マイルドなピクト人が座に登録される話とそれからの話   作:ピクトグラム人

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注意 ただのネタ。ピクト人に関して設定があまりないので捏造していきます。捏造増々です。それでも良い人はお付き合いください。


01 その男、ピクト人

「同胞、我が同胞よ。目を覚ますのだ。もう既に先行した同胞がキャメロットと交戦中だ。我々も戦線に立ち一匹でも多くのキャメロットを屠ろう」

 

 目を開けるとそこには化物がいた。真っ先に目に入るのは六つの穴と青いラインが特徴的なフルフェイスのヘルム。それから、筋肉質でありながら細長い印象の身体は肌のほとんどが緑色だった。まさに化物の名が相応しいだろう。どことなく何処かのエイリアンのようであり、そういった意味であるなら宇宙人といっても良いかもしれない。どちらにしても未確認生物めいた容姿なのは保証する。

 そんな彼らの総称はピクト人という。そう、人である。一種の人類としてこの地に根を卸し、それだけではなく国を築いているのだ。

 

「了解した。すぐに行こう」

 

 そうして私は赤色の腕で隣に鎮座した鉄の塊を掴み立ち上がった。それに合わせて周りのピクト人は各々の武器を手にして整列する。それを確認した私は彼らの先頭に立ち、彼らの方を向いた。

 

「さて、同胞諸君。聞くまでもないが、聞いておこう。我らが敵は何だ」

 

 恒例の号令である。これを合図に戦闘へ気持ちを切り替えるのだ。そして同胞もそうするため応える。

 

「キャメロットである」

 

 重なる声。それだけで大気が揺れ、風が巻き起こる。敵はキャメロット。それを言葉にすることで殺意を燃やすのだ。

 

「そうだ。ならば我々のすべきことは何だ」

 

 再び問う。敵は定まった。ではそれをどうするか。これも決まっていた。だからそ同胞達は口を開き言葉にする。

 

「圧倒的な殺戮、即ち圧殺である」

 

 成った。これにて同胞達は圧殺の体現者となったのだ。あとは私が引き金を引くだけ。故に引く。

 

「よろしい、ならば武器を持て。剣でも槍でも斧でも、なんなら拳でも良い。そしてその手で齎すのだ。神すら目を背ける――圧殺を」

 

 私の掛け声に応え、彼らは吼えてそして駆ける。ただ本能に従いキャメロットを滅ぼすため駆けるのだ。

 ここまでくればわかるだろうが、私も彼らと同じピクト人である。なのでキャメロットを滅ぼすのは吝かではないが、同胞達とは違い何がなんでも殺したいという訳ではない。しかしそれは本能に打ち勝ち、まともな人間のような自我に目覚めたとかではなく、私の中身が元日本人だからである。とはいっても全てを受け継いでいる訳ではなかった。人格は消えているし、倫理観もほとんど残っていない。具体的にいうと"手を取るなら共に、そうでないなら死を"くらいにマイルドになっている。ピクト人としては異端であり、同胞に首を傾げられたこともあったが、持ち前の戦闘力を活かすことでハブられることなくやっていけていた。努力の甲斐もあって今では同胞を率いる立場にいる。目立つのは好きな方ではないが、任せられた以上は全うしたいと思う。具体的には――

 

「――圧殺である」

 

 地を踏み締め、跳躍。そしてキャメロットの目の前に着地し、右手に握った鉄塊――鉄のような金属を固めて取っ手をつけたもの――を薙ぎ振るう。間も無く重低な金属が響き、拉げたキャメロットが空を舞い鮮血溢しながら自軍の方へ落ちていく。それを見たキャメロット達はざわめき、一つの単語を繰返し叫ぶ。奴等の言葉は理解できないが、私が現れる時にその単語が出てくるので私の二つ名的なものなのだろう。私もそこそこ有名だということだ。目立つのは好きではないと言ったが、目立ったら目立っで少し嬉しいのは日本人としての性がなのか、あるいは私というピクト人がそういった者だったのか。ともかく二つ名というのは好ましい。その殺し方から『圧殺』とか、あるいは武器から『鉄塊』とか、赤い身体から『返り血』とかウキウキする。いずれ彼らの言葉を勉強するのも悪くないかもしれない。

 

「圧殺」

 

 そんなことを思いながら私は今日も鉄塊を振るう。その度にキャメロットがポップコーンのように弾けて、鎧の隙間から血を漏らしながら飛んでいく。それを眺めてまた鉄塊を振る。上にばかりに飛ばしてもつまらないので時々彼らの波に飛ばす。するとボーリングのようにキャメロット達は転げ回る。そして倒れたキャメロット達の上空へ跳び、そこから地面に向かって鉄塊を投げ飛ばして更に蹴りを入れる。衝撃の波紋が広がり、キャメロット達は潰れていく。

 そうしている内に地面は赤く染まり、キャメロットも、我が同胞達も、多くの人間が屍に変わる。

 

「圧殺、圧殺、圧――やはり来たか、こんにちは」

 

 その頃だ。ただのキャメロットとは比べ物にならないほどの力をもったスーパーキャメロットがやって来る。彼らは同胞達では手に負えない。私が本気で戦って、なんとか引き分けで逃げれるほどの強さである。故に彼らの参戦が撤退の合図となっていた。

 であるならば、私の役目は彼の足止めである。毎回死ぬような思いをするが、この身体はピクト人の尺度で測っても丈夫な部類なので問題はない。さて、接敵である。

 

「一応、聞いておこう。私と話す気はあるか。お互い、殺し合った仲ではあるが――」

 

 有象無象のキャメロットは目が合った瞬間に、襲ってくるので殺すしかないがスーパーキャメロットは、何かを叫んだり、探ったりしてくるので、少し時間がある。その時間を利用して手を取り合えるか話しかけてみるのだが上手くいかない。あちらの言葉が通じないのだから、こちらの言葉が通じるはずもないのだ。こればかりは仕方がない。

 

「ならば武器を持とう」

 

 鉄塊を構える。今回現れたスーパーキャメロットは紫色のスーパーキャメロットだ。彼の剣技は我々では到達できない域に達している。それを凌ぐのは至難だが、どこか楽しみな自分もいるのだ。どちらの血がそうさせるのか、どうにも戦闘好きな私は一騎討というのが堪らなく好きであるらしい。だとすれば"パープルキャメロット"は最良の相手である。勝つことはできないだろう。しかし一撃でも、二撃でも、彼に傷を付けることができたのなら私は今日、気持ち良く寝ることができる。

 

「それでは、圧殺を始めよう」

 

 熱い展開。日本人たる私がどこかで燃え上がる。ピクト人としての私も、キャメロットと戦えることで心が沸き立つ。

 そして、地が砕ける。足型が地面に刻み込まれ、私の身体は前へと加速した。手にした鉄塊を勢い良く、後ろへ引き、狙いを定める。コンマ数秒の世界だ。その領域に足を踏み込んだ、その瞬間であった。

 

我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッドアーサー)!」

 

 どこかで聞いたことのあるような掛け声と共に私の身体は光に呑まれ、焼かれ、衝撃によって遥か彼方へと飛ばされる。何が起きたかわからない私の、微かな視界の中で見えたのはゴテゴテとした鎧の"ヤンキーキャメロット"が剣を振り下ろした姿であった。

 

 私は思った。

 

 野郎、ぶっ殺してやると。 

 

 




私……主人公。身体は赤いピクト人。中身は日本人とピクト人のミキサー。どちらかと言えばピクト人より。

圧倒的な殺戮……略して圧殺。日本語だからこそできる略し方。どうなってんだ。

鉄塊……鉄のような塊に、持ちやすいよう取っ手をつけたもの。

圧殺……押し潰して殺す。主人公、お気に入りの決め台詞。

キャメロット……死すべし慈悲はない。

スーパーキャメロット……円卓の人達の総称

パープルキャメロット……ランスロット

ヤンキーキャメロット……モードレッド

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