空の碧は全てを呑みこみ、それでも運命の歯車は止まらない   作:白山羊クーエン

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戦場の理は霹靂に似て

 

 

 

 日も暮れて、創立記念祭最後の夜がやってきた。旅行者の大半が去っていったのは翌日から仕事があるからだろう。人の推移に従って依頼も収束していったので遊撃士にとっては最終日は楽になったと言える。

「はぁあー……」

 が、エステル・ブライトは慣れない作業に平日以上に疲れきっていた。

 クロスベルを去る旅行者達に多い衝突はお土産品の交渉や帰りの移動手段の無計画性にある。やれ高いだのおつりが違うだの、この便に乗せろだの切符をなくしただの。

 コミュニケーション能力は花丸をもらっているエステルだが、生憎彼女は行動派で運動大好き少女である。魔獣退治のような命の危険はまるでなかったが、そういった揉め事の落とし所を探すのは不得手だったのだ。

 それを担当していた相棒は現在別行動中、他コンビを組んでいる先輩遊撃士たちもタッグを解散して依頼に当たっていた。それはやはり依頼の総数の問題だろう。結果、こうして肩を落として遊撃士にあるまじき歩行を見せているのである。

 

「お疲れね、エステル」

 彼女が帰り着いた遊撃士協会前でレンは声をかけた。肩を落としてため息を吐いていたエステルは疲れ具合を一掃して喜色を浮かべる。

「レン、もしかして待っててくれたの!?」

「違うわ」

「あんですってーっ!?」

「それだけ元気があれば大丈夫ね」

 そう言ってレンはエステルを追い越すように歩き出した。疑問符を浮かべるエステルは立ち止まったままそれを眺め、自分に続かない彼女にレンは振り返る。

「何してるのエステル?」

「え? いや、レンどこ行くの?」

 どこって、とレンはおとがいに指を当てて空を見上げ、

「ヨシュアのお迎えに決まっているじゃない」

 その指を彼方へと指した。

「お迎え? ヨシュアまだ帰ってきてないの?」

 エステルは昼過ぎに分かれた青年の依頼内容を反芻し、時間のかかるものがあったかなと疑問を抱く。しかしその答えはなく、代わりにレンが悪戯っぽく笑った。

「ふふ、きっと寄り道しているのよ。特務支援課の分室ビルとか、ね」

 そんな答えにエステルは一層首を傾げ、それでも少女に導かれるように足を動かし始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 狭い、港前の一角。直角に造られた道の幅はおよそ5アージュ、角から延びる道はその倍の10アージュほどでルバーチェが通行止めを造っている。それ以外は暗き水の世界。水温は低く、長時間浸っていれば死に至るだろう。

 そんな歪な闘技場、そこの主であるガルシア・ロッシは眼前の五人をただ見下ろしていた。

 見る、という行為が見下ろすという行為に変質するのは二通り。文字通り位置的に高みにいる場合か、存在を比較して下に見るかであり、彼はその両方でそれを為していた。

 対するは特務支援課の四人とワジ・ヘミスフィア。保護した少女キーアは彼らに守られるようにその後ろに佇んでいる。

 障害物がないせいで風が強い。キーアはロイドの上着を強く握った。それが戦いの始まりだった。

 

「おらぁ!」

 ガルシアが巨腕を振り上げて突進してきた。エリィとティオは予測進路から横っ飛びで除けてエニグマを起動させる。ロイドとランディはそのまま受け止める形でガルシアと対峙した。

 ガルシアの拳とランディのハルバードが激突する。方や人体、方や武器である。しかしその拮抗は卓越した人体の勝ちだった。

「ぐぅ――ッ」

 ランディの膝が落ちる。上から振り下ろされた拳の重みを受け止めきれずに体が地面に迫っていく。

「ハハハハハッ、どうしたァ――!!」

「ちぃ!」

 ロイドが側面に回りこみトンファーを振るう。高速の連打、しかしガルシアは意も解さない。鋼の肉体のみで戦場を駆け抜けた彼にその程度の打撃は通用しない。

 

 筋肉の壁に弾かれたロイドはたたらを踏み、

「飛べやァアア――!」

 右腕を引いたガルシアは捻りを加えて跳躍、上下を間逆にして回し蹴りを放った。

「うあ――ッ!?」

「づぅ――!」

 丸太よりも更に硬い鉄柱のような足が二人を吹き飛ばす。二人はそのままルバーチェの壁に叩きつけられた。

 回転を終え止まったガルシアにワジが迫る。スライディングからの足払いは膝裏に正確にヒットした。しかし彼の細足では人体の弱点をついても転ばせるには至らない、僅かに傾いた視界にガルシアが口角を上げながらワジを見る。

 立ち上がり鞭のようにしならせた腕を高速で叩き込むワジ、その拳打を胸筋のみで受け止め、

「軽いなぁ!」

 左腕を叩き込む。ワジは上体を反らして足を上げ、それを足裏で受け止めた。

 

 そのまま勢いに乗って大きく後退する。構成員の直前で着地した彼はしかし、眼前に迫る戦車のような突進を受け止め切れなった。

「な――ッ!?」

 高速のショルダーチャージは周りを囲む部下を気にもせずに敢行される。受け流すこともできずに直撃を受けたワジは人波に沈み痛みに歯を食いしばった。

「旧市街のガキが粋がるな――ッ!」

 勝ち誇るガルシア、しかし彼の後方から光が立ち昇る。振り向いた彼が見たのは七耀の光に包まれたエリィとティオだ。

 攻撃魔法、それも強力なそれは範囲攻撃が多い。味方を巻き込まないためにはタイミングが重要である。

「ダイアモンドダスト!」

 魔導杖が振り下ろされ、外気が集まって氷柱ができる。そのまま直下の存在を破壊せんと落ちてくるそれを――

「温いわ――ッ!」

 ガルシアは組んだ両手を叩き込んで破壊した。

 余りの暴挙にティオが目を見開く。砕かれた氷塊は綺麗な雨を降らせて落ち消えていく。

「その程度のアーツなぞ効かねぇ!」

 

「なら!」

 エリィが時の力を解放する。紫紺の牙が正方形を造るようにガルシアの足元四方に生み出され、大気に混じる時の力を引きずりこむように回転してガルシアの足を切迫する。

「デススパイラル!」

 それは間違いなくガルシアの足を傷つけた。傷にはならないが確実にダメージを与えたはずだ。

 程度の低い魔獣なら絶命してもおかしくない高位の一撃。しかし――

「流石に上位属性はいてぇ、な!」

 それを感じさせない跳躍で二人との距離を一気に埋める。

「く」

 詠唱時間はない。銃と魔導杖それぞれが魔力弾を放とうとして、それよりもガルシアの腕のほうが速い。

「きゃあっ!」

「う――っ!」

 二人の身体を抱きしめるようにホールドした。両腕の筋肉が盛り上がり更に強く締め上げ圧迫していく。激痛に顔を歪めて抵抗する二人だが、腕は動かせず膝下程度の足蹴では彼の障害にはならない。

 

「エリィ、ティオ!」

 ロイドとランディが無防備な背中に迫る。しかし直前で嗤ったガルシアは振り向き、二人の身体を盾にした。

「――ッ」

 矢面に立たされた二人に行動が鈍る。そのまま二人を解放してロイドとランディに投げ返し、

「おらあああああ――――ッ!!」

 渾身のタックルが四人を吹き飛ばした。

 ロイドとランディは咄嗟に身を翻してエリィとティオを守りその背中を強かに打ち据える。会場の長さである10アージュをそのまま吹き飛び地面を滑り、そのまま動くことはできなかった。

 

「くくくく」

「みんな……」

 倒れ伏す五人、それをただ見つめるキーアと嗤うガルシア。

「まだだっ、まだ寝るには早いぜ!」

 ガルシアを包むエネルギーが爆発する。銀の麒麟功に似たそれは猟兵としての彼が無双を誇るために不可欠な気合。それを彼は絶倫攻と呼んでいた。

「っはあ……ッ」

 ランディが起き上がる。受け止めたティオは目を強く瞑って痛みに耐えていた。

 元々防御面では成長が足りない彼女が動けるレベルの攻撃をガルシアは行わない。既に戦闘は無理だった。

「そうだ、赤毛! てめぇが一番食い下がらなきゃいけねぇ!」

 ガルシアの膨れ上がった気が両腕に移る。血の混じった唾を吐き出しランディは身構えた。

 それはブレードファング相手にも行った受け流しの体勢。受け止めきれないならば受け止めなければいいのだ。

 

「ぬんりゃああああああああ!」

 ガルシアの右腕が唸りを上げて迫る。ランディは縦にしたハルバードでその軌道を修正する。あの太古の魔獣にすらできた技、しかしそれはガルシアには通じない。

「ビビるなや――ッ!」

 ガルシアは握っていた手を開き、ハルバードを通過する腕を強引に止めた。

 逆に慌てるのはランディである。その一瞬の動揺を逃すことなくガルシアは掴んだハルバードごとランディを上空に吹き飛ばす。彼の体躯であっても容易に投げ飛ばす膂力、それが今度は両足に宿る。

 空中で姿勢制御したランディに地面を蹴り上げたガルシアが迫る。速度で勝るガルシアはランディの両足を掴み取った。

「うおりゃあああああああ――ッ!!」

 そのまま振りかぶり同時に地に落ちる。背中から落とされたランディが口から血を吐き沈んだ。

 

 ――瞬間、片膝を立て着地したガルシアの背中にロイドが迫っていた。

「あああああああああああ!」

 それは動物的な本能だろうか、普段のそれでは傷つけられないことを悟ったロイドはその後頭部に全力の一撃を振り下ろした。それを左腕一本で受け止めるガルシア。鈍い音はロイドの表情を凍らせる。

「いい度胸だ、小僧ぅ!」

 痺れる腕を表情に出さず、反転。右腕を掴み取った。

「ぐぅ――ッ!?」

「不意打ちが卑怯とは言わねぇ。だが仕留めなけりゃ意味もねぇ!」

 

 ミシリと。

 ロイドは自身の腕が壊れた音を聞いた。そのまま投げ飛ばされ仰向けになる。

 ぼやけた視界の中の夜空に星が瞬く中、手から零れたトンファーが落ちる音が聞こえた。握られた腕の感触はなく、しかし徐々にじくじくと痛み出す。

 痛みはあるのに、意識は体から離れてしまったかのようにぼんやりとしていて、そして体は当たり前のように動かなかった。

 

 刹那、ガルシアは首を曲げてその銃弾を回避した。視線の先には腕だけを持ち上げているエリィがいる。震える腕では一発が限度だったのか、すぐにその腕は力尽きた。

「俺が今までどれほど銃口を向けられたと思っている。そんな豆鉄砲じゃ牽制にもならん」

 再度銃を構えたエリィに対し、ガルシアは右の拳を握り締めた。人差し指に封じられていた親指が炸裂する。

「――ッ!?」

 指弾と呼ばれる中距離攻撃、絶倫攻で強化された肉体でのみ放つことができる技だ。

 腕が弾かれ地に叩きつけられる。全身が痺れている彼女の腕はもう上がらなかった。ガルシアの声が聞こえる。

 

「あっけねぇな、こんなやつらに台無しにされたかと思うと頭にくるぜ」

 俯瞰したガルシアは、そして少女に近づいた。探るような瞳と呆然とする瞳が交錯する。

 

 警察の犬が運ぼうとした少女。

 結論から言えば、ガルシアは何故この少女があの場にいたのかわからない。競売会の目玉だったローゼンベルク製のアンティークドールが入っていたはずのトランクから出てきたとされているが、つまりは中身がすり返られていたのかもともと少女が入っていたのか。そのどちらでも結局責任は彼にあると言える。

 そしてこの少女の存在がルバーチェにとってよくないことであるのは確かだ。

 人身売買などという汚名を被せられれば警察はおろか遊撃士協会がその威信をかけて殲滅に入るだろう。そうなってしまえばいくらルバーチェでも耐えられない。第一線の遊撃士を相手取ることが可能なのは彼だけなのだから。

 

 つまり少女は、今この場に存在しているという事実こそが重大であると言える、正しく爆弾だ。しかしそれは逆に扱いにこそ困るが爆発を防ぐことができるという事実の裏返しでもある。

 極論その存在自体を消してしまえば問題はない。つまり、この少女を知る外部の人間の全滅である。少女の身柄を確保した今ならそれが可能だった。

 尤もそれは、あの憎たらしい黒月の暗殺者も含まれているのだが。

 

 どちらにしても決着は着けねぇとな……

 ガルシアは銀に対して覚悟を決めた。自分の全てを賭してもあれを葬らなければルバーチェは消える。ならそれは当たり前のことだった。

 少女を狩りの報酬として考えていた彼は戦闘中部下に手を出させなかった。それは若頭としては悪手だったかもしれないが、そんな考えを持つ彼だからこそ若頭と呼ばれているのかもしれない。ハルトマン邸からの脱出に関して譲ったのだからここでは個人の楽しみを考慮してもいい、という精神的な妥協があったことも確かだ。

 

 果たして黒の競売会を壊した五人は沈黙、いよいよもってガルシアの腕がキーアに伸びる。それを為すがままに受け入れようとする少女はしかし、その視界に動く人を見た。

「――――待て」

「……ふん」

 ガルシアはゆっくりと振り返った。それは彼の猟兵としての勘か、聞こえてきた声と自身の予感が一致していた。

「まだだ……」

 立ち上がったのはランディ・オルランド。ハルバードを支えにし、俯いているために表情は見えないが確かに覚醒している。

 その体から立ち込める闘気、それをガルシアは知っていた。

「赤毛、てめぇ――」

 驚きと理解を混ぜた呟きにランディは答えず。ポケットに仕舞っていた回復薬を三人に振り掛ける。飲むことができれば最善だが、皮膚からの吸収でも十分だろう。

 

 そして彼は、その内面をぶちまけた――。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオおアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 まるで炎のように燃え上がる赤紫の闘気、それは一気に空間を支配した。

 ルバーチェの構成員が脂汗を流し後ずさる。それは彼らの本能がこの存在と距離をおきたいと思ってしまったからである。

「ランディ……」

「おいおい、おいおいオイッ!」

 キーアが心配そうな瞳で見つめる中、ガルシアは笑った。歪に、恍惚としたかのように嗤った。そこには信じられないものを見たような嬉しさと驚きが見えていた。

「何の冗談だこれは。目の前のサツの一人がオルランドの赤い闘気を放つなんてなぁ!」

 知っている。

 ガルシア・ロッシは知っている。

 爆発的な闘気の運用、それは猟兵が最初に覚える行為だ。自らの士気を高め、高ぶらせ、限界を超えた能力を行使する。

 しかし目の前のそれは凡百のそれではなかった。

 彼が知る中で最も恐ろしく美しいものだった。

 

「予想がある意味では当たりある意味では外れていたようだ。団名にもなった蠍の尾のような燃える髪を見た時点でもしやと思ったが、同時にそんな場所にいるとは欠片も思いはしなかった」

 

 

「そうだろう? 赤い星座の部隊長、“闘神の息子”ランドルフ・オルランドォ――ッ!!」

 

 

 赤い星座、それはゼムリア大陸西部において西風の旅団と双璧を為す大型猟兵団である。

 紫の蠍をシンボルにした彼らはオルランドという一族を軸にして行動する。団長である闘神バルデル・オルランド、副団長の赤き戦鬼シグムント・オルランドを筆頭に火力式の重火器を扱う戦闘のエリート集団である。

 その戦闘能力は一国を相手にしても不足はないとされ、その隊長ともなれば名前だけで他を威圧するほどである。そんな彼らと互角である西風の旅団、その元部隊長ガルシア・ロッシを相手取り。赤い星座の元部隊長である彼は口を開いた。

 

「アンタとは、殺りあったことがあったっけか」

「ねぇな、だがよく知ってたぜ。猟兵にとっては当たり前のウォークライ、それを昇華させたオルランドの赤紫の闘気は戦場で実に目立っていた」

 猟兵の基本技能であるウォークライ、それを更に特化させたのがオルランド一族だ。彼らがそれを行った次の瞬間には血の雨が降ると言われるほど戦場では知れ渡った脅威だった。

「しかし相当錆び付いたようだな。血族の巨大さに翻弄されて自身が傷ついている、赤き戦鬼ならば逆に耐久性が上がるというのに皮肉なもんだ」

 ガルシアの見つめるランディの口には赤い線が描かれている。大きすぎる闘気を受け止めるにはランディにはまだ力が足りなかった。

 あるいはそれは、彼の精神状態にも左右していたのかもしれない。

 

「アンタの相手は俺一人でする。そうさ、始めからそうしとけばよかったんだ」

「そうだな、それが正答だ。しかし俺はその時点で部下をあれに向けるぞ?」

 倒れ伏したロイドらはまだ立ち上がっていない。ワジこそようやく上体を起き上がらせた程度である。そんな彼らにルバーチェの相手は務まらない。

 自嘲を交えた彼の言葉は真実で、しかしそれ故に残酷だった。

 以前の居場所から去って二年、しかし眼前の相手はその場所の名残だ。血族が選んだ戦場という鎖が彼を縛り付けていた。

 

 

 それでも――

 

 

 それでも、過去とは違う。ランディは内心で呟いた。

 ランドルフではない彼が、ランディである彼が今戦っているのは間違いなく過去の相手と同一だが、それでも戦う背景が違う。傷つき倒れ伏した仲間と少女を守るために過去の自分に戻ったのだ。

 その事実だけが、今のランディにとって一握りの救いであり希望でもあった。

 

「俺のコレは不完全だが、それでも戦場にいた経験のないやつらが耐え切れるもんじゃない。あんたのソレとぶつかり合う余波の中で、果たしてどれだけのヤツが動ける?」

 事実囲む構成員の足は竦んでいる。呼応するように高まる二つの気は大気を震わせ、恐怖という本能をも揺さぶっている。

「足が動かんでも銃を撃てばいい。いくら経験がなくとも引き金を引く程度ができなけりゃルバーチェは語れねぇ」

 相手は無防備な少年少女、それに引き金を引き、当てる。この大人数ならばそれができる者もいるだろう。確かにランディもそこには同意だ。

 

 しかし彼は、その光景を想像することができなかった。

 

「悪いな、こっちにも切り札がある」

「何?」

 

 

 

 

 ――――そして、雷が舞い降りた。

 

 

 

 

 

 雷の奔流は爆音を引き連れて人波に沿って迸り、周りを囲んでいた構成員を一人残らず吹き飛ばす。

 水に落ちる音はその量と勢いのために瀑布のよう。何人かが衝撃で取り落とした得物が彼らのいた証、声を出す時間すら彼らにはなかった。

 爆音に数十人が呑みこまれるその間僅か二秒、あっという間の出来事だった。

 

「なんだと……ッ!?」

「助かった、ついでにこいつらを運んでくれないか」

「……そうですね、ですがその前にやることがあります」

 ガルシアが目を剥く中、ランディの隣に降り立った漆黒の青年はそう言って驚愕に満ちた彼を見た。

 

 

 

 

「遊撃士協会正遊撃士ヨシュア・ブライトです。ルバーチェ商会営業本部長ガルシア・ロッシ殿、今回の騒動についてお聞きしたいことがあります」

 

 

 

 

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