目を覚ますと、そこは真っ白な空間だった……なんてことはなく、普通に自室のベッドだった。
壁際のシーツの上には、昨日買ったお気に入りのマンガの新刊が斜めに置いてあった。
「あっちゃぁ、曲がっちゃってるよ」
手にとってみると、裏表紙が大きく折れ曲がっている。
一応、反対に曲げて元に戻そうとしたが、結局いびつな折れ跡がついてしまった。
「仕方ない、これはブック〇フにでも売って新しいの買うか」
想定外の出費に顔をしかめる。数百円といえど、高校生にとっては貴重なのだ。
壁掛け時計を見ると午前9時半を指し示していた。
少し早いかとも思ったが、あまり気にせず、僕は財布を片手に馴染みの本屋へ向かった。
「──というところまでが、僕が覚えていることなんだけど。いや、ですけど」
「……そうか。いや、大丈夫だよ。そのあと起こったことはこちらで把握しているからね」
目の前にいる人はそう言うと、じっと僕の目を見つめてきた。
身長は小学生でも通用するくらい──だいたい僕の胸くらいの高さ──で、裾の長い黒衣を纏い、鈍色の大きな鎌を持つ姿は、まるで死神のコスプレをしているようだ。
しかし、その表情にはコスプレをして嬉し恥ずかしな感じは微塵もなく、むしろ感情なんて最初から持っていないような、無機質な無表情だった。
「本来なら魂を無に帰すところなんだけど、今キャンペーン中でね、君転生できるよ」
良かったね、と彼女は言う。
「は? 魂? 転生?」
「ああ、君もう死んでるから」
へ?
マジで?
「本当さ。ぼくが見えるのが何よりの証拠だよ」
「つまりあんたは死神?」
「そう、死神」
「ちなみに死因は?」
「交通事故。子供をかばってトラックに轢かれて」
「なんというテンプレ」
などと言っている場合ではない。
僕が、死んだ?
冗談……ではないのだろう。
僕にはこの死神少女が冗談を言っているようには見えない。
ならば本当に、
「死んじゃったのかぁ。まあそれはしょうがない、諦めよう。それで転生ができるんでしたっけ?」
「君、なかなか適応力があるね。それじゃ説明するよ。君が転生するのは『セキレイ』に極めて近い世界だ。本来の流れから外れても修正力が働いたりはしないから安心していいよ」
なるほど。
それで、転生先とかはどうなるんですか?
「転生先、あと転生特典はこのクジで決めてもらうよ」
と言って死神少女はどこからともなく2つの箱を取り出した。
上部に穴が空いた箱の側面には、それぞれ『転生先』と『転生特典』と書いてある。
「特典が貰えるんですか」
「無しでもいいけど、あった方がいいだろう?」
確かに。
まあ、貰える物は貰っておこう。
「箱の中にはいくつかの玉が入っているから、転生先からは1つ、転生特典からは持てるだけ持って引いて」
そう言われ、僕はまず転生先の箱に手を伸ばした。
「転生先は、おっと大当たりだね。じゃあ次はこっちの箱から持てるだけ持って引いてくれ」
さっきの箱の中身は同じ大きさの玉だけだったが、この箱の中身は大きさがランダムのようだ。
「小さい玉が1つと中くらいの玉が1つ、大きい玉が1つか」
小さい玉には『身体能力向上』
中くらいの玉には『セキレイの感知』
大きい玉には『
と書かれていた。
「こちらもなかなかの当たりだね。それぞれの能力は転生後に確認するといいよ」
「分かりました。それで、どうやって転生するんですか?」
「ん? この鎌でサクッと」
「サクッと?」
「じゃあ、いくよ」
「ちょ、まっ」
サクッ