その理由を簪ちゃんに説明しています。
「えっ…、ここにはいられなくなったって…」
驚いた顔をしている簪ちゃん。そりゃそうだ。いきなりいなくなるなんて言い出すとは思わなかっただろうし。
「言いにくいことなんだけど、実は…」
引き払うことになった理由を、簪ちゃんに説明する。
「ああ…、やっぱり姉さんや本音がなんかやってたんですね…。最近、本音が生徒会室によく行ったり、外出するのを見かけていたんです。何かあるなと思っていたけど…、まさかストーカー紛いのことをやっていたなんて…」
どうも簪ちゃんも薄々感づいていたらしい。どうしたものかと頭を抱えている。
「ただずっと遠くに行く訳じゃない。いつか戻ってくることもあるだろうさ」
「本当ですか?」
「生きてさえいればね」
「生きていて下さいよ。私は夕凪さんを頼りにしてるんだもの。もし何かあったら…」
「大丈夫だよ」
よしよしと背中をさする。ちょっとでも安心させておかないと。
「ちょっと姉さんに文句を言ってきますよ。流石にこれは…」
「そうか…。やめてもらえたら、それに越したことは無いからねぇ」
簪ちゃんが帰っていく。
「そうだ、簪ちゃんー。行く方角は教えてあげるよー。西だー」
「西ですねー」
「そうそうー。またなんかの折に会うかもよー」
公園の端と真ん中で声の掛け合い。これではまるで明日遊ぶ約束をする子供みたいだ。しかしそういう子供と違うのは、いつ会えるのかわからないことだ。私達は少なくともこの子のお姉さんのちょっかいが収まらん限りは、簡単には会いにいけんだろうし。
しかしながら、簪ちゃんのお姉さん。妹がどんな人と会っているのか気になるのはわかる。得体の知れない相手なら尚更だ。とはいえ…………、
「妹との関係修復の手段を破壊した張本人と疑うことはないでしょ…」
この前、捕まえた本音とかいう子の話から察するに、お姉さんは私をそういう風に見ている可能性がある。無論そうじゃない可能性もあるが…。ただ落ち着いて考えれば、原因が自己の失策であることに容易に気づくはずだからなぁ。
「まぁ、逆恨みして襲ってくるようなことはあるまい」
仮にもロシアの国家代表と生徒会長している人なのだ。そんな事をしたらえらいことになるくらいわかっている筈だ。
しかしそうはいかないかもしれない。それは簡単だ。
「IS学園にいる一部の国家代表候補生の素行が良くないという話は聞いているんだよね。ISを無断展開して暴れているなんてこともあるらしいし」
よく問題にならんと思うよ。私はISのことはよく知らないから何とも言えないけど、ルールくらい守れんもんだろうか。
簪ちゃんのお姉さんがそんな人ではない事を祈りたいものだ。まあ、あの子のお姉さんだ。昔の姿しか見たことはないから、どんな人かは知らない。ただ、ISを使って襲いかかるような真似はせんだろう。そんな事をしたらただじゃ済まないのは勿論だが、それ以上にお姉さんにとって避けたいことが現実になってしまうからだ。
「妹の柱になっている人を攻撃したらどうなるか。それがわからない人ではないだろう。何せ…」
あの人にとっても、簪ちゃんが大事な存在であることには変わりないからだ。
如何でしたか。
簪さんのことを大事にしているのは、お姉さんとて同じ事。
それくらいのことは、夕凪も承知しています。褒められた行動ではないですが、気持ちはわかりますからね。
さて、次回はどうなることやら…。
お姉さんはどうするのでしょうね。