ドールズフロントライン ~戦場を闊歩する鬼~ 作:クロギ・ヨシロ
接客業務が大半の職場なので、「ショウガツヤスミ? ナニソレ……。」ってなっていました。
休みたい……。
因みにこの司令部はある程度はホワイトです。カリーナもショップに常駐できる時間があるくらいにはホワイトです。その分、指揮官である刀哉が頑張ってます。
収納庫にて資材を確認しているとき、ふと暗がりの片隅に体育座りをした人形を目撃した。
「確か……一〇〇式といったかねぇ」
部下になる名前を覚えるのは指揮官として当然の対応、という思考があり配備された全員分の名前を覚えておいたのが功を奏したらしい。
制式名称・一〇〇式機関短銃。部隊で唯一日本製の銃器を持つ黒いセーラー服を着た人形。世話好きでお節介。この性格が今回の作戦で迷惑な方に向いてしまい、作戦後年長者のナガンm1895に怒られていた、というより釘を刺されていた、に近い。しかし、生真面目な性格が自分を必要以上に追い詰めてしまったらしい。
同じ極東出身者の刀哉にとっては心苦しい話であり、そうでなくても部隊内の不信感は作戦を実行する際に重大な障壁になるだろう。まだ大きい司令塔であれば別の部隊に移動させることもできただろうし、運営に嘆願書を出して日本出身の銃を持った人形を異動してもらうこともできただろうが……。できないことは仕方がない。ある程度気晴らしになればいいと思い、話しかける。
「お初にお目にかかります……」
と自己紹介をして話をしようかと次の言葉を発する前に。
「あっ……、もしかして解体……ですか?」
今にも泣きだしそうな声と共に刀哉にとって想像もしていなかったセリフを言う。そんな酷く直球な言葉に次に言うはずだった文を忘却してしまった。
「や、やや、やっぱりそっそうなんですねっ」
「違う違う違う! そうじゃない、そうじゃあない」
これはいけない。素晴らしい程に自分を追い詰めている。ここまでのことになっているとは思いもしなかった。話しかけて正解のようだ。そんな百式の隣に座る。すすす……と少し遠ざかる。
「そんなに今回の作戦が気になるかい?」
びくっと反応し小さくなっていた体をそれ以上に小さくするように足を抱きかかえる。気に病むな、とか、忘れてしまえば、だなんていっても一〇〇式の心には届かないだろう。逆にそれ以上、自分を追い詰めていくのだろう。刀哉には理解できた。自分がそういう過去を引きずっている人間……いや『鬼』だからわかる。
「……後悔と反省。この二つがどう違うか、知ってるか?」
「後悔と反省……ですか?」
「後悔ってのは、変えられない過去をずっと見て試案していることだ。でも、その過去と同じような状況っていうのは絶対にない。これは俺の経験から言えることだ……で、だ。反省は同じように過去を見ていたとしてもそれを次にどう活かすかを考えることだ。視点が未来を向いているんだ。今の一〇〇式はどっちだ?」
沈黙が収納庫を包む。ふっと笑い刀哉は口を開く。
「よーし、わかった。今日から俺の副官になれ」
「えっ、副官……ですか?」
「お前は俺と同じ『匂い』がする」
すると、一〇〇式は自分のにおいを確認しだす。そんなせわしない行動に訂正を入れてから続きを語る。
「ああ、雰囲気っていえばよかったねぇ。どれにしろ少なからず学べるところがあると思うからな、どうだ?」
すると、顔を俯かせてしまう。そして、か細い声でつぶやく。
「本当に私でいいんですか……? もっと、優秀な方がいると思うんです」
「確かに優秀な奴がいいだろうさぁ。……でもそれ以上に、自分の考えを伝えたい相手がいいんだ。自分の意志を伝えもせず、何もせずで死んでいくよりかはまだマシだ。何もしなけりゃそれこそ後悔することになる。『あの時、これをしておけば。伝えておけば』ってねぇ」
「でも、そんなことはわからないです」
「誰だって最初はわからないよ。だからこそ何か行動を起こすんだ。そうすれば『自分と同じ奴』と出会える。そいつと物事を共有して最悪志半ばで死んだとしてもそいつが次につなげてくれる。実に人間らしいだろ? 俺のそれを一〇〇式、お前にやってほしいんだ。……駄目か?」
微笑みかけながら尋ねる。一〇〇式は困惑するようにキョロキョロしているが覚悟を決めたのか体育座りから正座に変えて正面を向く。
「ふ……不束者ですがよろしくお、お願いします」
と深々と頭を下げる。本当に生真面目な子だと、そう思った。
これが刀哉と一〇〇式のファーストコンタクトだった。
やっと二話ですよ。おい、弊社。休みを寄越せ。執筆させろ。疲れ果ててなかなか時間が取れないんだよ。
まあ、どうでもいいとして。(よくない)
因みに、刀哉のしゃべりはバグじゃないです。ある程度、語尾が伸びます。