ラブライブ!WEST!!   作:ガテラー星人

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第13話 六度目のファーストライブ
パート1 他校のライブへ ☆☆


 

「どや! これが完成した衣装やで!」

 

 丘本家の夕食を前に、花歩はアイドル衣装でくるりと回る。

 余りの布で色はバラバラだし、ミシン目が歪んでいる箇所もあるが、初めて作った衣装に変わりはない。

 両親と妹がぱちぱちと拍手している。

 

「いやあ、馬子にも衣装やねえ」

「どういう意味やお母さん! でもまあ、衣装を誉めてくれたと思っておくね」

 

 せっかくだからとそのままの恰好で夕ご飯を食べ始めた娘に、父は少し落ち着かない感じである。

 それを見て笑っていた母は、妹の方へと問いを投げる。

 

「芽生の方は衣装作りはまだなん?」

「ライブの後に練習始めるみたいや。今はそれどころとちゃうからね」

「もう明後日やもんねえ」

「私も見に行くからね!」

 

 姉の言葉に、芽生は意外そうな顔を向ける。

 二日後の土曜日にライブを行うのは、天王寺福音学院だけではないからだ。

 

「え、こっちに来るんや。難大附属やなくて」

「うん。私と勇魚ちゃん、姫水ちゃんは部長と一緒に天王寺」

 

 花歩はご飯を口に運びながら、今日の部活のことを思い出していた。

 

 

 *   *   *

 

 

 大阪市一位。難波大学附属高校、『Number (インフィニット)』。

 大阪市二位。天王寺福音学院、『聖莉守(セリス)』。

 

 Westaにとっては目の上のたんこぶである、この両グループのライブまであと少し。

 どちらへ見学に行くかだが……

 

「ま、二手に分かれて両方行ったらええわ。チラシも倍配れるし」

「え、うちのチラシ配るんですか」

 

 花歩が図案を作り、晴が八割方修正したチラシの束に目をやり、つかさが驚いたように言う。

 

「ライバル校の縄張りでですか? ヤクザやったら抗争もんですよ」

「いやいや、ヤクザとちゃうから……そのへんは持ちつ持たれつやねん」

 

 大阪は人が多すぎて、逆に学生を狙ったチラシ配りはやりづらい。

 大勢いる観光客に渡したところで、ライブに来てくれる可能性は低い。

 スクールアイドル好きが集まる他校のライブは、宣伝のチャンスでもあるのだ。

 

「その前に、一年生にはこの二校について説明しとこか。晴、頼むで」

 

 うなずいた晴は、ノートPCにケーブルを繋いだ。

 既に視聴覚室に戻っている部室で、ライブ動画などを映しながら説明を始める。

 

「まずはNumber ∞。通称ナンイン。

 その最大の特色は、部員五十名を越える大所帯ということや。

 全国優勝は過去二回。これだけならもっと上のグループもあるが……

『全国大会における平均順位』においては、圧倒的な日本一を誇っている」

「はい姫水、その心は?」

「私ですか? そうですね……」

 

 部長に指名された姫水は、すぐさま的確な答えを出した。

 

「部員が代替わりしても、人気が変わらないということですよね」

「その通り」

 

 晴が首肯して、引き続き説明に入る。

 

「どれだけ人気があろうと、三年経てば卒業するのがスクールアイドルや。

 今は関西最強の湖国長浜も、羽鳥が卒業した来年は一気に弱体化するやろな。

 しかしナンインは違う。人数を活かして、徹底的な分業体制を取っている」

 

 晴がスクリーンに映し出したのは、先方のホームページにある組織図だった。

 作詞班、作曲班、衣装班、ライブ運営班……。

 それぞれ各学年が数人ずつ所属し、その中では常に技能の継承が行われている、と説明文にある。

 

「ステージメンバーも二軍までいて、誰かが欠けてもすぐ代わりが入る。

 みんなで力を合わせている、と言えば聞こえはいいがな」

「でも私は、あのグループは好きになれません」

 

 苦々しい顔で言い放ったのは夕理だった。

 

「あそこのスクールアイドルは、単なる組織の歯車や。

 大した意志もなく、上からの命令に従ってるだけの人形の集団!

 曲だってひたすら流行りのもの、受けがいいものを作ってるだけや。作家性も何もない!」

「けどまあ、それで五十人以上集まってるのも事実やからな……」

 

 あわや部員ゼロの危機を経験した立火としては、現実を直視せざるを得ない。

 たとえ歯車だろうと、入部しさえすればほぼ確実に全国まで行けるのだ。

 あまり責任を負いたくない子には、むしろ快適なのかもしれない。

 

「次は聖莉守やけど」

「はいっ、私の妹が入部してます!」

「なら花歩に説明してもらおか」

「ええっ!? 藪蛇やった……」

 

 晴から投げられた花歩は、仕方なくみんなの前に出る。

 

「進学校の天王寺福音なので、メンバーもみんな文武両道です。

 ミッション系の学校で、曲も聖歌風なのが多いですね。

 心が洗われるような天使の歌声と評判です」

「ほんまに聞き入るものねえ。コールやクラップがなくても、いいライブはできるんや」

 

 夕理の新曲を念頭に、小都子が桜夜の頬を言葉で突っつく。

 

「ね、桜夜先輩もそう思いませんか?」

「えー? 私あそこの曲聞くと眠くなるんやけど」

 

 認めたくない桜夜は、腕組みをして首をひねる。

 桜夜が入学してからのラブライブは四回。聖莉守はいつもWestaより上の順位にいた。

 

「ナンインは嫌いやけど人気あるのは分かるで。

 聖莉守はなんでうちより人気あるのかマジで分からへん。宗教の力で洗脳してるんとちゃうの?」

「おい、多方面から怒られそうな発言はやめろ!」

 

 渋い顔の立火に、晴も横から耳打ちする。

 

「桜夜先輩を外に出したら、どこかで炎上しないか心配ですね」

「せやな、一人で留守番しててもらうか?」

「わああごめん! もう言いません!」

「説明続けますねー」

 

 映像が切り替わり、幼稚園への出張ライブや、チャリティコンサートの様子が映し出された。

 ボランティア部に近い活動に、勇魚が目を輝かせている。

 

「スクールアイドルの理念も大事にしています。

 誰でも輝けるという考えのもと、どんな下手糞でも見捨てないそうです。素敵!

 夕理ちゃん、こっちに入った方が良かったんとちゃう?」

「確かに、その点は評価できるところや」

 

 うんうんとうなずく夕理は、しかし態度を一変させて机を叩いた。

 

「でも私は、あのグループは好きになれへん!」

 

 言い切る夕理に、またかよ、という顔の花歩である。

 

「問題なのは、勝ち負けはどうでもいいって広言してることや。

 ならラブライブに出てくるなと言いたい!

 本人たちは『大勢の人に聞いてもらえる機会やから』って言い訳してるけど、真剣に競い合ってるグループに失礼やろ!?」

「夕理ちゃんてホンマ文句ばっかやな……」

「し、しゃあないやろ! この世に完璧なグループなんてない、どこでも何か欠点はあるんや」

「けど夕ちゃん、少しは誉めることもせなあかんで! ちょっと花ちゃんを誉めてみて!」

「え……」

 

 いきなり関係ないところで勇魚から無茶振りされた。

 夕理はしばし悩んでから、わくわく顔の花歩に仕方なく誉め言葉を投げる。

 

「とりあえず無害そう……」

「それ全然誉めてへんやろ!!?」

「はーい、説明ご苦労さん」

 

 立火が手を叩き、話を本題に切り替えた。

 誰がどちらに行くか、という話だ。

 

「どっちでも好きな方選んでええよ。花歩は天王寺?」

「それはもう、妹がいるので! 言うても今回は雑用らしいですけど」

 

 聖莉守のルールで、一年生がライブに出られるのは二学期から。とはいえ裏方同士応援しに行きたい。

 続いて芽生と面識のある、姫水と勇魚も手を挙げる。

 

「私も、芽生さんのグループを見てみたいです」

「うちもうちも!」

「長居組はみんな天王寺か。ほな私が引率でそっち行くわ」

 

 スムーズに決めた立火は、桜夜へと話を振る。

 

「てことで副部長は難波やな」

「言われなくてもそっちやで。聖莉守みたいな真面目なとこ、よう行かれへんわ」

「そんなに真面目なんです?」

「去年はMCで世界平和がどうたらとか言うとったで」

「うわ、あたしそういうの無理っす。難波の方に行きます」

 

 つかさに続いて、夕理、小都子、晴もそれぞれ選択する。

 

「では私も難波で……べ、別につかさが行くからとちゃいます! 聖莉守のライブは去年見たので!」

「うーん、桜夜先輩と夕理ちゃんが心配なので、難波で」

「研究するなら二位より一位でしょう。難波で」

 

 かくして四人と五人に分かれ、それぞれ偵察へ行くことになった。

 

 

 *   *   *

 

 

 いよいよ土曜日。

 午前の練習を終えて学校を出た一同は、難波駅で二手に分かれた。

 天王寺駅に降りた立火たちは、駅でランチを済ませてから、北にある目的地へ歩き出す。

 ライブは二時から。三十分前に着いて、チラシを配ればいいだろう。

 

(あっちは、動物園……)

 

 道すがら、姫水の目が西側へ向く。

 思い出深い場所だが、だからこそ、ミュシャの時と同じ理由でまだ行けていない。

 昔大好きだったものが、今は何も感じないというのは恐怖でしかない。

 

「姫水は四天王寺は行った?」

 

 反対の東側を指さした立火が、姫水に尋ねた。

 聖徳太子が建立した、日本最古の仏教寺院。ここからは建物の陰で見えないが、もう少し進めば五重塔が目に入るはずだ。

 

「そういえば、まだですね」

「姫ちゃん姫ちゃん、今度一緒に行こ!」

「あそこの五重塔は上まで登れるんやで。コンクリ造りやけど」

「部長って高いところ好きですよね」

「はっはっは、アホやからね」

 

 花歩がどう返せばいいのか困っている間に、目的地の校舎が見えてきた。

 道端に案内の生徒が立っている。

 

「ごきげんよう。ライブに来られた方ですか?」

「その前にチラシ配らせてもらえる?」

「それでしたらすぐそこの南門か、あちらから行ける東門へどうぞ」

「おおきに!」

 

 お礼を言って少し歩き、南門に到着する。

 その場に幼なじみコンビを残して、立火と花歩は東門の方へ向かった。

 

「って、部長自らチラシ配りですか!? そういうのは一年生に任せてもらえれば……」

「いやいや、部長自らやってこそやで。偉そうにふんぞり返ってる部長になんて、誰もついてきいひんやろ」

「そ、そういうものですかね」

「最近ゆっくり二人で話せてへんしな。今日は仲良くチラシ配りしよ?」

「は、はいっ!」

 

 明るく笑う立火に、花歩の気持ちも一気に浮き立つ。

 初めて訪れる学校で、部長と二人きり。

 スキップしたくなる足を抑えて、暖かい春の日を並んで歩いていく。

 

「それにしても、ごきげんようとかほんまに言うんですねー。初めて聞きましたよ」

「ははは。花歩の妹は家で言わへんの?」

「あんなこと言われたら引っくり返りますよ!」

 

 到着した東門の前では、既にいくつかのグループが宣伝に勤しんでいた。

 立火の顔見知りもいたようで、気さくに声をかけている。

 

「よっ、国枝。予備予選ぶりやな」

「広町! 今年は負けへんからな!」

「こっちの台詞やで!」

(やっぱりスクールアイドルを長くやると、交遊関係も広まるんやなあ)

 

 憧れの目を向けながら、花歩もさっそくチラシを配り始める。

 

「住之江女子高校、Westaでーす。来週ライブやりまーす」

 

『全国ネットでも放送された女優の星! スーパールーキー藤上姫水デビュー!』

 そんな宣伝文句が書かれた紙を、二人で次々と来訪者へ渡していく。

 開幕十五分前になり、そろそろかと部長が腕時計を見たところで……

 

「あーっ、芽生! 何をこないなとこでサボってるんや!」

「え!?」

 

 天王寺福音の生徒が走ってきたと思うと、いきなり花歩を指さし大声で叫んだ。

 ボサボサ気味のポニーテールに、大きく開いた口からは八重歯が見える。

 一瞬驚いたが、花歩には割とよくある状況である。すぐに自分を指さして、大声を返した。

 

「双子の姉!」

「え!? あ……。そういえば、そんな奴が来るって言うてたかも……」

「芽生のお友達? こっちには来てへんよ」

熱季(あつき)、何をこんなとこでサボってんねん」

 

 言ってるそばから、当の妹が校門から出てきて声をかけた。

 熱季と呼ばれた子は、驚いたように二人の顔を見比べている。

 

「うわ! 芽生が二人いる!」

「せやから双子やねんて」

「あ、花歩。来てたんや」

 

【挿絵表示】

 

 姉妹で軽く手を振り合ってから、芽生はいつもの淡泊な調子で仲間に告げた。

 

「部長はもう連れ戻したから、早く持ち場に戻って」

「ええー!? 結局誰が連れてきたん?」

「副部長」

「はあ、やっぱりねーちゃんか……」

 

 ポニテ少女は何かがっかりしたように、駆け足で校舎へ戻っていった。

 あんなアホっぽい奴でもこの学校に入れるんやな、と立火が変な感心をする。

 

「皆さんも、そろそろ始まりますので講堂へお願いします」

『はーい』

 

 芽生に促され、他校の宣伝部隊もそれぞれ撤収を始めた。

 その芽生は小走りで立火の前へ行き、ぺこりとお辞儀をする。

 

「初めまして、Westaの部長さんですね。姉からお噂はかねがね」

「お初やな! ほんまソックリやね。花歩、私のことなんて言うてんの?」

「あ、あわわわ。別にそんな大したことは」

「だいたい七割が『かっこいい』、三割が『素敵』ですかね」

「ぎゃー! あっさりバラさなくても!」

「こうして直にお会いすると、私も同意見になりそうですけど」

 

 照れてる立火と慌てふためいている姉にくすくすと笑う芽生だが、不意に眼鏡の奥で眼光がきらめいた。

 

「でも、うちの部長と副部長も同じくらい素敵ですよ。

 そちらの漫才コンビに匹敵する、我が部の聖女と騎士コンビ。

 花歩は初めてやろうから、じっくり見ていってね」

 

 ではごゆっくり、と言い残し、芽生も仕事へ戻っていった。

 堂々とした態度に、少し気圧された二人は顔を見合わせる。

 

「いやあ、なかなか迫力のある妹さんやな」

「い、家ではもっと大人しいんですけどね。学校だとあんな感じなんや……」

「ふーむ。天王寺福音の伝統を、もう背負ってるいうことやろな」

 

 見上げた校舎は、年季の入ったたたずまいだ。

 聖莉守の発足はWestaより一年早い。神の御許で、脈々と受け継がれてきた神聖なるスクールアイドル。

 その一員としての自覚を、芽生は既に持っているのかもしれない。

 

「おーい! せんぱーい! 花ちゃーん!」

 

 校内を横切ってきたのか、チラシを配り終えた勇魚と姫水が、校門の向こうで手を振っている。

 立火と花歩はうなずき合うと、いよいよライバル校の敷地へ足を踏み入れた。

 

 

 *   *   *

 

 

 時を遡ること二十分ほど前。

 ライブを控えた聖莉守では、部長が行方不明になっていた。

 

「何をしとるんや、あいつは!」

 

 副部長の剣持凉世(けんもち すずよ)は、焦り顔で部室を歩き回る。

 長身がイライラしている姿に、部員たちは声を潜めるしかできない。

 

「あのう、探しに行った熱季ちゃんも戻ってきません……」

「全くあの愚妹は!」

 

 と、頭を抱えているところに、一人の部員が勢いよく飛び込んできた。

 

「凉世さま! 部長の目撃情報がありました!」

「分かった! すぐに行く!」

 

 飛び出そうとする凉世だが、不安そうな部員たちが視界に入る。

 ライブ直前にトップ2が不在というのは良くないとは思う。

 しかし、和音のことを他の誰かに任せる気にはならなかった。

 

「私がすぐに連れて戻る。皆は信じて待っていてくれ」

「は……はいっ!」

「お気をつけて凉世さま!」

 

 大股で部室を出ていく副部長を、報告に来た部員だけが追う。

 それ以外の面々は部室に残ったまま、うっとりとその姿を見送った。

 

(はあ……凉世さま、今日もほんまに凛々しくいらっしゃる)

(和音さまが地上に舞い降りた聖女なら――)

(凉世さまはまさに、その聖女を守護する高潔な騎士!)

(この二人がいてはる限り、今年の聖莉守はパーフェクトや!)

 

 

 目撃情報のあった来賓玄関へ行くと、ふたつの人影が何か話している。

 

「ですからお婆さま、講堂はこちらではないんですよ~」

「あ~? なんやて!?」

 

 耳に手を当てている老人に、すっかり困っているのは小白川和音(こしらかわ かずね)

 昨年の地区予選、立火と同じ日に部長を引継ぎ、今日まで活動を率いてきた清楚な少女だ。

 廊下に凉世の声が響く。

 

「和音! やっと見つけた!」

「あ、凉世」

 

 副部長の姿を認めた和音は、ほんわかした笑顔を返してくる。

 

「こちらの方が迷われてもうたみたいで」

「せやからそういうことは下級生に任せて! 部長はもっとドンと構えてくれといつも言うてるやろ!」

「窓から見えてしまったものやから、つい」

 

 えへ、と微笑む和音に、凉世は頭痛がするように額を押さえる。

 追いかけてきた部員が、すぐに老婆へ寄り添った。

 

「このご婦人は私が案内しますので、お二人は早く着替えを!」

「すまない蛍、頼む」

「よろしくね~。お婆さま、聖莉守のライブ楽しんでくださいね~」

「あ~? なんやって!?」

 

 返事を待たず、凉世は和音の手を引いて部室へ戻る。

 この天然お嬢様は、一年生の時からいつも凉世を振り回してばかりだ。

 一応は自覚しているのか、和音も困り笑いを浮かべて彼女に謝る。

 

「凉世、いつも面倒をかけてごめんなさいね」

「そう思うなら少しは改めてくれ! いつか私の胃に穴が開くで!」

「まあ。もしそうなったら、私が責任をもって穴を押さえへんと……」

「人の胃に手を突っ込む気か!?」

 

 そろそろストレスで倒れそうな副部長に、和音は少し歩を早めると、その隣へ寄り添った。

 

「せやけど、凉世がいつも守ってくれるから。私はきっと、最後まで部長を全うできると思う」

「………」

「今日もよろしくね、私の騎士様」

 

 にこやかに微笑む部長に、凉世は降参するように肩をすくめた。

 自分の方こそ副部長を全うせんがため、相手の目を見てしっかりと誓う。

 

「全身全霊でお護りしますとも、我が聖女様」

 

【挿絵表示】

 

 最後の一年の、これが始まりのライブ。

 聖莉守が全国に行けたのは、結成した初年度のみだ。

 その後は目新しさがなくなったのか、いつも地区予選上位ではあるものの、四位の壁は破れなかった。

 

 勝敗に意味を見出さない和音は、そのことを気にしてもいない。

 それは聖莉守のポリシー通りでもあるが、しかし凉世は――

 

(最後に何としても、和音を全国に連れて行ってやりたい)

 

 ポリシーに反することを承知で、そんなことを考えていた。

 

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