Smile   作:ヨザリイコイ

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機体を簪さんが放棄して、驚いたのはお姉さんだけなのでしょうか。


本音

 今日も特にやることがなく、のんびりとブランコを漕いで遊んでいた。国にいた頃とは大違いだ。あのボンクラのせいで休む間もなく駆けずり回っていた頃と比べて、本当にゆっくりできる。それにシェアの質も簪ちゃん一人で、十分に良質なものが取れるからプラネテューヌよりも状況はいい。

「心身共に充足していることのなんといいことかー」

 女神になって良かったと思ったのが、国を追い出されてからなんて私ぐらいだろうな。序でに用済み扱いされたのも。

 それにしてもこんな日常がなんと心地よいことか。今の私の名前みたいに、波風立たない穏やかな日々…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日は簪ちゃんは来ないのかな。いや来たくないんだろうねぇ。誰かいるもの。イストワールではないね。人間だ。それにこっちの様子を伺っている。出てこないということは、多分私のことを警戒しているのだろう。こんなホームレスを目立たないように見ている時点でおかしい。前に襲ってきた学生なんか何の警戒もせず近づいてきたからなぁ。

「隠れているのはどなた?出ておいで」

 ブランコに乗ったまま呼びかける。しかし私を見ていた人は何処かに行ってしまった。自分から言っておきながらなんだが、出ておいでと言われて出て来るほど迂闊な人間もないものだ。

「暇な人がいるものだね…」

 私ほどではないようだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから3日に1度の割合でこんなことが起こった。

 最初は気にしてはいなかったが、2週間くらいして流石に気持ちが悪くなってきたので、イストワールに協力してもらった。といっても大したことじゃない。身体を見えなくして見張っている奴をひっ捕らえてもらっただけだ。妙なやつは大体同じ位置にいる。というのもこの公園には、あまり隠れられる場所がないからだ。

 それでイストワールが腕から射出したワイヤーに紮てそいつを連れてきた。その正体は、簪ちゃんと昔ここで遊んでいた子だった。名前はなんていったかな。

「あなた、名前は?」

「…布仏…本音…」

「本音…、はて、どこかで聞いたような?」

「夕凪さん、簪さんの付き人の方だと思いますよ」

「あー、そういえばあの子、自分にも付き人がいるといってたね」

 しかしその付き人の子が何故またこんなことを?大体予想はつくが聞いておこう。

「それで何でこんなことをしていたのかな?」

「かんちゃんが苦労して取った代表候補生の地位と開発中の専用機を………、国の命令とはいえあっさり手放したことが……、納得できなかったから………、それで………」

「原因を探っていたということかな」

 本音という子はコクリと頷いた。

「家の人にも協力してもらって、かんちゃんの動向を探っていたんだ。それで…」

「私達に行き着いたと…」

「は…い」

「なるほどねぇ…」

 この子の頭の中を覗いてみたら機体開発を手伝っていたってあるし。そりゃ気になるわな。あの子が悪戦苦闘して機体を作ろうとしたのも知っていたようだから。疑問に思うのも無理はない。ただ……。

「調べてどうする気だったの?」

「それは……、その…」

 口を噤んでしまった。当たり前といえば当たり前か。こんなこと聞かれて口を開く奴はそういないだろうし。ならば……

「言いたくないのならいいよ。もうこんなことしないでね」

 相手も拍子抜けしたようだ。こんなにあっさりと解放されるとは、思ってもみなかったのだろう。

「どうしたの?行っていいよ」

 その子は頭を下げて、公園から出て行った。

「解放してよろしかったのですか」

「かまわん。用件は頭の中を覗いて確認したから」

「成る程…、それで理由はどうでした」

「単純に理由が気になったのと簪ちゃんのお姉さんからの命令みたいだね」

「そうでしたか…、やはりあのような幕引きでは納得しない人もいるのですね。簪さんは、一応納得していたのですから、そっとして置いた方がいいでしょうに…」

 イストワールの言う通り、外野がとやかくいうことではない。

「それでも気になった人がいるんだろうね。誰かに入れ知恵されたんじゃないかと。でもあれはあくまで簪ちゃんが自ら選んだ選択肢だよ。私は単に話を聞いていた。それだけさ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて…」

 探りを入れられたとなると、そろそろ頃合いだろうか。

「よその街に行方をくらませるか…」

「その方がいいかもしれません。簪さんには申し訳ないですが、あまりいいことではないですから…」

「そうだね…」

 コートからすっと鉄扇を取り出して扇ぐ。

「しかし当分になるか、永遠になるか…。後者にはなって欲しくはないものだね…」

 そうなったらあの子を支える柱がなくなるも同然だから。




本音さんは簪さんからは差し金を疑われていました。しかし従者という立場ではありますが、幼馴染ということもあり、彼女なりに心配していたに違いありません。上手くいけば、彼女の支えになれた人かもしれません。
ただこの作品では、そうはならなかった。それだけのことです。
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