・話題や登場キャラ、関連用語が若干古いです。よって、最近登場したキャラクターは登場しません。
・タイトルで察しがつく方も多いと思いますが、いわゆる「ケッコンもの」です。私はこの手の作品が大好物なので、ハーメルンに投稿されている他の作品と展開が似ているシーンが何箇所かあるかと思われます。
・シーンによっては、多数のキャラが同一空間にいるので、台詞を区別化するために地の文がくどくなっているかと思われます。
以上の点をご了承頂けるのであれば、拙い文ではありますが、どうかこの作品を供養してやってください。
長々とした前書き失礼しました。
人類は地表の7割が水で覆われた水の惑星で、文明を発展させてきた。しかし、そんな人類の繁栄は、突如海より出現した異形の敵《セイレーン》より一変した。
セイレーンの圧倒的な力に対抗する為、人類は過去のいざこざを水に流し、『ユニオン』『ロイヤル 』『鉄血』『
そうした中、人類の総力を持ってしてもセイレーンを完全に撃退できずにいる現状に対して、各陣営間で理念の違いが表面化していく。
そして『鉄血』と『重桜』がアズールレーンから脱退し、4大国家は2つの理念と共に分裂した。
人類の力のみでセイレーンを倒すべきであるとする『ロイヤル 』と『ユニオン』で構成される《アズールレーン》。
セイレーンの力を利用することで世界革新を目指す『鉄血』と『重桜』で構成される《レッドアクシズ》。
人類はセイレーンに対抗するために、未だ多くの謎を秘める『メンタルキューブ』で構成される『リュウコツ』から『艦船少女』を生み出した。各地の基地に艦船少女と軍事基地を整備し、セイレーンを打倒する為に日々海域へ出撃している。
海に面して基地と諸々の施設が立ち並び、潮風の匂いがほのかに香るここは、アズールレーンの最前線である、マドラス基地。
この基地では多くの艦船少女達と、彼女達を指揮し基地全体を統括する役目を担う指揮官が生活しており、さらに奥地の海域を攻略する為、また、セイレーンを打倒する為に艦船少女達と指揮官が切磋琢磨している。
マドラス基地では1日の業務が終了し、日が暮れようとしていた。執務室で書類を片付けて整理していた指揮官は、指揮官業務をサポートしてくれた秘書艦に労いの言葉をかける。
「ベルファスト、今日の仕事はこれで終わりだ。ご苦労だった」
「はい、ご主人様。本日もお疲れ様でした」
秘書艦の席に座っているのは、ロイヤルの巡洋艦でありこの艦隊のメイド長を名乗るベルファスト。彼女は今週の秘書艦であり、たった今その業務が終了した。戦闘のみならず、秘書艦業務や艦隊の生活全般のあれこれなど、全ての作業を文字通り「完璧」にこなしてくれる彼女だからこそ、今日の仕事は普段よりも早く終わった。
「いつも助かる。メイド長の仕事もあるにも関わらず、こんなに仕事が円滑に進むのは君のおかげだ。ありがとう」
指揮官からの感謝の言葉を受けて、ベルファストは「なんてことない」といった様子で微笑む。
「主に使えるのはメイドの務めです。ご主人様より感謝の言葉を頂き、光栄です」
そんな彼女の顔はどこか誇らしげで、指揮官を見つめるその瞳には明らかに好意が見て取れる。
「さて、来週からの秘書艦は...」
「明日からはヘレナ様、その次は高雄様でございます」
「そうか。きっと君のことだから、引き継ぎも滞りなく済むようになっているのだろう」
指揮官は椅子から立ち上がり、部屋の施錠をするために扉の方へ歩いていく。ベルファストも続いて立ち上がり、指揮官の背後にぴったりついて歩く。
「執務室を閉める。先に出てくれ」
「畏まりました」
指揮官はベルファストがそう言ってスッと横を通り過ぎ、部屋から出たのを確認してから執務室の扉を施錠した。
「では、私は私室に戻るよ。君のこの後の予定は?」
「この後は姉と明日の朝食の準備をする予定です。陛下が開かれるお茶会へ出すスコーンの準備もあるので、就寝は少し遅れるかと思います」
「そうか。体調を崩さない程度にしてくれ」
「うふふ、それはご主人様も同じです。一昨日は、寝落ちてしまったご主人様にベルファストの膝枕を堪能していただいたばかりでごさいますよ?」
指揮官は恥ずかしいのか、僅かに俯く。だが、そのままだとベルファストに1本取られたようできまりが悪いと思ったのか、少し開き直ったような態度をとる。
「そんなこともあったかな...... 機会があればまた頼む」
しかし、彼女は完璧で瀟洒なメイドであるベルファスト。受け答え方......言い換えれば、からかい方を心得ていた。
「はい。いつでも、心ゆくまでお楽しみくださいませ」
「敵わないなこりゃ...」という指揮官の言葉は、外に出ることはなかった。ベルファストは指揮官に仕えて見守ることが好きであったが、それと同じかそれ以上に、彼の困った様子を見るのが好きだった。
ベルファストは執務室の前で指揮官と別れた後、基地の施設である大講堂へと向かっていた。先程の指揮官との会話で気分が良いのか、それとも急ぎの用事があるのか、少し足踏みが早い。それは、彼女が自身の主を欺いてしまったことに心を痛めているからなのか、はたまた別に理由があるのか。
(ご主人様、申し訳ございません......どうかお許しくださいませ)
いつもよりも早く業務を終えた筈のベルファストは、何故急いでいるのか。朝食の準備とスコーンの調理をする筈なのに、何故大講堂へと向かっているのか。いつもなら指揮官が業務を終えた後に紅茶を出すくらいには余裕があるのに、何故今日はそれをしないのか。それは、彼女がこれから向かう先で、このマドラス基地の......艦船少女達の今後の命運を分かつであろう、重大な会議が行われようとしているからであった。
大講堂は熟練の艦船少女達が出撃によって得た経験や知識を、成熟途中の艦船少女達が学んで吸収する為の施設である。『学園』と呼ばれる施設群の中では上記の役目の他にも、その広さ故に会議を行われる場所としても機能している。基地全体が水平線に沈む夕陽の光を浴びる頃、そんな大講堂には用は無い筈の「熟練の艦船少女達」が集まっていた。
「失礼いたします。ベルファストでございます。秘書艦業務が終了したので参りました」
大講堂に到着したベルファストは大きな扉を3回ノックし、扉を開ける。すると、会議室となった大講堂に既に集まっていた艦船少女達がベルファストの方に目を向ける。それは、会議の開始の合図であった。
「機材の準備は完了しているし、メンツも集まったようだから始めるぞ」
円く囲まれた、さながら円卓のような席から、黒い軍服を着流して銀髪の長髪に白い軍帽を被った艦船少女が立ち上がる。
「あまり御託を並べるのは好きではないが......今日の会議に貴女達が集まってくれたことに感謝する。ユニオン代表のエンタープライズだ。よろしく頼む」
彼女はユニオンのヨークタウン型航空母艦、エンタープライズ。この艦隊の中でも最高峰の練度を誇り、その圧倒的な航空攻撃で敵陣を火の海に沈めてきた。今回の会議で進行を務める彼女が招集をかけて集まったメンバーとは。
「では、まず初めに本会議を中継で見ているであろう『対象』となっている艦を、それぞれの陣営から確認も兼ねて報告してもらおう。まずはロイヤルから」
円卓に集まった艦船少女は、この基地における4大陣営の艦隊をそれぞれ先導する文字通りの強者達。彼女達が醸し出す雰囲気は、さながら首脳会議である。そして、各陣営の代表が口を開く。
「ロイヤル代表、クイーン・エリザベスとフッドよ! ベルは会議進行の補佐としてここにいて頂戴。ロイヤルの対象艦はフッドから説明させるわ」
彼女こそ、ロイヤル王家の女王であり政務もこなすロイヤルの中心人物、クイーン・エリザベスである。彼女の横に座るのは同じくロイヤルの巡洋戦艦であるフッド。ロイヤル所属の艦船少女の対象艦は彼女が説明するようだ。
「それでは、私から紹介させていただきます。ロイヤル所属の対象艦は.......」
フッドはつらつらと艦船少女達の名前を挙げていく。
「.......以上がロイヤルからですわ」
「一番多いだけはあるな......次はユニオンだ」
「よし、じゃあ私......じゃなくて、ユニオン代表のクリーブランドから紹介するぞ」
ユニオン代表は、長い金髪とサイドテールが特徴的な軽巡洋艦のクリーブランド。戦闘ではオールラウンドな実力を発揮し、どんな場面でも平均以上の戦闘能力を発揮する。
「......以上、ユニオンからだ」
エンタープライズはそこそこいるな...と呟いて次の陣営の紹介を促す。
「次は重桜から頼む」
「重桜代表、赤城と加賀ですわ。本日はよろしくお願いしますわ〜 」
重桜代表は一航戦の赤城と加賀。他の艦船少女とは異なり、狐のような耳と尻尾がそれぞれの身体から生えている。これは、セイレーンの力を身体そのものに取り込んだ結果である。重桜の艦船少女には身体のどこかしらに動物のような耳や尻尾などを生やした艦が多い。
「......以上ですわ」
「最後は鉄血だな」
「鉄血代表、グラーフ・ツェッペリンとプリンツ・オイゲンだ」
鉄血の代表は、椅子に腰掛けて足を組んでいた銀髪赤眼の空母、グラーフ・ツェッペリン。自身の耐久性能もさることながら、鉄血陣営の艦船少女の受けるダメージを軽減させることもできる、鉄血における守護の要。一方、プリンツ・オイゲンは前衛の守護の要である。グラーフ・ツェッペリン同様高い耐久性能を誇り、極め付けはシールド展開能力を持つ。この能力を持つ艦船少女は限られており、敵艦隊に撃破されることは滅多に無い。
「......以上、鉄血からだ」
「紹介感謝する。今名前が挙げられた者達は、この会議の中継をそれぞれ自室で見ているだろう。では、当艦隊内で好感度が『愛』に達した艦の確認が終わったところで、本題に入ろうと思う」
そう。ここにいる艦船少女は、指揮官への好感度数が『愛』である者だけである。無論、先程各陣営毎に紹介された艦船少女達も皆、同様の条件を満たしている。
「貴女達は既に承知だろうが、この会議で議論するのは.......」
このマドラス基地はアズールレーンの最前線であり、数ある艦隊の中でも指折りの戦力を保持している。そんな艦隊における熟練の艦船少女達が一堂に会する理由とは......
「『何故私達の指揮官は誰ともケッコンしないのか』だ」