セキレイはありですか?   作:四季式

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第14話

月海side

 

 

 (われ)は最強のセキレイだという自負はある。

 吾の特性、水を操る能力が一対多の戦闘において有利だとも思う。

 

「おらおら、No.09どうした。いくらシングルナンバーと言っても多勢に無勢じゃこんなもんか?」

 

「くぅ!」

 

 しかし、十以上のセキレイが同時に(・・・・・・・・・・・・)襲いかかってくるというのは、さすがに想定していなかった。

 しかも、この戦闘は三つ巴(・・・)の戦いだった。

 

「おい、氷峨の者! お前らはさっさとリタイアしてな!」

 

「ふん、御子上の。貴様らこそどこかへ行っていろ。邪魔だ」

 

 どうやら『氷峨』と『御子上』という勢力が吾を巡って争っているらしい。

 なんとも不愉快極まりない。

 吾は誰にも婚がぬ!

 葦牙なんぞただの人間(サル)ではないか!

 

水祝(みずいわい)っ!!」

 

 そして最近、身体に焦れるような感覚が沸いてくる。

 これが何なのかは判らぬが、戦いに支障が出るほどその感覚は強くなっている。

 

「──ッ! しまっ!?」

 

 恐れていたことが起こった。

 この感覚のせいで周囲への警戒が疎かになり、敵の攻撃をまともに喰らってしまった。

 

 吾は、ここまでなのか……?

 弱気になりかけたその時、

 

「何やってんのさ、月海。らしくない」

 

 業ッ! と大きな炎が敵の攻撃を焼き尽くす。

 

「ほ、焔……」

 

 我が好敵手(ライバル)である炎のセキレイ──焔が、いつもの黒装束で現れたのだ。

 

「ここは抑えておく。君は早く逃げるんだ」

 

「何を言う! (なれ)だけに戦わせるなぞできるか!」

 

「君の今の状態では、足手まといだ」

 

「──くっ」

 

 確かに焔の言う通りだ。

 今の吾では普段の半分も力を出せていない。

 

「……分かった。すまぬ、恩に着るぞ焔」

 

「いいから行けっ!」

 

 吾は戦線を離脱した。

 

 

月海sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、焔さんのおかげでNo.09が戦場を離れた。結ちゃんは焔さんの戦闘のサポート。秋津ちゃんとうずめちゃんは両陣営のセキレイが追いかけないように牽制。行くよ、くーちゃん」

 

「うん!」

 

 僕とくーちゃんは月海が逃げたルートを先回りするように道を駆けた。

 

「ん?」

 

『どうしたですか、みなたん?』

 

「なんかこの先に、No.09以外のセキレイの気配がするんだけど。しかも複数」

 

『まさかの第三勢力ですか!? ちょい待つです。すぐに調べるです』

 

「お願いね、松さん」

 

 さて、こちらの今の戦力はくーちゃんのみ。

 対して相手は戦闘向きのNo.09と未知のセキレイ(複数)。

 ちと厳しいか……?

 

『検索結果出たです! その先にいるのは、光&響です!』

 

 しかし、松さんのその情報はまさしく光明だった。

 

「了解! くーちゃん、松さんのお(まも)り準備!」

 

「うん!」

 

 にょき。

 と、両手を掲げると、その手の中には鉢植えが1つ。

 

「よし、準備はOK!」

 

 僕とくーちゃんは新たな戦場に向かって走る。

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 

「「神鳴(カミナリ)!!」」

 

 ビリビリ姉妹の祝詞(のりと)が発動し、巨大な雷が月海に向かって落ちる。

 

「危ないっ!!」

 

「なっ!?」

 

 その直前、僕は月海と二人の間に入り、身を呈して守るふりをした(・・・・・)

 雷は僕と月海の所へ、ではなく数メートル離れた大木に落ちたのだった。

 

(くーちゃんナイス!)

 

 この大木は、くーちゃんの鉢植えから成長させたものだ。

 要は『避雷針』だ。

 とは言ってもセキレイという不思議生物による指向性を持たせた雷だから、確率は五分といったところだったけど。

 

「……だ、大丈夫ですか?」

 

「人間、なぜ吾を庇った。運が悪ければ死んでいたぞ」

 

「目の前で危険な目に遭っている人を助けるのに、理由がいりますか?」

 

 月海の目を真っすぐ見据えて僕が答えると、月海の顔が紅潮してきた。

 

「わ、吾は強い! 汝ら人間に守られるなぞあり得ん!」

 

「貴女がどれだけ強くても、助けない理由にはならない。僕は貴女を守りたい。ただそれだけなんだ」

 

「──っ!」

 

「僕に、貴女を守らせてください」

 

「……少し目を瞑れ、人間」

 

 言われた通り目を閉じる。

 一瞬の間の後、唇に柔らかな感触があった。

 

「──吾は月海だ。人間、汝の名は?」

 

「皆人、佐橋皆人だ。月海さん」

 

「『さん』はいらぬ。汝と吾は夫婦(めおと)となった。

──幾久しく、ミナトよ」

 

「……なーに目の前でいちゃついてるのよあんたらは!!」

 

「結局流れで婚ぐの止められなかったしねぇ」

 

「ミナトよ。最強たる吾の力、とくと見よ! 水祝っ!!」

 

 特大の水柱がビリビリ姉妹に向かって放たれた。

 2人+瀬尾さん(と思わしき男)は、水圧に負けて遠くに吹き飛んでいった。

 

「身体が軽い! 先ほどまでの不調が嘘のようじゃ! ……汝のおかげか、感謝するぞミナト。吾は誰にも婚がずに最強を目指していた。しかし汝の心意気に触れ、1人で最強の頂にたどり着いても意味がないと思うた。守るべき誰かがいて、初めて強さを得られるのだな」

 

 達観したような表情でそう語る月海。

 

「そうかもしれないね。あ、くーちゃん、お疲れさまー」

 

「えへへ〜」

 

 ピキッ。

 

「み、ミナト。その幼女は、汝のセキレイか……?」

 

「うん。草野ちゃん、みんなはくーちゃんって呼んでるよ」

 

「み、『みんな』……?」

 

「皆人さーん!」

 

 氷峨と御子上の下っぱを片付けたのか、結ちゃんたちが続々と到着した。

 

「……ミナト、汝、何人のセキレイを羽化させた?」

 

「えーと、月海で5人目だね」

 

「はっ! 水祝っ!!」

 

 その日最大の水柱が僕に降り注いだ。

 

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