前回の投稿から早一月。
時の流れって早く無い?いや。マジで。
キリはものすごく悪いですが、ちゃっちゃと投稿したいので
投稿しちゃいます。
次は多分一月も待たせることはないと思います。はい
辛くも初任務をこなした湊は現在、双殛の丘の地下に広がる"秘密の遊び場"にて一心不乱に夜一と体術を用いての組手をしていた。
相手をしていた夜一は攻める手は僅かも緩めることなく、ふと浮かんだ疑問を湊にぶつけた。
「のぅ、湊よ。任務を フッ、終えたばかりなんじゃし ハッ、少しは休もうとかは シッ、思わんのか?」
相対する湊は夜一の攻めの苛烈さ故に受け、流し、捌くことを主とした動きをしつつも疑問に答える。
「休んでられるわけ クッ、ねぇだろ!多少の自信はあった ハッ、体術が全くと言っていいほど フッ、効かなかったんだぞ!?」
そう、湊の純粋な体術のみの戦闘は件の虚に目に見えたダメージを与えることは能わず、刑軍の一人としてはなんとも納得のいかない結果となったのだった。
初任務にして初単独任務、初撃破となんとも初物尽くしで隠密機動内にその名を轟かせた湊であった。しかし、周囲の評価はいざ知らず、本人は刑軍であるのに情けないと何処までも自らに厳しい自己評価を下していた。
「なるほどのぅ。ヤッ、そういうことか。まぁ、良い フッ、気がすむまで付き合ってやろうではないか。どれ、これで詰みじゃっ!」
「すまん、恩にきる。なっ!?」
会話しながらの組手は一切の途切れなく攻め続け、最後まで反撃の糸口を掴ませなかった夜一に軍配が上がった。
その後も二人の組手は湊の体力が尽き、地に伏すまで続けられるのだった。
◇◆◇◆◇
隊舎の壁面に大きく一の文字が掲げられたその場所は一番隊隊舎。そこでは現在、一から十三までの各隊長が一堂に会していた。
「それではこれより、隊首会を執り行う」
そう口にするのは一番隊隊長及び護廷十三隊の総隊長である山本元柳斎重國その人だ。
「まず初めの議題として流魂街での魂魄の謎の失踪の件じゃが、何か進展はあったか?」
「それなら、ワシの秘蔵っ子が片付けたぞ」
自身が手塩にかけて育てた弟子の戦果に鼻を高くした様子で夜一が報告をする。そして、それに反応を示すものがいた。
「薄羽 湊クンだったっけ?彼、強いよねぇ。あれでまだ死神になったばかりだって言うんだからやんなっちゃうよ」
そんなどこか掴ませないような態度で湊を賞賛するのは八番隊隊長である京楽春水であった。
そんな様子で隊首会は恙無く進行し、湊が謎の失踪を遂げる魂魄の原因であるとされる虚を討伐したこと。十二番隊隊長であった曳舟が王属特務「零番隊」に選ばれたこと。それにより隊長の座に空きが生まれ、そこにーー 夜一の推薦もありーー 二番隊第三席である浦原が就くこと。以上の三つについて話し合いが設けられたのだった。
◇◆◇◆◇
「ーーーと、言うわけで喜助は来月から十二番隊の隊長となってもらう。そして、喜助が二番隊から抜ける為、席官は席次の移動があると思っておくことじゃ。以上じゃ、解散」
隊首会での連絡事項をそのまま伝えられ、喜助は困惑しながらも隊長となる決意を固めたらしかった。一方で二十席という席次に就く湊は、席次の移動に対してあまり喜べないでた。それは偏に自らの実力不足への懸念からである。
「湊、お主には喜助が抜けた後はそのまま三席に就いてもらおうと思うとるんじゃが、どうじゃ?」
「三席なんて俺には務まりっこねぇよ。今の四席の人をそのまま上げてくれ」
「ふむ、何故そう悲観する。身内贔屓抜きで見てもお主の実力は大したものじゃ。実力面では主にも十二分に務められるじゃろう」
「違うんだ。たとえ誰が言おうと俺自身が認められないんだよ!だから、頼むよ。頼む」
湊はそう言うと頭を下げた。どうやら頑なに三席に就くには無いらしかった。
「あい分かった!ならば、三年じゃ。三年時間をやる。その間にお主が胸を張れるようにしておけ。その時ワシは再度お主に話を持ちかけようではないか。その時もまだダメなようならきっぱりと諦めようでは無いか」
夜一のそんな言葉に目に見えて安堵の表情を浮かべるが、夜一の言葉は続く。
「ただし!ただしじゃ。手を抜くことは許さぬ。なんなら、これからの三年間お主をこれまで以上にみっちりと仕込んでやろう」
獲物を見つけた猫のような表情でそう言う夜一を見て湊は悟った。あぁ、これは大変なことになるな、と。
◇◆◇◆◇
夜一によるスパルタ特訓の宣言をされ、げんなりしつつ、瀞霊廷内をなんとはなしにぶらついていると自身の好敵手(ライバル)と言える存在、白哉を見かけた。
「よう。何してんだ、白哉?」
「湊か。いや、これと言って何かをしていたわけでは無い。強いて言うなら散歩だ」
「なら、甘味屋行こうぜ。話したい事をあるし」
「話をするのはいいが、甘味屋か。甘いものは苦手なんだ」
「んじゃあ、俺の部屋行こうぜ」
「良かろう」
そんなこんなで白哉を連れ立って宿代わりに使わせてもらっている四楓院家の離れに足を向けるのだった。
◇◆◇◆◇
「それで?私に話とはなんだ?」
部屋に着くなり若干ピリついた雰囲気で尋ねてくる白哉。夜一の持ち家であるということで、少々刺激してしまったようだった。
「おう。それなんだけどな、三席ってのは実際どんな感じなんだ?」
「質問が抽象的すぎて返答に困るが、そうだな。相応の覚悟がいると言っておこう。三席ともなれば当然抱える部下は増える。それらをいかに死なせないか、万が一があったとしても、どれだけその死に意味を持たせられるかが重要となってくるだろう」
「なるほどな。ただ強いだけじゃダメって事だな。ありがとな。なんとなくだが、何かわかった気がした」
その後二人はお互いの近況を報告し合ったのだった。