ドールズフロントライン ~戦場を闊歩する鬼~ 作:クロギ・ヨシロ
物語としては少しずつ固まってはいるので、頑張って逝きます。
作戦は酷く順調に進んでいた。しかし、人形たちは無理に動き少しずつ損傷が大きくなっているのも刀哉は理解していた。
「スクリーンの向こう側では戦争をしているってのにお気楽なものだねぇ」
「え? ああ、そうですね。従軍経験のある方は大抵そうおっしゃるそうですよ」
「まぁ、そうだろうねぇ。にしても、本当に俺みたいなのが指揮官でいいのかねぇ」
「またそんなことを・・・・・・」
と呆れたようにカリーナは返答するが、刀哉の雰囲気からはこの台詞を本気で言っているようだった。
「俺はさ、どちらかと言うと前線指揮の方が得意な人間なんだよねぇ」
「前線指揮・・・・・・」
とカリーナは首を傾げる。
「後方指揮が得意な奴は『この部隊をどう動かそう』っていう部隊の特徴や限界を知ってて動かす。でも、俺みたいな前線指揮が得意な奴は『俺ならこんな感じで動くから部隊もそう動かそう』みたいにする。でもそれって現場の兵士にとっては、自分の部隊にある限界以上のことをさせられるわけだから凄い重労働になるんだよ」
「なるほど。刀哉さまのそのお言葉はそういうことが分かっているからこそ、言っていたことなんですね」
「そういうこと」
ふう、と息を吐く。ここに座って指揮を執っていると刀哉はいつも思っていた。なぜ自分みたいな『鬼』が戦場に赴いていないのか、と。
――――――
部隊の殲滅と司令部の破壊報告が入る。
「実に順調だったな刀哉、よくやってくれた……。いや、むしろ我々の期待以上だったというべきか」
「いいや。実力以上の動きを部下たちがしてくれたおかげ。俺の無茶によくついてきてくれた」
「謙遜だな。思う以上に貴官は秀でているぞ」
そうかねぇ。と思ってしまうのは刀哉自身が兵士としての動きしか知らないせいだろう。
「改めて、歓迎しよう刀哉。よくグリフィンに来てくれた。今後何が起こるかわからんがよろしく頼む」
賞賛を以て歓迎されるが刀哉には興味のないことだった。グリフィンに、戦争の最前線に来たのは、戦場に赴くためであって安全圏で指揮をするためではない。それがずっと頭の中に渦巻いていた。
そこで考えを巡らし、ヘリアントスを呼んで一つ頼みごとをしてみた。
「暇な時でいいから社長に「荒鬼剣也を知っているか」って聞いてみてもらえないかねぇ」
「確約はできんが、聞いてみよう。・・・・・・っと噂をしたら、だな」
そう言ってスクリーンの向こう側で通話をし始めた。そうしてちらりとこちらを見た後、その話題を言い始めた。すると、いきなり慌ただしくなりこちらに向かってきた。
「すまない刀哉、これからクルーガーさんと面談してもらう。いいな?」
「ああ、いいよぉ」
というより刀哉にとっては最初からそれがねらいだ。
スクリーンに初老程度の男性が写される。この人物がグリフィン&クルーガーにおける取締役・ゼレゾヴィッチ・クルーガー、その人だ。
「貴様か、あの質問をした指揮官は」
刀哉はなにも答えない。ただ向こうは何かを察したらしく言葉を続けた。
「名を見てまさかと思っていたが・・・・・・ケンは元気か?」
「ええ、昔みたく飄々と生きてますよぉ」
懐かしき戦友の生存に安堵していた。そうして瞬時に取締役としての表情へと変わった。
「こんな質問してまで私を呼び出したかったのにはそれ相応の事案があるんだろうな」
「ああ、その通り。……これから言うことはどれだけ馬鹿げたことでどれだけこの会社の理念から真逆のことを発言するかわかっているが、言わせてもらう」
「ああ、言ってみろ」
「俺を戦場に出させろ。俺の目的があって鉄血相手の最前線までやってきたんだ。こんなところで足踏みなんぞしていられない」
一瞬の沈黙が入る。目を瞑り考える素振りをしてからクルーガーは言葉を発する。
「……いいだろう。その代わり条件が二つある。一つ、貴様が前線指揮を執るのだ。必ず勝利すること。二つ、敗戦した場合、人形を見捨ててでも生き残ること。これらを厳守してもらう」
その言葉に刀哉は口角を上げて言の葉を流す。
「認識した。では、その通りに」
そうして退室していったのだった。カリーナは後を追い、ヘリアントスは声を上げる。
「なぜ許可を?」
「簡単だ。貴様はあいつの目をどう思う」
「目、ですか? 鋭い眼光を蓄えたいい瞳だと」
「それが駄目なのだ。いいかヘリアン、鋭い眼光というのは一瞬閃く。だからこそ意味がある。あいつの目は勇者や英雄ではなく『化物』の瞳になっているのだよ」
「化物? 刀哉が、ですか?」
「あいつの従軍経験がどこか知っているか?」
「いえ、軍需施設としか」
「その施設が『鉄血工造』の工場だったのだ。しかも、あいつの母は最初期の鉄血工造を支えた研究者、
「……! 鉄血側の天才ですか」
「そうだ。あの一件で実家を継いだ兄以外の家族を喪っている。……化物といったが詳しく言えば『復讐鬼』なのだ、あいつは。……これは仮定の話になるが、もしここで許可を出さなくても後々我慢ならなくなって飛び出していっただろう」
二人は黙りこむ。部屋の中には鉛のごとき陰鬱な雰囲気が沈み込んできたのだった。
と、まぁ社長相手に凄い事言ってます。
とりあえず、次回は早めにできればと思ってます。