空の碧は全てを呑みこみ、それでも運命の歯車は止まらない   作:白山羊クーエン

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ばかランディ

 

 

 西風の旅団元部隊長にして現ルバーチェ商会営業本部長であるガルシア・ロッシ、彼はゼムリア大陸における薬物運用の危険性を熟知していた。

 大陸最強と謳われた猟兵団でさえそれが匂う案件には手を出さなかった。それは何より身を滅ぼす劇薬であると知っていたからである。

 しかし現在、ガルシア・ロッシはその身体にグノーシスを抱いている。それは紛れもない事実だが、しかし同時に彼が望んでいなかったことも事実だった。

 部下の変容に対し正気を取り戻そうとした彼はしかし複数のヴァンピールに押さえつけられ、結果グノーシスを投与されてしまった。それは常人の三倍の濃度であり、いくら強靭な精神力を持つ彼であっても耐えられなかったのだ。

 しかし幸いなことに、彼は魔人化していない。心の奥底で今なお抵抗しているのか、適性がないのか、どちらにしても生身で圧倒的な戦闘力を持つ彼は、その力を想定よりも引き上げてはいなかった。

 以前の戦いに比べて違うところがあるとすれば、今の彼には容赦という言葉が存在しないことくらいである。そしてそれは、相対するランディ・オルランドにも言えることだった。

 

 

 

 

 尋常ではない闘気、それを惜しげもなく披露するガルシアに応えるように、ランディもその赤紫の闘気を立ち昇らせた。

 量ではガルシア、質ではランディが勝るそれは互いの領域を示すように相対する敵へと触手を伸ばしている。赤い空気が威嚇する二つの闘気に萎縮し、まるで真空にでもなったかのようだ。

 ティオは息苦しさを感じ、しかしこの場から逃げないために呼吸をやめた。いくらでも苦しくなればいい、その代わり勝利は譲れない。

 そんな彼女の覚悟を読んだのか、爆発する気を持った二人の猟兵は相手目掛けて飛び込み、最初の衝突を繰り出した。

 

「ガアアアアアアアアア――ッ!」

「アアアアアアアアアッ!」

 右ストレートと一閃がかち合い衝撃を作る。爆音と空気の振動、力の拮抗。

 鍔迫り合いは一瞬、下がっていた片足を踏み込んで左ストレートが繰り出され、それを一歩踏み込むことで八割の力にして受ける。

「――ッ!」

 ガルシアの身体が沈む。同時、両足が地を離れ唸りを上げる。

 瞬間ランディは跳躍、一瞬後回転を始めた両足にハルバードを叩き下ろす。

「アアアアアアアアア!」

 エニグマが起動、ハルバードが振動し衝撃を増幅する。それに押された左足、膝を曲げることで威力を殺して後方に吹き飛んだガルシアは一歩でベクトルを変換、槍のようなとび蹴りを見舞った。

 空中で受けたランディは吹き飛び、しかし着地前に一閃。サラマンダーがガルシアを食い破る。

 

「アアアアアアアアアアアアアッ!」

 しかしその闘気までは破れない、逆に力技でサラマンダーを跳ね飛ばしたガルシアは更に突進、渾身のショルダーチャージを見せる。

 着地したランディは肥大化するガルシアを視認したと同時、頭の中で撃鉄が鳴る。

 刹那、思い起こされる訓練の日々。その異常さに対する感情すら湧かぬまま死神を呼び込みガルシアに突っ込む。

 手首で回されるハルバードは死の体現、しかしその力はガルシアに及ばない。ショルダーチャージとデスストーム、その対決は両者の肩を砕く相打ちに終わる。

 左肩が脱臼したランディと、同じく左肩に裂傷を受けたガルシア。両者の顔には痛覚が存在しないように、いやむしろ受けた傷に喜びを見出しているかのようだ。

 口元に月が浮かぶ。

 

 片手でハルバードを操り反転、更に突進する。それを待ち構えたガルシアは両手を組み、上段から振り下ろす。下段からの切り払いと衝突、しかし片手のランディでは両手のガルシアには勝てない。

「――ッ」

 手首が外れるかのような衝撃、しかしランディはハルバードを手放し衝撃を貫く。バランスを崩したガルシアの空いた顎に拳をねじ込み天を仰がせた。

 しかし迫撃において異常なまでの耐性を持つガルシアは傾いた上体を強引に固定、戻す反動でランディの額に頭突きを見舞う。鈍い音とともに鮮血が弾けランディが吹き飛ぶ。

 地面を両足で滑りながら彼は前方を見、低姿勢のまま地を蹴ったガルシアの接近を見る。弾かれた時には既にハルバードを持っていたランディは左肩を強引に嵌め直し、激痛により感覚を呼び戻す。

 振り抜かれる右をいなし、返す刀で側頭部を一閃すると、自身の速度による影響か、ガルシアはそのまま転げるように地面と馴れ合った。

 完全に上を取ったランディは更に跳躍、身体を一回転して重力と遠心力を加味した一撃を叩きつける。横になった状態のまま左腕を掲げてそれを受けたガルシアは、その一撃を腕一本で耐え抜いた。

「……ち」

 流石に顔を歪めたランディは着地とともに足を振り上げ空いたわき腹を蹴りこむ。それを交差した腕で防いだガルシアはその勢いのままに身体を浮かし、体勢を整えた。

 

「アアアアアアアアアアア!」

 咆哮する。

 理性のない獣は目の前の存在を狩るべき存在としか見ておらず、またそのために受ける損傷を気にも留めていない。

 遠吠えのような叫びにランディも呼応し闘気を高める。二度目のウォークライ、一度外れた肩が痛んだ。

 刹那、ハルバードで顔を守る。身体のところどころに激痛が走る。

「ちぃ――!」

 ガルシアの手を見て先読みし、なんとか横に転げることで追撃を避ける。それでも受けきれない数に口から血が零れた。

 指弾の威力、連射速度ともにエリィが受けたものとは桁が違う。拳による一撃とは比べるまでもないが、まるでショットガンのような攻撃だ。

 連続で転げるランディは機を測り、そして一気に前に駆けた。両腕で顔をかばいながら距離を詰める。右足に被弾、がくりと体勢が崩れた。

「アアアアアアアアアアアアアアアア――ッ!」

 前に傾いた身体を強引に捻り飛び掛る。弾丸になった全身で螺旋を描き、そのままガルシアの右を狙う。

 指弾をやめたガルシアが拳を合わせてくる。空気を切り裂く音が聞こえるほどの速度、威力。しかしそれは飛び込んだランディのほうが勝る。

 ハルバードの刃先と右の拳が合わさった時、何かが砕ける音がした。それはガルシアの骨の破砕を意味する。

 そのまま振りぬいたランディは勢いに負けて身体が泳ぐガルシアに追撃をかけようと左足一本でその勢いを殺しきる。全体重のかかった膝が悲鳴を上げるが気にしない。

 エニグマが起動し戦技が発動、炎熱を纏ったハルバードがガルシアの胸を切り裂いた。衝撃で吹き飛ぶガルシアだが、ランディも流石に追うことはできない。技後硬直で振りぬいたままに固まり彼の敵を眺めた。

 

「ランディさん!」

 ティオが駆け寄る。ランディはそんな少女を見ることもせずに彼方を凝視し続ける。

 そしてその視線の先には立ち上がるガルシア・ロッシ。胸の傷は深く血が服を染めている。しかしそのぎらついた闘気は微塵も揺らいでいなかった。

「ランディさん無茶です! 冷静に――」

 ティオが叫ぶも、ランディは加速する。起き上がったガルシアに一直線で迫りハルバードを振るう。ガルシアはそれを伏して避け、一層強く拳を握り締めた。

 石突で胸部を狙うランディ、しかしそれは瞬時に闘気を高めたガルシアの胸筋を食い破れない。鋭利なために僅かに刺さったそれを掴み取ったガルシア、背筋が凍りつく感覚にまずいと思った瞬間には既に遅く、ランディはハルバードごと上空に打ち上げられた。

「……ッ!」

 腹部を強打されたランディは肺の空気を吐き出し苦痛に目を見開いた。人間を打ち上げるほどの威力、一般人ならそのまま失神してもおかしくないそれを何とか耐え、しかし身体が痺れて体勢を整えることはできない。

「ガァァァァァアアッ!」

 そして、追跳したガルシアはそんなランディを追い越し、背中からその身体をホールドした。丸太のような両腕が食い込み激痛が走る。

 くの字になったランディは頭部が下、このまま落下すれば首の骨が折れるどころか砕け散るだろう。しかし激痛と圧倒的な膂力で締め上げられた身体は身動きが取れない。

 唯一動くのは両腕、しかし背中をとられているためにガルシアを攻撃することは不可能だ。

 そして彼をあざ笑うかのように更に横への重力が加わった。ガルシアは自身の身体を回転させることで落下の威力を底上げする。

 さながらマグナムのように螺旋を描いた人間砲弾は空気を切り裂いて加速、その衝撃を一気に高める。既に首の骨どころではない、このまま落ちれば潰れたトマトか、首のないマネキンか。

 

「ぐぅう――ッ!」

 脱出は不可能、ランディは迫り来る地面を凝視し、腕を振り上げ。

「ウルアアアアアアアアア――ッ!」

 そして、ガルシア・ロッシは最大の一撃を完遂した。

 

 轟音。

 

 土煙を巻き上げて巨大なクレーターを作り上げたガルシアは雄叫びを上げる。その煙が晴れた時、地面には赤い花が咲いているだろう。その手ごたえは十分で、理性のない彼はそれだけで目標の抹殺を成し遂げたことを理解していた。

 しかし――

「……流石は西風の旅団、楽しませてくれるじゃねぇか」

 土煙で汚れ、所々に自身の血を滲ませたランディ・オルランドはそれでも生きている。その理解できない現状を受け入れられないのか、ガルシアは唸りを上げて睨んでいる。

 口から血を吐き捨てたランディは予想以上の軽傷に運がいいと感じていた。事実ガルシアの一撃は完璧であり、彼も抜け出すことはできなかったのだ。

 今彼が立っていられる理由、それは彼自身の覚悟と、ハルバードを地面に叩きつけることで衝撃を緩和したこともあるが、何よりティオのアーツに尽きる。

 あの瞬間、ガルシアをすり抜けてやってきた七耀の加護は確かに彼を助けた。アースガード、物理的耐久力を上げるそれに加え、直後のティアラル。その二つで以ってランディは失いかけた命を取り戻した。

 

 ティオは歪む視界の中肩で息をし、それでも意識を失わないように耐えていた。二重詠唱は不可能な導力魔法において、いくら適正があろうとも連続高速詠唱は危険極まりない。

 それでもティオにはそれができ、やらなければランディは生きていなかった。このくらいの前後不覚など代償にしては軽すぎる。

 そこまでの援護を受けても、しかしランディはティオに対して何も言わなかった。

 ランディがハルバードを一閃する。ガルシアはそれを避けようと動こうとし、しかし左腕でそれを受けた。今までならば容易く受けられた一撃、しかしそれは確かにガルシアの肉にのめりこんだ。

「おらぁ――ッ!」

 ランディが返す刀で上段から迫る。それを受けきれないと判断したガルシアは回避運動を取り、しかし避わしきれずに左の二の腕にそれを受けた。

 ごきりと鈍い音がして腕が歪に曲がる。それに口を歪めたランディは、しかし右から来る一撃に連撃を諦め飛び退いた。

 一瞬の油断か、それは間に合わず肩口に拳が刺さる。回転しながら吹き飛んだランディはしかし空中で姿勢制御、軽やかに着地した。

 

「…………」

「――――だがよ、思考しないあんたは俺でもなんとかなりそうだぜ」

 骨が折れたのか、左腕だけでランディはハルバードを振るう。それは意味のない行動だが、しかし、それに呼応するように地に落下したモノがあった。

「…………」

 ガルシアは何も言わない。

 苦しみの絶叫すらしない。自身の左腕が切り飛ばされても、今の彼には何の意味も持たない。

「おっさん、悪ぃがここで終わりだ。理性のないまま死ぬなんて上等な終わりじゃねぇのは確かだが、それでもこれが俺たちの業なんだろうよ」

 猟兵が満足して死ぬ場所など戦場しかない。いや、満足の如何など関係なく、一度猟兵団に身を置いた存在が死ぬ場所は戦場でしかなかった。それを何より彼は理解していた。

 ガルシアは元猟兵、戦場で死ぬ運命にある。たとえ望まぬ場所であってもそれが宿命にして業なのだ。

 だからランディはここでガルシアを斬る。せめて介錯くらいは同じ自分がやらなければならない。

 

 ランディは痛む肩を弛緩させて暫し待った。待ってしまった。それは彼の捨てきれない感情と習慣だ。

 しかしそれは幻想、今の彼にはそんな存在などいなかった。

 

「ランディさん」

 

 ティオがランディに並んだ。それでも視線を向けることのない彼は、そうして、下から拳を受けてよろめいた。

「……何しやがる」

「大馬鹿野郎につける薬なんてこれぐらいしかありませんっ!」

 大声で叫んだティオはそれだけで呼吸が荒くなる。精神力に呼応して体力も減っていた。それでも目の前の馬鹿にならなけなしのそれらをくれてやってもいいと思った。

「なんで一人で戦っているんですか! 私のことなんて気にしないでバカみたいに突っ込んで! その癖一人でピンチになって、助けられても一人のままで! 自分のことなんて全然考えない戦い方で心配かけて、それで困ったらわたしを頼るんですかっ! いないみたいに振舞うくせに回復の期待なんかして! 冗談じゃないですっ、最悪ですッ!」

「…………」

「ミレイユさんのことだって言いたいことたくさんあります! でも今はそれより大事なことがあるから言わない、そんな当たり前の判断くらいわかっているでしょう!? ならランディさんはそれに報いるべきです! 一緒に戦うことを認めるべきですっ!」

 

 言い切ったティオはそのまま苦しそうに目を瞑り歯を食いしばる。

 そしてそれを待っていたかのようにガルシアが突進、ティオ目掛けて跳び蹴りを放つ。もともとの運動能力を鑑みても彼女に回避できる運命はやってこない。

 そのまま吸い込まれるように少女の胸元に足が伸び――

「……っ」

 そして、ハルバードがそれを受け止めた。両手を激痛が襲う中、ランディは自嘲する。

「ランディ、さん……」

「……ほんと、俺はもうやめたつもりだっつーのに、どうしてこう痛いとこ突くのかね」

 ガルシアを吹き飛ばし、ランディはハルバードを回す。風車のようにくるくると舞うそれはまるで遊んでいるかのようだ。

 動きが、止まる。

 切っ先が地面を指す。

 左足を前に半身となり、全体重をそこにかけた。

 

「それはあんたも同じだ、おっさん。俺じゃなくてこいつ狙うとはやってくれるじゃねぇの。ティオすけ、肩治してくれ」

「――――はい!」

 ティオが詠唱し、水の力が右肩に注ぎ込まれる。しかし回復力は僅か、痛みも完全には退いてくれなかった。

「無茶させたな。いい薬だぜ、ほんとによ」

 ランディは静かに眼を閉じた。高ぶっていた闘気が嘘のように全身が凪を為す。その静けさにガルシアも沈黙した。

 どこからか風が吹いてきてランディの後ろ髪を揺らす。僅かに浮いたそれが再び背中に着地した時、ランディはその静けさを切り裂いて赤紫の闘気を極限まで放出した。

 髪が揺れるのは今度は風のためではない、それこそがオルランドの息吹である。

「オオオオオオオオアアアアアアア――!」

 ガルシアもわかっているのか、今までで一番の気の高まりを見せる。それはまさにキリングベア、人を容易く圧殺する暴力の体現である。

 ガルシアのそれに比べればランディのものは確かに小さい。しかしティオが感じる力の大きさは互角だった。

 故に彼女はなけなしの力を振り絞る。まだ共闘は始まっていないのだから。

 

「こぉぉおおおおおお――」

 呼吸は細く、低く。全神経は得物の切っ先へ、見るのは終わりの未来のみ。

 赤い正座のシンボルである紫の蠍、それが意味し、強調するオルランドの業の粋。

「アアアアアアアアアアアアアアア!」

 ガルシアが疾走する。その速さは圧巻、巨体が迫るには速過ぎる。

 対し、ランディも走った。互いの全力疾走は開いていた彼我の距離を一瞬で零にする。ランディの間合いに入り、そして、ガルシアの領域に踏み込んだ。

「――ッ!」

 右腕が振り抜かれる。それまでの加速も合わせた最速の拳は大岩すら破砕する殺人熊の一撃、受けた武器ごと絶命させる。

 それを焼けるような空気で察したランディは故に防御を選ばない。間合いに入ったのはガルシアが先だ、つまりは先手を取ったのはランディに他ならない。

 テイクバックは右腕の引き絞り、槍のように直線を向け、それを一気に解放する。

 それは蠍の尾、その一撃は毒などいらず威力でもって必殺を完成させる。

 

「デススコルピオン――ッ!」

 絶命の軌跡を進むハルバード、それはガルシアの心臓目掛けて撃ち出された。

 同時、ガルシアはその一撃のために右の拳を振り上げ、結果、彼は半身となった。

「ッ!?」

 最大の威力のためにそれまでよりもテイクバックが大きい。本来腕のみのその行動は目的遂行のために今回だけは体幹までを操った。

 その僅かな違いが、ランディの必殺を退ける。

「――!」

 左胸に到達する前、脇を経由したそれは絶命までの時間をコンマ数秒遅らせる。

 その僅かな時間稼ぎはガルシアの必殺を完遂させるには十分だ。蠍の尾が心臓に届ききる前に熊の豪腕が頭部に迫る。

 必殺を覚悟した彼にそれを避ける術はない。

 自身の一撃が外れた時点で死の運命を幻視したランディは――

 

 

 

 ばかランディ――!

 

 

 

 脳裏に過ぎる一人の人物に生きる意志を与えられ、

 

「ランディさん――ッ!」

 

 信じた相棒の力に身を委ね、その絶対死の軌跡を極限の視界で確認した。

 スローモーションのようにコマ送りで迫る右腕、それに対し、時の魔法で加速した彼は全ての力を賭して回避を図る。

 首を捻るだけで終わるそれが遠い。既に放たれた暴力の前にはそんな小さな行動すら遥か彼方だ。

 刹那、爆発したかのような衝撃が左側頭部を襲い、右腕が届いたことを理解する。

 しかし死ぬわけにはいかなかった。

 そんな衝撃の中でも決して色褪せないで脳裏にいる彼女がいる。それが都合のいい幻想だとしても、彼女の前でランディ・オルランドは生を諦めてはいけなかった。

 

 そして決して諦めなかった彼は頭部を破壊する全力を受け、それでも回避をやめず、接触僅かコンマ1秒という紙一重で以ってその死を回避した。

 

 その後に訪れたのは巨体が地に沈む音と荒い息遣い、そして駆け寄るティオの姿。

 

 

「――あばよ、おっさん。お互い苦労するな」

 血に染まったハルバード、それに侮蔑の視線を向け、ランディ・オルランドはガルシア・ロッシに背を向けた。

 その姿に自身を重ねた彼の答えがそこにあった。

 

 

 

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