転生美女世紀末伝説   作:大岡 ひじき

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ソウガ、レイナ兄妹の話は時系列とか色々ややこしくなるので、ストーリーには入れてません。
あの映画1回しか見てないから流れとか覚えてないのもあるし。
いや考えてはいたけどね。
レイナさんを陰で『あのオバハン』呼ばわりする女官達の話とか(爆
い、いやだって、ラオウと一緒に修羅の国にいた時点で、少なくとも明確な記憶がある年齢だったと考えると、あのひと絶対見た目よりトシくってんだろなと……!


2

 この拳王軍の居城に於いて女官という仕事は、拳王様や幹部たちの衣食の世話をする為の存在です。

 着替えや食事の配膳、ぶっちゃけ毒味係なんて仕事もあるわけですが、それらの業務は基本交代制で、割とランダムな組み合わせの2人ひと組で回すシステムを採用しているようです。原則では。

 

 ですが。

 わたくしは、かの御方のお世話を今、ひとりで任されております。

 

『今日からこのリアをおれの専属として側仕えに置く。

 他の女官は一切おれに近付けるな。鬱陶しい』

 という謎の命令によって、です。

 

 そんな拳王様の突然な気紛れで、下働きから専属の女官となったわたくしですが、慣れてしまえば拳王様のお世話自体は、それほど大変ではございませんでした。

 拳王様のわたくしの起用に、女除け以上の意味があったわけではなく、なので普段の着替えなどは持っていけば御自分でなさいますし、入浴もバスタブとお湯の用意さえ整えておけば後は下がらせてくださいますので。

 …この点は安心いたしました。

 身体を洗えなどと言われたら、刺激の強さに卒倒する自信がございますもの。

 漫画でのシンの登場時、入浴後の身体を半裸の美女たちに、抱きつかれるようにして拭かれている場面があり、女官とはそういうことまでしなければいけないのかと、内心ヒヤヒヤしておりましたし。

 そういうのが必要ならば他にもっと適任の人材がわんさかおりましてよ?

 ええもう、前世の男子高校生だった頃であれば、匂いだけで勃起したくらいのスタイル抜群の美女が、ここにはたくさんおりますのでね。

 あと女官の制服として支給されている服は、何故か肩やデコルテなど露出度が高い上に布地も薄いのです。

 わたくしには割と標準的なサイズ感ですが、他の女官さん達が着て、どの部分とは申し上げませんが薄布を暴力的なまでに押し上げている光景は、さぞかし男性の目を楽しませているものと思いますわ。滅べ。

 

 それでも拳王様はそもそも初恋拗らせた一途な方ですから、心の奥に棲まわせるただおひとりへの想いを大切にされていらっしゃるのでしょう。

 以前から薄物を纏った美女がアピールしてきても、プライベートな部分には踏み込ませなかったわけで、専属としてスカウトしたわたくしに対しても、特に距離感は変わらないというわけですわ。

 なので、拳王様のお側での仕事は、先ほど申し上げた通り大変ではないのです。

 

 ……ただ、わたくし的には非常に心臓によろしくないのですけれど。

 推しは遠くから愛でるもの。

 過剰摂取は、身体には良くないのです。

 状況によっては、生命(いのち)の危険すらありますのよ。

 ほら、よく言いますでしょう?

『仰げば尊死(とうとし)』って。

 

 ・・・

 

「またうぬはろくでもない事でも考えているようだな」

 と、低く圧し殺した声に、どこか面白そうな響きをもって、隣から声がかけられます。

 反射的にその声の方向を見遣ると、出撃前の武装を整える為、兵士の皆さんが介助するに身体を任せて椅子に座っている、拳王様と目が合いました。

 …ちなみにわたくしはと申しますと、この拳王様の傍に立って、武装が全て整った後、最後に頭を飾る兜を、隣でずっと持たされております…ええ、これがメッチャ重たいんですけどね!

 

「…本当に、肝の太い女よ。

 並の女であれば、そのようにおれを見返す事などできはすまい。

 …まあ、斯様な女でなくば、あの鬱陶しい女官(スズメ)どもを、3日で掌握するなど叶わぬか。

 うぬを側に置いたのは、暇さえあればすり寄って来ようとするあやつらを寄せぬ事のみで、他に何も期待してはおらなんだが、なかなかどうして、思わぬ拾い物であったわ」

「……恐縮にございます」

 いつも通りの悪そうな顔で、何故かニヤリと微笑みながらそう声をかけてくる拳王様に、わたくしは慌ててこうべを垂れます。

 …けど、掌握したとか些か人聞きが悪いですわ。

 それこそ最初はこの大抜擢とも呼べる人事に対して、不満たらたらのおっぱいの森…もとい女官さん達に取り囲まれて脅しをかけられたりもしましたけれど、誠心誠意のお話し合いの結果、皆さんが仲良くなれただけでございます。

 その内容が休憩時間を使っての、3日にわたる『推し』と『萌え』の概念の説明会であったとしても。

 

『…本当は私、拳王様よりもリュウガ様の方が好みなんです』

 その説明会の後、割と中心人物的な一人の女官さんが、頬を赤らめてそう口にして、それから皆さんが次々に『実は…』『私も…』と、修学旅行の夜の大告白大会みたいなノリになり。

 互いの『推し』を語る事により、皆さま今までよりも打ち解けてお話ができるようになったようで、それまで対立しあってギスギスしていた空気が嘘のように、今では女官同士、仲良く仕事ができておりますわ。

 ちなみに女官さん達の一番人気はリュウガ様で、二番手はソウガ様のようです。

 尚、こちらには渋好みのお嬢さんはいらっしゃらなかったようで、バルガ様やザク様のお名前は上がりませんでした。

 とにかく職場の雰囲気が和やかなのはいいことですわ。

 職場環境の改善にわたくしが一役買えたのだとしたら、光栄なことと存じます。

 

 …けど、昨日の休憩時間に女官詰所に戻ったら一部の方々が『ザクソウ』?とか『リュウバル』?とかの暗号を使って、顔を赤らめながら話をしていて、声をかけたら何やら慌てたように話をやめて、取り繕うような笑顔で対応されたので、まだどこか距離を置かれている気はいたしますが。

 

 …などと考えているうちに拳王様の武装が整ったようで、視界の端に黒王号が引かれてくる姿が見え、拳王様が立ち上がりました。

 黒王号に向かって歩を進める拳王様に従って、重たい兜を手にしたまま、わたくしも数歩後ろをついていきます。

 …こうして見ると確かに背はお高いのですが、物語ではとんでもない巨人として描かれていた筈の拳王様の身長は、わたくしの見る限り恐らく2メートル強くらいです。

 多分ですがすごく大きく見える時は、闘気の質量が可視する状態にまでなっており、それにより実際よりも身体が大きく見える的な、大豪院○鬼(オーラジャイアント)現象でも起きているのでしょう。

 数歩で黒王号の傍に立った拳王様は、その倍の歩数をかけて傍まで寄ったわたくしの方に手を伸ばされ、わたくしの手から兜を受け取ってくださいました。

 

 …この無駄とも言える一連の流れは、わたくしにはさっぱり理解できませんが、わたくしが一応は『拳王様が選んだ女』であるが故に、必要な流れなのだそうです。

 そもそもこの世界の男尊女卑著しい感覚によれば、力ある男にとっては、女性も財産のひとつらしく、女性の存在は力を誇示する手段になり得るものであるようです。

 確かに物語では主人公ケンシロウの最初の強敵(とも)であったシンや、短い時間でケンシロウと友情を育んだレイの最後の強敵(とも)となったユダも、心の奥に思う相手を棲まわせているにもかかわらず、自分の居城で複数の女性を侍らせていましたものね。

 また、軍をより強大にしていく中で、状況によっては武勲を立てた兵などに、女たちは下賜される可能性もあるわけで。

 現時点で『拳王様のお手付き』という認識を与えて、全軍にわたくしの顔を売っておくことで、下賜の必要が生じた時に、まだ『お手付き』のままであればわたくしは選ばれないし、既に手放された状況であれば、『お手付き』だったという過去がわたくしに付加価値を与えて、より高価な褒賞とする事ができるというわけです。

 ………とんだ風評被害ですけどね!

 手はついとらんわ失礼な!!

 ああ、よりにもよってこの世界で、何故わたくしは女などに生まれてきてしまったのでしょう。

 …いえ止しましょう。言っても仕方がありません。

 それにこの世界でもし男に生まれていたとしたら、違う意味で今よりもっと、惨めな気持ちになるに決まっていますわ。

 強くなければ純愛すら貫けないこんな世の中じゃ。

 強い男の庇護下に、早い段階で入ることができたわたくしは幸運なのです。

(そんな中で、聖帝軍の子供狩りの噂を聞いて、聖帝サウザーはどうやらお稚児趣味らしいと、こちらの兵士が軽口を叩いているのを聞いたことがあります。いや、実際には子供たちは労働力として集めているだけで、サウザーの趣味嗜好の話ではないのですけれども。ここで本人が耳にすることは絶対にないにしろ、心臓に悪いんでやめてもらっていいですか)

 

 …ようやく重たいものが手から離れ、空っぽになった手に何故か空虚さを覚えつつ、拳王様を見上げたわたくしの口から、次には考えるよりも先に、言葉がこぼれ出ておりました。

 

「…御武運を」

 …それを聞いた拳王様は、少しだけ目を瞠きました。

 それから口角を笑みの形に吊り上げ、馬鹿にしたようにフンと鼻を鳴らします。

 

「…なにに祈るつもりだ。

 おれは神に戦いを挑んでおる身。

 祈りなど捧げようがどこにも届きはせぬわ」

 その微笑みがどこか優しげに映ったわたくしの目は、相当この状況に毒されていたに違いありません。

 

「だが、リア。うぬの望みはおれが叶えてやろう。

 武運は神ではなくこのラオウに祈るがいい」

 更にはありえない幻聴まで聞こえてまいりました。

 驚いてわたくしが顔を上げると、纏ったマントがばさりと広がり、拳王様の姿が一瞬、それに覆い隠されました。

 次の瞬間には黒王号に跨っていた拳王様が出撃の合図を出すと、拳王軍の兵士たちが鬨の声で応え、わたくしは戦いに出ていく男たちの後ろ姿を、見えなくなるまで見送っておりました。

 

 

 

 ………その日。

 戦闘員の大半が辺境の制圧に向かった拳王軍の居城は野盗集団の襲撃を受け、待機組の兵士と非戦闘員が協力して、一応は撃退したものの、生き残って撤退したならず者たちに数名の女たちが拐われました。

 

 ……………今、わたくしは。

 

 周囲からすすり泣きの声が聞こえる中、トラックの荷台に乗せられています。

 はい、拐われちゃいました。てへ。

 

 

『てへ』じゃねえぇ───ッ!!!!

 なんだこの絶体絶命の危機!!




おかしい。
前後編で終わらせる筈が、なんでか終わってない。
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