ジムに通い始めてから自分の体に足りない物がわかってくる
鷹村さんと自分をどうしても比較してしまうから全てが劣って感じてしまう
サンドバッグを叩きながら自分のこれからのスタイルを考えていく
パンチ力はあるとは思うが自分で想像していた原作の一歩のパンチには到底及ばない
まぁ13歳の体であんな破壊力は絶対に出せないだろうと思うがこんな厳しい世界でやっていけると思わない
ガゼルパンチもスマッシュも試してみたが威力が足りない
とくにガゼルパンチが鷹村さん相手に当てるイメージが見えない
あの長いリーチに威力のあるパンチに向かってダッキングしてステップイン!
届かない… クソッ!
おそらく身長もまだ伸びるから想定より低くダッキングしてるのが原因の一つではあると思うがまだもう少し鍛え足りないようだ
青木さんも木村さんも、まだ来ていないが宮田君は居た
なんと例えればいいのか、自分の美学のような物を持っている気がする
こだわっているというのか?
何をやっても絵になっている、というか気にいらない
真剣なんだろうが必死ではない
原作の一歩が尊敬してた気がするが、今の僕にはどうでもいい存在だ
スパー相手に指名されたが断った
相手をしている暇なんてない、最近になって自分には少し厳しくトレーニングをしている
スパーよりも走りこみだ
この体はまだ限界まで追い込んだ事がない
ゆっくり鍛えるつもりだったが限界を知って、その限界を伸ばそうと思っている
400mダッシュも何処が400mか、正確にわからないので少し長めに設定してダッシュしてジョギングを繰り返している
400じゃ足りないのか?鷹村さんを見ていると不安になってくるが、オーバーワークも怖い
試合後の休息を考える
完全に休んで釣りでもする日を作ってもいいかもしれないが、仕事も捨てられないので悩ましい
それより気になっている人がいる
鷹村さんとスパーをしているのをよく見かけるようになった
動きは悪くないように見えるが、鷹村さんが相手だと足りない
名前は栗田 ジュニアミドル級でこのジム内では大きい方だ
この世界は残酷だ 鷹村さんの矛先がこちらに向くのを想定するとゾッとする
あの人は平気な顔して素手で顔面を殴る人だ
口と同時に手が出ているレベルで危険だ
栗田さんはいつもリングでボコボコにされて
リング外でもマロンと言われて、煽られて反抗した所を素手で殴られていた
僕は中学生になったばかり、小さいからおそらく殴られる対象に入っていないが、高校を卒業してプロでやっていくとなると、おそらく僕も対象に入ってしまう
いつ対象内に入るのかを考える
もしかして、もう対象に入っていて気づいていないだけなのか!?
首を振って考える事をやめる
いつかスパーする事になるだろう
ヘッドギアを装着して、ミット打ちをした事があるが
視界が狭まって、逆に攻撃を受ける回数が増えるのではないか?
脳に少しずつダメージが蓄積されるなんてあるのか?
そもそも鷹村さんや会長から着けるな、と言われればそれまでだ
会長にはボクシングをプロの世界でやる為に、スパーは慎重にしたいと伝えている
栗田さんは心が折れないか心配だ
僕にはまだ鷹村さんに立ち向う勇気がない
鷹村さんに殴られた事を想定して、自分の拳を顔に当ててから拳を振り抜かれた事まで想定して色々試してみる
喰らうとしたら、理想は額だ
頬骨なんかも折れてしまうんじゃないかと不安になる
アゴや耳の裏の下のアゴの付け根辺りに何か効く要素がある
何度も試していると少しクラクラした
額で受けたとしても、あんな大砲のようなパンチは首が物理的に飛びそうなイメージがある
受け止められるとしたら腕が伸びきる前だが
それでもあの理不尽の塊のような人には振りぬかれる気がする
イメージしていただけなのに、気づけばビーカブースタイルを構えていた
戦うとしたら超至近距離しかないのか…
可能性はそれしかないだろう
スウェーバックで避けたりしても、懐に潜りこんだのが台無しになる
会長とミット打ちしてても自然とパリーしてる事がある
体が勝手に動いてのパリーは良い事なんだろうか?
おそらく癖にまでなってしまうと狙われるのだろう
悩ましい
スーパーボールを使ってのトレーニングはしばらく控える予定だ
この前行った時に、タバコの吸殻がいくつも転がっていた
もう夏だ、前世でも夏休み明けに髪が染まっている人なんて沢山いた
鷹村さんという爆弾みたいな存在を身近に感じるようになって
危険察知能力の用な、言葉では説明できない感覚が磨かれているのかもしれない
鷹村さんが夏に浮かれて開放的になるなんて事はないだろう
あの人はプロだ、きっとないはずだ
あの人が野に解き放たれたら大変な事になるだろう