちへ大人の事情を諭す。

 

 「は~い!」

 

 女の子たちは元気よく返事をした。

 

 が、またローの方へくるりと向きを変えて駆け寄っていく。

 

 どうしても興味がローに向くようだ。

 

 「こいつら結構しつけェな……」

 

 げんなりしながらシャチとペンギンが呟いた。

 

 「ねえねえ、おにいちゃん、どうして腕におえかきしてるの~?」

 

 「からだぜんぶ?ちんちんも?みせて~?」

 

 女の子たちはタトゥーだらけのローの手をグイグイ引っ張っている。

 

 「コラッ!また!やめさないッての!」

 

 「大人しくしなさいッての!ちんちんから離れなさいッ!」

 

 シャチとペンギンが気力を振り絞りながら女の子をグイ~ッと引き剥がす。

 

 「は~い!」

 

 女の子たちは元気よく返事をした。返事だけは満点をあげたいくらい立派だ。

 

 大人しく地面にしゃがみこんだ女の子たちは小さなポシェットからお絵描き用のフェルトペンを取り出し、キュポンとふたを外した。

 

 「おとなしく、おにいちゃんのまね」

 

 おもむろに、自らの腕や手にぐりぐりと落書きをする。

 

 「コラコラコラコラ!いけませんッ!」

 

 シャチとペンギンがすっかり保護者化している。

 

 興味を持ったことに対して貪欲な年頃の扱いにてんやわんやだ。

 

 ロボットとは違った脅威に晒される一行であった。

 

 

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