今日はケン提督の誕生日。
……といっても特別な何かがある日ではない。ささやかなおめでとう会と艦娘の個人的なプレゼント贈答がある程度のほんのちょっぴり浮かれている日だ。
提督だって男なのでかわいい艦娘達からプレゼントを貰えれば嬉しいし、何もくれなかったらちょびっと落ち込む。
真面目そうな見た目のくせして面白お姉さん枠の大淀から。普段からちょっとツン気味な加賀から。新入りだけど苦労人気質の吹雪から。いつも何を考えているのかわからない漣から。ツンデレの見本市の叢雲から。その他にもたくさんの艦娘からプレゼントを貰った提督はそれでも落ち込んでいた。
それは今隣で秘書の仕事をしてくれている赤城から何も貰えなかったからである。
ケン提督がプレゼントを貰うたびに「わあ、すごいですね」「流石は人気者のケン提督です」などと褒めては貰えるものの、プレゼントを渡してくれる気配はない。
声を掛けられる度に落ち込んでいく提督を見て赤城は苦笑いをするだけだ。
期待するだけ無駄だったのかな…と遠くを見る提督。彼の頭の中では赤城との思い出が上映されていた。
胸に手を押し付けられた事…。パロスペシャルを極められた事…。おやつのチョコをカレールーにすり替えられてた事…。エロ本の趣味に全力で理解を示された事…。
あ、ロクな思い出が無いやと提督は上映会を中止した。
なんでこんな変人の痴女なんか気になってるんだろうかと自嘲気味にため息を吐く。
ちらりと時計を見やる。時刻は夜も更けて11時50分。提督の誕生日ももう終わりだ。
ワンチャンないかな…と彼女を見ると、ばっちりと目が合った。
「提督」
その一言で彼の体は硬直。赤城は照れるようなそぶりを見せた後、どこから取り出したのか大きなプレゼントボックスを提督に差し出す。
「正直、何を渡そうか迷ったのですが…ぜひ、受け取ってください」
提督は理解した。
彼の心の中で天使が踊り狂いながらジェリコのラッパを響かせ、流れ星が荒れ狂う稲光のように押し寄せ、盆と正月がブレイクダンスを踊った。
「ちょっと恥ずかしいので、開けるのは自分の部屋でお願いしますね?」
小首をかしげながらニコリと笑う赤城。
それを見た提督は胸の鼓動を抑えることができない。彼は自分が恋に落ちているのだと強く実感した。
1:20XX/12/20
今日は提督のお誕生日です
おめでとうございます
[添付 コラ画像]
名無しスペシャル:20XX/12/20
こいついつも祝ってんな
名無しスペシャル:20XX/12/20
申し訳ないが雑コラはNG
名無しスペシャル:20XX/12/20
誕生日プレゼントもう決めた?
1:20XX/12/20
決めてない。アヘ顔総集編とラブラブエッチ本のどっちにしようか
早く決めないと提督の心こわれちゃーう
[添付 アヘ顔本]
[添付 イチャイチャ本]
名無しスペシャル:20XX/12/20
芋系美女はスケベなことしか考えないのか(偏見)
名無しスペシャル:20XX/12/20
おっ、待てぃ(涼風っ子)
まだ肝心な本忘れてるゾ
[添付 トロ顔ドスケベ本]
[添付 触手ドスケベ本]
[添付 名伏し難きドスケベ本]
名無しスペシャル:20XX/12/20
エロ本は確定なんですね
名無しスペシャル:20XX/12/20
何プレゼントしたらいいかこれもうわかんねぇな
お前どう?
名無しスペシャル:20XX/12/20
んまあ、そう…どれ選べばいいかわかんなかったです
名無しスペシャル:20XX/12/20
だが待ってほしい。どれかに絞る必要はあるのか?
1:20XX/12/20
と、いいますと?
名無しスペシャル:20XX/12/20
プレゼント…それも一冊や二冊ではない……
全部だ!
1:20XX/12/20
なんと…!やはり天才じゃったか…!
名無しスペシャル:20XX/12/20
流石ケン王様
強欲でいらっしゃる…
名無しスペシャル:20XX/12/20
ケン提督だけに
1:20XX/12/20
もう日付変わりそうじゃんアゼルバイジャン
今から取りに行ってたら今日に間に合わない
名無しスペシャル:20XX/12/20
時既に時間切れ
彩雲01:20XX/12/20
チワーミカワヤデース
こんなこともあろうかとワイが持ってきてやったぞ
名無しスペシャル:20XX/12/20
来た!彩雲きた!
名無しスペシャル:20XX/12/20
メイン彩雲きた!
1:20XX/12/20
これで勝つる!
ところでこれどうやって渡そう?
安価↓3
名無しスペシャル:20XX/12/20
痴女っぽく
名無しスペシャル:20XX/12/20
ドスケベ
清楚マン:20XX/12/20
清楚!清楚です!
名無しスペシャル:20XX/12/20
淫ピ風
名無しスペシャル:20XX/12/20
舌なめずりしながら
名無しスペシャル:20XX/12/20
清楚マンしゅごい
名無しスペシャル:20XX/12/20
おっp…おっぱげた…!
清楚マン:20XX/12/20
やったあああああ!!!優勝した!!!11
1:20XX/12/20
>清楚マン
おめぇなかなか…いい安価してんじゃねぇか
じゃあ俺の清楚パワー見たけりゃ見せてやるよ(自慢げ)
名無しスペシャル:20XX/12/20
赤面してぇ!
名無しスペシャル:20XX/12/20
首傾げてぇ!
名無しスペシャル:20XX/12/20
ニッコリ笑ってぇ!
名無しスペシャル:20XX/12/20
まだ入るぅ!
名無しスペシャル:20XX/12/20
突然のウメハラはだな…
名無しスペシャル:20XX/12/20
※ウメハラは何も喋っていません
名無しスペシャル:20XX/12/20
清楚っぽくプレゼントボックス渡してるけどこれってエロ本渡してるだけなのよね…
名無しスペシャル:20XX/12/20
言われてみればその通りで草
「あれ?提督、どうしたんですか?」
次の日の朝。吹雪はケン提督を見つけた。その背中は煤けており、覇気といったものがまるで感じられない。
「なあ、吹雪」
「なんでしょう」
吹雪は心配げに提督の顔を見上げる。そこには諦観したような男の顔があった。
彼は話すべきなのか少し迷ったように視線を彷徨わせた後、乾いた唇をゆっくりと開く。
「俺ってエロいのが大好きに見えるのか…?」
「ええっ!?」
その後吹雪がどう答えたのかは彼女自身も憶えていない。ただ、また赤城さんがやらかしたんだろうなぁという漠然としたイメージだけは頭の片隅に残っていた。