ラブライブ!WEST!!   作:ガテラー星人

24 / 190
第9話 500kmのロープ
パート1 魚心と水心 ☆


「ひーめーちゃーん、あーそーぼー!!」

 

 三軒隣の家に行って、届かないインターホンの代わりに、精一杯声を張り上げる。

 家の中でばたばたと物音がしたと思うと、同い年の女の子が、一生懸命玄関の扉を開けて顔を出す。

 

「いさなちゃん」

「えへへ、あそぼっ!」

「うんっ!」

 

 こんな毎日がいつ始まったのか、二人とも確かな記憶はない。

 物心ついた時にはもう、勇魚と姫水は一緒にいた。

「ひめちゃん」と呼び始めた経緯もよく覚えていない。

 姫水の姫がおひめさまの姫であると、たぶん誰かに聞いたのだろうけど。

 

 この日も二人で手をつないで、仲良く話しながら遊び場へ向かう。

 住宅地の狭間にある小さな公園で、近所の子供たちが三人ばかり、ブランコを揺らしていた。

 

「みんな、あっそぼー!」

「いさなちゃん!」

 

 大声で呼びかける勇魚に、三人とも目を輝かせて駆け寄ってくる。

 

「ね、ね、ひすいちゃんは?」

「おるでー」

 

 勇魚が笑顔で、背中の人影に促した。

 後ろに隠れていた姫水が、おずおずと顔を出す。

 

「こ、こんにちは……」

「ひすいちゃん! いっしょにブランコやろ!」

「それよりおにごっこしよ!」

 

 大人しくて引っ込み思案にも関わらず、姫水はいつも人気者だった。

 その整った顔立ちによるものか、優しい性格によるものか。

 幼い勇魚には分からなかったが、この子が皆に好かれていることが嬉しかったし、自慢でもあった。

 

「いさなちゃんも、はよー!」

「うん、いまいくー!」

 

 結局間を取ってかくれんぼをすることになり、勇魚が率先して鬼に志願する。

 

「うちがオニでええよっ」

「ほんま? いつもありがとー」

「いさなちゃん……」

 

 いつもお人好しな幼なじみに何か言いたげな姫水だったが、勇魚が目を閉じて数え始めたので、慌てて公園を飛び出し隠れ場所を探す。

 もっとも、この二人の間でなら、どちらが鬼でもさして変わらなかったのだ。

 どこへ隠れようと、お互いすぐに見つけてしまうのだから。

 

「ひめちゃん、みーつけた!」

「……みつかっちゃった」

 

 電柱の陰から、照れくさそうに出てきた姫水と、勇魚は嬉しそうに手をつなぐ。

 そのまま大阪の下町を、二人の小鬼が友達を探しながら駆けていった。

 

 

 *   *   *

 

 

 ターニングポイントになったのは、幼稚園のお遊戯会だった。

 白雪姫の劇をやることになり、主人公役として姫水が選ばれたのだ。

 先生も子供たちも当然のように推してきて、姫水も断れなかった。

 

「は、はい、やります……」

 

 そのくせ家に帰ると、弱気になって勇魚に泣きついてしまう。

 

「わたしにはムリやぁ~」

「イヤならイヤってゆうたらよかったのに……」

「だってぇ……。いさなちゃん、かわってよぉ~!」

「う、うちがしらゆきひめなんて、もっとムリ!」

 

 慌てて断るが、半べそになっている姫水に仕方なく歩み寄る。

 

「どーしてもイヤなら、うちがやりたいってゆうてみるけど」

「ほんまっ!?」

「でもうち、ひめちゃんのしらゆきひめが見たい!」

「そ……そう?」

「ぜーったいにピッタリやもん!」

 

 断言した勇魚はぴょんと立ち上がると、部屋の端にある鏡台へ行って話しかけた。

 

「かがみよかがみよかがみさん、せかいでいちばんきれいなのはだあれ?

 それはぜったいひめちゃんや! きれいでやさしくて、せかいいちのおともだち!」

 

 それは芝居でも何でもなくて単なる勇魚の本音だったが、あまりに元気で堂々としていたので、姫水はつい吹き出してしまう。

 幼なじみの行動に少しの憧れを宿した瞳で、彼女は小さくうなずいた。

 

「うん……いさなちゃんがそう言うんやったら、やってみる」

「やったー!」

「そのかわり、おうじさまはいさなちゃんがやって?」

「そ、それはユキヒロくんがやるゆうてたやん。よろこんでたし、よこどりはあかんよ」

「ならわたしもやらへん!」

「もう~、こまったひめちゃんやな~。こびとさんやるから、それでかんにんして!」

「……まあ、それなら」

 

 翌日に何とか先生に頼み込んで、七人の小人のうち一人をさせてもらえた。

 そして始まる劇の練習。

 姫水の出番になった途端、園内の空気は一変した。

 

「私の名前はしらゆきひめ」

「おきさきさまに嫌われて、森におきざりにされてしまいました」

「お願いします! 小人さんたちの家に、しばらくいさせてもらえませんか?」

 

 子供も先生も勇魚ですら、あんぐりと口を開けている。

 普段おとなしい姫水が、まるで別人と化したように、堂々と役をこなしていたのだから。

 わっと歓声が上がり、白雪姫の周りにたちまち人垣ができる。

 

「ひすいちゃん、すごーい!」

「ほんまもんののしらゆきひめや!」

「そ、そう?」

 

 人が多すぎて勇魚は近づけなかったが、少し離れた場所から満足して眺めていた。

 

(やっぱり、ひめちゃんはすごいんや!)

 

 気の毒なのは王子様役のユキヒロ君で、すっかり姫水の演技に呑まれてしまった。

 おずおずと練習をしていたところで、ませた子の一人が大声で尋ねる。

 

「キスシーンはやらへんのー?」

「ちょっ、ボクはムリやで!」

「なんやねん、ユキヒロくんのいくじなし」

「チューがないしらゆきひめなんてつまらへーん!」

 

 騒ぎ出す園児たちに、先生たちは顔を見合わせ、ひそひそと相談し始めた。

 

「このご時世に男の子と女の子でキスシーンはねえ」

「また姫水ちゃんのママにクレーム入れられそうですし……」

 

 そんな様子を、勇魚はきょろきょろと首を動かし見渡していた。

 姫水は割とどうでもいいと思っているようだが、先生とユキヒロ君が困っている。

 一方で盛り上がりたい子供たちの気持ちも分かる。

 とっさに手を挙げ、大声で叫んでいた。

 

「はいっ! それならうちが、ひめちゃんにチューします!」

「えええ!?」

 

 周囲が驚く中、一番驚いていたのは姫水だった。

 

「い、いさなちゃんが?」

「ひめちゃんはイヤ?」

「う、ううん! いさなちゃんならええよ!」

 

 ぶんぶんと首を振り、嬉しそうに勇魚の手を握る姫水に、周囲もこの二人ならと納得する。

 ユキヒロ君は安堵し、園児たちも満足して、場は丸く収まったのだった。

 

 

 お遊戯会当日。

 幼稚園児とは思えない姫水の演技力に、カメラを構えた親たちが舌を巻く中、劇は終盤に差し掛かる。

 王子様から謎のパワーを受け取った小人の女の子が、白雪姫に顔を近づけた。

 

『ひーめちゃん♪』

『いさなちゃん、よろしくね♪』

 

 お互い笑い出してしまいそうな顔を必死で押さえて、唇と頬が近づいていく。

 チュッ

 柔らかくて暖かい、姫水のほっぺたを唇越しに感じる。ずっとこうしていたかったけど、そういうわけにもいかない。

 密かに動いた姫水の手で毒りんごが放り出され、白雪姫は優雅に目覚める。

 王子様と小人たちが万歳して、劇は拍手の中終わった。

 

「勇魚~、大活躍やないか!」

 

 見に来ていた父の手が、勇魚の頭をわしゃわしゃと撫でる。

 

「そ、そんなんちゃうで。ひめちゃんのおかげやねん」

「そうか? まあお父ちゃんの知ってる白雪姫の話とは、なんかちゃうかったな」

「うちらはこれでええの!」

 

 と、園長先生の方から大きな声がする。

 見ると姫水の母が、何やら園長に詰め寄っていた。

 

「うちの子、才能あるんとちゃいますかね! 園長先生から見てどうですか!」

「そ、そうですね。ここまで見事な白雪姫は、長い園長生活で初めてやねえ」

「やっぱり!」

 

 隣の姫水は困ったような顔だが、勇魚の姿を見て、一緒に帰ろうと駆け寄ろうとする。

 が、その腕が母に掴まれ引き戻された。

 

「ほら姫水、ファミレス行くで。ご褒美に何でも頼んでええからねー」

「う、うん……でも、いさなちゃんと……」

「早よ!」

「は、はい……」

 

 勇魚は何も言えず見送るしかない。

 楽しかったお遊戯会だが、最後に少しもやもやが残ってしまった。

 

「ひめちゃんのママ、うちのことキライなんやろか……」

 

 父と一緒の帰り道で、ついそんなことを言ってしまう。

 

「んー? 別にそんなことはないやろ」

「でもこのまえ、ひめちゃんちであそんでたらイヤなかおされてん」

「まあ旦那さんが浮気して、あの家も色々大変なんやろ。勇魚も広い心で接しないとあかんで」

「ひろいこころ?」

「細かいことは気にせんと、明るく元気にってことや! 大阪はそういうとこやで!」

「う、うんっ! わかった!」

 

 どんな人であれ、大事な幼なじみのお母さんなのだ。

 もし疎まれていたとしても、勇魚だけは笑顔でいないと。

 それが姫水の笑顔にも繋がるはずだから。

 

「ところでお父ちゃん、うわきってなあに?」

「うぐっ。あ、後でお母ちゃんに聞いて」

 

 

 *   *   *

 

 

「ランドセルや!」

「わたしもランドセル!」

 

 いよいよ小学校に上がることになった。

 赤い物体を背負って、お互いに見せ合って笑い合う。

 

「小学校でもいっしょやで!」

「うんっ!」

 

 同じクラスになれることを、二人は少しも疑っていない。

 そして実際に、運命のように同じクラスになった。

 席こそ離れてしまったが、姫水の机に顔を乗せて勇魚はにこやかに言った。

 

「これからもまいにちあそぼうね!」

 

 が、その言葉に、姫水の顔が少し曇る。

 

「おかあさんがね、げきだんでレッスンうけろって……」

「げきだん?」

「げきをするところ」

「おゆうぎかいのときみたいな? すごーい!」

「かようびともくようびはそれいくから、いさなちゃんとあそべへんねん……」

 

 え、と絶句する勇魚に、周囲の子供たちが話しかける。

 

「ひすいちゃんもかー。わたしもおしゅうじはじめんねんー」

「うちはバレエ……」

 

 小学校から習い事を始める子は何人かいるようだ。

 そういうものなのかと、勇魚も納得するしかない。

 年齢が上がるにつれて、徐々に環境も変わっていくのだ。

 

 その分、遊べる日は目いっぱい遊ぶことにした。

 小学生になって行動範囲も広がる。

 北へ1km歩けば、大阪市で三番目に大きい長居公園。

 西へ1km歩けば、日本最古の観音寺院であるあびこ観音。

 特に後者に住む猫は姫水のお気に入りで、観音様が見守る中、よく撫でては満足していた。

 

「おいでおいで、にゃーにゃー」

「ひめちゃん、どうぶつさんだいすきやね!」

「どうぶつえんもまたいきたいなぁ」

「ぞうさんにもキリンさんにもまたあいたいねえ」

 

 天王寺動物園へは地下鉄で一本なのだが、小学一年生にはハードルが高い。

 今のところは親にせがんで連れて行ってもらうしかなかった。

 

「もっと大きなったら、きっとふたりでいけるで!」

「うんっ、たのしみやー」

 

 

 そんな姫水が歓喜に打ち震える出来事があった。

 天高く馬肥ゆる秋、遠足で神戸にある六甲山牧場へ行ったのだ。

 そこには馬もヤギもいたが、圧巻なのは羊だった。

 

「はわわわわわ」

 

 放し飼いになっている羊たちが、そのあたりを歩き回っている。

 この世の楽園のような光景に、姫水は真っ赤になって言葉を失っている。

 

【挿絵表示】

 

「い、いさなちゃんっ、ひ、ひひひ」

「うんうん、ひつじさんやねえ」

「ほ、ほんまにさわってええんやろか!」

「ええって先生ゆうてたやん」

「そ、それじゃ……」

 

 白い羊毛に恐る恐る手を伸ばす。

 もふっとした感触に、姫水の魂はそのまま天国へ行ったようだった。

 

「ひ、ひめちゃん!? しっかりして!」

「しあわせやー……」

「はーい、みんな前に進んでー。奥の方で牧羊犬のショーがあんねんでー」

 

 先生の大声に、小学生たちはぞろぞろと歩きはじめる。

 

「ぼくようけんってなんやろ」

 

 近くの友達が漏らした疑問に、ようやく姫水が現世に戻ってきた。

 

「ひつじさんをおせわする犬さんやで。オオカミさんから守ったりもすんねん」

「へええ、ひすいちゃんものしりやねぇ」

「そ、それほどでも……」

「さすがひめちゃん!」

 

 山にある牧場なのでアップダウンが激しい。

 細い道を上って降りて、ようやく広い場所に出た時だった。

 

「ひすいちゃん、あぶない!」

 

 いきなり前方から声がする。

 一頭の羊が、猛然と姫水に突っ込んできたのだ。

 

「ええええ!?」

 

 猛然と、とは子供視点の話であって、大人が見れば少し早足程度の速度ではあったが……

 とにかく恐怖と愛らしさの板挟みで、避ければいいのか抱き止めればいいのか、姫水はパニックになって固まった。

 

「はわわわわわ」

「ひ、ひつじさん、ひめちゃんをいじめちゃダメ!」

 

 勇魚が慌てて、親友をかばうように立ち塞がる。

 自分がどうなろうと、姫水だけは守らないと!

 

「いさなちゃん!」

 

 背後に姫水の悲鳴が響く。

 激突の瞬間、勇魚の目がぎゅっと閉じられる中――

 羊は何食わぬ顔で、二人の横を通り抜けていった。

 

「び、びっくりしたぁ~」

 

 人騒がせな羊を見送りながら、周りの友達は勇魚の勇気に称賛を送る。

 

「いさなちゃんは、ナイトさまみたいやな!」

 

 童話に詳しい子が、感激した目でそんなことを言った。

 

「ナイトさま?」

「おひめさまをまもる人!」

「そうなんや! おひめさまのともだちなの?」

「え? えーと、ちゃうんやないかな。けらいやろ」

 

 後ろにいる姫水が、きゅっと勇魚の袖を握った。

 その意味を理解したわけではないが、勇魚は級友相手に断言する。

 

「それやったらうちは、ナイトさまにはなれへんわ」

「え、ほなら何なの?」

「おひめさまのおともだち!」

 

 周りの子供たちがほうと息を吐く一方、童話好きの子は渋い顔をしている。

『お姫様の友達』なんてキャラクター、どんな絵本にも出てこない。

 

「そんなん本でみたことないで~」

「ええの! うちはそうなの!」

「本にかいてへんだけで、ほんまはいたんとちゃうかな」

 

 幼なじみの袖を握ったまま、姫水は優しい声で言った。

 そうあってほしいと願うように。

 

「おひめさまも、一人もおともだちがいないなんて、きっとさびしいもの」

「なるほど! ひすいちゃんかしこい!」

 

 渋い顔の子も笑顔になり、皆が姫水の暖かな空想に納得する。

 そして勇魚は、子供心に自分の立場を自覚した。

 

 それは騎士様でも王子様でもなく、いつまでも王女の友達なのだ。

 たとえ絵本に何の出番もなかったとしても。

 

『間もなくシープドッグショーが始まります』

「あ、はよ行かな!」

 

 二人で手を繋ぎ、そこここにいる羊に目が泳ぎつつも、柵の方へと走っていく。

 気分としては牧場を駆ける牧羊犬であったけど……

 この時既に、大人の都合に追われる子羊になりつつあることを、幼い二人は知らなかった。

 

 

 *   *   *

 

 

 初詣はあびこ観音へ。

 その翌年も同じく。

 小学二年生が残り少なくなった一月、学校帰りに勇魚は親友を誘った。

 

「ひめちゃん、すみよっさん行ってみいひん?」

「え、今から?」

「そろそろすいてると思うねん。おそなったけど初もうで!」

 

 小学二年生になって、二人は自転車を手に入れた。

 行動できる範囲はどんどん広がっていく。

 家にランドセルを置いて、五円玉をポケットに入れて、自転車にまたがり出発する。

 

「うう、さむいねぇ……」

「ファイトや、ひめちゃん!」

 

 大阪市最大の神社、住吉大社。

 三が日は死ぬほど混んでいるこの場所も、一月も中旬の平日となれば、参拝客はそこそこいる程度だった。

 参道脇の広場に自転車を止め、半円状の反橋を恐る恐る渡り、第四から第二本宮を通り過ぎる。小学生の身ではとにかく広い。

 ようやく着いた第一本宮、その賽銭箱に五円玉を投げ入れ、姫水が教えてくれた通りに二礼二拍手した。

 

『ひめちゃんと、ずっといっしょにいられますように!』

 

 勇魚が神様に願うことは、いつだって同じだ。

 最後に一礼して隣を見ると、姫水がまだ手を合わせてお祈りしている。

 何か、必死なように見えた。

 

 

「いさなちゃん、今日はどないしたん?」

 

 五所御前の玉垣で小石探しをしながら、姫水は怪訝な顔で尋ねた。

 参拝するのは構わないのだけれど、いかにも急だった。

 

「ひめちゃんこそ、そろそろ言うてくれへん?」

 

 真っ直ぐに相手を見て、明るい顔で返す勇魚に、姫水の体が強張る。

 その指先には、『力』と書かれた小石がひとつ。

 

「夏休みのころから、ときどき元気のうなってんねんな」

 

 一緒にプールへ行った時も。

 社会科見学でラーメン記念館に行った時も。

 戸惑う姫水母もろとも引っ張ってきて、佐々木家でクリスマスパーティを開いた時も。

 姫水はいつも楽しそうだったけど、その中に時折よぎる影を、誰よりも近い勇魚は見逃さなかった。

 広大な神域を誇る、外界から切り離されたこの場所なら、話してくれると思ったのだ。

 

 返事を待つ間も、指は小石を探し続ける。

『五』『大』『力』それぞれの文字が記された石を集めれば、願ったことが叶うという、そんな言い伝え。

 とはいえ季節は真冬、探す指もかじかんでくる。

 姫水は大丈夫だろうか、と隣に顔を向けた時。

 そこには、泣き出しそうな彼女の姿があった。

 

「ご、ごめんひめちゃん! 言うのイヤやったら――」

「いさなちゃん」

 

 懸命に涙をこらえながら、俯く姫水の口から、か細い声が北風に乗って届く。

 小石は二つしか見つからなかった。

 

「――わたし、東京にひっこすかもしれへん」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。