「このように刃禅とは死神と斬魄刀とが対話するために最適な形へと昇華されたものだ。故に、斬魄刀と対話するときは刃禅を行うのが一番良いだろう。では、今日の授業はこれで終了する」
なるほど、そう湊は思った。自身は斬魄刀を与えられてからこれまで、自らの精神世界へと行ったことはなく、そろそろもう一度精神世界へと行きたいと考えていた。そこに渡りに船とばかりに刃禅を教えられた。こうしてはいられないとばかりに帰宅し、刃禅に取り組むのだった。
◇◆◇◆◇
ふと気がつくと視界一面に濃い霧が立ち込めており、自身の精神世界へと入ったことがわかった。このまま突っ立っていてもな、と感じ移動しようとすると、誰かが近づいていることが感じ取れた。霧の中という視界の悪い中でも誰がきているのかが分かった。
「久しぶりじゃの、湊」
◇◆◇◆◇
いつもと変わらぬ景色、いつもと変わらぬ自身、一向に精神世界へと降りてこない我が主人、おおよそ知覚できる全てが変わらず、ーーーは退屈していた。
「退屈じゃな」
そう口に出しても変わるものはなかった。
そうして、無為に過ごしていると突然、この世界の主人、我が主人が降りてきたのが知覚できた。
湊が自分のことを見つけるのを待っていても良いが些か退屈過ぎたこともあり、ーーー自ら湊に会いに行くのだった。
「久しぶりじゃの、湊」
◇◆◇◆◇
「誰だと思えば、アンタか、結局アンタの名前はなんなんだ?」
「ふむ、そうじゃの、教えてやらんこともないがときに湊よ、斬魄刀の名前を知るための条件はなんと心得る?」
「そうだな、確か斬魄刀に認めさせることだった様な…」
「そうじゃの、その考えで行くと何故お主は妾の名前を知ることが出来ていないと考えるのかの?」
「あぁ、つまりアンタはまだ俺のことを認めてないってことか」
「有り体に言ってしまえばそういうことじゃの。のぅ湊よ、妾は退屈しておるのじゃ。少しでも妾の退屈を和らげてくれるのなら認めてやらんこともしないぞ?」
そういってーーーは霊圧を解き放った。すると、風が吹き荒れ始め、霧の動きによって鎌鼬や竜巻のようなものが発生していることが見てとれた。なるほど、どうやらこれがコイツの能力らしい、そう湊は考えるのだった。
「そうか、手っ取り早いのは好きなんだ。ただ俺は斬術が少し苦手なんでな、体術だけでいかせてもらう」
「よいよい、妾を楽しませられるのならばなんでも良いぞ」
その言葉を口火にーーーを認めさせる戦いの火蓋は切って落とされたのだった。
◇◆◇◆◇
ーーーは湊の出方を見るようゆるりと構え、佇んでいる。それ故に、先に仕掛けたのは湊だった。体術のみゆえに接近戦しか選択肢はなく、ーーーへと最短距離で駆け抜け二丈ほど手前で跳躍し、空中で一回転をしてエネルギーを生み出し、そのエネルギーに落下する力をも加えてつま先蹴りを繰り出した。これは、夜一との修行ーーー実質夜一の遊び相手ーーーの時に夜一が珍しくしっかりと稽古をつけてくれた技、『風車』であった。
「食らいやがれぇ!」
そう声を上げながら脚を振り下ろすが、ーーーは周囲の霧を纏わせた腕で振り下ろした脚をいなし、お返しとばかりに同じく霧を纏わせた腕を鳩尾めがけて繰り出してきた。脚をいなされたことで体勢を崩した湊は鳩尾への攻撃をもろに受けてしまい、思わず膝をついてしまう。すぐに起き上がろうとするが、攻撃を受けた鳩尾を中心に鋭利な刃で刻まれたかのような傷がいく筋もはしっていた。
「甘いのぅ、和三盆よりも甘いわい」
ーーーはそういって、まるでお手本を見せるかのように『風車』を繰り出してくる。咄嗟に横に転がって避けるが、それさえ予期されていたのだろうか、空中で腰を捻ることで脚の向きを変え、転がった先にいる湊目掛けて脚を繰り出したのだった。
◇◆◇◆◇
「少しやり過ぎてしまったかのぅ。湊よ、聞こえておるかの。お主を認めることはまだせぬ。せめて、妾に一撃入れられる様になることじゃの」
ーーーはそれだけ言うと湊を強制的に精神世界から押し出すのだった。
◇◆◇◆◇
「ちくしょうっ!」
湊は自らの弱さを嘆き、怒っていた。
「このままじゃ、いつまでたってもアイツに認めさせることは出来ない。霊術院の授業じゃ全く足りない。どうすれば…」
そう独り言ちながら自身に与えられた一室をぐるぐると回っていると、突然、襖が勢い良く開けられた。
「外から独り言は聞かせてもらった!悩んでおる様じゃの。どうじゃ?儂が稽古をつけてやらんこともないぞ?」
「いや、アンタの稽古って遊び相手ってだけじゃねぇか」
「うぐっ。それを言われるとキツいが約束しようではないか。儂の稽古に耐えられたならばいまの数倍もの力を身につけられるだろうと!」
「遊び相手ってとこは否定しないのな。まぁ、一人で悩んでても仕方ないし、よろしく頼むよ」
そういって二人は遊び場へと向かうのだった。
2000字は書くとか言いながら少し足りてません。
これには深いわけがあるんです。切りが良かったんです!!
いや、ほんとすみません。