「僕はね、小さい頃に一度だけ
ファミレスで昼食をとり、また部屋に戻ってきた。
「なんで母さんが僕をあの島に連れて行ったのかはよく分からないけど、僕としては旅行みたいな感覚だったよ」
最初はね。
目的地が神座島だと分かると、なんでこんな鶺鴒計画の中枢に連れて行くんだと内心テンパっていたのを思い出す。
「その頃は美哉さんの旦那さん、
まあその遊びがセキレイの詳細なデータの閲覧と説明だったのには肝を冷やしたが。
んなもん子どもに見せるんじゃないよ。
いや、子どもだから見せても大丈夫だと思ったのか?
実際、数値化されたデータを見せられてもさっぱりだったからね。
「あと、調整済みのシングルナンバーのセキレイの何人かと一緒に遊んだりもしたな」
鬼ごっことかしたけど、あいつらは手加減というものを知らないのか能力全開で追いかけてきてめっちゃ怖かった。
「それで、最後に建人さんが紹介してくれたのが
「焔さん?」
「うん。No.06、焔さん。炎のセキレイだよ」
「あ、私会ったことあります。逃げてるところを助けてもらいました」
「セキレイの守護者やってるらしいからね。ちなみにこの出雲荘に住んでるよ」
「そうなんですか」
世間って狭いよね。
お、出雲荘に近づいてくるセキレイがいるみたいだ。
噂をすれば影というやつだね。
そのセキレイの気配は出雲荘に入ると階段を登ってこちらへと向かってくる。
「佐橋皆人! 廃棄ナンバーを仲間にするなんて何を考えているんだ!?」
勢いよく部屋の扉を開けたセキレイ──焔さんは開口一番にそう叫んだ。
「まあまあ焔さん、落ち着いて」
「これが落ち着いていられるか! 廃棄ナンバーが外に出ていること自体問題なのに、
母さん、そんなこと言ったのか。
どうも母さんは僕を過大評価する節があるな。
「それだけならまだいいさ。廃棄ナンバーは羽化できないからね。だがそのセキレイはなんだ? 僕には君が羽化させたセキレイに見えるのだが」
「そうだよ。彼女、結ちゃんは僕が初めて羽化させたセキレイさ。それがどうかした?」
「どうかしたじゃない! なんで僕に断りもなく羽化させたんだ!? 僕は君のセキレイなのに!」
いや、まだ羽化させてないから正確には僕のセキレイじゃないんだけど。
神座島で建人さんに紹介された時、葦牙の才能に反応したのか一目惚れされ、羽化はできなかったけどその場で初キスを奪われた。
それからは僕が男だからか、身体の雌雄が女性側である程度安定した。
なので、原作の様にホストはやっておらず、セキレイの守護者という名の半ニートである。
ちなみに篝という偽名は身元を隠すためもあるが、『焔』呼びを僕以外にされたくないという理由が大きいらしい。
「はじめまして、ではないんですよね。羽化前は助けていただきありがとうございました。私、結といいます。よろしくお願いします、焔さん」
「……秋津」
「ほら、焔さんもちゃんと挨拶しないと」
「……焔だ。だがこの名を呼んで良いのは佐橋だけだ。君らは篝と呼ぶように」
「分かりました、篝さん」
「……了解」
「ところで佐橋。ひとり羽化させたということは、僕を羽化させることができるようになったんじゃないか?」
期待を込めた眼差しで見つめてくる焔さんだけど、
「残念ながらまだできそうにないね。そうだね、あと2、3人ってところかな」
「くっ、そうか」
ピロリン
と、メールが来たみたいだ。
ケータイを開いて内容を確認する。
妹のユカリからだ。
なになに『そっちの大学受かったから近々会いにいくね』か。
ゑ?