BanG Dream! 少年とパレットで描く世界 作:迷人(takto
しかしいっそ開き直ることにします。調子よければ書こう!!
可能であれば誤字等指摘ください。
バイト先から帰宅した拓人は、紗夜と話して思いついたことを実行する準備をしていた。今までに聞いたことや、教本で見た練習方法をノートにまとめる。これが今の自分にできることだと考えた。本の内容だけでわからなさそうなことがあれば、経験から得た知識もまとめ、関連する箇所に付箋していく。黙々と作業を進め、拓人の手の加わった教本は何とか完成した。それに加え、以前バイト中に見つけてこれはいいのではと購入した本に、映像で見て練習するためのDVDが付属していたため、千聖が移動時間や空き時間等に見られるように渡す準備をした。
それからは拓人自身のために時間だ。
明日の支度を終わらせると、部屋の片隅に置かれた自分のベースと向き合った。
これは、再び触れられるようにするための一歩。弾けるようになるにはまず手に取らなければ始まらない。Pastel*Palettesのためにも、何より自分のためにも。ときにじっと睨みつけたり、少しずつにじり寄ったりしては見るものの、なかなか以前のように気軽に触れようという感じになれない。原因は楽器を弾けなくなったこと以外の何かなのだろうか、だとしたらそれは一体何なのだろう。拓人は必死に心当たりがないか考えてみるが、結局思いつかなかった。しかし、以前に比べたら微々たるものだが、ベースとの距離が縮まった気がした。そんなところで本日は就寝することにした。明日はいよいよ、レッスン当日である。
拓人がいつものスタジオに訪れると、既にそこには麻弥、イヴ、日菜の3人が集まっていた。
「おはようございます。」
業界においてデフォルトとなっている挨拶、拓人もそれに従う。
「あ、やっほーたっくん。」
「おはようございます。」
「本日もよろしくお願いいたします!」
順に挨拶を返される。全員が言い終わってから日菜がクスクスと笑った。
「それにしても、朝でもないのにおはようっていうのもおかしい話だよね~。」
「そうですねぇ、ジブンも本当に最初のころは慣れませんでした。」
少し首をかしげながらイヴが続く。
「自然に言っていましたけど、こういった業界のあいさつは、何故おはようございますなのでしょうか?」
イヴの素朴な疑問を聞いて、拓人も確かにと思った。すると麻弥が人差し指をピンと立てながら話し始めた。
「それにつきましては、歌舞伎の世界の楽屋入りのあいさつが『お早いお着き、ご苦労様です』だったことからきているそうです。あと、朝、昼、夕のあいさつの中で、敬語で挨拶できる『おはようございます』を採用したっていうのも有力な説らしいですね。」
それを聞いて他の3人は納得し、おおっ、と感嘆の声を上げた。
「さすが麻弥ちゃん、よく知ってるね。」
「はい!勉強になります!」
拓人も二人に同調するように頷いた。
「いえ、自分も以前たまたま気になって調べたことがあっただけですよ。」
ふへへ、といつものように麻弥は照れ笑いをする。その様子が微笑ましくて、みな自然と笑みがこぼれた。
「それにしても、歌舞伎が由来だったとは!日本の和の心、ブシドーを感じます!」
「いや若宮さん、それは武士道とは関係ない気がするんだけど…。」
興奮気味に言うイヴを拓人はそう諭した。
4人がしばらく話をしていたところで、スタジオの扉が開かれる。
「「おはようございます。」」
挨拶とともに、彩と千聖が二人同時に入室してきた。それに対して4人も挨拶を交わす。
「ごめんね、バイト先に行く用事があったからちょっと遅くなっちゃった。」
基本多忙な千聖が遅れてくるのは予想できたが、彩が遅れてくるのは意外だった。しかしその理由を聞いて全員が納得した。
「彩ちゃんのバイト先って、確かちょっと行った所にあるファストフード店だよね?シフトでも入れられそうになったの?」
「ううん、これから始まる新製品の件で話しておきたいことがあるってマネージャーさんに言われて行ってきたんだ。」
その話を聞いて、ジャンクフードが好物である日菜は目を輝かせた。
「え!なになに!期間限定のバーガー⁉それとも、新しいポテトのフレーバーかな⁉」
興奮気味に言う日菜を静止させるように彩は両手を振る。
「ご、ごめんね!まだ公式で発表されてないから言えないんだ!企業秘密ってやつだよ。」
「なーんだぁ残念…。でも楽しみだなぁ!始まったら食べに行こうっと!」
そんな話で盛り上がる中、麻弥は千聖のほうに話しかける。
「千聖さんは今日どうされたんですか?」
「私は仕事で休んでしまったときに提出できなかった課題を学園に提出してきたの。ついでにいろいろと相談したいことがあったから。」
「なるほど、そうだったんですね。」
やはり売れっ子女優ともなれば学園を休む日もあるのかと拓人は思った。この業界にかかわることになってから、今までフィクションとしか思えなかったことが身近に感じられる。
それから開始時間までは少しの間皆それぞれが雑談をしていた。ライブの件があってから関係が悪くなることはなく、むしろ協力しようという雰囲気が伝わってくる。これならば、次のライブはきっと成功できると拓人は一人、そう感じていた。
レッスン開始予定時間数分前、拓人はレッスンを総括している先生を呼びに行くためスタジオを出る。その間にPastel*Palettesのメンバーは練習着に着替えて待機する。
先生と、それに続いて拓人が入室すると全員一斉に元気よく挨拶をする。整列をしているメンバーの前に先生が移動し、拓人はメンバーたちのやや後方に並んだ。
「それでは、本日もレッスンを開始します!」
「「「「「「よろしくお願いします!!」」」」」」
先生のはきはきとした掛け声に応えるよう、メンバーたちと拓人は大きな声で答える。
「それではいつも通り、まずは準備運動と柔軟体操をして、それからそれぞれの役割ごとに練習を進めてください。そのあとに、全体で動きの確認や音合わせなど行います。わかりましたか?」
「「「「「「はい!!」」」」」」
「はい、では始めましょう。」
レッスンの初めには必ず運動、簡単に言えばラジオ体操のような軽いものを行い、それから念入りに柔軟体操を行う。彩以外は楽器を弾くだけなのにそんなことが必要なのか?と思われているであろうが。彩に限らず、演奏中のパフォーマンスをすることがあるのがアイドルバンド。いざというときに体が動かないなんてことがないように、日ごろ行うストレッチは重要視されている。それが終わると、各々が分かれてレッスンを始める。指南役は順にメンバーを回って現在の実力を確認、指導を行う。拓人は予定通り、千聖についてレッスンを開始した。
「それじゃあ白鷺さん、よろしくお願いします。」
「ええ、お願いしますね。」
まずは千聖が現状どれだけ練習できているのか把握する必要がある。拓人はそれを訪ねる。
「今のところ空き時間や帰ってからはできるだけ触ってコードを押さえる練習をしたり、奏法を調べたりはしているけれど、まだちゃんと音を鳴らすところまではできていないの。」
それを聞いて拓人は少し安堵した。てっきりすでに見切りをつけて練習を放棄している可能性も考えられたからだ。しかし練習量は明らかにほかのメンバーよりも少ない。それを踏まえてアドバイスするべきことをまとめる。
「そうですね。それならコードを押さえる練習は引き続きお願いします。楽器を演奏する上でコードを正確に切り替えることは重要です。まずは使用するなかで一番使用する指の本数の少ないものから、徐々に覚えていきましょう。」
その説明を千聖は手元のメモに書き記していく。基本的なアドバイスとはいえ、几帳面に書き留めているところを見ると、彼女の真面目さが伝わってくる。そんな千聖を見て拓人は必用な練習法を説明しながら、書き溜めていた手帳と教本を取り出す。
「それは?」
「俺が今までやってる中で重要だろうなっていうところをまとめてみました。一人の時にはこれを参考にしてみてください。」
きょとんとした顔をしながらそれらを受け取った千聖は口を開く
「私が来られなかった間に、これをわざわざ?」
正直実践練習することを想像していたため、教本のようなしっかりしたものを用意してもらっているとは千聖は思っていなかった。
「俺にできることなんて今はこれくらいしかありませんし、白鷺さんが上達するためにできる限りのことはさせてもらいたいと思いまして。」
正直その発言が真実なのかどうか千聖は分かりかねていたが、今の自分の実力を鑑みても、圧倒的に実力はついていない。ならば最善なのは、拓人の言うように練習を進めてみるしかないという結論に至った。
「ありがとうございます。早速今日帰ったら見させてもらうわね。」
軽く冊子に目を通してからカバンにしまうと、千聖は練習用のベースを取り出す。
「それじゃあ、早速さっき話したように練習を進めていきましょう。」
「はい、よろしくお願いします。」
そうして、時間いっぱいまで拓人は千聖の練習に付き合った。時折ほかのメンバーの様子を見ながら、今の活気ある雰囲気を感じ取って、拓人は自然と笑みをこぼした。
「それじゃあ、私は別の仕事があるから、これで失礼させてもらうわね。」
「はい、お疲れ様でした。白鷺さん。」
練習が終わると千聖は荷物を手早くまとめてスタジオを後にした。
ほかの面々も続々と帰る。と、思いきや。
「あれ?皆まだ帰り支度しないんですか?」
拓人の疑問に彩が答える。
「実は、ちょっと前から残れる人は居残りで練習してるんだ。人が多ければ合わせとかもやったり、動きの確認したり。」
拓人は素直に感嘆の声を漏らす。きっと研修生の下積み時代からやっていることなのであろう。それを聞いて他のメンバーも参加するようになったのだという。丸山彩という少女のこの企画に対する意気込みを感じ取ったような気がした。
「やっぱり丸山さんは“アイドル“だよね・・・。」
その言葉にえへへと照れ臭そうに頬をかく彩に対して、日菜は「あたりまえじゃ~ん!」なんて言って笑い、それにつられて回りも笑い始めた。
(そうじゃないよ日菜さん。目指す先に愚直に突き進むその姿勢、それがアイドルだなって思ったんだ。)
そうして居残り練習は始まり、半ば変なポーズ合戦のようになってはいたが、時間の許す限り続いたのであった。
レッスン後、某事務所にて。
「お疲れ様です。今よろしいでしょうか。Pastel*Palettesのお仕事についてお話が。」
千聖とプロデューサーの間で、何やら怪しげな話が進められていた。
気づけばUAが増えていて、少しですが評価もしていただいて誠に励みになります。
一応バンドストーリーの進行を意識していますが、間違っていたらすみません・・・。