ドールズフロントライン ~戦場を闊歩する鬼~   作:クロギ・ヨシロ

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ちょっとだけ誤植があって時間を置きました。

指揮官・荒鬼刀哉の初陣になります。


人鬼同心

 

 

 

 

 

 

「次の任務を伝える。……本当に戦場へ()くのだな」

「そりゃ、知人とはいえ会社の最高責任者にあんな大口をたたいておいて出撃しませんでしたなんてやったらただの馬鹿ですよぉ」

 

 と整備しておいた装甲付きの刀装を左手だけで持ち上げながら答える。ヘリアントスからは武装の方にも一言二言ありそうな雰囲気を醸し出していたが、クルーガーから何かしら言われたのだろう、口を閉ざし静観するのみだった。

 

「まあいい。今回の任務は負傷した人形の回収部隊が帰還するのだが、通過点に鉄血の拠点が今も存在するとのことだ。これの殲滅を行ってもらう。失敗は許されない。貴官の武運を祈っている」

 

 通信が途絶え静寂が刀哉を包み込む。そんな中刀哉はひとり呟く。

 

「さぁ、戦争の時間だねぇ」

 

 その顔はだれが見てもわかるほどの歪んだ笑みを浮かべていた。

 

――――――

 

 輸送ヘリ内部。一〇〇式率いる第一部隊と新しく着任したグリズリー率いる第二部隊で分かれ計二機での出撃となった。ちなみに刀哉は第一部隊のヘリに搭乗している。

 刀哉は無線にてグリズリーに呼びかける。

 

「第二、グリズリー」

「はい?」

「第二部隊は比較的身軽にしておいた。東側のルートをたどれ。できるだけスニーキング、見敵はできるだけ音を出さずに必殺すること」

「了解」

 

 その返事はどことなく不満そうな声音だった。

 

「なんだよぉ、不満かい? 第一部隊が交戦して鉄血の主力がこっちに集中してきたら強襲してくれ。その時間帯だったらはしゃいでくれて構わないから。というより、はしゃいでくれ」

「重ねて了解よ、指揮官」

 

 グリズリーは任務を全力で取り組むような性格だが、何かしらスリルのある戦闘を好む。こんな風にある程度の戦場を用意しておかなければ。

 

「さてと、やろうか『征伐舞草(セイバツモクサ)』」

 

刀哉は柄を再度強く握りつぶやく。ヘリは戦場の上空。最前線まで赴いた。刀哉は戦場に入るとき決まって前髪をかき上げて左目を出す。その瞳は仄かに白く灯るのだった。

 

――――――

 

 戦場を駆ける。敵がいるであろう場所まで到着し身を隠す。一〇〇式は刀哉に指示を仰ぐ。

 

「主力の所在を確認しました。どうしますか?」

「どうするもこうするも、交戦するしかないだろう」

 

 すると第一全員が飛び出そうとするので「待て」と制止させる。

 

「全員銃を構えて待機。俺が五秒カウントする。何があっても引き金はひかないこと」

 

 第一は銃口を上げ狙い定める。その状態で待ち望む。

 

「じゃ、一で発砲。いいね? 一〇〇式、隊長として号令よろしく」

 

と言い、一〇〇式はうなずく反応を見せた。

刀哉はカウント開始と共になんと鉄血の前に姿を現したのだった。第一は様々な反応を見せるが指示通り待機している。普通であれば撃ってしまう者もいるがそこらへんは飲み込みがいいらしく、ちゃんとしていることが分かる。

 鉄血は刀哉に反応し銃口を上げ始めた。今にも銃火が閃く……その数瞬前に、消え入るような言葉をつぶやいた後、刀哉は敵味方かかわらず全員の視界から消えた。―――否、地を滑るかの如き抜刀術で敵陣中央にいたプラウラーを真っ二つにし、鉄血の背後へ回っていたのだ。

 そうして、鉄血は背後を見てもう一度銃口を上げる。しかし、無線の中では一のカウントが通達されていた。

 

「射撃開始!」

 

 一〇〇式の声と共に軽快な発砲音と鉄血の破壊音が重なり合っていく。

 

「第一、そのまま前線を上げろ! 第二、いまどこだ」

「司令部へ200程度」

「発砲許可。司令部を攻略しろ」

「了解」

 

 オーバー。その返信を耳に残し、刀哉は再び動き始める。

 初手はリッパー。の首を落として走り去る。プラウラー……は苦手だが―――というより人の形をしていない相手が苦手だが―――そんなセリフも言っていられない。だが、距離が酷く近くそこまで加速もできない。そうしてとった行動は四本足の片側のみを斬り払い、そのまま駆け抜けていく。プラウラーは混乱し立て直しに時間がかかる。そこに第一が駆け込み逐次排除していく。

 刀哉は斬り倒すだけでなく、腕や脚だけを斬り払ったり攻撃を斬り落としたりするか装甲板で防ぎきるかをして走り去ることもする。刀哉の行動に混乱していたり、処理が追い付いていなかったりする残った鉄血の人形たちを後から走ってくる第一がきっちりと倒しきる。

 そう。先行する刀哉はいわゆる『囮役』を買って出ているのだ。おかげで第一は必要最低限の攻撃で最大限の戦果を挙げ、最小限の被害で最速ともいえる進軍速度で司令部への道を駆けていくのだ。

 

「見えたぞ、司令部だ。すでに第二が突入済みだが何が起こるかもわからねぇ。警戒すること」

「了解」

 

 なんて指示をだすともうすでに第一が刀哉の前線まで走りこんでいた。そんな様子から『優秀だな、俺の部下には勿体ねぇ』という自虐と『充分だ、俺と一緒に駆ける兵士にはもってこいだねぇ』という満足感が刀哉にはあった。

 外側の鉄血人形を倒し終え、司令部内の鉄血を排除しにかかる。室内の場合はライフルやアサルトライフルなどの長物を持つ人形には苦手な場所となるが、同等の長い居合刀を持つ刀哉にとっては野外と変わらない戦場だった。理由としては、刃を円のように振るうのではなく、突きや錐状に振るうからだ。

 それだけでなく、刀装が効果を発揮する。

 まず、出入り口の扉を鞘で突き破りながら突撃する。それに反応してリッパーは構え始めるが、それに構わず突撃の速度を維持したまま鞘の先端で相手を突き動かし鞘の持ち手にあるレバーを握る。すると、瞬間『バチィン』という電撃音と共にリッパーはショートし、再起不能となる。これが刀装、正式名称『|装甲付属対人形電撃突兵拵《ソウコウフゾクタイニンギョウトッペイゴシラエ》』である。

 そのままリッパーを払いのけ、出力用のダイヤルを回しバッテリーを排莢させ瞬時に回収し、腰に差しているバッテリーを装填する。そして、ダイヤルで電撃の強さをスタンさせる程度に調節する。人形一体に対してバッテリー1つ使うのは非常に効率が悪い。それでも、使用したのは突入時ほど危険な時間帯はないため出し惜しみなんてできないためである。

 その突入で反応したスカウトがやってきたのを視認する。第一は別ルートからの突入を敢行しているため近くにいたとしてもすぐには増援には来れないだろう。スカウトには瞬時に近づいて逆手の抜刀にて斬り落とし、離れていく前に刃と刀装で破壊する。

 突入から少し落ち着き、歩いてみることにした。廊下と殺風景な部屋ばかりが続きそこまで何かがあるというわけではないようで、重要なサーバールームがあるというわけでも何かの製造をしているというわけでもないらしい。本当に護送の陸路を確保するために占領した、という感じだ。

 ふいに覗こうとした廊下より銃剣が飛んできた。鞘で受け流し、そのまま胸あたりであろう場所に先端の電撃装置を当てる。ただレバーを握ることはなかった。相手が一〇〇式だったためである。その後ろには第一部隊がそろっていた。

 

「ああ、一〇〇式か」

「あっ、指揮官! 申し訳ございません」

「大丈夫だよぉ」

 

 なんて言って再度歩き出す。その後ろから一〇〇式達がついてくる。

 

「敵の数は?」

「大半がグリズリーさんの第二部隊が撃破していました。確認中ですがほぼいないかと」

「認識した。……にしても、さっきの銃剣戦闘は良かったぞ」

「えっ、あ、ありがとうございます……でも今のだけでわかるんですか?」

「わかるよ。一応武術を習っていたって話しただろ? 他部門でも少しは理解できる」

「そうねんですね」

「そう。で、だ。一〇〇式にも長所や短所がある。長所はちゃんと活かして、短所は周りに頼ってカバーしてもらえばいい。そうやって失敗も次につなげられるようにすること」

「次に……」

「だから、こういう普通の戦闘はお前たちに存分に頼る。そして、対抗できない相手が出てきたときは俺がここぞとばかりに頼っていいからな? なんてな」

 

 刀哉は笑って見せる。こんなやり取りをしながら作戦は終了を迎えたのだった。

 

――――――

 

「作戦終了しました。任務の引継ぎをよろしくお願いします」

「ご苦労様です。確かに引き継ぎました。帰還の命が下りていますのでお気を付けて」

 

 だなんて典型的なやり取りをして撤退のヘリに乗り込む。

 

「一〇〇式。帰還したら仕事は残っていたっけ?」

「はい。消費資材の確認とその他こまごまとしたものが」

「ああ……。一〇〇式、休憩した後でいいから頼むわ。俺はちょっとやることがある」

「了解しました」

 

 司令部に戻った一〇〇式は言われた通り、消費資材の確認に入った。自分自身も若干の消耗があるが刀哉から直々の命令であるため、休憩しろ、だなんて言われたがここはお節介な一〇〇式である。最優先でやってのける。

 そうして、最終確認の許可を得るため刀哉の自室へと足を運んだ。扉は若干開いていて隙間から中が見えた。そこには異様な光景が一〇〇式の瞳に映った。

 普段、手袋や長袖や長ズボンで隠れている刀哉の四肢は言うところの『人形内部の四肢』になっていたのだ。左腕を取り外し右手で整備している状況だ。

 戻ろうとしたとき扉に当たってしまい気付かれた。刀哉は驚いたようだったが何事もなかったかのように言葉を発する。

 

「どうしたんだ、一〇〇式。早いじゃないか」

「あ、いえ、指揮官からのご指示だったので最初にやっていたんです」

 

 刀哉はそれに納得しうなずく。「休憩した後でよかったんだけどなぁ」とかつぶやきつつ。

 

「指揮官、それって……」

「やっぱり気になるかい」

 

 整備をしながら刀哉は経緯を話し出す。

 

「俺はさ、もともと鉄血の製造工場で護衛任務に就いていたんだ」

「鉄血の工場? ということは……」

「御想像通り。この手足はその時失った。……家族、母と妹も一緒にね」

「家族? なぜそんなところにいたんですか?」

 

 チキッという音と共に動作を止める。一〇〇式ははっとして謝ろうとしたがその前に刀哉が口を開いた。

 

「俺の母は鉄血の人形を作り上げるために招かれた研究者だったんだ。その近郊に居住区があったからそこに住んでいてね。だからこそ、襲われた」

 

 息をのむ。酷い惨劇をもたらした戦争だとデータから知識はあったが、生き証人が存在するとは思いもしなかった。

 

「だから、母が残した技術を使ってもう一度戦うことを選んだ。それこそ、鉄血に復讐するために。そうして、俺は戦場に()く。最前線へ赴く。それでしか、俺の存在を証明できないから」

 

 刀哉はうつむいたまま自らを嘲笑する。

 

「馬鹿みたいだよなぁ。こんな姿になってまで復讐しようだなんて」

 

 また整備し始める。そんな刀哉の姿を見て、言葉を聞いて、一〇〇式は馬鹿にはできなかった。指揮官が素晴らしい程に『人間らしく』思え、酷く惹かれてしまったのだった。




ヘリアンさんすごいげんなりしてる……!
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