空の碧は全てを呑みこみ、それでも運命の歯車は止まらない   作:白山羊クーエン

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貿易都市クロスベル

 

 

 

 

 それぞれが思い思いの場所で休暇を過ごし、そして翌日。特務支援課として正式に仕事を行うことになった。

 支援課の四人は一階のテーブルに集合し、セルゲイから仕事内容について聞くことになる。

 相変わらずよれよれのシャツを着ているセルゲイは今までと同じくやる気がなさそうに説明しているが、意外にもそれは要点をまとめた簡潔にしてわかりやすいものだった。

 ロイドから捜査手帳の重要性を語られていたのでその説明は省き、そして視線は前日ティオによって組み上げられた汎用端末に移る。

「この端末に支援要請が来る。内容はまぁ想像通りの市民の要望だったり他の課からの援護要請だったり様々だ。ちなみに前者のほうはほっとくと遊撃士に取られるからな」

「遊撃士の評判を少しでももらうためには早くやらなければならない、というわけですね」

 セルゲイは頷き、端末の前から退いた。

 ロイドは初めての端末操作に不安丸出しで臨み、存外に簡単だったことに安堵した。

 

「支援要請は一つ。これは……」

 依頼者はクロスベル警察受付のレベッカ。内容は『任務に関する諸手続きに関する講習』である。

 煙草を取り出すセルゲイ。

「とりあえずこれからお前らが守る街を自分自身の目で確認してこい。見回ったら警察本部に行け。出てすぐの武器屋とオーバルストアには顔を出せよ。俺は普段ここにいるが昼寝や読書で忙しい。邪魔するなよ」

 一挙に言い放って煙草をふかしながら執務室に消えていく。四人は放任主義の上司が部屋に消えるまで唖然としていた。

 

「と、とにかく今日から特務支援課始動だ。気合を入れていこう」

 ロイドはそう言うが、なんとも微妙な雰囲気が流れていた。だからこそエリィもロイドに乗る。

「とりあえず正面玄関から出て課長が言った二軒を訪ねましょう」

「うっしゃ、行くとするかっ」

「…………」

 なんとも微妙な船出だった。

 

 

 

 

 

 

 空の碧は全てを呑みこみ、それでも運命の歯車は止まらない

 

 

 

 

 

 

 分室ビルを出るとすぐに階段があり、一つ昇りきると少し開けた場所――踊り場に出る。更に階段を上ると中央広場へと出るが、その前に踊り場にある武器屋に入る。

 剣を交差させたマークはわかりやすい。中は薄暗く、金網で遮られた様々な武器が展示されていた。

「いらっしゃい……ん?」

 店主であるジロンドはやってきた客を反射的に歓迎し、その姿を見て憮然とした。

「悪いが商品は許可証がないやつには売れねぇんだ。さっさと帰りな」

「あの、俺たち警察の特務支援課の者なんですが……」

「ん? ああ、お前らがセルゲイの言っていた……いいぜ、それじゃあ遠慮なく見な!」

 どうやらセルゲイが予め言っておいてくれたようでジロンドは快く言ってくれた。曰く警察章が許可証となるらしい。

 四人は物珍しげに商品を眺めた。警備隊が使用しているハルバードや剣、導力銃も種類がある。警察と提携しているのか、特殊警棒もあった。

 つまりはティオを除く三人の武器は揃っているのである。

 

「そういやぁ最近妙なモンを仕入れてな」

「妙なもの、ですか?」

 ロイドの言葉にちょっと待ってろと言い足元をごそごそ探るジロンド。やがて目的のものが見つかったのか、ソレをカウンターの上に載せた。

「白衣の男から仕入れた魔導杖っつうヤツだが、俺は見たことなかったんでな」

 ティオは三人の視線を受けて、なんとも複雑な顔をした。

「……皆さんがおっしゃりたいことはわかりますが、怪しい人じゃないと思います。その白衣の人は多分わたしの上司です」

「上司?」

「……ええ。どうして直接渡さないのかはわかりませんけど」

 ぶつぶつと何かぼやいているティオに苦笑しつつ、とにかくも武器屋に挨拶を行ったことで武具の調達は容易となった。セルゲイから初期の捜査費用を受け取っているがそう急ぐものではないので今回は新武具は見送りとなった。

 

 四人はもう一つの階段を上りきり中央広場へと移る。百貨店、オーバルストア、レストランと店も豊富であり、また東・西通り、行政区、駅前通り、裏通り等の区画への道もあるこの区画は正しく中央なのである。

 四人はまずオーバルストアへと足を運んだ。東通りに通ずる道に面し、すぐ近くでは風船の屋台がある。

 自動ドアを潜り店内に入った四人はクロスベルの近代化を象徴する内装に目を丸くした。ガラスケースに収められた各オーバルパーツに高級品である導力車まで展示してある。

「警察と提携していますので、受付でエニグマのことも取り扱ってくれるそうです」

 ティオの言葉に感心しながらその受付へと進むと、そこには水色の帽子を被った女性技術士がいた。

 

「らっしゃい、ゲンテン工房……じゃなかった、オーバルストア『ゲンテン』へ! ってロイドっ!?」

「へ? ああ、ウェンディ!」

 驚く二人は互いを指差し固まっている。

「なんだなんだ、ロイドの知り合いか?」

「あ、ああ。幼馴染なんだ……ウェンディ、どうしてここに?」

「どうしてって、そりゃ私はここの技術士だもの。っというかロイド帰ってきたなら報告に来なさいよ」

「いや、ここにいるなんて知らなかったし」

 ウェンディははぁ、と深く息を吐く。とにもかくにも今は客と従業員なのだ。

 

「まぁいいや。ここではオーブメントの修理・改造、クオーツの生成なんかを受け持ってるわ。セピスは持ってる?」

 セピスとは七耀石の欠片であり、大抵は魔獣を倒すと手に入る。

 七耀脈の力で変異した魔獣という存在は、結果として七耀脈を好み体内にセピスを溜め込んでいることが多いからだ。そしてそのセピスを凝縮することでクオーツが作られるのである。

「セピスの量が足りてればすぐに作るから欲しい時は言ってね。あとはエニグマのスロットだけど、全部開いてる、わけないか」

 ウェンディの言葉を受けて四人はそれぞれエニグマを確認する。すると言葉通り、いくつかのスロットは封鎖されていた。

 

「本当だ。でもどうして――」

「あなた達はあまり意識せずに戦術オーブメントを使っているかもしれないけど、それってすごく怖いものなのよ。クオーツをセットするだけで身体能力が上がるっていうのは準備運動なしで限界以上の運動をするのと同じ。すると先に身体がまいっちゃうから少しずつ慣らさないといけない。スロットを封鎖しているのは、クオーツの量をむやみに増やして自爆しないため」

 人差し指を立てて話すウェンディに、それを黙って聞いている四人という姿は傍から見ると日曜学校の先生と生徒のようである。

 話す内容がそれとは比較にならないほどに物騒ではあるが。

 

「スロットはそうね、クオーツの恩恵を受けた回数が規定以上なら開けてあげるわ。だから開けてほしい時はセピスを見せること。あなた達にとってはセピスの量=戦闘数だからね」

 ウインクして笑うウェンディに全員は呆け、ランディは一歩前に出た。

「さすが博識だねぇ、今度俺とデートでもどう?」

「仕事中に何言ってるのよ」

 ランディの誘いを笑って誤魔化したウェンディは続けて説明する。

「あと決められた属性のクオーツしか嵌められないスロットがあるけど、これは個人差だから気にしないで。戦術オーブメントは全部オーダーメイドだから個人の資質に大きく左右される。言ってみればどの属性に特化しているかってことね。それはラインについても同じかな」

 

 特務支援課はそれぞれロイドには空属性、ランディには火属性、エリィには風属性、ティオには水属性限定のスロットが一つずつある。

 それは個人の特性、その属性との親和性が高いということなのである。またラインについてはティオが一つであり、すなわちアーツに長けているということである。

 ちなみにランディはラインが三本あり一番アーツによろしくないが、当人はさほど気にしていないようだった。

「こんなところかな。もうアーツは使った?」

 こくりと人形のように頷くティオにウェンディはなら言う必要はないわねと笑った。

「ロイド、今度オスカーと三人で食事でもしましょ」

 一通りの説明を受け特務支援課はオーバルストアを後にする。ウェンディは彼らの姿が消えるまで笑顔で手を振っていた。

「いい人ね」

「ああ」

 ロイドは心なしか誇らしそうだった。

 

 

 

 

 中央広場のその他の店を回りエリィの予想外のお嬢様っぷりとレストランの質の良さを確認して、一行は西通りへと赴いた。

 ベッドタウンとしての性質を持つこの区域はロイドの出身地であり、故に彼の知己がいる。確認を取り挨拶に向かった。

 もう一人の幼馴染であるオスカーはパン屋『モルジュ』の見習いとして働いており、彼には料理手帳なる便利なものをもらった。そしてマンション『ベルハイム』ではロイドが家族同然の付き合いをしていたノイエス家が暮らしており、帰郷の報告をした。

 

 この区域から外に出ると西クロスベル街道に進み、そちらには警察学校やランディの古巣であり帝国との境界を警備するベルガード門がある。今日はそこまで足を伸ばす予定はなかったのでそのまま北に進み、高級住宅街にへと進んだ。

 その道中、エリィの様子が少しおかしかったことには三人は気づかなかった。

 

 住宅街は所謂お金持ちが多く住む場所であるが、教会へと続く道があるので人通りは多い。ロイドも日曜学校のたびに通っていたので居住者こそ知らないものの不慣れな場所ではなかった。

 とは言え住宅街である以上一般家庭しかなく、警察として特別に訪ねる場所はなかった。エリィの足が普段より速かったということもあって足早に過ぎ去った。

 

 クロスベル北西に位置する住宅街から東に向かうと今度は歓楽街である。これは中央広場と裏通りを通して繋がっている位置だ。旅行者などが多く訪ねる区域で、カジノやホテル、有名な劇場が存在している。

 今は研修の位置づけなのでカジノには入らない。ランディは残念そうだった。

 ホテルを回り、そして劇場に足を向けた。劇団『アルカンシェル』はクロスベルの顔ともいうべき有名な劇団である。太陽の姫ことイリア・プラティエを筆頭に、素晴らしい舞台装置とシナリオ、役者の質が交じり合ってこの世のものとは思えないステージを奏でる。

 ランディはそのファンであるし、ロイドやエリィもよく知っている。しかしティオだけは知らず、ランディにからかわれてムッとしていた。

 

「ここがアルカンシェルか……」

 ロビーに進むと受付以外に人はいない。

「今は、休館日なのかしら」

 すると受付にいた年老いた男性がやってきて、現在は入場不可の旨を告げた。

「す、すみません……あれ?」

 ロイドは謝り出て行こうとするが、ちょうど正面二階から二人の人物が出てきたのに気づいた。

 一人は金髪の鮮やかな女性、もう一人は紫髪の少女である。

「あれはイリア・プラティエじゃねえか!」

 ランディが興奮した様子で言い放ち他の三人も視線が釘付けになったが、先の言葉を思い出していそいそと出口に向かった。

「ふう、普通に入れるのかと思ったよ」

 外に出るなりぼやくロイドだが、他の三人はイリアの話で夢中だった。

 

「あ、すみませんっ」

 三人の会話を聞いていると突然扉が開き、先ほどの少女が出てきた。

 危うくぶつかりそうになったロイドは端により、お辞儀をした少女はロイドの横を通り過ぎていく。

「え…………?」

「え?」

 ロイドは少女の横顔を間近で見て思わず声を上げ、それに驚いて少女も声を上げた。二人は向かい合い、沈黙する。

「あの、何か……?」

「あ、い、いえ、何でも……」

「そう、ですか? それでは」

 もう一度ぺこりと頭を下げ、少女は東へと消えていく、ロイドはそれをずっと眺めていた。

「…………」

「ん? なんだロイド、ああいう子がタイプなのか?」

 いきなり聞こえたランディの声に振り向くとランディはニヤニヤ、エリィとティオはジト目で見つめてくる。

 からかっている雰囲気は理解できたが、しかしロイドは顔を少し伏せて言った。

「いや、そんなんじゃないんだ。ないんだけど……」

 デジャビュというやつだろうか、彼女のことを見たことがあるような気がした。それが頭から離れなくて軽く答えることができない。

 ロイドの様子に三人は顔を見合わせ、次の場所に行こうと先を歩き出した。

 

 

 

 

 歓楽街から東に進んだ先にあるのが行政区である。警察本部には既に何度か行っているので今回は市庁舎と図書館に入ってみた。その途中また紫髪の少女とすれ違い、ロイドは目を奪われていた。

 更に東へと進むと港湾区である。ここには中央に広い公園があり、クロスベルタイムズもここに転居している、所謂ビジネス街である。

 その東端はルピナス川に面しており定期的に船が出港しているため、クロスベルのもう一つの名所ミシュラムに行く為の正規ルートとなっている。

 四人は公園に沿って歩き、左手に上り坂が見えるところで立ち止まった。

「この先がIBCよ」

「クロスベル国際銀行か……」

「……でけぇな」

 クロスベル国際銀行は大陸の経済になくてはならない存在である。既に総資産は大陸の頂点に立っているそれはクロスベル一目立つ巨大な高層ビルでその栄華を誇っていた。

「ま、俺たちにはかかわりのないところか……」

「……ランディさん、わたしたちのお給料はIBCの口座振込みですよ?」

「何ぃ!?」

「今日はお休みだから中には入れないけど、これからもお世話になるところよ」

 エリィがクスクス笑い、ランディが呆気にとられてビルを見上げていたところで次の区画へと向かった。

 

 東通りは中央広場と直通であるので目指すのに遠回りは必要ない。東方風の情緒溢れるこの区画は露天商が数多くおり、景気に貢献している。

 しかし何よりこの区域には、クロスベルで最も頼られている遊撃士協会があった。

 ギルドの前で四人は思う。遊撃士の真似事といわれる自分たちを彼らがどう思っているのか。正直不安のほうが多いが、それでも警察として挨拶しないわけにはいかなかった。

 

「いらっしゃい、あら?」

 入るなり目に入ったのはガタイのいい小麦色の肌の男。茶色のドレットヘアにピンクのシャツという不思議ないでたちと言葉遣いが一つの可能性を抱かせる。

「あなたたち…………そう、あなたたちが特務支援課ね」

 何故か女言葉でしゃべる受付の男はしかし制服も着ていない四人の正体をすぐに見抜いた。やはりギルドの受付である。

「どうして……」

「ギルドの情報網を侮っちゃ困るわ。アリオスからも聞いていたしね」

「あのおっさんか」

「ええ。あたしはミシェル、遊撃士協会クロスベル支部の受付よ」

 よろしくね、と語尾にハートマークでもついてそうな挨拶を受け、戸惑いながらも四人は挨拶を返す。

 

 入る前に抱いていた警戒が微塵も感じられない疑問を、ロイドは思い切って聞いてみた。

「しかし意外です。もっと邪険に扱われるかと思ってましたが」

「警察本部のように? 私たちは歓迎してるのよ、これで忙しさが僅かでも和らいでくれればってね」

 しっかりと内部情報を握って、更に言ってくるあたりに思惑を感じないでもないが、とにかくもその言葉に緊張が解けた四人は、しかし――

「――使い物になるのならね」

 現実の厳しさ、自分たちの未熟さを痛感させられる。

「……っ」

「クロスベルの遊撃士はね、全員がエース――つまりはB級以上の実力者なの。そこにあなた達のようなひよっこが加入しても余計な案件が増えるだけ」

 

 遊撃士にはランクが存在する。正遊撃士はG級からA級までの七段階で評価されており、A級に至っては大陸に20人程度しかいない。

 そのA級遊撃士が少なくとも一人、そして他の面々もB級以上となると、もしかしたら本部であるレマン自治州の次点で戦力が充実している支部であるかもしれないのだ。

「あなたたちには早くひよっこを卒業してもらいたいものね」

 故にミシェルの発言は事実であり、四人は受け入れるしかない。きつい物言いでもそれが事実である以上、それを認め精進するしか道はない。歓迎しているという言葉に嘘はないのだから。

「…………精進します」

 一言を搾り出すのにも苦労する。それでもそう返せただけミシェルにとっては上出来だった。

「いじめるのはこれくらいにして、あなた達が一日も早くクロスベルの平和に貢献できるようになることを期待しているわ」

 ミシェルは一転して笑顔でそう言い、四人はその激励を心に焼き付けた。

 

 

 

 

 東通りから行ける場所は三つ。一つは中央広場、一つは東クロスベル街道。そしてもう一つが市の開発計画に置いてきぼりにされた区画、旧市街である。

「俺も来たことはなかったんだよな」

 “旧”ということもあって人々もそれなりに住んでいるが、発展を続けているクロスベルのその他の区画と比べるとその異様さは際立っている。建築物は老朽化に必死で耐えているが所々に無理が見え、環境の劣化に伴って住む人々にも影響を及ぼしていた。

 とりあえず一通り回ってみると、倉庫前にたむろしているガラの悪い若者や、地下に向かう階段を遮っているなんだか宗教的な服装をしている者が目立った。

 

 そしてそんな中である一軒に入ってみると、ねじり鉢巻をした初老の男性が奥で作業をしていた。近づくと男性は四人に気づき、申し訳なさそうに言う。

「すいやせんね、今材料を切らしちまってて……」

「ここは、お店ですか?」

「……店舗の許可申請はなされてないようですが」

 ティオが検索をかけるとここは店として認可されていないようだったが、男性は豪快に笑った。

「確かに俺は修理やらなんやらを請け負ってるが、ここは個人的な工房みてぇなもんだからな」

「それでも申請はした方がいいと思います」

「だな」

 男性は笑いながら了の意を示し、自身の腕の証明のように過去を話した。

「俺はこれでも中央広場のオーバルストアで働いていたんだがな、店長が変わって中身が我慢ならねぇモンになっちまったんでここにいるんだわ」

 

 その時ロイドはウェンディに聞いたあることを思い出した。なんでも彼女の師匠のような人が旧市街にいるということだったが。

 ウェンディのことを話すと彼はまた笑い、ギヨームと名乗って歓迎してくれた。

 流石ウェンディの師匠だと思ったロイドだった。

 旧市街にはもう一つ店があったが扉は閉まっていて確認できなかった。ただ“交換屋”と書いてある看板に不安な気持ちを抱いたのは間違いではない。

 

 旧市街を見回った後は中央広場に戻り、通っていない最後の場所に向かう。

 中央広場と歓楽街を繋ぐ妖しい雰囲気の通路は裏通りと呼ばれていた。客引きや露出の多い服装の女性などをよく見かけるここには夜の街という表現が正しい。

 ロイドとエリィはティオがいるということで自然と歩みが速くなり、ランディは慣れているのか余裕をもった足取りであった。

 しかしある横道の前を通ったとき、四人は揃ってその先を気にした。そこには裏通りの中でも特別高いビルがあり、その入り口には警備員のように黒服サングラスの男が二人立っている。その雰囲気は正に裏の者であった。

「…………」

 四人は視線を交わしてその場を離れ、少ししてから立ち止まった。

「なんだあいつら、見るからに怪しいじゃねぇか」

「多分ヤクザ者だな、ちょっと気にしておく必要がありそうだ」

 最後の最後でクロスベルの闇の一部を垣間見た気がして、四人は観光気分を消し去った。

 とにかくも全ての区域を回りきり、支援要請の為に歓楽街を通って行政区を目指す。

 

 自分たちが守る街の実情を少しだけ理解した特務支援課は、その世界の巨大さに包まれつつも足掻くことになる。

 “魔都”の歓迎はまだ始まってもいなかった。

 

 

 

 

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