なお、この作品のイストワールは、超次元にいるイストワールを大幅に改修したものになっています。
四条大橋の辺りを歩いていると急に身体が震え出しました。熱や病気の類ではありません。通信が入ってきました。簪さんからです。
「あば、あばばばば…」
「ありゃ、何かあったか。イストワール、下へ降りるよ」
夕凪さんに連れられて、橋の下の道に降りました。流石に目立つので。
「それで、何があった?」
「簪さんの乗っているモノレールが暴走しているらしいんです」
「モノレール?京都にそんなものあったかな?それはともかく運転士に何かあったわけじゃないのか」
「ちょっと待ってください…、簪さん、モノレールは無人運転ですか?」
「無人です!コンピュータ制御で…」
音声が途切れてしまいました。これは不味いですね。直ぐにでも現場に向かった方が良さそうです。
「夕凪さん。私、少し様子を見てきます」
「はいな。私は根っこを叩いてくる。もしかしたらあれを使うかもしれん。その事は頭に入れておいて」
「無茶苦茶なことを考えないでくださいよ。私が巻き添えを食った事だってあるんですから」
「わかってるって」
夕凪さんは一気に駆け出して、女神化して飛んで行きましたそういえばあの人は他の女神と違って、姿を隠せるんですよね。便利です。私も同じですが。
「さてと、私も準備した方が良さそうです…」
本を清水寺の方向に飛ばしつつ、電子戦用の準備をします。腕は多めにしますかね。
さてとモノレールは、ありましたね。かなりの速さで走行中のようです。早いこと取り付かないといけませんね。
本の表紙からマグネットアンカーを射出して、車体に取り付きます。進行方向からして2両目に取り付くことが出来たみたいです。
「簪さん、モノレールに取り付きました。今の状況は?」
「制御が完全に乗っ取られています!今、侵入された痕跡を探っています」
「分かりました。それでは私も尻尾を掴むことにします」
円状のパネルを展開して、制御系にアクセスします。こういうことなら私もそこそこ動けますから。前に修復された時、OSを新調してもらいましたし。
「いざという時は、マシンジャックを使いましょう…」
「さてさて、大体痕跡は掴めてきました。簪さんにデータを送って…」
「いーすんさん!大変です!このモノレールに時限爆弾が!」
「爆弾ですか!タイマーは⁈」
「残り12分です!おまけに高熱原体も接近しています!」
何なんでしょうかね。この学校。疫病神にでも取り憑かれているのでしょうか。
「爆弾は、私が何とかします!簪さんは制御系を取り戻してください!」
「了解!」
作業用のアームを背中から展開して爆弾探知にあたります。
「爆弾となると急がないと。何かの拍子にタイマーが早まったり、故障したりすれば、乗客の人達はおしまいです」
伸縮式のアームを使い、あちこち探ってみることにしましょう。こんな時でも冷静に。焦りは禁物です。
「拍子抜けしてしまいました。こんなところにあったなんて…」
まさか車体の上にあるとは。しかもサブアームを使って持ち上げたら、簡単に取れる場所にあるとは思いませんでした。
他に爆弾はないようです。さっさと空中に持っていかないと。ところで、
「高熱原体の方は大丈夫ですか?」
「そっちは、例の彼が押さえています!」
「分かりました!簪さん、爆弾は取り外しました。これからどこかに捨ててきます!」
「ありがとうございます!」
アンカーを切り離し、モノレールから離れます。
さて放り投げてもいいのですが、それだと何処かに残ったままになる可能性もあります。ならば……、
「こういう時に古くなったものは役に立ちますね…」
古いアームに爆弾を括り付けて射出します。そしてこれを………、フィンガースナップをして爆破させます。
「やれやれ、こっちは片付きました…」
「いーすんさん、大丈夫ですか⁉︎」
「問題ないですよ。そちらは?」
「何とか車両のコントロールは奪えました。モノレールは停止しています。ただちょっと不味いのが、高熱原体を押さえていた彼がやられました。今から迎撃に代表候補生達が出ます」
「分かりました」
この間、道を教えてくれた子が落とされてしまいましたか。状況としては微妙ですね。
モノレールまで向かう途中
「おや、夕凪さんからです…。どうかしましたか」
「主犯のウサギ2匹を捕まえた。生かしたままは無理だったが」
「無理だったんですか」
「お互いを狼に見せて、互いに戦わせたからね。被害もその方が小さいかと思って。それにこの方法なら私が手を出したわけじゃないから、罪に問われることもないし」
「まあ、分かりましたよ。簪さんの乗るモノレールに熱源が迫っているみたいです。おそらくISかなんかでしょう」
「私もそこまで行くよ、座標送って」
さてISだった場合、ちょっと面倒ですね。あまり大きな被害は出したくないですし。あれを使いましょう。
「簪さん。代表候補生の方々に直ぐにモノレールまで引き上げるように伝えてもらえませんか。お願いします」
「ちょっと待ってください」
向こうで少々話し合っているみたいですね。まぁ、無理もないでしょう。素性も分からない相手が、あれこれ言ってくるのだから。おまけに姿も見えないのでは、警戒しますよね。
「何とか先生から許可は貰えました」
「ありがとうございます」
無事、許可は貰えたようですね。それではこちらも始めましょう。
「バイザーをしている操縦者が襲撃者です」
「分かりました」
腕のワイヤーを彼女めがけて打ち出します。上手く引っかかってくれたみたいです。姿を隠せることが役に立ちました。
向こうも気づいたようですが、もう遅いです。
「マシンジャック、発動」
相手のISの制御を乗っ取り、機能を停止させます。停止した場所が空中なので、相手はそのまま落下していきました。まあ、こんなものでしょう。IS学園の生徒さんが彼女を受け止めたので、どうにか助かったようですが。
「嗚呼、疲れました。こんなに長く事情聴取されることになるとは…、まあISの技術を流用したものだと言って何とか納得してもらえましたが…」
クタクタです。あの後、警察や引率の先生から色々聞かれて大変でした。まさか魔法なんて口が裂けても言えないことですし。
「まあ、お疲れ様。私よりも大変だったみたいだし」
「夕凪さんの方は大丈夫だったんですか」
「一応、色々聞かれたがね。しかし驚いたさ。あの引率の先生、今回の主犯と知り合いだったとはね。少しショック受けてたよ。まぁ、身体をいくら強化しても人間だしね。エリルに睨まれた兎の最期と同じ。終わりが来ただけ」
「それで納得できるといいのですがね」
「まぁ納得できなくてもいいさ、それが人間だ。それに私は…」
夕凪さん、いやエリルが珍しく笑った顔でこう言いました。
「あの子が守れたのだからそれで満足!」
「そうですね」
京都の夜景を眺めながら、2人で笑いあいました。
京都の夜景は、2人にとってオアシスになったことでしょう。