ドールズフロントライン ~戦場を闊歩する鬼~   作:クロギ・ヨシロ

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 初めての投稿になります。拙いところも数多く存在すると思いますが、ご一読していただけるとありがたいです。


着任初日

 荒鬼刀哉(アラキトウヤ)は車に揺られ、グリフィンS09地区戦術司令部へと向かっていた。刀哉のみてくれは黒い作業服のようで手先も黒い手袋で覆われ肌の露出が一切ない。首には鍵状のドックタグが下げられていて、たまに入る日光によってほのかにきらめく。特徴的なのは真っ白の髪だろう。染色でも脱色でもなく完全に白髪で左目にかかる程長いのだ、異様な姿見だろう。

 

 乗り心地が悪いせいで満足に寝られず無遠慮にあくびを一つ。そんな眠気を払うかのように紙巻煙草を口に銜え電気式ライターにて火をつける。この人員輸送トラック内には誰一人いないのだ、そんなことをしても怒る者はいない。大小かかわらずトラックが跳ねると刀哉の隣にある一メートルを超える長方形のアタッシュケースは重低音を立てて弾む。それ以外の荷物は司令部へ行けば衣食住など全て保証してもらえるため存在しない。

 キイィ……という鈍いブレーキ音と共にトラックの挙動が止まる。どうやら司令部へ到着したらしい。平然と短くなった煙草を握って潰し、携帯灰皿に捨てる。

 

「さぁて、ここか」

 

 そんなつぶやきをこぼしながら、見るからに重そうなアタッシュケースを左手で軽々と持ち上げトラックから降りる。ふと入口方面を見ると大きくはだけた制服のような服装の少女が立っていた。

 

「おはようございます、指揮官さま、ですよね? 私、カリーナが案内させていただきます」

 

「そうか? じゃあよろしく頼む。俺は荒鬼刀哉だ。気軽に刀哉でいい。そっちの方が短く済むし指揮官呼びは少し苦手意識があってね」

 

「そうですか? では、私のことは気軽にカリンとお呼びください」

 

 そんな自己紹介をして司令部内に入る。廊下を共に歩き、司令室まで案内され周囲を見渡す。これからここが仕事場になる場所だ。興味がない、というわけではない。

 

「グリフィンの司令室は初めてですよね。いかがですか?」

 

「思ったよりこざっぱりしているな。まあ、あとは使われていない場所を軽く掃除すれば大丈夫か?」

 

「そこらへんはお任せください。何せ私が刀哉さまの後方幕僚として責任を持って取り掛からせていただきます」

 

「へえ、ということは意外と頭がいいのか」

 

「意外って何ですか、いがいってー!」

 

 ぷんすかと怒るがなかなかにかわいらしい。こういうことが気軽にできるのは良いことだ。

 

「冗談だ、冗談。……にしても、こんな人間が指揮官、か。世も末だね」

 

「大丈夫ですよ、グリフォンの選抜試験は厳しいことで有名ですから。戦術指揮官になるだけの立派な才能があったんですよ」

 

「そういうことじゃないんだが……まあ、いいか」

 

 やっはっはっ、と意味深な発言に突っ込まれないように笑い声をあげる。これは刀哉が持ってきたアタッシュケースに関係があるが今は重要ではないので説明は省く。

 

「じゃ早速、仕事をしていきましょう。戦術マップに切り替えてください」

 

 そう言われ、スクリーンを見る。言われた通りに戦術マップというヤツにスクリーンを切り替える。

 

「では、刀哉さまよろしいでしょうか? 戦術人形は準備できていますので、いつでも作戦に移行できますよ」

 

 準備された戦術人形のリストが表示される。ここから選択しろ、ということらしい。

 

「人形を配置して訓練を始めましょう」

 

 その掛け声と共に初めての指揮が始まったのだった。

 

―――――

 

 訓練は終了し、撤収の段階に入る。酷くあっけないものだったのをよくよく覚えている。そんな感想を抱いている中、ステンmk-2が森の奥地から出てきたのを確認した。

 

「すいません、グリフィンの方々ですか? 一緒に連れて行ってもらってもいいですか?」

 

 刀哉は警戒しながらも異常がないことを人形たちに確認させ、はぐれたグリフィンの人形を同行させた。どうするのかをカリンに確認する。

 

「ああ、迷子になっていた人形ですね。かわいそうに……。刀哉さまに拾われて幸いでしたね」

 

「人形と言っても一応軍事用だろう? どうして迷子なんぞに」

 

「この頃、鉄血の襲撃が多くなってきまして……」

 

「ああ、なるほど。それで敗残兵みたいな感じで取り残された人形がいるわけだ。……時々戦場でも見かけたなぁ。鉄血に見つかった人形は酷い有様だったのを良く覚えているよ」

 

 カリンは首をかしげる。刀哉が言ったことに少し理解が追い付いていないらしい。

 

「あれ、刀哉さまは戦場に行ったことがあるんですか?」

 

「人形が配備される前から軍需施設周辺を護衛していたんだ。そこじゃあ、ちょっとした争いごとがしょっちゅうでね。それと、グリフィンに応募をする前は実家の周りに鉄血がいてねぇ。……そういう点ではほかの人よりはある程度戦場というヤツを知っている人間ってことになるかな」

 

「なるほど、それはちょっと前世代的ですね」

 

「仕方ない。まだ人形が普及し始めて間もない頃だからねぇ。十分な数を揃えられなかったんだ」

 

 お手上げのリアクションをする。とりあえずこの話を終わらせて、人形の助けることで自己理解する。

 

「これからは積極的に助けてあげてください。戦力拡大や人形の発注で生じる手間を省くだけでなく、『かわいいは正義』というヤツです! そうでしょう?」

 

 それを聞いた刀哉は一瞬呆けたが、言葉を理解した瞬間に声を上げて笑った。

 

「そうだねぇ。『かわいい』はいいことだからね」

 

 そうですわ~! と元々の口調が出てきていた。調子のいいことだ、襲撃が激化しているとしてもネタ話ができる程余裕があればこの状況はいい方向へと転換していくだろう。

 

「それと人形の中から副官を選んでくださいな。選んでおけば戦場でも意思疎通がはかどりますから」

 

「副官? 後々でも大丈夫かな。そこらへんはもう一回訓練を実施して吟味したい」

 

「わかりました。では話を戻しますと、人間にしろ人形にしろそれぞれ自分の意志を持ち、今を生きています。だからこそ助けてあげてください。その心意気は仕事にもきっと影響していい方向に向かっていくと思いますから」

 

「了解。そうするよ」

 

 こうして着任後初めての訓練は終了したのだった。




 こんな感じの駄文です。次がいつになるのかは未定ですのでそこらへんもよろしくしていただけるとありがたいです。

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