……此処は何処なんだろう?そんな意識が芽生えたのは、もう昔の話だ。
「……」
透明な壁の内側が僕達の世界だ。相変わらず誰も喋らず仲良くしない。此処に居る子供達には感情が無いのだ。
「ーーっ」
怪しげな服を着る男達が僕達を何時もの場所に連れ出す。此処では日夜選別が行われる。其処は森だった。肉食動物が闊歩する弱肉強食な世界だ。
「ーー……」
僕達はこの世界の支配者たるお方に『力』を与えられるべき存在。故に力を研磨する事が義務づけられる。今日も命を狩る仕事が始まる。
「ハァハァ……」
生きる事に貴賎は無い。同士討ちをさせる事も協力しようと言って土壇場になって裏切る事さえする。
「くそ!」
誰かを供物にして生き延びなければいけない。だから仲間を探しているが捜せども見つかるのは動物などの死骸だけ。僕は猛獣から必死に逃げていたがついには崖に辿り着いてしまった。……下は海だ。落ちたらひとたまりもないだろう。
「VV様……」
支配者の名前を呼ぶが無情にも猛獣に見つかってしまった。そして猛獣が僕をひっ捕らえた。
「嫌だ……」
死にたく無いと思っても体重を伸し掛られている為に逃げ出す事が出来ない。
「嫌だ」
家族が欲しかった。信頼出来る家族が……。心を打ち解ける人が。
「嫌ダァああああ!!」
瞬間岩が崩れ落ちた。猛獣と一緒に僕は落下する。猛獣は岩肌に頭をぶつけて絶命してしまった。僕は海に放り投げられた。天候が悪く荒れ狂っている。僕は死ななくてはいけないのだろうか……?そんな言葉を最後に意識を失ったのだ。
「……兄上。これで良かったので?」
近くでその様子を見ていた大柄な男が小柄な少年に声を掛けた。それは髪の長い少年で鼻歌を歌っていた。
「……彼はアールストレイム家の養子に出される事になった」
問題は無いよと嗤ったのだ。
◇◇◇
あたしの名前はアーニャ・アールストレイム。つまりアールストレイム家のご令嬢。ヴィ家の離宮であるアリエス宮の行儀見習い。神聖ブリタニア帝国第11皇子ルルーシュ様やその妹ナナリー様の給仕係を賜る事もある。
「……」
そして今その御二方に紅茶と茶菓子を運んでいる最中だ。……部屋に着いたのでノックをする。女中が出てきて部屋の中に通される。
「お飲み物をお持ちしました」
御二人は勉強をしていた。それも真剣に。
「……失礼しました」
一礼し部屋を後にした。……さて、仕事に戻らなくてはいけない。迎えが来るまでアリエス宮の行儀見習いをしていた。お母様曰く良いお嫁さんになれるのだとか。