ドールズフロントライン ~戦場を闊歩する鬼~ 作:クロギ・ヨシロ
というわけで、3話。……3話⁉ うっそでしょ。何やってんだ?(仕事です)
「という経緯があってね。副官を任せることになった」
「よろしくお願いします」
司令室にて刀哉と一〇〇式はカリーナと面談することとなった。
「で、何をさせればいい?」
「基本的に刀哉さまの指示を前線で伝達する隊長役をしてもらうことになるので、今は特には何も……」
刀哉は顎に手を当て考え込み、一〇〇式は首を傾げた。
「そういえば事務関係はどうなってるんだ?」
「私の仕事になってますね」
「弾薬や配給の確認とかは……?」
「今回は刀哉さまに確認していただきました。しかし、詳しい場所などを知っていただくためのものですから、本来は私の仕事です」
「「……」」
二人で確認し、二人で黙り込む。
「任せっきりはちょっと……」
「その通りだねぇ。大丈夫か、この運営方法」
そんな二人を制止するようにカリーナは弁解を始める。
「い、いえ、そんな。細々としたものばかりですし、難しいものでも……」
「カリンが倒れた時、緊急で必要になった時。さて、こうなったら誰がやるんだろうねぇ?」
「一つくらいはできます。特に弾薬や配給は私たちが使うんですから」
えっ? えっ? と言って困惑するカリーナに二人は止まることはなかった。
「人に頼ることぐらいちっとは覚えるようにすること。全部抱え込むと無理がたたってぶっ倒れるぞ」
「カリーナさんは人間なんです。少しくらい私たち人形にも仕事を振り分けても大丈夫ですよ」
そんな二人に折れたカリーナは大きめな声で返答した。
「わ、わかりました! でも少しずつですよ?」
「当たり前だ。いろいろと教えてもらうからな」
「はい、副官として頑張ります」
―――――
そうして資料の確認などの事務が8割がた終わった時、通信機器に着信が入り、カリーナが確認する。そして、カリーナがいそいそと刀哉の元へ戻る。
「すみません、次の作戦なんですけど、本部で急に人手が必要らしくて……」
と困惑しながら話す。そこに割り込んでくる女性の声が聞こえた。
「……その先は私が話そう」
「わわ! じゃあ、お願いしますね。ヘリアンさん」
スクリーンに女性が映し出される。ヘリアンと呼ばれた人物だろう。見るからに真面目そうな雰囲気を持ち赤い軍服を淀みなく着こなす。戦争を稼ぎとして確立している企業でここまできっちりとしているとは思いもしなかった。
「初めまして指揮官。グリフィン上級代行官、ヘリアントスだ」
「お初にお目にかかります。荒鬼刀哉と申します」
「堅苦しい挨拶は仕舞いにしよう。それと効率の観点からもヘリアンと呼んでくれれば結構だ」
「じゃあ、こちらも指揮官じゃ長い。刀哉でいい」
こういう気軽さについて、流石は戦争を稼ぎにしている企業だと思う。堅苦しい人物かと思えばちっと違うらしい。
「知っての通り近頃鉄血は何の予告もなくグリフィンが請け負うs09地区をたびたび襲撃している。グリフィンの評判にもかかわるので上層部もかなり気にかけているようだ」
いや、今まで予告があったのか? 戦争って別に予告なんていらないだろう。開戦なら通告義務はあるだろうが開戦後は奇襲夜襲なんでもござれ、というのが普通じゃねぇか? と思ってしまった。
まぁあいいや、と改めて説明に耳を傾ける。
「そこで本部は鉄血を迎え撃つと同時に襲撃の原因調査を私に託された。上層部の命令により貴官には私の仕事全般を補佐してもらう」
「え……ちょっと待ってください、ヘリアンさん」
とカリーナが割り込む。
「刀哉さまは入社したばかりで訓練に一度参加しただけですよ? 経験が浅いというか……」
「はぁ……無理は承知だが時間も人手も足らないのだ。だが心配は無用だ、刀哉。貴官の成績を見る限り、この任務に就くのは充分だろう。しかも、従軍経験もあり戦場を知っているのであればなおさらだ」
ヘリアントスは刀哉の目を見る。左目は白髪で覆われて目視はできないが右目は鋭い眼光を蓄えている。
「やってもらうぞ? 刀哉」
この人物なら充分だ。ヘリアントスは刀哉を再びそう評価したのだった。
ヘリアンさんがでるとこです。
おっそ。もうちょいガンバリマス。