空の碧は全てを呑みこみ、それでも運命の歯車は止まらない 作:白山羊クーエン
途中で地上に出る梯子を見つけた以外は目立った変化はなく、時々現れるネズミや羽虫型の魔獣を難なく撃破していた特務支援課。
ついさっきも初見の魔獣を討ったところで各自魔獣手帳に書き込んでいる。内容については個人の性格が表れていた。
「――今何か聞こえなかった?」
進行方向から音が聞こえた気がしてエリィが前を見る。記入を中断して全員が視線の先を眺めた。
「いや、俺は聞こえなかったけど」
「音、つーかおそらく声だな」
聞き漏らしていたロイドだがランディは更に特定して返す。
ティオが待機状態の魔導杖を起動させた。
「探査しましょうか?」
「できるの、ティオちゃん?」
「お待ち下さい――アクセス」
魔導杖を一度振り下ろすとティオの足元に水色の魔法陣が現れる。
その陣からは同色の光が立ち込めティオの周りを覆い、表情を照らした。
数秒の間目を閉じていたティオが再び目を開けたのを契機として魔法陣は消え去り、その時には成果が得られていた。
「この先20アージュの地点に誰かがいるようです」
「ほぉー、すげぇなおい」
「ちょうどこの扉を抜けた辺りか。でも一体誰が……」
ロイドは眼前の閉じられた扉を見る。今まで何度か通過したもので、普段開閉されていない証拠か錆び付いていてなかなか固い。
「さっきあった梯子から来たのかしら」
おとがいに手を当ててエリィが悩む。とにかく、と会話を切ってロイドは言う。
「もしもの時に備えながら先に進もう」
それぞれ得物を取り出し一層の注意をしながら扉を潜る。
しかしその先は今までと変わらない一室だった。人の気配はない。
「……おかしいな」
「誰もいない、わね」
「もう一度走査します」
先ほどと同じように走査を行うと、ティオは不思議そうな顔をしながら上を見上げた。
「この上にいるみたいですけど……」
「上?」
この場所の上となると地上になってしまう。それでは声は聞こえないし、人がいるのも当たり前だ。
全員がきょとんとする中、ランディが呟く。
「通気用のダクトが伸びているな、あそこじゃねぇか?」
全員が見たそこには確かに先に進む以外の入り口がある。目的を考えればそれは広いと言えたが、流石に人が進むには狭そうだ。
ランディはそのまま待機し、三人で入ることを決めた。
そして――
「――で、いたのがこいつってわけか」
ランディが見るのはエリィと手を繋いでいる涙目の少年。
アンリと名乗る少年は友人とこのジオフロントに潜り込んだらしい。侵入経路は睨んだとおり梯子からだった。
「ああ、そしてもう一人が行方不明だ」
ロイドの言葉にアンリは嗚咽を漏らしながら言う。
「ご、ごめんなさい……気がついたら、もういなくて……」
「大丈夫よ、私たちが絶対見つけるから」
宥めるエリィの横でティオが再び魔導杖を起動した。
「……ここから四フロア先の地点に人らしき熱源を感知しました」
「わかった、ありがとうティオ」
「さてどうする、二手に分かれるか?」
「アンリ君を送る班ともう一人を探す班ね」
ランディの問いにロイドは思考する。
二手に分かれた場合とこのまま固まって行動する場合のメリット・デメリットを洗い出し、最適解を導き出す。
「いや、今二手に分かれるのはまずい」
「どうしてですか?」
「守る対象が二つに、守る人員が二人になる。ここは四人とも未知の場所だし、守る対象は固まってくれていたほうが対処しやすい」
どうだろう、という風に三人を見やるロイド。
三人はそれぞれ考えを巡らせていたがどうやら意見はないようだ。
「アンリ、もう少し頑張れるか?」
「だ、大丈夫です。リュウを残して一人帰れませんから」
アンリは涙を拭いて精一杯の言葉で応じ、特務支援課は護衛対象を連れたまま先を急いだ。
空の碧は全てを呑みこみ、それでも運命の歯車は止まらない
エリィ・マクダエルは自身の射撃精度に自信を持っている。
それは警察学校に入らずに警察官になれた理由の一つであるし、競技大会でもかなりの成績を残しているからだ。
しかしそれを現配属先の三人は知らない。
数度の戦闘で移動標的を正確に射抜きはしたものの、特別素早い魔獣はいなかったし、当たり難そうな魔獣には外してしまったりもしている。
勿論その魔獣が当て難いことは他の三人も理解しているが、自己紹介で言ってしまった台詞を思い返して恥ずかしくなるのは自分だけである。
挽回の機会を、と言うほど気にはしていないが、これから先を考えれば早めに結果を出したいところだった。そう思いながらも最善はこのまま銃を抜くことなく、という考えは彼女の人柄の表れだった。
だからこそ、フロアに入ってから聞いた最初の言葉に驚きながらも、彼女は複数の標的を射ち漏らさなかった。
扉を開けて最初に見たのはゼリー状の魔獣に囲まれている少年の姿だった。
瞬間的に間合いを計る。
遠い。
次に考えを巡らせることなく口から言葉が零れ出た。
「エリィ!」
アンリの為に後方に下がっていたエリィは反応するや否や散開する六匹の背後に波紋を広げる。
「リュウ!」
「あ、アンリ!」
アンリの声に驚く少年リュウを視界から外さないように努め、次の指示が身体の動き出しと共に出る。
「ティオ、護衛頼むっ」
「了解です!」
後ろからの衝撃で攻撃対象を変えた魔獣がエリィに殺到する。しかしエリィに到達するのは魔獣ではなくロイドのほうが先である。
エニグマに紫電が走りエネルギーが消費される。
同時にロイドを淡い光が包み瞬間加速。左足を一歩前に出し腰を捻り、本来の腰ほどまで身体を屈めた。多角的に迫る魔獣が射程内に入るのを頭で理解することなく腰の捻りを解放する。
横薙ぎに三度、両の得物で計六度の打撃が遠心力とともに打ち出され、飛び掛っていた魔獣を叩き落す。
「ランディ!」
「おっしゃあ任せろ!」
背後からロイドを飛び越したランディはハルバードの導力を発動する。唸りを上げて大気を震わせる斧槍を両手で抑え、落下のエネルギーを伴って魔獣たちの中心地を抉る。
地に到達すると同時に衝撃波を撒き散らしたスタンハルバードは次いで持ち主の意志に基づき空間を横薙ぎにする。
衝撃波で宙に浮いていた魔獣は二撃を避けきれず、その身体を両断された。
「…………」
光る蒸気を上げて小さくなる魔獣をリュウは呆然と眺めていた。
彼にとっては一連の動作が速すぎて見えず、ついさっきまで自分を怖がらせていた存在がいなくなったことにも実感がわかなかった。
「リュウ!」
しかし走ってきたアンリにようやくその事実を気づかされ、少年は感心した様子で言う。
「へぇ、なかなかやるじゃん」
「何言ってるのさリュウっ、お兄さん達が来なかったらどんな目に遭ってたか……」
「……まぁ、確かにやばかったけどさ。それより、なぁ! あんたら新しい遊撃士だろ?」
喜色満面の笑みで話しかけてくるリュウに対し、四人はため息を吐いた。
「おい坊主、それより先に言うことがあるだろがよ」
「ん? ああ、さんきゅー」
更にため息を一つ。ティオは目を細めて睨んだ。
「反省してませんね」
「全く……それと俺たちは遊撃士じゃなくて警察官だよ」
「警察? ってクロスベルの? ほんとかよ!?」
警察という単語に顕著に反応したリュウは不思議がる支援課をよそに堰を切ったようにしゃべりだした。
「警察って何にもしてくれないことで有名だろ!? 困ってる時に助けてくれるのは遊撃士だけだって父ちゃんも言ってたし……なんだよぉ、せっかく新しい遊撃士に助けてもらったのかと思ったのに……」
「ちょっとリュウ、皆さんに失礼でしょ!?」
アンリは助けてもらった恩人を馬鹿にしているリュウを諭そうとしているがリュウは聞く耳を持たない。
基本的に受身がちなアンリをリュウが引っ張るというのがこの二人の関係性なのだからそれもやむを得ないのかもしれない。
四人はリュウの言葉を黙って聞いていたが、たまらないといったようにランディが口火を切る。
「は、容赦のねぇことで」
「……でも事実だわ。クロスベルの警察に対する不信感はとっくに頂点に達している。なまじ遊撃士が優秀なばかりに、比較対象である警察を良く思っている人は少ないでしょうね」
「……やっぱり、そうなのか……」
クロスベルは帝国と共和国、両国の意志が如実に繁栄されている都市だ。そしてその二国間の関係上、クロスベルを単独支配せんと裏でいくつもの工作がなされている。それを取り締まるのは当然の如く警察なのである。
しかし警察上層部が両国から袖の下をもらっているという事実は多聞に及ぶ。両国の為になるようにクロスベルの平和を守る、ということの矛盾を理解できないほど市民は馬鹿ではないのだ。
そしてその点に関して、国政に関わらないという規則を持ち、民間人の安全を最優先に行動するという遊撃士協会はうってつけの存在である。
故に市民の要望は警察にではなく遊撃士に廻されることが多い。
結果、クロスベルにおける遊撃士協会は地位を確立し、その代償の激務に励んでいるのである。
ロイドは予想していた事実を目の当たりにしたにも関わらず衝撃を受けていた。
クロスベルの歪みについては離れていた間に知っていた。ロイドにとって警察とは誇り高く正義を追い求めるものであったから、しかしそれでもという思いが今もある。
だから、苦しくともそれを受け入れなければならない。
「二人とも、とにかく今はここを出よう。遊撃士じゃないけど、一警察官として二人のことは守るからさ」
そしてそんな現状など今のロイドには無意味だ。今大切なのはこの二人の少年を無事に地上に帰すことなのだから。
わざわざ膝を着き視線を合わせたロイドにリュウは目を瞬かせていたが、すぐに笑顔になった。
「じゃあ折角だから兄ちゃんたちの世話になるよ!」
「リュウっ、それじゃなんか偉そうだよぉ」
あーだこうだと会話を続ける二人を微笑ましく思いながらロイドは立ち上がった。
「よし、それじゃ――」
「いや退がれっ!!」
突然の叫びに咄嗟にリュウを抱えられたのは我ながら見事だった。
しかしそう思う暇もなく、飛び退く前にいた場所を見る。
「ォォォォォォォォ……!」
小さな唸り声はどこから出しているのか、その巨体からは想像がつかない。
卵に似た巨大なスライムはその身体を半透明にして内臓をチラつかせ、その下部をなめくじのような鎧で覆っている。上部から伸びる二本の触手がうねうねと怖気を呼んだ。
「この魔獣は……!」
「危険度大っ、まずいです……!」
アンリはランディが抱えていた。それにホッとするとともに二人を後方に退がらせる。状況はよくなかった。
「ち、こいつは骨が折れるぞ……」
ハルバードを構えたランディがぼやく。エリィもティオもそれぞれ構えていたが、その頬には汗が流れていた。
選択肢は一つしかない、ロイドは先頭に立ってトンファーを構えた。
「ロイドっ!?」
「皆、ここは俺に任せて――」
――大丈夫です、私に任せてください。
――これは僕にしかできないことなんだ、任せてほしい。
ひどく、耳鳴りがする。
それ以外は何も聞こえない。
ただ、懐かしい声を聞いた気がして――
「エリィ、ティオ! 退がって援護を! ランディは溜めてくれ! 俺が隙を作るっ!」
自分がしようとした行為がとても恐ろしいような気がして、それ以上に尊い気持ちになって、気がつけばロイドは指示を出していた。
自身が突っ込むという危険を冒すのは変わらなかった。が、仲間を逃がそうとは微塵も思えなかった。
「っ! がってんだ、リーダー!」
「ええ、任せて!」
「了解、援護に徹します!」
エリィもティオもランディも、どうしてか前より焦燥を感じない。頬を流れていた汗は地に落ちてそれっきり。
不思議となんとかなるような気さえした。
「行くぞっ!」
ロイドの鼓舞が突き刺さる。
全身に活力が沸いてきた四人は各々の最善を行おうとして――
「え…………」
刹那、ぞわりとした気配に全員が魔獣から目を逸らし、頭上を見た。
「………………」
長い黒髪に赤と茶のコート。頬の傷跡と腰に挿した剣。
強烈な力を感じさせる存在がそこにいた。
視線は半強制的に魔獣から逸らされた。そして魔獣ビッグドローメは咆哮とともに光に包まれる。
「導力魔法っ!?」
エリィが気づくもその詠唱時間は短く、ビッグドローメから光が消えた瞬間、足元から暴風が吹き荒れた。
「ぐぅぅぅっ!」
「きゃああっ!?」
風属性のアーツ『エアリアル』。中範囲を風が呑みこみ切り刻む中位導力魔法である。
ランディ・ロイド・エリィの三人は吹き付ける風の刃に動きを封じられ、無数の切り傷を作っていく。
「皆さんっ!?」
唯一離れていて難を逃れたティオがアーツの詠唱を開始しようエニグマを持ち、中央のスロットからラインをなぞり属性値を満たそうとする。
しかし、
足りない……!
ティオのエニグマにセットされているクオーツはHP1のみ。水属性で、回復魔法である『ティア』は使えるがその効果は一人にしか与えられない。複数対象の『ブレス』は風属性、しかも属性値は高くすぐには使用できない。
「エニグマ駆動っ!」
それでもティオには選択肢はない。『ティア』を詠唱し、発動。
幸い威力が少ない魔法故に駆動時間は少なく、慈愛の青い光がロイドに降り注がれた。
「ぐぅっ、ティオ!」
「ロイドさん、指示を!」
暴風が止み傷ついた三人はそれぞれ膝を着いていた。
回避1を付けていたエリィは二人より僅かに傷が少ないが元々の体力が二人に及ばず、結果として三人は同程度の損傷具合だった。それでもティオがロイドを選んだのは、彼のリーダーとしての質に賭けたのである。
「回復アーツをエリィに! ランディ、立てるか!?」
「なんとかな……だが正直厳しいぜ……」
「エリィを後ろに運んでくれ! 俺は――」
ランディがエリィを支えて退がり、ティオは再び詠唱を開始した。しかし同時にビッグドローメも詠唱を開始する。ロイドは舌打ちし、なんとか危機を抜け出す方法を考えた。
しかしそれは相手にアーツを撃たせないことが要である。既に詠唱に入ったビッグドローメはそれゆえ動くことはない。しかし普通の攻撃では詠唱も解除できない。
そして、今のロイドには詠唱を解除する術はなかった。つまりは、詠唱を終える前にこの魔獣を倒すしかないのである。
焦燥が津波のように押し寄せてくる。それに抗う術がロイドにはない。
「――ここまでだな」
ふと、目の前に男が立っていた。それは魔獣の頭上にいた紅き剣士。
そしてその後ろには細切れになった魔獣。
「…………あ」
忘我の際。刀を鞘に戻す姿を見て、ああ、それで斬ったのかと得心した。
「す! すっげぇぇぇえええ!!」
呆然とする四人の背後から叫声を上げてリュウは男に駆け寄った。
「アリオスさんちょーかっこいい! いいもん見ちまったぁ!!」
「本当にすごいです!」
アンリも一緒になって群がり興奮している。
アリオスと呼ばれた男は二人を交互に見て、言った。
「二人とも無茶をする。あまり危険なことをするな」
「う……」
「ご、ごめんなさい」
「無事ならいい。さて、戻るぞ」
アリオスはくるりと反転し、戻ろうとする。そのまま扉を出ようとして振り返った。
「どうした、戻らないのか?」
「え? い、いえ戻ります……!」
「………………」
アリオスはエニグマを取り出しアーツの詠唱を始めた。
それはほどなく終わり、支援課の四人を包み込む。清涼な風が彼らを癒していった。
「あ…………」
「傷が……」
「なら後ろの守りを頼むぞ、気を引き締めろ」
そう言い残してアリオスは少年二人を引き連れて出て行った。
四人は姿が見えなくなったのに気づいて慌てて走り出す。走り出せるほどに回復していた。
エリィは呟く。
「そう、あの人がそうなの……」
「ん? お嬢、知ってるのか?」
「ええ、クロスベルで知らない人はいないと思うわ」
エリィの言葉に頷いてロイドは彼の人の背中を見た。
「クロスベルの守護神、最強のA級遊撃士。“風の剣聖”アリオス・マクレイン」
その背中はとても大きく見えた。
懐かしい地上は夕陽に照らされ、地下にいた身に沁みる。
目を細めて見た先ではアリオス・マクレインとリュウ&アンリが写真責めにあっていた。ただしカメラマンはただ一人である。
「いやー流石はアリオスさん! 颯爽と子ども二人の危機を救い出しちゃってもう!」
黄色のスーツに適度に反った灰色の髪が似合う女性はカメラを離さず質問を続ける。
「鐘楼付近で子どもがいなくなったと聞いたからな。最悪を考えて行ったまでだったが……」
「いやいや、ちゃんと根拠があったんでしょう? 流石はクロスベルの守護神ですね!」
「過ぎた評価だな。それに今回は彼らのおかげでもある」
そう言ってアリオスは振り返り特務支援課を見た。すかさず女性が駆け寄りシャッターを乱射する。
「あ、あの……」
「うーん。警察の新部署特務支援課の初任務はクロスベルの英雄に手柄を取られる苦い経験となった、ってところかしらー」
「な……!」
いきなりの発言に驚き何か言おうとするが、それは別の発言に遮られた。
「――いや、彼らはよくやっていた。安易な自己犠牲に頼らず窮地にも決して諦めなかった」
またしても驚く四人は場の発言権をもらえない。顎に指を添えて女性は唸る。
「ふむ、でもアリオスさんにその窮地を救ってもらったんですよね? なら変えなくていっか」
「もう十分だろう。ギルドに戻る」
「あ、後で協会にも伺いますからー」
少年たちを連れて去っていくアリオスの背を眺めていた支援課と女性だが、女性が急ぐ旨の呟きを漏らしたことで硬直が解けた。
「まぁこれの記事はおねーさんの激励だと思ってよ。個人的には期待してるんだからさ」
「はぁ……」
「それじゃあね。もっと精進しなさい。次回のクロスベルタイムズをよろしく」
鼻歌を歌いながら女性は去っていく。地上から出た四人を待っていたのはさながら台風のようだった。
「……戻ろう」
「ええ」
「少々疲れました……」
「つかどこに行きゃいいんだ?」
「まぁ多少のトラブルはあったがこんなもんだろう」
警察本部に場所がない特務支援課は中央広場にある元クロスベル通信社雑居ビルが分室となっていた。
そこには既に四人の荷物が運ばれており、それは居室と同化していることの証拠であった。四人はおっかなびっくりビルに入ったところをセルゲイに捕まり、セルゲイの執務室に集まっているところである。
「キツネのお小言に加えて内部の評価も聞いてきたんだろう? まぁあれが警察本部の反応って訳だ」
一度警察本部に戻っていた四人はそこで副局長に理不尽な怒りをぶちまけられていた。
遊撃士に手柄を取られることに過敏に反応しているところにクロスベルの現況が窺える。
「……特務支援課は、結局何をする課なんですか?」
「簡単に言っちまえば市民の要望に応えて様々な問題を解決することだな」
「それって遊撃士と同じじゃねぇか」
「そうですか……」
ランディはため息とともに感想を言い、エリィは半ば予想していたのか静かに受け止めた。
遊撃士の評価がクロスベルで高いのは、高圧的なくせに仕事をしてくれない警察の代わりに問題を解決してくれるからだ。
そして特務支援課の任務は市民の要望に応えること。正に遊撃士そのものである。
そして警察内では手柄を奪う遊撃士を良く思ってなく、その真似事をする特務支援課は恥に値する部署なのである。
「副局長が辞退しろというのも頷けますね……」
「なんだ、もう決めたのか? 当然だが辞退するのも構わんぞ」
「いえ、警察の内情を理解したということです」
「そうか。まぁ生半可な気持ちでできる部署ではないってこととお先真っ暗な部署だということは理解しておけ。その上で身の振り方を考えるんだな」
一晩時間をやると言い残してセルゲイは部屋を出る。残された四人はそれぞれの思いを巡らせて、その後会話することはなかった。