セキレイはありですか?   作:四季式

9 / 14
第9話

 眠ったくーちゃんを背負って出雲荘に帰ると、美哉さんとうずめちゃんが出迎えてくれた。

 

「ただいま帰りました」

 

「はい、おかえりなさい」

 

「お、今度は幼女か。このロリコンめ」

 

 ロリコンではありません。

 

「うに……」

 

「あ、起きた? くーちゃん」

 

「うん…………おなか、空いた」

 

 そんな言葉と同時に『きゅるる』と鳴るくーちゃんのお腹。

 

「はは、そうか。お腹が減ったか。美哉さん、何か食べるものあります?」

 

「それでしたらちょうどお夕飯の時間ですよ。もうすぐできますから待っててくださいね」

 

 そう言うと美哉さんはパタパタと早足で台所へ向かった。

 腕時計を見ると6時半を示していた。

 おそらくあと30分くらいでできるだろう。

 

「だって。それまで我慢できる?」

 

「うん」

 

 こくん、と頷くくーちゃん。

 

 その可愛らしい仕草に萌えを感じずにはいられなかった。くーたんはあはあ」

 

「勝手にモノローグに入ってこないでよ、うずめちゃん」

 

「佐橋ちゃんの溢れんばかりの感情を代わりに私が語っておいたの」

 

 そんな感情(ちょっとしか)持ち合わせていません。

 

「それにしてもうずめ、何だそのはしたない格好は」

 

 と焔さん。

 うずめちゃんの格好は、簡単に言うと下着のみの姿だ。

 

「別にいいじゃない、ウチの中なんだしー。それともうずめちゃんのセクシーな下着姿に佐橋ちゃんが欲情しないか心配とか?」

 

「なっ!」

 

 はっ、せくしー(笑)

 恥じらいのない下着姿なんかに欲情なんてしないしない。

 こちとら女系家族(妹、母、祖母)だから女性の下着姿なんか見慣れてるっての。

 

「そういえば、ユカリはどうしたんだ? ここに住むとかいう話だったけど」

 

「ああ、佐橋ちゃんの妹ちゃん? 佐橋ちゃんたちが出たあとに日用品を買ってくるって出てったよ。夕飯までには戻るって」

 

 それじゃあそろそろ帰って来るかな。

 

「ただいま戻りました」

 

 おっと、噂をすれば影だ。

 

「おかえり、ユ、カリ……」

 

 玄関から入ってきたのは、しかしユカリだけではなかった。

 

「あ、あの、お邪魔します」

 

 おずおずと入ってきたのは灰色の髪の美少年。

 

「しーちゃん!」

 

「えっ? くー!」

 

 No.107、椎菜(しいな)がそこにいた。

 

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 

 

「んで、どうして椎菜くんがここにいるんだ?」

 

 時は午後7時、場所は出雲荘の居間。

 美哉さんが作ってくれた夕飯を食べながら僕は聞いた。

 ちなみにくーちゃんと椎菜くんは仲良く並んで食べている。

 

「そうですね、簡潔に言うと私が椎菜を助けてここに連れてきました」

 

 簡潔過ぎ。

 

「もっと詳しく」

 

「しょうがないですね、分かりました。そうですね、あれは私が日用品を買い揃えた後、街をぶらついていた時でした」

 

 

 

 

 

 

ユカリside

 

「これでとりあえずは大丈夫ですね」

 

 右手に持ったビニール袋の中には歯ブラシやコップなど、日常生活で使う最低限のものが入っています。

 これから出雲荘で暮らすことになるのだから、これくらいは今日中に揃えておきたいです。

 服などは実家から送ってもらうとして、あと欲しいものと言ったら嗜好品に分類されますね。

 

「時間もちょうどいいですし、帰りますか」

 

 踵を返し、駅へ向かうその時でした。

 

 

 

 

 

「いい加減に観念なさいよね」

 

「くっ」

 

 その声は、数メートル先の人気のないビル街からでした。

 

「ちょこまかと逃げ回っちゃって、もう! あんたを連れて戻んないと私が葦牙様に怒られるんだからあ」

 

 そこに居たのは地面にへたっている少年と、建物の上からムカつく感じでしゃべる女でした。

 

「やれやれ仕方ないですね。こんな場面を見て素通りしては寝覚めが悪いです。助けますか」

 

 それにしてもあの女、葦牙と言ってましたね。

 

 葦牙。

 

 兄さんから聞いたこの世界の中核を成す物語のキーワード。

 ということは、あの2人はセキレイですか。

 相手がセキレイなら、否、セキレイだからこそ私なら対処できますね。

 

「そこの少年」

 

「え?」

 

「立てますか」

 

「は、はい。大丈夫です」

 

「では駅まで行くのでついて来てくださいね」

 

 と言ったところで建物の上の女が、

 

「な、なに私を無視して話を進めてるの! だいたいあんた誰!? 関係ない一般人が関わると怪我じゃすまないわよ!」

 

 とキレてきた。

 

「関係は全くありませんが、一般人ではありません。そうですね、あと2メートルといったところですか」

 

「はあ? なに言ってるの? 怪我したくなかったらさっさとどいて!」

 

 私は3歩前へ進み、女の目を見て言った。

 

「佐橋ユカリが命じる。私たちを無視しなさい」

 

 そう言うと女はそこら辺をキョロキョロと見回してから何処かへ行ってしまった。

 

「さて、邪魔者も居なくなりましたし行きますか」

 

「あ、あの!」

 

 少年は顔を赤く火照らせながら私に迫ってきました。

 

「何ですか?」

 

「あの、僕、きっとあなたのセキレイです」

 

「はあ?」

 

 兄さんからの情報では、確かセキレイは自分の葦牙をある程度判別できるとのことでしたね。

 とするとこのセキレイは私に反応してあんな状態になっているということですか。

 

「ここで兄さんが参加しているゲームに乗るのも一興ですかね」

 

「え?」

 

「いえいえ、こっちの話です。ではさっさとしてしまいましょう。人気が少ないとはいえ悪目立ちするのは良くありません」

 

「え、でもまだ心の準備んむ!?」

 

「むちゅ、何か言いましたか?」

 

 キスをすると、少年のうなじ辺りを中心に光の羽が広がりました。

 セキレイの羽化とは綺麗なものなんですね。

 

 そんなこんなで出雲荘に帰ってきました。

 

sideout

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。