Smile   作:ヨザリイコイ

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何で楯無さんは一夏君経由で機体データを送ることを思いついたのでしょう。ずっと疑問です。


気晴らし

 最近、例の男性操縦者にタッグマッチ・トーナメントで相方になってほしいと何度も頼まれる。とてもじゃないが無理だ。彼に責任がないのは百も承知だが、何で自分の機体が開発中止にされた原因の人間と組まなきゃならないんだ。彼はそのことを知らないかもしれないが、私からしたらとてもじゃないが無理だ。

 当然断ったが、それでもしつこく何度も頼んでくる。一応、理由も言ったが、それでも食い下がってくる。どうしたものか。

 そもそも彼は何で私にあんなに頼んでくるのか。おかしい。彼のクラスには専用機持ちがかなりの数いたはず。何でわざわざ未完成の専用機を持っている私に声をかけてくるのか。あまりにも不自然だ。

 一度、理由を問うてみたら私の専用機が見たいというまるで理由になっていないものだった。そんなことで組む相手を選ぶ筈がない。ただあの理由擬きも私に聞かれて咄嗟に出した答えだからおそらく本心ではない。彼はどんな理由で私と組みたがっているんだ。姉さんが裏から手を回している可能性も考えられなくはないが、そう考えるのは早計だ。じゃあ何で?そもそも彼は私が専用機を持っていないことを知っているのか。いや知らない筈。だから機体が見たいと言ったのかもしれない。本音に探らせるのもいいかもしれないけど、それこそ姉さんの介入を招くことになりかねない。

「考えていても仕方ないや。外に出よう」

 気分転換に外出しよう。こんなこと考えてたんじゃ機体開発にも支障が出る。整備室や寮だとしつこく頼みに来られるかもしれないし、鬱陶しい気分にされたんじゃたまったもんじゃない。さてさてどこに行こうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 モノレールと電車を乗り継ぎ30分、実家の近くの駅に降りる。

「えーっと確か公園は…こっちかな」

 例の公園はそんなに離れていない。歩いてすぐに辿り着けるからいい。

「実家よりも実家らしいや」

 気軽に帰れる場所という意味では、公園の方が実家よりもずっと居心地が良い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「夕凪さんは…、あっ、いたいた」

 ベンチの上で横になって昼寝していた。相変わらずの見窄らしい格好だったが、前と一つ違うところがあった。それは…。

「両腕がない…」

 どういう訳か知らないが両方とも腕が無いのだ。右腕は肘から下がなく、左腕に至っては肩から下がなくなっている。

「何かあったのかな」

 言葉が聞こえたのか夕凪さんが起きた。

「ん、あー、ありゃ、簪ちゃん、お久しぶり」

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりに来てくれたねー、ありがとう」

「いえいえ、それよりもその腕…」

 夕凪さんは大したことじゃないようにこう言った。

「ああ、この腕のことー?此れはずっと前にねー、モンスターや他の女神と戦ってねー、無くしちゃったんだー。それ以来ねー、ずっと義手を付けてるんだよー」

 とても壮絶な理由だった。どんな相手と戦っていたんだ、この人は。

「今はイストワールが直してくれているから付けてないだけだよー」

 イストワールって聞いたことがない名前だ。

「あー、イストワールのことは言ってなかったねー。私の付き人みたいな人だと思ってー」

「付き人ですか…、信頼できる人なんですか…?」

「できるよー、仕事は遅いけど正確に仕上げてくれるしー、手先は私よりも器用だからー」

「いいなぁ…、私の場合、あんまり信用できないから…」

「ありゃ、付き人がいるってことはー、何処かのお嬢様なのかな?」

「まぁ、そんな所です」

「そっかー」

「でも…、前にも言った通り、実家には居づらいし実家と縁のある人間はあまり信用できないんです。私の付き人、本音って言うんですが、ちょっとね…」

「へぇー、何で?」

「親友なんですが、姉の差し金じゃないかと…、どうしても疑ってしまって…」

「ああ、なるほどねー。お姉さんとも面識があるんじゃ無理ないよねー」

「それで…、少し探ってもらいたいことがあっても頼みづらくって。姉さんに知られたくない内容ですから…」

「漏れちゃうと嫌だものねー」

「口は堅い方なんですが、姉さんと繋がっていたとしたら…、とどうしても警戒してしまうんです」

「それはそうだねー。他に頼りになりそうな人はいるのかな?」

「いないです…。夕凪さんくらいしか…」

「それはありがとう。頼ってもらえて嬉しいよ」

 間伸びしない口調でお礼を言う夕凪さんは少し嬉しそうだった。

「少し質問してもいいかな」

「何でしょう」

「こんなこと聞くのは何だけど、どういう内容を探ってもらおうとしたのか、差し支えなければ教えてもらえないかなぁ。耳打ちで」

 耳打ちか…、それなら内容があまり漏れなさそう。

 私は例の男性操縦者がしつこく誘ってくる理由を探ることを依頼しようと考えていることを教えた。

「あー、なるほどねー。なんか変だよねー。普通、そんな理由で誘おうとはしないよねー」

「やっぱりそうですか」

「多分だけど誰かに頼まれてるんじゃないかなー、お姉さんとかー」

「そ、その可能性だけはあって欲しくないです」

「そうだとしたらー、人のこと馬鹿にしているよー」

 全くだ。

 

 

 

 

 

 

 夕方になりイストワールという人が夕凪さんに義手を届けに来た。義手は何種類かあり、今取り付けたものは久しぶりに使うものらしい。3本指のアームにビーム砲なんて義手は、早々使い道無いだろうしなぁ。

「簪ちゃん。時間はまだ大丈夫?」

「少しなら大丈夫です」

「それじゃあ少しこの辺りを飛んでみる?気晴らしになるかもよ」

「そんなこと出来るんですか…、ISも何も無いのに…」

「これくらいしか得意なことないのさ…、それと今日は力が戻ったから…」

 そういうと夕凪さんが少しずつ姿を変えていく。くしゃくしゃの長い髪の毛は少し纏まった淡い青色の髪に変わり、服も腰にランタンを引っ掛けた空色のボディスーツへと変わっていく。最後に、虹彩の色が夕焼けのような淡いオレンジ色に変わり、白字のスタンバイシンボルが真ん中に灯った。絵画に見るような女神像とはまるで違うけど、とても綺麗だった。

「お待たせ、簪ちゃん。女神スカイハート、久々の降臨だ」

 スカイハートさんの背に乗せられて夕焼け空を飛んだ。ISとは違った感覚で新鮮だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここでいいかな?」

「モノレールの最終便に間に合えば大丈夫です」

 あの後、モノレールの駅まで送ってもらった。何から何まで申し訳ない。

「またして欲しかったら言ってね。簪ちゃんが私を信じ続ける限り、いつでも出来るから」

 そういって前みたいにスーッと姿を消した。

「少し気分転換にはなったなぁ…、さてと」

 帰って機体開発に戻ろうっと…。

 




夕凪の女神形態スカイハート登場の巻でした。面白かったら幸いです。ご感想お待ちしております。
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