空の碧は全てを呑みこみ、それでも運命の歯車は止まらない   作:白山羊クーエン

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生への渇望

 

 

 

 遊撃士協会の扉を潜り抜けたアリオス・マクレインはミシェルに出張の報告を行った。レミフェリア公国は彼がS級遊撃士の推薦を受ける規模の事件において関わった馴染みのある国、アリオスも他国に比べて優先している節があった。

 飛行船の進歩により以前より遠出が容易になったとはいえ大仕事であることは変わらない。クロスベルに最も貢献してきたアリオスも当然のことながらミシェルに休養を請われ、しかし彼は否定する。ミシェルの顔が少し歪んだ。

「もう少し緩めるべきよ。月に百件以上の依頼をこなすなんて無茶だわ」

「心配はありがたいが、元々俺が遊撃士になったのはシズクの治療費のためだ。可能な限りやることは曲げられない」

「それはそうだけど、でもエステルとヨシュアも来たんだし……」

「その分二人にはシズクの見舞いをさせてしまっているな、ありがたいことだ」

 アリオスは自身を止めることはしない。唯一可能な娘のシズク・マクレインとも頻繁に会うことはできなかった。その代わりとして他の遊撃士がシズクとの面会を続けている。

 

「む」

 アリオスは話を受け流しながら掲示板を眺め、とある一点に注視した。

「ああ、スコットが緊急の要件らしくてね」

 ミシェルが補足するその依頼は目的自体はありふれたもの、しかしその場所は決してありふれているところではなかった。

 いや、ありふれてしまってはいけない場所と言っていい。

「応援に出よう。それくらいはいいだろう?」

 それを理解しているアリオス・マクレインは返事も聞かずに行動を開始した。彼の脳裏に過ぎる一連の事象、その僅かばかりにそこは関係があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 広くとも分かれ道が少ないという古戦場の地形が今の状況を作り出している、エリィはそう考えて歯噛みした。ティオもそれとは別に悔しそうな、また焦っているような表情を浮かべている。

 ロイドとランディは背中に一般人がおり戦うことはできない。そんな四人の行く手を阻むように、太古の存在が仁王立ちしていた。

「ブレード、ファング…………」

 ティオが驚愕に震える声で呟き、それに応えるように魔獣は咆哮した。大気を劈く嘶き、それは鼓膜を通して脳に衝撃を与えてくる。感応力に長けたティオにはひとたまりもなく歯を食いしばって堪えた。

 ブレードファング、それは遥か過去に絶滅したと言われている魔獣。二足歩行の爬虫類のような風貌だが、そのサイズは人間を一飲みにできるほどの大きさを誇っている。岩山に擬態するかのような色と凹凸の激しい身体はそれだけで凶器であり、丸太のような尾は振り回されるだけで更地ができる。

 その巨獣が実に四体、静けさを切り裂いて存在していた。

 

「う……っ!」

 エリィは咄嗟に弱音を吐きそうになる口を押さえる。しかし過去を生き抜いた存在に圧倒され雰囲気に呑まれていることは明らかだ。それでも背中に命があるという事実が彼女をギリギリのところで踏みとどまらせていた。

「――――」

 ブレードファングは動かない。本来雨に打たれる場所で行動しない魔獣であるからこそだったが、その知識があろうがなかろうが関係なく僥倖である。

「――――みんな」

 ロイドは震えそうな声を必死に抑え、口を開く。

「戦おう、逃げるのは無理だ」

 策敵を全開にしていたティオの網に彼らが引っかかり、それに気づいたティオが注意を喚起するまでの間にこの魔獣はその攻撃範囲に四人を捉えていた。圧倒的な速度、地形の利すら持つ魔獣に対して救助者を抱えて逃げ切るのは不可能だ。

 

 ロイドはゆっくりと後退し、岩陰に女性を下ろす。ランディも倣って下ろした。救助者である二人はぐったりとしている。何があったのかわからないが長時間雨に濡らすわけにもいかないのは確かだ。

 それでも今はそんなことはできなかった。内心で謝罪する。

 

 ――ふと、影が降りてきた。ツァイトである。

 一瞬驚くも、その知性を秘めた瞳に平静を取り戻す。

「……ありがとう、ツァイト」

 ティオを介すことなくロイドはその意志を理解した。蒼白の神狼は二人を背に乗せ彼らを一瞥する。何を感じ取ったのかはわからない、ただ彼は最期に一声啼き、その場を風のように去っていった。

 

 

「――――」

 地鳴りのような呻きが聞こえる。ツァイトの声に反応したのか、ブレードファングの一行は僅かに平静を失っているように見えた。

 そして、その場に残された特務支援課がその機を逃すことはできなかった。

「いくぞっ!」

 ロイドの叫びに全員が一斉に行動する。

「――四属性に抵抗なしっ、全部効きます!」

 後方に移動しながらティオが情報を叫び、同時に離れていくエリィがアーツの詠唱に入る。ロイドとランディはエニグマを起動、ハの字状の魔獣の前衛二体にそれぞれクラフトを放つ。

「うらぁあ!」

 スタンハルバードが一体の神経を麻痺させ、スタンブレイクでもう一体を足止めする。しかしその巨体は二人の攻撃を気にも留めず、その大顎で噛み付いてきた。

 

「ちぃっ!」

 顎に捕らえられえれば必死、故に二人はブレードファングの頭部に集中していた。回避した二人は互いにターゲットを入れ替え、噛み付いたために下がった頭部を殴打する。

 流石に顔は脆いのか二体は声を張り上げ、そして反転して尾を振り回した。ちょうど二体の間にそれぞれ入っていた二人は逃げる場所が上しかない。跳躍して一本目をかわし、そして二本目は得物で防いだ。

「――――ッ!」

「が――――」

 しかしその威力は容易く二人を吹き飛ばす。前衛の二人はあっという間に後衛付近まで飛ばされ泥を巻き上げた。なんとか膝をついて体勢は整える。

 その二人の横で同時に詠唱を終わらせたエリィとティオが七耀の力を顕現する。

「エアリアル!」

「ハイドロカノン!」

 ブレードファング四体の中心に舞い降りた風の精霊が周囲を切り裂いていき、身動きがとれなくなった魔獣を水流の直射砲が飲み込んだ。大きく後退する魔獣を確認し、ロイドとランディは回復を図る。

 

「あいつらは本調子じゃねぇ、今ならいけるはずだ!」

「ブレードファングは乾燥地帯に生息していたはずですから、セピスデーモンのように雨が嫌いなんだと思います」

「私たちは範囲アーツで動きを止めるわ。二人には時間稼ぎの意味合いが強くなるけれど」

「………………」

「ロイド?」

 沈黙する彼にエリィは尋ねるが、ロイドはしかし何も言わなかった。不安を煽るようなことはしたくなかったのである。

 

 

 ブレードファングが前進を始める。エリィとティオが詠唱を始め、ランディが腰を一層低くして構えた。魔獣の速度が上昇していく。

 もし、スコットさんが同じ状況なら……

 ロイドは弧を描きながら走って気を惹きつける。後方の二体が反応し、その顎でもって跳びかかってくる。加速していた為に避けきれない、トンファーをクロスして受け止め、きれずに大きく跳ね飛ばされた。

 空中で回転して姿勢を整え、更に迫るもう一体の口内を確認。その牙が噛みあう寸前にエニグマを起動、アクセルラッシュで打ち払う。絶叫するブレードファングはしかし尾を振り回し、ロイドは地面に叩きつけられた。

「ぐぅ……っ!」

 泥で視界が汚れる。そんな思考をする間もなく跳ね起きて、もう一本の尾を受け止めた。更に吹き飛ばされる。

 

「――――っ」

 しかしそんな中で炸裂する風のアーツを確認、すぐさまスタンブレイクを発動して強制行動、間合いを一気に詰め連撃とする。

「ギァァアアアアッ!」

 流石にアーツは痛いのか、アーツを受けた後ならばロイドの攻撃も通る。

 一瞬視界を広げランディとティオを見やる。ランディが気炎を上げて二体を相手取り、ティオが絶えず詠唱しているのが見える。

「――ッ!」

 後方から来る一体の顎を前方に回避、エリィの前に立ち塞がり息を整え。

 

「――――」

 ふと、不思議な感覚を思い出した。

 それは自身から立ち昇るエネルギー、東方に伝わる気。通常視覚化されていないこれは高めることでそれを可能にするが、そもそも自身の持つそれを理解するのが難しい。

 それを今、ロイド・バニングスは何故か理解している。自身を覆うその波が見える。

 視界がクリアになった。それは過去の現象、銀と一対一となった時に感じた気がする。

 銀との出会いがそれを感じ取れるきっかけになったのか、とにかくもそれを意識したロイドは一瞬後に迫るブレードファングをスローモーションのように見ながらそれを解き放った。

 

 碧の光が自身を包み、立ち昇らせる波動は火山のよう。

「し――っ!」

 顎を掠るように避け、顔面に連撃。その一打々々に確かな手ごたえを感じ取り、魔獣の絶叫で確信を得る。

 効いている――

 一歩退いて更に勢いを乗せ一撃、筋肉に覆われた首が歪に曲がった。

 

「はぁ――!」

 さらにもう一体が飛びこんで来る。逆に間合いを詰め魔獣の虚を突き空中でクラフトを発動する。相手の頭部に連撃連打、打つままに頭を動かす魔獣に着地した後止めの一撃。

「タイガーチャージッ!!」

 ロケットのような突撃はブレードファングの下あごを完全に殴打し、そのまま仰向けに沈黙させた。

「はぁ、はぁ、はぁ……!」

 息が上がる。クリアになっていた視界に濁りが生じる。覆っていた光が弱まり、急激な虚脱感に襲われた。

「ロイド!」

 駆け寄ってきたエリィが強張った表情をしているのを見て彼は大丈夫、と答え、そして当たり前のように意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 ランディ・オルランドの膂力を以ってしてもその攻撃には足が浮く。なので彼はその力をぶつかり合わせず受け流す方向に持っていく。

 ロイドの技量でもそれは可能だが、その技術を凌駕するのがこの魔獣の力。故にロイドでは不可能だ。

 故に、彼の技術と恵まれた体格を持つランディにはその行動が可能だった。

 

 一体の行動を受け流しつつ、もう一体を必死の体でかわす。直撃こそ免れているが彼は綱渡りの攻防を続けていた。

 決して攻めることはしない、その為防戦一方であった。その理由は彼の特性による。

 

 ランディのクラフトは二種、ないし三種だ。スタンハルバードの力を発揮するパワースマッシュ、火炎の龍を解き放つサラマンダー、そして目潰し爆弾のクラッシュボムである。しかしそのどれもが現在意味を成さなかった。パワースマッシュを敢行し効果を認められなかった時点で手詰まりだったのである

 それはブレードファング同様、彼にとって雨天がマイナスになりうるからだ。

 雨という天候は彼の火属性を相殺している。サラマンダーは正にそのとおりであり、クラッシュボムについては目潰しの粉塵が巻き散ることなく地に落ちるだろう。

 Sクラフトこそ放てるがこれは奥の手のようなものであり、先が見えない状況では出せない。尤もそのクリムゾンゲイルも火属性なので些か不安ではある。

 

 だからランディは作戦通り時間稼ぎに徹する。有効打を決められなくてもいい、それは彼の後ろにいるティオ・プラトーが行ってくれるのだ。

「ランディさんっ!」

「応よッ!」

 ティオの声に反応し一気に距離を稼ぐ。すぐにティオのアーツが発動して魔獣を呑み込んでいき、ランディはその様子を注視して機を発見した。

「ティオすけ、アレいくぞ!」

「――ッ、了解です!」

 二人のエニグマが同時に起動し、ティオを碧の光が、ランディを赤の光が包み込む。

 それは訓練の焼き直し、CPによって再現、強化された蒼き死神の一撃。跳躍したランディのハルバードに集う振動と氷の息吹――

「グレイシャルビート――!!」

 二体の魔獣の中心を爆撃した無双の一撃は、傍にいた彼らを氷に変えた。

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 ブレードファング、この魔獣に似た存在をスコットは以前聞いていた。拙い記憶の糸を手繰り寄せると、その話をしたのは相方のヴェンツェル・ディーンではなく、先輩であり後輩でもあるアリオス・マクレインである。

 

「絶滅した、と聞いているが、生憎それ以外に該当しなかった」

「僅かに生き長らえていた、ということですか?」

 アリオスは頷き、一度目を閉じると暗記した書物を読むように述べていく。

「ブレードファング、およそ五百年前に生息していた魔獣。体長は5~6.5アージュ、高さは3~3.8アージュ、体重は1.7トリムほど。非常に強暴で人間を一飲みにするが属性攻撃に弱く、遠距離攻撃が有効である。その特殊な外殻の有用性によって乱獲の一途を辿ったが、絶滅原因は人間による討伐ではなく自然環境に適応できなかったからだと言われている」

 スコットも幼い頃にそのような本を読んだような気がする。しかし当時は相対することなど夢にも思わなかったのでアリオスのように想起されることはありえないと感じていた。

「しかし、それならなおさら在り得ないのでは? 環境に適応できなかったというなら住む世界がないでしょう」

「確かに。だからあの時俺が見たのはブレードファングではない別の魔獣かもしれない。リベールにいたブレードファングに酷似した魔獣は太古のそれとは別物とされているものの名称は同じになっているしな」

 

 ただ、とアリオスは沈黙する。スコットにはその続きが容易に想像できた。

 アリオス・マクレインという凄腕の遊撃士がそこまで気にする魔獣がそんなありふれた存在とは思えないのだ。ブレードファングにしてもリベールに亜種がいるのならそう判断しても差し支えない。

 しかしアリオスは感じ取ったのだ。リベールのそれとは決定的に異なる何かを。

 だからこそスコットはその魔獣を特別に記載してデータバンクに提出した。何があるかわからないからこそ、この先二度と遭遇しないとしても、現れた以上情報は保存するべきだと。

 

 そしてスコットは対峙した本人に尋ねた。

「それでアリオスさん、それとはどこで……?」

「――ああ、とある遺跡だ。俺も、できれば二度と行きたくはない」

 

 

 

 

 * * *

 

 

 

 

 雨が上がった。ロイドの身体のチェックを終えたエリィは身体を打ち据えていた水を感じなくなり、そして同時に驚愕に目を剥いた。

「な――!」

 沈黙させたはずのブレードファングがゆっくりと身体を起こしている。それまでのダメージはあるのか歪な部位はある、しかしその後発された咆哮は脅威でしかなかった。

「何ッ!?」

「そんな……」

 ランディとティオも同様に氷柱を砕いて現れた彼らに声を失う。ロイドとエリィが相手取った魔獣が健在なのは単純に力が足りなかったのだと理解できる。しかしこの二人が仕留めた技はコンビクラフト、氷と化した肉体を振動で破砕するものである。

 それは確かに効いていた、効いていたはずなのに、それでもブレードファングは止まらない。

 

「ロイドッ!」

 エリィが顔を張り覚醒を促す。すると予想外に早く彼の意識は戻った。

「急いで!」

「――ッ、状況は!?」

「ブレードファング四体が復帰よ!」

 ランディとティオが合流し四対四の状況、しかし支援課は一人だけ戦闘に耐えられない状況だった。慌てて状況を確認したロイドはトンファーを構えようとして、しかし力が抜けて膝を着いた。足が震えている。

「なんで――」

「おいロイドッ、どうした!?」

「待ってください、今回復を……!」

「来るわ!」

 

 ティオが詠唱する間もなくブレードファングは動き出し、四人は散り散りとなる。ロイドも震える足を叱咤してなんとか転がるも足に鈍痛が走る。大地を砕く魔獣の一撃は石の礫を撒き散らしていた。

「つぅ……ッ」

 痛みに顔を顰め、状況を鑑みる。

 ブレードファング四体は健在とは言わないが未だ脅威に他ならない。対する支援課はロイド・バニングスが異常を来たして足手まとい、ランディとティオはコンビクラフトによってCPを使い切り、更にティオは上位魔法の連発でEPも底を突きかけている。

 何よりまずいのは精神状態、一度乗り越えた壁が再び迫る現実は戦闘で消費した精神力をガリガリと削り取っている。

 

 動けないロイドの代わりにランディが強張った表情で立ち向かい、エリィとティオもアーツ詠唱の他、前に出て攻撃を放っている。しかしそのどれもが精度を維持し切れていない。

 元々強固な外殻を持つブレードファングが降雨から抜け出した今、その劣った攻撃では倒すことはできない。言うことを聞かない身体の代わりに脳内で目まぐるしく思考が走る。全ての情報を取り込んでは取捨選択をし、目指すべき到達点への道を見定める。

「ぐあッ!」

 ランディが尾の直撃を受け吹き飛んだ。その隙に後衛に突っ込む魔獣に反応が遅れたエリィが肩口を喰い裂かれる。

「きゃあっ!?」

「エリィさんッ!?」

 ティオが構わず魔力球を放射、魔獣を退ける。エリィも牙が引っかかっただけで重傷ではない。しかし右肩を押さえ身体が揺れていた。

 体力的に劣る彼女にとって今の一撃は行動を鈍らせる効果としては十分である。

 

「くそっ!」

 無理やりに身体を起こす。仲間が戦っている時にただ寝ているわけにはいかない。立ち上がり、そして走った。

 スピードは笑えるほどにない、それでも戦わなければならなかった。

 方法を、みんなを守れる道は――

 太古の魔獣四体を退ける、その方法が雷のように頭を走り抜けた。しかしそのどれもが実現不可能で気が狂いそうになる。こんなところで負けるわけにはいかない、負けることなんてできない。

 

 ブレードファングがロイドに気づき、その顎を向けてきた。今の速度差では回避できない。

 防御を――

 トンファーで防ごうと正面でクロスして、そして、不意に身体が右に傾いた。

 

「え」

 

 驚くしかない。こんな重要な、大事な時に濡れた地面に足を取られるなんて――

 

 歪で獰猛な牙が迫る。それは傾いた為に空いた左脇腹を狙っていた。

 そんなことは必要ない、こんな踏ん張りの利かない状態でその大顎に対抗する術はない。そのまま噛み砕き、咀嚼し、血の雨を降らせばいい。

 思うように動かない体はそのまま、本能に任せて襲い来る大顎に抗えず朽ち果てる。それは弱肉強食の結果、紛うことなき食物連鎖、否定できない自然の摂理。

 

 そう、ロイド・バニングスはここで歩みを止める。何もできないまま、辿り着けないまま――。

 

 そう。それは、以前感じた絶望――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――助けてほしいのですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「違う――ッ!!」

 

 傾いた視界、迫る闇のような口内。

 そんなものに、そんなものに未来をくれてやるわけにはいかない。

 見開いた瞳に見えたもの、それは駆け寄る仲間の姿。それを遮る猛き獣。

「――――ッ!」

 牙が身体に食い込む。その瞬間に、エニグマが光を放つ。碧の光に包まれたロイド・バニングスは己の牙でその死を一瞬で叩き折り、阿呆のように開いた喉元に突き刺した。

 

「俺が――――!」

 身体を捻じ込み体内から圧迫し、碧から赤に変わった光に導かれるように。

「あああああああああああああああああああッ!!」

 その全身で太古の壁を喰い破った。

 

 

 

 

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