ネタやなんやらでキャラ崩壊起こすことがしばしばありますのでご注意下さい。
「わぁ、寺子屋というのは教卓もあるんですね?」
橋田は座敷に座り教卓を撫でながらそんな感想を口に出した。
「外の世界の学校というものは教壇が無いのか?」
「ありますよ?何言ってんですか?」
「君は鬱陶しいな。一言多いとよく言われないか?」
慧音はそう言いながらも笑う。別段不快感はない様子だ。
「言われますね。さて、じゃあ時間も勿体無いし、始めるとします?」
「そうだな。じゃあ、皆知っているかもしれないが、これは外の世界から幻想郷入りした橋田金次郎氏だ。今日は外の世界について話してくれる。聞きたいことは事前にまとめておいたが、話を聞く中で思いついたら質問してやってくれ」
皆、慧音の話を聞きながらジッと橋田を眺めている。
寺子屋に通う子供達だけではない。橋田が話をすると聞いてやってきた里の人間達などもやってきている。
今回の橋田の仕事は寺子屋の講師だ。以前、慧音と契約した仕事である。
「と言っても話すことなんて思いつきませんが…何話せば良いですかね?」
橋田はヘラヘラと笑いながら聴衆に質問する。
「仕事は何やってたんだね?」
イカツイ顔をした爺さんが橋田に聞いた。
「仕事かぁ。仕事は営業マンをしてましてね。営業マン。分かります?」
爺さんは首を振るう。
「人ん家に高い品物売り歩く商売人みたいなやつですよ。たまにいませんか?やたら高い壺売りつけるやつあんな感じです」
「じゃああんたは詐欺師なんかね?」
爺さんの横にいた恰幅の良い婆さんがそう聞く。
橋田はその言葉に苦笑しつつも答えた。
「おお、痛いところ付いてきた。半分くらい正解ですなぁ」
橋田の答えに室内がざわついた。
「いやいや、私は人様からお金をふんだくる仕事はしませんよ?その商品が欲しいと思わせて買ってもらうのが仕事なんです」
「それじゃまるで洗脳してるみたいじゃないか。そんな能力があるんかい?」
「いやいや、私なんかは売れてない人間だったんで、そこまで上手じゃあなかったですよ。まぁ、でも似たようなもんですかねぇ?」
「何を売ってたんだい?」
「何でも。そこいらのペンやら毛筆やら、車やら家やら」
「よくわからんが、何でも屋ってのはわかった」
イカツイ爺さんはうんうんと頷きながらぼやいた。
「そういうもんです」
橋田は居住まいを正すと、胸ポケットから筆を出した。
「せっかく仕事の話をしたので、私がどうやって仕事をしていたのかをお話ししましょう」
その筆を目があった少年に渡した。
「君ぃ。この筆を私に売ろうとしてくれ。私が欲しいと思ったら、3倍の値段で買ってあげよう」
「えっ」
渡された少年は戸惑いながら橋田と筆を見比べ、ついに言った。
「こ、この筆は弘法大師が使ってたのと同じものだから良いものだよ。欲しくないですか?」
「いらないなぁ…残念賞。はい飴ちゃん」
橋田は少年の答えに残念がると、飴を渡し筆を受け取り、今度は庄屋の若旦那に移した。
「えっ。儂かね?あー、あー…」
若旦那は突然のフリになかなか答えが出せず、あたふたしている。
「これは…!これは!すごい…ぞ!すらすら書けて、毛もハゲにくい!」
「そんなもん、どの筆も一緒ですね…残念賞は飴ちゃんです」
若旦那は貰った飴をコロコロしながら、先ほどの少年の横に座った。
「じゃあそろそろ私がやりましょうか。この中で一番の金持ちは誰ですかね?」
橋田は手を上げてキョロキョロする。
「私じゃないかしら?」
声が上がったのは、紫の髪をした少女からだった。
「お嬢さんですか。じゃあ貴女がこの筆を欲しいと思ったら、3倍の値段で買ってくれますか?」
「良いでしょう。どうぞ?」
少女の答えを聞いた橋田は、筆をまた胸ポケットへしまい、尋ねる。
「ところで、お嬢さん名前は?」
「稗田阿求よ。よろしく」
「ひえだのあきゅう…すんません。私勉強不足でしてね、せっかくお得意さんになるんだし、名前を覚えときたいんだけれども字が分からん。この紙に書いて教えてくれますか?」
橋田からそう言われると阿求は自分の荷物をガサガサ探し始めた。
が、目当てのものが無いのか、ハァと軽くため息をついて橋田のほうを向いて言った。
「良いけれども、書くものが無いわ」
「ここに」
阿求の言葉を待っていたかのように、橋田は筆の持ち手を阿求へ向けた。
「じゃあそれを…」
ちょうだい、とセリフが続くのだろうが、彼女は何かに気がついたように言葉を小さくしていった。
「このくらいの値段でお譲りしますよ?」
阿求の目の前にあった筆は、紙に金額を書いていった。その金額は相場の3倍の値段であったことは言うまでも無い。
しかも、ご丁寧に『稗田阿求 様』と宛名も書かれている。
「…ああ。降参よ。面白いわね」
筆を受け取った阿求は、その金額を支払い、満足そうに橋田へ笑いかけた。
ほぉ。だの、へぇ。だのと感心する大衆だったが一部だけは様子が違っていた。
橋田の売り方は、外の世界より遅れた幻想郷でも珍しくもなんともないやり方であった。
客の状態をさぐり、需要をその場で作り出し、客の意識が商品に向いたところでその品物を勧める。
商売をする上で基本的なテクニックの一つだった。
勿論それがわかっていた商人らは、橋田が阿求の字を聞いたところあたりからニヤニヤしていた。
「ありがとうございます。まぁ、私の仕事はこんな感じですね。別段新しくも珍しくもなんともない売り方です」
こういったのを自然にできるのが一流の商売人であるが、どこかパフォーマンスじみているのが橋田が二流以下であるという証明だった。
他には特に珍しい話が無かったが、橋田の講演会(?)は盛況に終わったのだった。
筆のくだりは、レオナルドデカプリオ主演の映画、『ウルフオブウォール・ストリート』の中の一節。
「デカプリオ 映画 駄作」で調べるとまず一番最初に出るのでオススメ。
時間を潰したい方はどうぞ。
営業時代に、需要と供給、営業トークの勉強の為に観ろと言われて観させられた映画です。
わりとドギツイ下ネタが多いので、お一人で観るのが懸命です。